日本が発注済みの空中給油機KC-46A 1号機は今月9日にシアトル近郊のペイン・フィールド空港で初飛行を済ませ年内にも航空自衛隊に引き渡される予定だが、気になる情報を米メディア「Defense News」が報じている。
参考:Despite growing pains, KC-46 tanker will begin ‘limited operations’
米輸送軍司令部はRVSとフライングブームの欠陥のためKC-46AによるF-35Aへの空中給油を制限中
KC-46Aには飛行の安全性やミッション達成を阻害する通称「カテゴリー1」と呼ばれる欠陥が6つ存在していたが補助動力装置に関連した2つ欠陥については解決済、燃料システムに関連した欠陥についても修正の目処がついているため解決済に分類されるのも時間の問題なのだが、残り3つは欠陥は非常に深刻で本ブログでも何度か取り上げてきた。

出典:U.S. Air Force Photo by John D. Parker
KC-46Aに残っている欠陥を簡単に説明すると1つ目は空中給油作業を監視・制御する「リモートビジョンシステム(RVS)」の映像に歪みが発生して作業が困難になる欠陥、2つ目は空中で給油口に差し込むブームが給油を受ける航空機の機体表面に損傷を与える欠陥、3つ目は現在のフライングブームの設計だと推力抵抗が大きすぎてA-10の給油口にブームを押し込むことが困難な欠陥の3つだが、2つ目の欠陥はRVSに起因している問題なので実施的な欠陥の原因はRVSとフライングブームに2つにあると言っていい。
この問題を解消するためボーイングは様々な修正が試みたが問題を完全に解決することが出来なかったためRVSとフライングブームを自社資金で新しく作り直しことを決定、新たに開発する「リモートビジョンシステム 2.0(RVS2.0)」が完成するのは早くても2023年頃で順調にテストをパスすれば翌年の生産分からRVS2.0搭載が始まり、新設計のフライングブームは2024年頃に届けることができるとボーイングは予想している。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. David Bernal Del Agua KC-46Aのリモートビジョンシステム
要するにKC-46Aの問題が完全に解消するのは2024年頃という意味なのだが、Defense NewsによればRVSとフライングブームの問題が解消するまでKC-46Aの運用制限は継続されると言っており、日本の航空自衛隊にも影響する制限が含まれていることが判明した。
米空軍のKC-46Aを運用している米輸送軍司令部によれば実戦を伴う作戦へのKC-46A参加を制限しているため、同機は中東地域はもちろん欧州やインド太平洋地域での任務に就くことが出来ない。そのため同機は本土での演習に参加する航空機への空中給油や物資輸送などの任務に割り当ててKC-10やKC-135を海外に回している状況らしい。
さらにブームが給油を受ける航空機の機体表面に損傷を与える欠陥の影響で司令部はKC-46Aによるステルス機(F-22A、F-35A、B-2)とA-10への空中給油を制限していると言っており、日本が米軍の運用基準をそのまま受け入れるならRVS2.0がテストをパスして空自のKC-46Aに搭載されているRVSと交換されるまでF-35Aへの空中給油を控える必要がある。

出典:public domain
勿論、空自にはKC-767が4機あるのでF-35Aへの空中給油が出来ない訳ではないが、6機(予算計上:2017年1機、2018年1機、2020年4機)も発注しているKC-46AがF-35Aへの空中給油が当面できないと考えると運用上面倒くさい事になるだろう。
補足:仮に予算計上の翌年発注だった場合KC-46Aは発注から引き渡しまで3年程度という計算になる。そして発注から約1年後に製造が開始されているので2020年予算計上分は2021年に発注された場合、2022年~2023年の間に生産ラインに乗る可能性が高い=つまり2020年予算計上分のKC-46AにはF-35Aに対応していないリモートビジョンシステムRVS1.0が搭載されて引き渡されるという意味で、そうなると空自が発注した6機のKC-46AはRVS2.0への換装を終えるまでF-35Aへの空中給油を行えないことになる。
仮にスケジュール通りRVS2.0が完成して2024年までにテストが完了しても換装用のRVS2.0が空自に届けられるまでには時間がかかるため、2025年以降にならないと空自のKC-46AはF-35Aへの空中給油が行えない可能性もある。
まぁKC-46Aの問題はボーイングの責任なので防衛省や航空自衛隊の責任ではないが、空中給油機の機種選定でKC-46Aと共に候補に上がりかけたエアバス製「A330 MRTT」はフライングブーム方式によるF-35Aへの空中給油に対応済み(2015年9月の時点で対応している)なので政権批判に活用されそうな匂いがプンプンすると感じるのは管理人だけだろうか?
関連記事:日本への影響は? 米空軍、空中給油機KC-46Aのフルレート生産を延期
関連記事:米空軍へのKC-46A引渡しが再び停止、同機の欠陥問題は契約に原因が?
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Photo by Tech. Sgt. John Wilkes
野党は空中給油機そのものに批判的なんだから、代わりにエアバス持ち出すのは論理破綻です
F-4の時みたいにまた給油口のフタ塞げって言うのかな?
論理破綻なんて気にしてたら特定野党議員は務まらないんでは?
まぁ、何も知らない人は政府が悪いって思うかもね。
空自に配備予定の空中給油機は欠陥だらけ?
とでも見出しをつければ、左派系の人は飛びついて騒ぎそう
F-35はアレが使えないとかコレが使えないとか常にこういう問題がつきまとうな
そこはF-35のせいではないでしょう。
野党の揚げ足取りはまさにそういうところです。
昔の局地戦闘機雷電みたいに試作機が量産機になっている感有りますよね、開発費用圧縮の為の先行量産ですので??
フライングブームが使えないのなら、全機をプローブ・アンド・ドローグのF-35Bにすればいいのよ
賢いな
国際航空宇宙展に置いてあったKC-46Aのシミュレーターで記者が給油用フライングブームの操作に挑戦したら失敗して機体表面をガリガリこすってしまったという記事を見かけたことがあるな
職人技を要求されるような部分だから自動化やアシスト機能で負担を減らすようにしてほしいね
こと空中給油とかの自動化に関しては旧来の軍需企業だけじゃなくGoogleのウェイモとか民生品の研究しているところに頼ってみたらいいと思う
それほど兵器の性能に直結する分野でもないから機密はゆるくて済むし、兵器開発に従来の企業にはない視点を得られる
映像の歪みもコンピュータ側で補正できないのかね?民間では魚眼レンズの映像を補正する機能がついたドローンとか売ってた気がするが
まあメーカーがボーイングだからねぇ・・・
マジかよと言うより、またかとか、ですよねって言葉が出てくる
予定通り改善出来たら御の字、遅れるか別の問題が出る可能性も想定しておいた方がいいかもね。
ボーイングはもうダメかもわからんね。
空自はF-3実戦配備に備えてC-2をタンカーに改造する計画を立ってるべき、せっかくの自前の輸送機なんだから。
C-2タンカーいいですね。
その方が手っ取り早いかもね。
日本にフライングブーム方式のブームを設計出来るんだろうか?
そこだけエアバスから買うか
後ろのカーゴ扉が使えなくなるから、非効率的だよ
KC-46Aにカーゴ扉は無い
C-2の給油型云々に対しての返答でしょ>カーゴ扉が使えなくなるから
機体後部のランプドアがないだけで機体左舷上部デッキと右舷株デッキにカーゴドアあるやろKC46。
給油タンク内の燃料を自分で使えば航続距離はB52超える2万キロ程度になる、翼に精密誘導爆弾をいくつもぶら下げて行けばミニ戦略爆撃機にもなる、使い道はないが。
もはやボーイングの救済は不可能だ。完全に清算するしかない。
空中給油機として駄目でもまだ人員輸送機として使えなくはないから
大体、RVS2が出来たとしてそれを取り付ける改修費用はだれが持つというのだね?
設計ミスに起因する瑕疵なんだからメーカー負担に決まってる。国や軍に起因するミスがあればべつだけどさ
FMSの契約内容次第なんだから一般論で決めつけてると後で騙されたと騒ぐ事になりかねない。
特に開発中の機体を発注してるんだから米国側もこう言った事態で責任を負わないで済むよう計算してると思うよ。
それは契約の穴というべき事で、普通はどう考えるかとは別の事。ボーイングから見ればなんとか契約の粗を探して費用負担を避けたいわけだしね。
「思うよ」だけならなんとでも言える。「瑕疵のある製品を納入され運用に制限が出た事への損害賠償だって請求できると思うよ」とも言えるな。
日本人同士だと契約に記載されていない問題は常識に照らして判断することが多いけど、欧米では契約条件が全てだから「契約の穴だ」なんて言い訳は通用しない。
契約条件を詰める段階でこういった状況を想定した保障や遅延金を設定してなければ、どんなに相手に瑕疵があっても「契約に書かれていない」で終了さ。
あと「思うよ」と言ったのはFMSの契約内容がどうなっているのか見たこともないから断言できないんだよ。
契約内容も考慮せず「メーカー負担に決まってる」と思い込むよりマシだと思うけど
残念ながら「契約に書かれてない」じゃないんだよ。「書かれていないことは主張できる」のさ、契約実務の初歩の初歩だよ。契約なんてお互いの主張の制限事項にすぎない。あとは交渉力なり立場の違いでごり押しするなりやり方はいくらでもあるもの。
つまらないことを言えば善管注意義務を持ち出したっていい。日本に納入する前に瑕疵に気がついてましたよね、欠陥品は受け取れませんとしたっていいわけだ。(納入時に改善保証がないならするべき)
FMSの契約書を見たことないのはお互いもっともだし、思い込みは危険なことには同意する。ただ契約書なんて道具にすぎない。それを使って何をするかで不磨の大典じゃないんだよ。中身を知らないなら自分の利益にどう繋げるかをかんがえるべき。
書かれていないことは主張できるというのは当然だけど、書かれていないことを主張されても受け入れる必要はないでしょ?
だからこんな言い合いは水掛け論だよ。
>つまらないことを言えば善管注意義務を持ち出したっていい。
あなたがこれを言い出せばそれこそ自身が指摘した「契約の穴」でしょ?
何度も言うけど私はFMSの契約条項なんて見たこともないので「メーカー負担に決まってる」と思い込むのは危険だよと言いたいだけで、あなたを否定する意図はない。
だからこの辺りで勘弁してほしい。
ボーイングって戦闘機や兵器システムを自前で一から作った事があるのかね、
吸収した会社の過去の遺産で食いつないでいて、技術の継承も無いイメージ。
スパホなんかも設計(魔改造)まではMDでボーイングが弄ったらあのザマだよ。
遂に米軍のグダグタが日本にも飛び火か
勘弁してくれ
ついにというかもうとっくに改修部品調達不能と改修費暴騰でF-15JSI計画破綻という被害が発生してるんですが
しかもこれも諸悪の根源は米軍(F-15EXの割り込み)とボーイングという…
KC-46Aを設計する際、フライングブームも新規に設計したという事?
KC-767のをそのまま使えなかったの?
KC-767は日本とイタリアしか採用してないし、F-35の導入前だったから米軍は問題を把握してない可能性も
自衛隊やイタリア空軍がKC-767でF-35に正常に給油できてるのならKC-46固有の問題なんだろうけど
B787あたりからのボーイングの打率ヤバいな…
アメリカがちゃんと使える兵器を西側の仲間に売ってあげれば起こらなかった問題が最近多いな
昔は使える兵器を盟主として仲間たちに供給してくれたのになあ
アメリカ空軍がボーイングにゴミと工具入れっぱなしでキレて注意したのに、すぐ同じことして納入拒否してるからね
日本向けとか更にやっつけ仕事でヤバそう
給油機に関しては、A330 MRTTの方がマシぽいのが・・・。
この前、部品をまき散らしたボーイング777のエンジンと同系のPW4000系を使用してなかったけ?
777のpw4000と747、767のpw4000はコアは一部共通だけど、最近よく破断しているファンは完全に別物やで。
ボーイングはこれから本気出すから…(震え声
俺達のボーイングはこれからだ!
次回作での御活躍を期待しております。
って次回は?B社のライフ、かなり減ってない?
2022年2月にF-35Aの給油試験パス、F-35B/Cは2022年6月に試験をパスしましたが、RVS 1.0でクリアしたんでしょうか。
2.0になれば再試験のはず(やらないと議会が納得しない)ですから、まだしんどい状況は続きそうです。
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