日本メディアは最近、米国のHBTSSを活用したミサイル防衛の在り方について日米が協議していると報じており、極超音速兵器に対応した次世代のミサイル防衛でも再び日米が手を組む可能性が高まった。

参考：宇宙監視網活用のミサイル防衛、日本と協議…米国防総省

米国のHBTSSを活用したミサイル防衛の在り方について日米が協議

日本政府は今年6月、現状のセンサーシステムでは探知が困難な極超音速兵器に対抗するため「宇宙ベースのセンサー網構築を米国との連携を踏まえながら検討する」と盛り込んだ宇宙基本計画改定案を閣議決定したが、最近米ミサイル防衛局と「極超音速及び弾道追跡スペースセンサー（Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor：HBTSS）」を活用したミサイル防衛について協議中だと日本メディアが報じている。

このHBTSSと呼ばれる宇宙ベースのセンサーは、米軍がこれまで運用してきた弾道ミサイル発射を検知する早期警戒衛星（DSP衛星）とは全くの別物だ。

出典：public domain　DSP衛星

静止軌道上（高度3万6,000km前後）に配備されている早期警戒衛星の赤外線センサーでは、弾道ミサイルよりも数十倍感知しにくいと言われる極超音速兵器を探知して追跡することが難しいため、HBTSSは高度2,000km以下の低軌道上に赤外線センサーを搭載した衛星を配備して極超音速兵器を探知し迎撃に必要なデーターを収集することを目的している。

ただ低軌道上に衛星を配備すると1基でカバーできる範囲が狭くなり、静止軌道上に配備した衛星よりも大気圏に近いため寿命が短いという欠点がある。さらに軍事用途の衛星なので高度の低い低軌道上の衛星は敵の衛星攻撃兵器（ASAT）に狙われやすい。

出典：Ministry of Defence / GODL-India　インドの衛星攻撃兵器（ASAT）

この問題を解決するため米国はHBTSSに使用する衛星の小型化（数百キロ）と低コスト化（1基約1,000万ドル前後：約10億円）を進めており、低軌道上に赤外線センサーを搭載した小型衛星を数百基レベルで配備して宇宙ベースのセンサーを張り巡らせること予定している。

日本も米国のHBTSSと同じ小型衛星による宇宙ベースのセンサー構築に着手して研究を進めることになっているのだが、問題は日本単独のセンサー網を構築して独自に運用していくのか、米軍との一体運用の観点から日本の構築したセンサー網とHBTSSを統合して運用するのかだ。

今回、読売新聞の報じた内容ではHBTSSを活用したミサイル防衛の在り方について米ミサイル防衛局と日本政府が協議しているという内容なので、日本単独のセンサー網ではなくHBTSSを主体とした極超音速兵器の迎撃を考えている可能性が高く、極超音速兵器に対応した新型迎撃ミサイル開発も日米共同で行うことを考えているのかもしれない。

出典：public domain　イージス巡洋艦「レイク・エリー」から発射されるRIM-161スタンダード・ミサイル（SM-3）

もしそうなれば弾道弾迎撃ミサイル「SM-3」開発で手を組んだ日米が、極超音速兵器に対応した次世代のミサイル防衛網構築で再び手を組むことになると言う意味だ。

ただ極超音速兵器の探知や追跡を可能にするHBTSSとは異なり、極超音速兵器に対応した迎撃ミサイルの開発は米国でも始まったばかりで本当に実用化できるのか確証がなく、当面は極超音速兵器による攻撃を専守防衛的な姿勢で防ぐことは不可能なので現在検討が進められている敵基地攻撃能力の整備も同時に進めておく必要がある。

※アイキャッチ画像の出典：public domain　米国が研究していた極超音速試験飛翔体 Falcon HTV2

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