中東アフリカ関連

斬新な運用形態、グレネードランチャーから射出するUAVをイスラエルが発表

イスラエルの防衛産業企業「SpearUAV」は最近、戦場の状況認識力に革命を起こす可能性を秘めた小型無人航空機「Ninox」シリーズを公開した。

参考:SpearUAV

戦場の状況認識力に革命を起こす可能性を秘めた小型無人航空機「Ninox」シリーズ

イスラエルの防衛産業企業「SpearUAV」が開発した小型無人航空機「Ninox」シリーズは折りたたみ式のクアッドローター機(回転翼を4つ備えたドローンの総称)で、主に戦場での状況認識力を向上ために使用することを前提に設計されているが、この手の小型無人航空機は開発が盛んなので競合機種は腐るほどある。

出典:Public domain RQ-11 レイヴン

例えば米軍だけで5,000機以上採用された実績をもつ「RQ-11 レイヴン」や、米国、英国、ドイツ、オーストラリア、ノルウェー、オランダ、インドなどが採用した超小型無人航空機「PD-100 Black Hornet」など挙げれば切りがない。

出典:Corporal Daniel Wiepen / OGL v1.0 PD-100 Black Hornet

では、SpearUAVが開発した小型無人航空機「Ninox」シリーズが何故、戦場の状況認識力に革命を起こす可能性を秘めているのか?

それはNinoxシリーズの運用方法が「射出式」であるという点に尽きる。

このNinoxシリーズには大きさの異なる3つタイプが存在し、一番小さな「Ninox40(重量250g/連続飛行時間40分)」は金属製のカプセルに収納されているため、標準的な40mm口径のグレネードランチャーに装填して射出することが出来るので必要あれば数秒でNinox40の使用が可能になる。

要するにUAVを操作する専門のオペレーターでなくても、一般の兵士が必要に応じてUAVを直ぐに使用できるという点が優れているため戦場の状況認識力に「革命」を起こす可能性があるのだ。

さらにNinox40よりも大型の「Ninox66(重量700g/連続飛行時間50分)」や「Ninox103(重量1.5kg/連続飛行時間60分)」は戦車や装甲車といった車両は勿論、航空機や艦艇等の移動プラットフォームから停止することなくボタン一つで射出することが可能で、厳しい自然条件や戦場環境での使用に耐えられるだけの耐久性や飛行性能を備えており、より高度で戦術的な用途で運用することができる。

勿論、カプセルから取り出して折りたたまれた回転翼を手動で展開させ一般的なUAVのように発進させることも可能だが、やはりNinoxシリーズの魅力は停止して準備することなく直ぐに射出できる点なので、普及すればUAVの運用方法に革命を起こすかもしれない。

出典:SpearUAVが公開したYouTube動画のスクリーンショット 40mm口径のグレネードランチャーからNinox40を発射するシーン

ただNinoxシリーズの問題点は、利用形態から察するに使い捨ての可能性が高いので普及するかどうかは調達コストに掛かっていと言える。

因みに「RQ-11レイヴン」の調達コストは3万5,000ドル(約370万円)だが、RQ-11レイヴンを運用するために必要な制御システム(操縦装置のこと)の調達コストは25万ドル(約2,700万円)で、超小型無人航空機「PD-100 Black Hornet」の調達コストは約2万ドル(約210万円)で後継機のBlack Hornet2は4万ドル(約420万円)もすると言われており、これ以上の価格帯であればNinox40が普及するのは難しいだろう。

しかし非常に革新的で面白い存在なので、日本も陸上自衛隊やSATあたりが研究用にNinox40を購入してみてはどうだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:SpearUAVが公開したYouTube動画のスクリーンショット

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    ここ迄ドローンが小型化してしまうと「レーザー砲で無力化出来るからドローンは恐くない」なんて言えなくなるなあ
    余りに小さいからそもそも発見されない可能性があるし、レーザー砲で迎撃するのは明らかに割が合わない
    もしもこれで価格が安いなら、数に任せて戦場監視をやるって手もあるので、ドローン迎撃はますます難しくなるだろう
    勿論、機能や価格次第ではあるけどね

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      小さなドローンはマイクロ波で回路ごと焼けそうな気がしますけどね
      まあ人まで焼けそうですけど

        • 匿名
        • 2020年 8月 04日

        マイクロ波で機能停止させようとしても数で来られたら対処は難しいでしょう
        この季節、殺虫剤や蚊取り線香があっても蚊に刺されるのは避けられないのと同じ感じですね

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      レーザー砲は駆逐艦から撃っても1発1ドルなんだから割に合うでしょ
      いまや対迫撃対狙撃レーダーがあるんだから、イスラエルのアイアンドームで無力化出来なければ大問題では?
      まあ、攻撃側ではレーダーを使えないかもだけど

      1
        • 匿名
        • 2020年 8月 05日

        レーザー砲に見合うFCSと発電機をのせた車両を何百台も用意するの? しかもそれ以外の使い道は極めて限られるもの。
        割りに合うわけないだろ

          • 匿名
          • 2020年 8月 05日

          それは見解の違いだな。ドローンを一方的に排除できるなら揃える価値はある。アイアンドームだって対象が違うだけで同じ概念だろ

          1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    こんな小っちゃいドローン、国内に潜入した敵コマンドが爆弾付けて重要施設や装備を襲撃したら、為す術なさそう…

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      素直にグレネード弾詰めて撃った方が破壊力有ると思うよ
      重要施設だって、可能ならば常時ジャミンクするとかやりようは有るし、こんな小型無人機がジャミングに耐えられる筈もなし

        • 匿名
        • 2020年 8月 04日

        このドローンを特殊部隊が襲撃任務で使う場合、爆弾代わりに使うのではなく重要施設の攻撃時に相手の警戒態勢を調べたり攻撃後の離脱時の脱出ルートの確保等に使うのが有効だろう
        あと重要施設に常時ジャミング出来る機能があるのなら、特殊部隊やドローンでは無く巡航ミサイルかGPS誘導爆弾でもブチ込めば良い
        場合によっては、相手のジャミング電波を逆探知して誘導する機能を持った誘導兵器も有効だろう

          • 匿名
          • 2020年 8月 04日

          まるでMGSの世界だなぁ…
          小型ドローンは情報収集や電子妨害が主になりますよね

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      一方ソ連は施設を金網で覆った

      1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    陸自のバイク部隊が運用すれば効果的ではないかな

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    広範なISTAR機能を持つというのが具体的にどういうことなのかよくわからんけど
    カメラのみの廉価版出したらグレランから発射する小型軽量のninox40とか一般人にも売れそう

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    現在、実用化されてる「手投げ」の方が実用性がありげ
    グレネード・ランチャーで発射・・・Gをどうするの? って思うね

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    やっぱイスラエルとは仲良くしとくに限る
    切実が故か兵器開発レベル・速度がおかしい上に実戦に裏打ちされててしかも大体コスパがいい

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      既に中国がイスラエルと手を取り合ってるわけですが
      (このブログ的にはラビとJ10、だろうか)

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    STエンジニアリングのSPARCS Camera Grenadeの進化版みたいなもんだな

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    bloodshotかな?

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    わざわざ射出する利点が分からないです・・・。

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      バッテリー的には良さそうですけどね。後、展開速度。

        • 匿名
        • 2020年 8月 05日

        PRビデオ見ると射出後すぐ展開飛行してるようですし、
        まぁちょっと先まで飛ばしてもせいせい100m前後といったところでしょうし、
        バッテリーの持ちに関係ありますかね?

      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      管理人さんも書いているが、まず専門のUAVオペレーターでなくても飛ばせる事、そして「UAVを飛ばしたいが、そこまで割と距離がある、又は途中に敵がいて手投げでは難しい」場合には有効だと思う
      あと40㎜グレネードランチャーで多数のUAVを広範囲に飛ばすとか、色々と使い方は有りそう

        • 匿名
        • 2020年 8月 05日

        射出式でも専門のオペレータはいるでしょうし、これに専門のオペレータが要らないなら
        手投げ式のにも専門オペレータは不要なのでは?
        途中に敵がいても手投げで(というか普通に飛んで行けば)十分だと思うんですけど・・・
        敵を突破するための射出式なんでしょうか? そうは思えないです。

        普通に手投げ式で十分なように思います。というか40mmランチャー使うだけ余計な手間では。

        1
      • 匿名
      • 2020年 8月 04日

      40分しか飛べないですからね。戦場で使用するとなるとこういう解答になるのでしょう。

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    自爆機能持ったこの手のモノが
    例えば艤装中の軍艦の「火気厳禁」な所まで忍び寄ったらどうなるんでしょうなぁ
    最近のは自律機能も付いててジャミングも効きにくいとか
    、、ってここまで書いて 何年か前の繰り返し起きた三菱造船?の豪華客船建造連続出火事故を思い起こした、、
    あれってもしかして、、

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    正規戦よりも特殊作戦、テロルで威力を発揮しそう

    • 匿名
    • 2020年 8月 04日

    防御用にダミーを展開するとか可能性は無限にある
    最近のミサイル防衛と一緒で、防御する側に多大な負担がかかるパターン

    • 匿名
    • 2020年 8月 05日

    仮面ライダーV3が持ってたな

      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      PD-100みたいなのが電人ザボーガーに装備されてた。

    • 匿名
    • 2020年 8月 05日

    初昔にドキュメンタリーで出てたが期はアメリカ軍が開発してたパラシュート型のドローンカメラをグレネードがら射出の滞空から進化して飛行を付与した二世代目じゃなかろうか。

    やっぱりディスカバリーとかのアメリカ軍系ドキュメンタリーにお金出してチェックしておかないと、どこぞの軍事評論家みたいな評価になってしまう可能性が……。

    • 匿名
    • 2020年 10月 09日

    大量にばら撒いても制御にPCを利用すれば制御出来るが(中国で実際に行っていた)、軍事的な用途は無いだろう。形状的に歩兵が使用するのに適しているので、市街戦や密林等で利用価値はあるだろう。形状的には魅力的なので、戦車砲の120mmに拡大すれば、速度、航続距離、センサー性能等向上するので活用できるのではないか。

    • 匿名
    • 2021年 3月 10日

    何人か書かれてますが、同じく、わざわざランチャーを使うメリットがよくわからない。
    手投げで行けるほうが、ずっと汎用性が高いような。

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