中東アフリカ関連

エジプトはロシアへの武器売却を断念、逆にウクライナへの砲弾供給を承認

エジプトは122mmロケット弾を秘密裏にロシアへ供給する計画を進めていたがバイデン政権の圧力を受けて計画を中止、逆に米国へ155mm砲弾と152mm砲弾を売却し、この砲弾のウクライナに移転することを承認したらしい。

参考:Egypt nearly supplied rockets to Russia, agreed to arm Ukraine instead, leak shows 

エジプトがロシアの存在をチラつかせて米国を動かそうとするのはよくあること

ワシントン・ポスト紙は「エジプトは最大4万発の122mmロケット弾を秘密裏にロシアへ供給する計画を進めていたがバイデン政権の圧力を受けて計画を中止、逆に米国へ155mm砲弾と152mm砲弾を売却し、この砲弾のウクライナに移転することを承認した」と報じている。

出典:Vitaly V. Kuzmi/CC BY SA 4.0

ロシアはウクライナで消耗する弾薬の補充に迫られており、旧ソ連製のBM-21で使用できるエジプト製122mmロケット弾「SAKR-45」の購入を打診、今年1月にエジプト側は「真鍮の価格が上昇する可能性があるためSAKR-45の売却価格を1,100ドルから1,500ドルに変更する可能性がある」と通知したが、ロシア側は「価格が幾らでも購入する用意がある」と回答。

さらに流出した米国の機密文書は「シシ大統領がロシアにロケット弾の命中精度や品質を向上させる特殊な機器を要求するよう指示」「この取引が露見すると西側諸国との間で問題になるためシシ大統領が計画を秘密にするよう部下に命じた」「ロシア側が要求したSAKR-45の購入数は1.5万発だったが、シシ大統領は部下に最大4万発分の原材料を確保するようを命じた」と指摘しているが、2月下旬から3月上旬にかけてバイデン政権の高官がカイロを訪問、この計画の存在をシシ大統領に問いただしたらしい。

出典:Lockheed Martin

これを受けてシシ大統領は予定されていたロシアとの契約締結を「状況がはっきりするまで延期する」と通告したが、オースティン国防長官がカイロを訪問した翌日付けの機密文書には「エジプトは米国へ155mm砲弾と152mm砲弾を売却し、この砲弾のウクライナ移転を承認した」と記載されており、別の機密文書は「米国が要求した弾薬供給を利用してエジプトはF-35Aやパトリオットシステムを手に入れたいと考えている」と指摘している。

オバマ政権時代に中東地域の安全保障問題を担当していた関係者は「エジプトがロシアの存在をチラつかせて米国を動かそうとするのはよくあることだ」と、ある欧米の外交官は「ロシアへの武器供給に関する米国の反応をエジプトは過小評価し、双方からの利益を最大化しようと試みた」とワシントン・ポスト紙に明かしており、流出した米国の機密文書によって「大国間の競争の中でエジプトが新たな優位性の獲得に動いていた事実」が浮き彫りになった。

出典:The White House/Public Domain

因みに別の機密文書(シシ大統領が3月8日に発言した内容のまとめ)は「米国はエジプトに新しいものを何も与えず、エジプトから何も必要とせず、両国関係を確認することにしか興味がない。米国はイスラエルとの関係が上手く行き、湾岸諸国にも特に問題がなく、ロシア軍のウクライナ侵攻で欧州は米国を支持しており、結果的にエジプトの役割が低下している」と指摘しているのが非常に興味深い。

関連記事:ポーランド首相、米国の介入があれば韓国はウクライナへの武器供給に応じる
関連記事:韓国政府がKRABのウクライナ輸出承認、初めて対ロシア戦への武器供給を認める
関連記事:韓国メディア、ポーランドへ155mm砲弾33万発を輸出するのは事実
関連記事:NATOが韓国の砲弾増産を歓迎、我々はウクライナ支援を継続できる
関連記事:韓国は戦争を傍観する存在ではない、155mm砲弾50万発の米国輸出に応じる
関連記事:韓国のハン首相、ウクライナに対する殺傷兵器の支援はまだ決めていない
関連記事:韓国、ウクライナ支援として155mm砲弾33万発をポーランドに輸出か
関連記事:ポーランド首相、欧州は不足する155mm砲弾を韓国から購入すべきだ

 

※アイキャッチ画像の出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 2nd Class Alexander Kubitza

期待されていないフリーダム級、最終艦の進水式が別の意味で関心を集める前のページ

スーダン内戦7日目、正規軍側がハルツーム州に数千人規模の増援を投入次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    イラクがバイラクタルTB2調達契約を締結、同機の総生産数は343機以上に拡大

    イラクのアル・ジュブリ国防相は今年8月に「TB2購入についてトルコと合…

  2. 中東アフリカ関連

    飛ぶように売れるトルコ製UCAV、輸出制限に不満が募るイスラエル企業

    イスラエル防衛産業界は政府がUCAVの海外輸出を制限しているため「飛ぶ…

  3. 中東アフリカ関連

    イスラエル、政権が交代しても防空システムのウクライナ提供は不可能

    イスラエルで実施された総選挙で右派陣営が勝利、ネタニヤフ氏が首相に返り…

  4. 中東アフリカ関連

    イスラエルのガラント国防相、ガザ地区への侵攻命令がまもなく下される

    イスラエルのガラント国防相は19日、最前線の部隊を訪問して「今はガザを…

  5. 中東アフリカ関連

    トルコへの圧力か? ロシア、リビアに戦闘機MiG-29や戦闘爆撃機Su-24を配備

    米軍アフリカ軍(AFRICOM)司令部は26日、ロシアがリビアに戦闘機…

  6. 中東アフリカ関連

    国連機関と援助団体が停戦を要請、双方の攻撃を「恐ろしいもの」「非道」と非難

    18の国連機関と主要な援助団体の代表は「もう十分だ。戦いを今すぐ止めな…

コメント

    • 帰りたい
    • 2023年 4月 21日

    ロシアを当て馬により高い利益を得たわけだが、後に繋がる優位性(米国製の新装備、ロシア製の工作機械)は得られなかったと
    エジプトの立ち回りは短期的には上手いが、長期的にみるとどちらの勢力からも信用されないだろうし難しいな

    45
      • k.ziro
      • 2023年 4月 21日

      エジプト側にしてみればどちらも信用できないというところなのでは
      また運河狙ってくる輩が現れかねないと戦々恐々でしょう、まあもう少ししっかり運用して頂きたいところではありますが

      18
        • hiroさん
        • 2023年 4月 22日

        スエズ運河を狙っているのはイスラエルですか?
        運用上の問題点って環境問題のこと?
        2021年の封鎖事故なら日本の船舶会社の保有船の操舵ミスですよね?

        1
      • 月虹
      • 2023年 4月 21日

      米国製の新装備が得られかったということはエジプトは韓国からの兵器調達を更に重要視しそうな気がします。既に自走砲K9についてはライセンス生産および第三国への輸出の許可について韓国と合意し、T-55やT-62の代替として導入しているT-90もウクライナ紛争で事実上、ロシアからの引き渡しが不可となると協議中とされるK2のライセンス生産も現実的になるかも知れません。

      11
    • 58式素人
    • 2023年 4月 21日

    表現悪いけれども。インドはどうなのでしょうか、と思います。
    もっと、堂々と何か(?)していそうな気もします(笑)。
    できれば、120mm戦車砲弾(施条砲:チャレンジャー用)を
    供給してくれると良いなと思ったりします。
    隣国パキスタンは、先日、たしか155mm砲弾を提供してくれていますしね。
    あとは、南アフリカでしょうか。

    5
      • 58式素人
      • 2023年 4月 21日

      書き忘れたけれども。
      エジプトは、122mmロケット弾を
      ロシアに渡すのかな。
      記事ではわからないけれども。

        • hiroさん
        • 2023年 4月 21日

        タイトルに「エジプトはロシアへの武器売却を断念」と書いているし、直下の本文にも「計画を中止」とある。
        分かりますよね?

        5
          • 58式素人
          • 2023年 4月 21日

          そうですね。指摘をありがとうございます。
          そうすると、1月時点で価格変更の申し入れをしたのなら、
          ロシアの発注時期と契約の進行状況にもよるのだけれど、
          1.5万発は全て未納で終わったのかな。そうなら良いなと思うけれど。
          米国の追及が3月頭ならば、時間差があるように見えるので。
          あと、全部で4万発分の材料は何処へ行くのだろう。
          米国はそこは追及していないのかな。

            • hiroさん
            • 2023年 4月 21日

            記事をよく読んだら、としか言い様が無いですね。

            2
              • 戦略眼
              • 2023年 4月 22日

              エジプト政府は関与しないということでしょう。

    • 774rr
    • 2023年 4月 21日

    > ロケット弾の命中精度や品質を向上させる特殊な機器
    コレは何?
    GPS誘導機器って事?

    1
      • ななし
      • 2023年 4月 21日

      おそらくロケット製造用工作用機械とかじゃないでしょうか?
      ロシアのロケットを製造してるのと同じ機械を使えば品質も近くなると思いますし

      4
    • paxai
    • 2023年 4月 21日

    やっぱアメリカって向こうじゃ支持されてないんだなって。
    今回のように盗聴して事前に恫喝して回らないとロシアに武器流れ込むって事でしょ。

    13
      • K(大文字)
      • 2023年 4月 21日

      まぁ、所謂グローバルサウス諸国の本音としては、アメリカもロシアも特にどっちかを支持と言うことはないんでしょう。
      ロシアの言うルースキーミールだの多極世界だのには興味ないだろうし、アメリカはじめとする先進各国が掲げる民主主義だの法の支配だのにも、たぶん興味ない。
      今回の件は単にロシアが「言い値で買う」と持ちかけて来たから売らんかなで乗っかっただけだし、その程度の理由だから、アメリカから恫喝半分、札びらハタキ半分の「お話し」をされた途端に手のひら返してアメリカに売却した訳で。

      とは言え、国連総会の投票ではウクライナ侵略への非難も、4州併合に対する非難も、140か国超の賛成をもって決議されていますけどね。

      23
        • paxai
        • 2023年 4月 21日

        武器の相場は分からないが無誘導とは言え射程45キロのロケット弾が1500ドルってのは良心的な価格に思う。
        それに4万発×1500ドル=6000万ドルと金額的に大した事はなくアメリカに睨まれるリスクの方が大きい。
        シシ大統領はかなりロシア寄りの思想を持ってると思うなあ。

        8
          • K(大文字)
          • 2023年 4月 21日

          価格については、真鍮云々の理由は真偽不明ながら1,100ドル→1,500ドルに吊り上げていますよね。普通に吹っかけてるように思います。

          まぁ、総額として大した金額ではないというのには同感です。
          これが「ハシタ金のビジネスで金銭メリットが薄くてもロシアを助けようとする向こうっ気」なのか、あるいは「事が露見すまいと考えていた短慮」なのかは分かりませんが。

          事実としては、エジプトは先に挙げた国連決議に二回とも賛成していること、そして今回はロシアへの売却を断念した上にアメリカへの砲弾売却と、ウクライナへの移転まで了承したことです。
          やはり、エジプトの行動は何らかの信念に基づくというより機会主義のように感じますね、個人的には。

          20
            • バーナーキング
            • 2023年 4月 21日

            まあ真鍮去年辺りと比べて余裕で5割高とかにはなってるし妥当…な訳ねえw
            もちろん真鍮以外も軒並み値上がりはしてるとは言うものの「真鍮値上げの【可能性があるから】」って隠す気もない便乗値上げ。
            なのに百も承知どころか自分から「価格が幾らでも〜」と言っちゃうなんて本気で在庫苦しいんだなぁ…

            5
    • nachteule
    • 2023年 4月 21日

     ロシア側からしたら射程40km越えでHEや対人対戦車クラスター弾頭を持つSAKR-45は喉から出るほど欲しいものだろうな。
     実際にどの弾頭を要求したかは分からないけどエジプトはクラスターの有効性認める国だし、防衛目的でこれ以上大きく侵攻するつもりがないなら不発弾が多いクラスター弾の使用に躊躇いはないだろう。

    7
    • 名無しさん
    • 2023年 4月 21日

    昔アラブvsイスラエルで全面対立している最中に、掌を返してイスラエルと和平を結んだ国がエジプトですからね。
    シナイ半島奪還と言う目的があるにせよ、いつの時代も目ざとく利益のある方に転ぼうとする国と言えるのではないでしょうか。
    信用はそこまで高くないかもしれませんが、利益を与えている限りは裏切ることはないし、万が一裏切っても最悪の事態までは招かないだろうという国として認識されているかもしれませんね。

    4
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP