軍事的雑学

F-22は1時間の飛行に440万円必要?米国防総省が公表した米軍機の飛行コスト

米国防総省は2020会計年度に、米軍が保有する固定翼機と回転翼機の請求レートを更新した。

参考:Fixed Wing and Helicopter Reimbursement Rates

これは米軍の保有する航空機が1時間の飛行を行った場合のコストをまとめたもので、国防総省向けの請求レート、その他の連邦機関向けの請求レート、海外の国への請求レート、その他への請求レートの4つに分けられている。

この中の「海外の国への請求レート」とは、FMS方式によって米国製航空機を購入した国へ当該機を米空軍が空輸した時に、そのコスト(購入国に請求する費用)を算出する根拠となる数字で、「その他への請求レート」は、主に航空ショーなどに呼ばれた際に請求するコストの算出根拠となる数字だ。

以前、2019会計年度の請求レートを元に、米軍が保有する航空機が1時間飛行するのに掛かる費用をまとめたが、今回も2020会計年度の請求レートを元に情報を更新していく。

戦闘機・攻撃機部門

これは国防総省向けの請求レートを元にした戦闘機の飛行コスト(1時間)を比較した表で、今年は2019年と2020年のコストが比較できるようにした。

空軍
航空機種名 2019 2020
F-15C 21,290ドル 22,489ドル
F-15D 21,109ドル 21,745ドル
F-15E 17,071ドル 17,408ドル
F-16C 8,374ドル 9,054ドル
F-16D 8,274ドル 9,017ドル
F-22A 36,455ドル 40,385ドル
F-35A 17,701ドル 16,952ドル
A-10C 6,118ドル 6,863ドル
海軍(海兵隊を含む)
航空機種名 2019 2020
F-16A 14,171ドル 15,778ドル
F-16B 12,537ドル 15,936ドル
F/A-18A 15,766ドル 退役
F/A-18B 22,387ドル 退役
F/A-18C 18,989ドル 18,056ドル
F/A-18D 16,385ドル 18,056ドル
F/A-18E 11,828ドル 12,850ドル
F/A-18F 12,475ドル 13,654ドル
F-35B 23,891ドル 16,904ドル
F-35C 22,978ドル 13,124ドル
AV-8B 13,152ドル 13,956ドル

数字を見る限り、殆どの機種で飛行(1時間)に掛かるコストが上昇しているが、空軍のF-15C/Dは老朽化による整備コストの上昇が色濃く反映されており、コストの上昇幅が大きく、これをリフレッシュするため新たにF-15EXを導入する予定だが、2020会計年度予算が成立せず、F-15C/Dの使用期間が長引けばそれだけ整備コストが上昇し予算を圧迫することになる。

出典:Pixabay F-22 ラプター

さらにF-22の飛行コストは、約4,000ドルも上昇し4万ドルを突破している。

これはF-22の生産数が少なすぎて、部品の調達コストや整備費用が高騰している結果だ。

それに比べてF-35は、どのタイプも飛行コストの削減に成功しており、特に海兵隊向けのF-35Bは約7,000ドル、海軍向けのF-35Cは約9,000ドルも飛行コストの大幅削減を達成しているのは、数少ない明るいニュースだ。

米海軍のF-16A/Bは、米海軍戦闘機兵器学校(トップガン)に敵役機として配備されている機体で、少数しか導入していないためか飛行コストが妙に高額だが、そもそも数が少ないので大した問題ではないのかもしれない。

大型機部門

これも戦闘機と同じく2019年と2020年のコストが比較できるようにした。

爆撃機
航空機種名 2019 2020
B-52H 32,176ドル 35,788ドル
B-1B 49,144ドル 42,305ドル
B-2A 59,452ドル 60,082ドル

爆撃機は機体が大きく、エンジンも沢山搭載しているため小型の戦闘機に比べ整備コストが掛かってしまうのは致し方ないのかもしれないが、ステルス爆撃機「B-2 スピリット」だけは別格で、B-2を1時間飛行させるためのコストは60,082ドル(約655万円)、10時間飛行させれば約6,550万円もコストが掛かるらしい。

出典:Pixabay B-2 スピリット

正に、バケモノ・・・

あとはB-1とF-22の飛行コストがほぼ同額で、どれだけF-22の運用コストが高価かよく分かる。

輸送機
航空機種名 2019 2020
C-130J 6,135ドル 7,030ドル
C-17A 15,352ドル 14,701ドル
C-5M 24,407ドル 27,257ドル
C-2A 11,308ドル 10,331ドル

C-2Aは、E-2艦上早期警戒機を改造した艦上輸送機だ。

出典:Pixabay C-17 グローブマスターIII

早期警戒機、電子作戦機など
航空機種名 2019 2020
E-3G 18,306ドル 18,872ドル
E-4B 68,899ドル 69,047ドル
E-8C 52,111ドル 47,446ドル
E-2C 12,749ドル 9,497ドル
E-2D 12,610ドル 11,355ドル
E-6B 20,147ドル 23,276ドル
EA-18G 10,861ドル 11,919ドル
EP-3E 6,180ドル 6,486ドル

やはりE-4BとE-8Cの飛行コストは去年同様、突き抜けている。E-4Bは対電磁パルスを施された特別仕様の国家空中作戦センターで、大統領専用機「エアフォース・ワン」の軍用機版と言え、E-8Cは早期警戒の対地上版だ。

対潜哨戒機
航空機種名 2019 2020
P-3C 7,896ドル 8,754ドル
P-8A 8,774ドル 7,967ドル

徐々に数を減らすP-3Cの飛行コストは上昇し、数が揃い始めたP-8Aは逆に飛行コストが削減、妥当な結果。

空中給油機
航空機種名 2019 2020
KC-10A 16,078ドル 16,084ドル
KC-135T 13,463ドル 14,152ドル
KC-46A 7,224ドル 7,519ドル
KC-130J 8,277ドル 9,064ドル
KC-130T 7,183ドル 9,883ドル

偵察機・無人機部門

偵察機・無人機
航空機種名 2019 2020
MQ-1B 577ドル 359ドル
MQ-9A 557ドル 504ドル
RQ-4B 6,785ドル 4,716ドル
U-2S 11,927ドル 20,982ドル
RC-135W 31,549ドル 18,272ドル

2020会計年度の請求レートではF-35の飛行コスト削減が目立つ結果となったが、2019会計年度と比較すると全体的に飛行コストは上昇しており、特にF-22やB-2などのステルス機は、飛行コストは非常に高価で現在もコストの上昇が続けている。

運用開始から20年が経過したB-2は、開発中のB-21によって更新される予定で退役時期が見えているが、F-22も飛行コストがこのまま上昇すれば、機体寿命が尽きるよりも早く退役することになるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 12日

    F-14も末期は大変だったと聞いたがどうだったんだろ

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    ステルス機は塗装がね

    • F-15大好き
    • 2019年 11月 13日

    F-15より先にF-22がいなくなりそう。
    或いは、次世代機がF-22ベースになるかな。
    エンジン等の各部品をF-35と共用化出来れば良いが。

    • 匿名
    • 2019年 11月 13日

    単座型と複座型ではF/A18以外は複座型の方がお安いのは何ででしょう

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