北米/南米関連

カナダ、新型コロナの影響で戦闘機CF-18A/B後継機選定の延期を決定

カナダ政府は5月11日、戦闘機CF-18A/B(F/A-18A/B)後継機選定プログラムへの提案書提出期限を6月末から7月末まで1ヶ月間延長すると発表した。

参考:Royal Canadian Air Force fighter competition delayed by coronavirus until 31 July

一体いつ始まるのか?延期に次ぐ延期に見舞われるカナダの戦闘機CF-18A/B後継機選定

今回の延長は前例のない世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック対応のためだとカナダ政府は説明しているが、これまで報じられてきた情報だと6月末に設定されていた「Future Fighter Capability Project(FFCP)」の提案書提出までにF/A-18E/Fを提案する予定のボーイングが「間に合わない」と言っていたため、これを救済するための措置だと思われる。

そもそもカナダ政府は戦闘機CF-18A/B後継機選定プログラム(FFCP)に関する提案依頼書(RFP)を昨年7月に発行して提出期限を今年の3月末に設定していたのだが、このときはグリペンEを提案するサーブが「間に合わに」と言い出し3ヶ月間提出期限を延長して6月末という期限を再設定したのだが、今回の延長で再びカナダの次期戦闘機選定は遅れる事になった。

果たしてカナダの次期戦闘機の座を誰が手にすることになるのかは未知数だが、提案される可能性が高い3つの候補についておさらいをしておく。

出典:Public Domain F-35A

まずロッキード・マーティンが提案する予定の戦闘機F-35A ライトニングⅡはカナダに提案される候補の中で唯一の第5世代戦闘機で、当初問題視されていた機体価格も8,000万ドルを下回ることが確実で再びカナダがF-35A導入に傾いても不思議ではない。さらに経済的効果の面で見てもカナダはF-35プログラムに出資しているため十分に恩恵が受けられる選択肢であることに変わりがない。

あえて問題点があるとすれば1時間あたり3万5000ドル(約380万円)と言われるF-35Aの運用コストだ。

ロッキード・マーティンは2025年までに1時間あたり運用コストを2万5,000ドル(約270万円)まで引き下げると言っており、これをカナダに信用させることが出来るかどうかがF-35A勝利の鍵かもしれない。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Kaysee Lohmann F/A-18E/F

次はボーイングが提案する予定の戦闘機F/A-18E/F スーパーホーネットだが、同機はカナダ空軍が運用している戦闘機CF-18A/Bの発展型で推定5,000万ドル台の機体価格や1時間あたり1万8,000ドル(約190万円)の運用コストはカナダ政府にとって魅力的に映るだろう。

さらに提案されれる候補の中で唯一の双発機であり、過去ボーイングとやりあったことを根に持っていなければ十分選ばれる可能性はあるのだが、カナダ経済に対する恩恵部分の提案にパンチ力がない(基準は満たしている)ので、この辺りがマイナスに作用しなければ十分称賛はあるのかもしれない。

出典:public domain グリペンE

最後はサーブが提案する予定の戦闘機グリペンEだ。

同機はC型よりも高価で機体価格は推定5,000万ドル以上すると見られているが運用コストは1万ドル(約110万円)を下回るためライフルサイクルコストの面では頭一つ抜けており、さらに同機の製造は全てカナダ国内で行うと言ってるのでサーブの提案は戦闘機の能力以外ではパーフェクトに近いと言える。

あとはラファールやタイフーンが不公平過ぎると言ってFFCPから降りた米軍戦闘管理システムへのアクセス問題をどのように解決するかだ。

カナダは米国と共同でNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)を運用をしているため、当然CF-18A/Bの後継機には米軍の戦闘管理システムにアクセスする能力が求められているのだが、タイフーンやラファールはこれに対応する手間と費用を含めて審査されれば著しく米国製戦闘機の方が有利だと言って撤退しため、この問題は価格や運用コストに少なくない影響を与えるものなのだろう。

補足:もしタイフーンやラファールが米軍の戦闘管理システムにアクセスする場合、両機は技術的データを米国側に開示する必要があるためこれを嫌ったという説もある。さらに言えば、もし非米国製戦闘機をカナダが選択した場合、米国は米軍の戦闘管理システムとの統合に10年かかるといえばカナダは米国製戦闘機を選ばざるを得ない。これはドイツのトーネード戦闘機後継機問題で同様の嫌がらせ(核兵器運搬能力の認証問題)をタイフーンが受けているため、同様の圧力を受ける可能性が非常に高い。

以上のな理由でサーブはこの問題をクリアしない限り、どれだけ価格や運用コスト、カナダ経済への貢献を並べても中々採用を勝ち取るのは難しい。

個人的にはグリペンEに不利な状況を覆して勝利してほしい

果たして誰が勝者になるのか今の時点では何とも言えないが、カナダは4月末にF-35プログラムに追加出資(F-35の開発費用)として7,010万ドル(約75億円)を支払ってF-35プログラムからカナダが出ていくことはないという意思を明確にした。

これはF-35Aを採用することを見越した選択と受け取る事もできるが、実際にはカナダ企業がF-35サプライチェーンから追い出されないための必然的な支出だろう。

カナダ政府はこれまでF-35プログラムに計5億4,100万ドル(約590億円)を投資して、その見返りとしてカナダ防衛産業界は約18億ドル(約2,000億円)の契約を確保(2019年2月時点)することに成功している。そのため今回の追加出資は、この権利を失わにためのものだ。

こう見ると現代の戦闘機導入事業とは単に価格が安いや性能が良いと言うだけでなく、技術移転や自国経済への相当な再投資を要求するのが当たり前となっているのが良く分かる。ただ調達金額を引き下げるため一切の見返りを放棄するという稀なパターン(ポーランドのF-35導入契約がそれに当たる)も存在するため絶対ではない。

まぁ、どちらにせよ状況的にはF-35A有利だが管理的にはグリペンEを押したい。

その理由は世界中がF-35A一色に染まると面白くないからという理由と政治的な条件で一番不利なグリペンEが勝利したほうが痛快だからだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain CF-18A/B

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    自分もグリペンEになって欲しいですねー
    カナダにF-35Aは似合わない気がしますw

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    残念ながらグリペンEは有り得ないだろうね。
    だって、カナダは米国と共同でNORADを運用している以上、米国製戦闘機で無いと採用する意味が無いから(この点、条件は日本の航空自衛隊のF-X選定よりもハードルが高いと思う)。
    それで、スパホは発展性に限界が見えている上にボーイングは以前カナダ政府と旅客機のダンピングの件で揉めた事を考えると、可能性としてはF-35採用で元の鞘に収まるとしか思えない。

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    F/A-18ひいてはボーイング戦闘機部門の延命に一役買ってくれてもいい(他人事)

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    グリペンのコンセプトは素晴らしが日本と同様にアメリカから下賜されるエンジンで性能が縛られている。
    少ない推力を生かすにはデルタ翼機が最適でF-2の原案にもあった。
    XF9-1を採用してF35とF16の間を埋めるセミステルス機を安く供給できればサーブの将来的な発展もあるだろう、このままではジリ貧になるしかない。
    その機体が完成したら日本は機体だけノックダウン生産して、国内でXF9-1を組み込めばF-3の下を受け持つ戦闘機が格安で手に入る。
    タイフーンはBVRではSu27に勝てるがドッグファイトでは推力が小さくボロ負けした、小型軽量(と言ってもF16より大きい)なデルタ翼機に推力変更ノズルを採用すれば米ロとタメを張れる機体が出来そうに思うんだが。

      • 匿名
      • 2020年 5月 12日

      グリペンは小型で兵器搭載数が限られ、航続距離が短いので海に囲まれた日本に向いてません。
      そもそも日本がサーブに肩入れする理由が無い。
      そして、日本の安全保障環境で新型戦闘機には相手の戦闘機を数的不利の状況で優越する事が求められるので
      そのような中途半端な機体は求められていない。
      正直なところ、今更4.5世代戦闘機は日本にいらない、それよりも5世代戦闘機を増やす方がよい。

        • 匿名
        • 2020年 5月 13日

        そう馬鹿にしたもんでもないでしょ。
        F9を使うのであれば現行グリペンと比べて推力は1.5~1.7倍、増えた推力で離陸重量が引き上げられるのでCFTを装備すれば燃料と航続力の問題は解決する。
        質は確かに重要だが数も重要であり、尚且つ平時における防空任務では高度なステルス性や大量の武装などは必要なく、グリペンF改を高等練習機兼軽戦闘機とすることで対領空侵犯措置で貴重なF-3を酷使せずに済むという利点も生まれる。
        海自が質より量のFFMや哨戒艦を採用したように空自もそれに該当する安くて使い勝手の良い小型戦闘機を主力戦闘機とは別枠で導入するのは検討する価値が有ると思う。
        日本人の悪い癖で「導入するなら最高のものを」「量を圧倒できる質を」ってなりがちだけど平時の運用を考えると、割り切って性能を抑える代わりに安く大量にって考えも必要だと思うよ。

          • 匿名
          • 2020年 5月 13日

          大量の戦闘機は一体誰が操縦してくれるんですか?この少子化のご時世に

            • 匿名
            • 2020年 5月 13日

            一応自衛隊の実員は毎年増えてる
            元々の国民に占める兵士の割合が著しく小さいためかえって少子化の影響を受けなかった模様
            (まぁ定年延長とかもやってるが)

          • 匿名
          • 2020年 5月 13日

          海自のFFMこそ数より質を重視した装備だぞ。
          艦艇数に限りが有るから、各艦をネットワークで結び可能な限り能力を高い水準で揃えている。

          空自も同じ理屈だ。
          一部に1.5級品を採用することで戦闘機の定数増えるならともかく、そうでないなら全て1級品で揃えるべきだ。

          • 匿名
          • 2020年 5月 14日

          サイズが一回り大きいXF9-1をF414と推力だけ比べても説得力皆無ですよ。

      • 匿名
      • 2020年 5月 12日

      本当にただの妄想ですね・・
      真面目に言ってます?

        • 匿名
        • 2020年 5月 14日

        これはこれで楽しいかと。

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    軍事的にはF-35以外の選択肢はありえないがそのありえない選択肢を取ってしまうドイツという実例を目の当たりにしつつある(まだ決定ではない)という現実を前にしてはカナダの行方も予断を許さない
    みんなトランプがぼくに優しくしてくれないからだみたいな言い訳を並べているが現実にはとっくの昔にアメリカを中心とする西欧の協力体制は壊れていた
    それは貿易戦争時代のアメリカが日本憎しで中国を育てたことでその引力によってさらに加速した

    • 匿名
    • 2020年 5月 12日

    カナダは経済力に比べて国土が広く、戦闘機にも航続距離が優先されると以前に聞いたことがあります。だいぶ前に大型のF-101が採用された実績もあります。余程政治的な要素が絡まない限り増槽無しで5700km?の-35A一択だと思いますが・・
    F-35の航続距離については諸説ありますが、単発で機内燃料が多量のため、かなり長いことは確実だと思います。

    • 匿名
    • 2020年 5月 13日

    まだF-15Eとか米軍の持つF-15C/Dを購入してカナダでF-15JJSI相当まで改修するとかの方が面白そうだ。

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