ブラジル国防省は11日、空母「サン･パウロ」をスクラップとして正式に売りに出した。

参考：Brazilian aircraft carrier goes on sale for $ 1.275 million

ようやく売却プロセスが始まったブラジル海軍の空母サン･パウロ

ブラジル海軍は1990年代に空母「ミナス･ジェライス（元英コロッサス級軽空母）」の後継艦として仏空母「フォッシュ（24,200トン）」を購入、修理や改造を施して2001年に空母「サン･パウロ」としてブラジル海軍に編入したが、購入した時点でフォッシュの艦齢は37年に達しており幾ら改修を行ってもまともに運用するには限界があり、最も問題だったのはフォッシュに搭載されていた蒸気式カタパルト（英国製ミッチェル･ブラウンBS5型）の能力不足や老朽化からくるメンテナンス性の悪さだ。

出典：Public Domain　ブラジル海軍の空母「サン･パウロ」に搭載されたA-4スカイホーク

結局、ブラジル海軍が空母「サン･パウロ」をまともに運用できたのは2004年までの3年間に過ぎず、その後は港に留まることが多くなり何度か搭載機器のアップグレードや改修を受けたものの2012年発生した火災事故でブラジル海軍は同艦の運用を諦めることになった。

ブラジル国防省は昨年9月に空母「サン･パウロ」をスクラップとして売り出すための入札を行うと発表、年内に最終落札者を決定して売却プロセスを完了すると言っていたのが進展がみられなかったのだが、ようやく今月11日、ブラジル国防省が売却プロセスを開始した。

空母「サン･パウロ」の最低入札価格は127万ドル（約1.4億円）に設定されているのだが複数の入札者が現れれば落札金額は上昇するものと思われる。

恐らく韓国が空母サン･パウロを購入することはない

実は、この話は韓国でちょっとした注目を集めている。

昨年9月にブラジル国防省が空母「サン･パウロ」の売却を発表した際、直ぐに反応したのが韓国メディアと韓国人だ。

韓国メディアはこれを購入し韓国型軽空母（実質的には強襲揚陸艦）の設計に活かそうと主張しており、特に空母「サン･パウロ」に搭載されている蒸気式カタパルトの設計やデーターの取得目的や漢江（ソウルに流れる川）に固定配置して活用すれば土地価格が高騰しているソウルに経済的な効果を生み出すことが出来るとも言っている。

出典：青瓦台国民請願のスクリーンショット

さらに韓国メディアの主張に煽られた国民の一部が青瓦台（日本で言えば首相官邸に相当）国民請願に空母「サン･パウロ」購入を求める請願を挙げており、一時はどうなるのかと思ったが20万人の賛同者を集められず終了した。

ただ韓国が空母「サン･パウロ」を購入しても固定翼機を運用する正規空母の導入計画は公式（7万トンクラスの中型空母導入をという声はある）には存在しないため役に立つのか謎で、韓国メディアが挙げた空母「サン･パウロ」が搭載している蒸気式カタパルト（英国製ミッチェル･ブラウンBS5型）も発艦重量が20トン以上もある現代の艦載機を射出する能力はなく、ただの鉄くずとして見た場合でも空母「サン･パウロ」を購入してわざわざ韓国まで曳航してスクラップにすれば恐らく黒字になることはない。

以上の理由から空母「サン･パウロ」を韓国が購入することはまず無いと言っていい。それにも関わらず韓国企業が空母「サン･パウロ」を落札すれば噂や憶測が飛び交うかもしれない。

※アイキャッチ画像の出典：CC BY-SA 3.0　空母「サン･パウロ」