ロシアのラブロフ外相は「インドへのS-400引き渡しは米国の妨害にも関わらず計画通り進んでおり、今年中に1個連隊分のS-400システムを構成する全て機器がインド陸軍に引き渡される」と明かした。
参考:India and Russia military cooperation like with no other country
参考:S-400 missile deal has very important meaning for Indian defence capability
参考:Russia hopes for new deliveries of S-400 missile systems to India under contract’s option
安全保障を特定国ではなく複数の国に分散化させたいインドに「ロシアと手を切らないと制裁だ」と後から近づく米国のやり方に問題がある
インドはロシアは6日、モディ首相とプーチン大統領との首脳会談や外務・防衛閣僚による2+2会談を開催して両国関係の強化や4つの軍事協定を含む計28の協定を締結したと報じられており、安全保障や軍事分野に限って見ると両国間による10年間の軍事技術協力、技術移転を伴う60万丁ものアサルトライフルAK-203の現地製造、インド国内の基地にロシア海軍の艦艇が寄港して補給や補修を受けられるための協定などが締結されたと報じられており、プーチン大統領は「インドが我々の装備品を国内で製造するのではなく共同で開発した装備品を製造できるようになる」と述べている。
さらに興味深いのはロシアのラブロフ外相の発言だ。

出典:The White House
ラブロフ外相は「インドへのS-400引き渡しは米国の妨害にも関わらず計画通り進んでおり今年中に1個連隊分のS-400システムを構成する全て機器がインド陸軍に引き渡される、米国はインドの武器購入の自由を制限し自分たちの都合に従わせようと試みているが我々の友人であるインドは主権国家であり『誰から何を購入するかを自身で決めることができる』と繰り返し説明してきた」と述べてインドに対ロシア制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)発動を行うと主張している米国を牽制した。
インドが参加しているクアッドについては「米国、日本、オーストラリア、インドで構成されたクアッドは非軍事的な枠組みでインドは特にインフラ整備や輸送プロジェクトに関心を寄せているが、米英豪で構成された軍事的要素の強いAUKUSには距離を置いている。ロシアはインドに対してこの地域を支配するような計画や戦略には反対することを伝えている」と明かしており、クアッドとAUKUSは非軍事的と軍事的に区別することで米国が主導する対中戦略=インド太平洋戦略にインドが取り込まれることを牽制、クアッドの意味合いを「地域経済を協議する集まり」と定義することで「対中包囲」からの格下げを狙っているのだろう。
本ブログでも度々取り上げてきたインドのS-400導入問題だが、トルコへの制裁はS-400に電源を入れて運用を開始したタイミングで制裁が発動しているためバイデン政権に残された時間(2022年2月頃に中国と国境を接する地域でS-400の運用を開始すると現地メディアは報じている)は非常に限られており、仮に対ロシア制裁を原則通り発動すればクアッドの後退や枠組みからのインド離脱も考えられるため米国国内では「インド制裁を免除すべてきだ」という声がある。

出典:米太平洋艦隊
この問題を解消するためテッド・クルーズ上院議員は仲間の共和党議員(トッド・ヤング氏とロジャー・マーシャル氏)と共にS-400導入に伴うインド制裁を免除する法案(Circumspectly Reducing Unintended Consequences Impairing Alliances and Leadership Act of 2021/CRUCIAL Act)を提出中だが、これが成立するのかなどは今のところ分かっていない。
因みにこの法案はインドではなく「中国に対する団結力を損なう対ロシア制裁の発動を10年間免除する」という内容で、同法案の対象は「対中国を念頭に結集したクアッド構成国=制裁免除の範囲に日豪印の3ヶ国が含まれる」と説明されているため非現実的なことを言えば「日本が2032年までにチェックメイトの調達契約をロシアと締結すれば対ロシア制裁の適用外になる」という意味だが、この法案が成立してもロシア製兵器の調達を10年目以降も続けられる保証がなく中国問題さえ片付けば再び「ロシア製兵器の調達を中止して米国製兵器を買え」と言い出す可能性が残されている。
さらに付け加えれば対象外となるトルコや中東・アフリカ諸国の米国離れ=影響力低下も懸念されるため矛盾に満ちた法案が成立するのか非常に怪しいが、米メディアのPoliticoも「一体どれだけ対ロシア制裁に例外を設ければ気が済むのか」と指摘しているのが非常に興味深い。

出典:Narendra Modi
まぁ安全保障を特定国ではなく複数の国に分散化させたいインドに「ロシアと手を切らないと制裁だ」と後から近づく米国のやり方に問題があるのは誰の目にも明白で、いい加減この矛盾に気が付かないと米国のやり方にうんざりして多くの国がロシアや中国に取り込まれる可能性がある。
関連記事:S-400問題、米上院議員がクアッド構成国に対ロシア制裁を10年間免除する法案を提出
※アイキャッチ画像の出典:Narendra Modi
ロシアは先にインド対策を打ってきた。ウクライナが危ないかもしれない。
ちなみに、ウクライナ国防省によるロシア軍の侵攻予想図はこちら↓
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対パキスタンでは西側諸国の兵器はあてにできないから致し方ない
しばしば、アメリカの語る平和だの関係強化って、内容はアメリカに都合の良い制度を作れって命令に等しい
それを受け入れざるを得ない弱い国々もあるけれど、インドはもうそんな段階じゃない
プーチンはインドがアメリカ製の兵器を導入してても、そんなことを気にしないだろう
最終的にはアメリカは引かざるを得ない
落日の始まり
>それを受け入れざるを得ない弱い国々
日本とあとは何処ですか?
韓国?
対中に関しては両国どういう方針とるのかね
普通に現状維持を望むと思います。
両国とも上海協力機構 (SCO)のメンバーですし。
強大化した中国の属国化を避けるのが共通の利益でそれが印露結束の最大の目的でもあるのでは。これは別に中国との友好関係を阻害しない。
うかうかしていると、両国共に中華に喰われかねないからね。
まあそりゃそうだよね、って感じ。
やはり、インドとは組まなかった方がある意味無難でしたね。
無難?インド抜きでインド洋をどうやって抑える気なの?
上手く取り込め無かったことを顧みず「組まない方が良かった」なんて負けたやつの言い訳だろ
どうしてそういう結論を導くのか、ぜんぜんわかんないんですが?
いきなり中国と握手し始めて、西側の梯子外してきたらそう言えると思うがね。しかしだよ、
インドとロシアは冷戦時代から続く友好国よ。
本邦もイランとはナアナアでやってたりするんで味方の敵は敵とは限らんのだ
ぶっちゃけ今のアメリカはあんまり怖くない
こんな馬鹿法案出してる時点で自分たちに中露以上の技術開発力なんてありませーんって言ってるようなもの
君のスーパー読解力に脱帽
悔しけりゃS-400の同等品持ってこいよ
インドが今更アメリカに何か期待するようなことがあるとでも言うのか?
通りすがりだがまさにそれ
アメリカ製でS-400と同等の機能性能で適価なら導入してる
アメリカの外交が下手なのはなんとかならないのか。
外交・戦略をイギリスに外注したほうがうまくいくんじゃないかな。
百年後の世界に禍根を残しまくるかもしれないけど……。
いや、イギリスの場当たり的な外交もどうかと思う時が。
アメリカよりマシかもしれんが。
ロシアと組むようじゃインドは信用出来ん
クアッドもお仕舞だわな
インドにとって
ロシア→中学から付き合いのある地元の友達
アメリカ→社会人サークルに誘ってくる会社の先輩
っていう仲なんですが
ソ連時代から印露の結びつきは強かったけど。それをわかった上でこちらから誘ってる
アメリカの言いなりにはならないと言う明確な意思表示ですね。
インドの仮想敵は中国なんだからその北にいるロシアと組むのは当たり前なんだよな
インドの仮想敵は
1. パキスタン > 2. イスラム過激派 > 超えられない壁 > 3. 中国 > 超えられない壁 > その他周辺国
将来の超大国インドと中国に均等に接するロシアは上手くやっている。インドはどこかの国に依存する必要が無いので、軍事的にも調達を分散して、自国で生産できる兵器を選択している。米国に隷属し、虎の威を借る狐たる何処かの情けない国とは大違い。
それはインドだから出来る芸当だから
国土が小さく三大国に囲まれた我が国でそれやったら最悪分割されて終わるから
そもそもインドがアメリカと親密になり始めたのなんて最近の話で、
ずっとロシアとよろしくやってきたって歴史がある
その中で、アメリカが一方的にロシアと手を切れってインドに迫っても、インドとしてそれを飲めるわけなじゃんって話
アメリカも今更ロシアなんぞそれほど意識することはないだろうに馬鹿な法律作ったもんだ
対中国に集中するべき
中国はまだ軍事侵攻していませんけど、ロシアはウクライナに軍事侵攻しましたからね。
あとは、シリア内戦でアサド政権を助けるために軍事介入しましたし。
ロシアの方が手を出すスピードが速いので、ある意味中国より怖い国ですよ。
ウクライナもシリアも、ロシアの縄張りにアメリカが手を出したからこうなった訳。
オバマ政権のロシア嫌悪がひどすぎたのが問題。
「ウクライナとシリアはロシアの縄張り」が国際社会で通用するなら、「台湾は中国の縄張り」も国際社会で通用しそうですね。
国際社会って言われても、抽象的すぎてよくわからん。
>「台湾は中国の縄張り」も国際社会で通用しそうですね。
通用するかしないか、誰が決めるわけでもないよ。
中国はそう思ってるけど、アメリカはそう思ってない。
どっちが正しいなんてことはない。所詮、パワーゲームなんだから。
「勝てば官軍、負ければ賊軍」だよ。
国際社会は国連のことだと思っていただければ。
国連はロシアのクリミア併合等を認めない決議を賛成多数で採択しました。
「ウクライナとシリアはロシアの縄張り」は国際社会で通用しません。
アメリカがウクライナやシリアに関与しても別に悪くないですし、軍事介入したロシアが経済制裁されるのは仕方がないこと。
そもそも、「ウクライナもシリアもロシアの縄張り」の根拠が謎ですね。
あと、このご時世に「勝てば官軍、負ければ賊軍」は時代遅れです。
>アメリカがウクライナやシリアに関与しても別に悪くない
悪いだろ。なんでアメリカがシリアの反体制派支援して軍事介入するのは悪くなくて、ロシアが現地政府を救援するのが悪いんだよ。
国連って組織自体が勝てば官軍の体現なんだがな。何を夢見ているんだろう。
つか、台湾は中国の縄張り云々以前に中国の一部であることは大前提だから。内戦で負けた国民党軍の残党が立て籠もってるのが中国軍の能力不足と冷戦構造で維持されただけ。あそこにいるのが中華民国である以上その構造は変わらん。だから、台湾として独立するという話が出てくるのだが。
いやいや、中国の驚異が増大したことで、米軍の極東集中。
それによって、手薄になった東欧においてロシアの西進が進んだんで、ロシアと中国は切っても切れない
インドの地政学的にロシアを切ってアメリカ一辺倒になる選択肢なんてあるわけないよな
どちらも中国という大国に長い国境で接しているから結束する理由はとんでもなく大きいし、印露自体は離れているから互いにそこまで大きな脅威にはならないからね
インドからすれば、中国を抑えたいならロシアとの友好関係は牽制になるしな。ロシアと中国は各個撃破されたくないから手を組んでるだけだし。
ロシア的にはウクライナに手を出してくる欧米もウザいが、経済力で旧ソ連構成国に影響を強める中国にも嫌悪感を抱いているだろうに
>経済力で旧ソ連構成国に影響を強める中国にも嫌悪感を抱いているだろうに
ロシアは旧ソ連構成国について、「安全保障分野はロシア担当で経済分野は中国担当」と割りきっているらしい。
むしろ、旧ソ連構成国の経済状態が悪化して政情不安になるぐらいだったら、中国の経済的影響力が大きくなることを許容する姿勢。
なお、中国はロシアに凄い配慮しているみたいで、色々とロシアにお伺いを立てながら活動しているとのこと。
たまに日米印VS中VS露みたいに言う奴居るけど実際は日米VS中露&印に近い
ここ数年の中露軍の統合訓練は異常だ、機密通信までアクセス許可し合うとかさ
中と印が「&」になってる理由は?
「日米印VS中VS露」になることは殆どあり得ないんですけどね。
中国と対立してもロシアにメリットは無いですし、ロシアはアジアのパワーバランスを現状で維持したい(インド一強や中国一強を望んでいない)。
インドは経済的に中国と対立したくないし、日米を深く信用しているわけでもない。
これがアメリカが誇る自由と平等の精神ですか。勉強になります
真冬のモスクワからニューデリーに飛んだら寒暖差で体調崩しそう
連日40度になる時期でもニューデリーの地方物産店みたいなビルには、毛皮のコートが売ってて変な感じだったが、中国国境は年中寒冷な山岳地帯で、そして冬将軍の支配するロシアからもけっこう買い物客が来てたし
大国の感覚を知る機会になりました
対インドに限らず米国の同盟国対応が雑なのは議員や国民が基本的にアメリカとアメリカの敵以外には無関心だからだよなぁ。
中国を軸に考えるなら、アメリカを中心とした西側同盟がインドに求めても許される範囲は「軍事同盟国として西側の秩序の一部に組み込まれて米軍の指揮下に入る」ではなく、「中国との対立関係において西側と政治的に連帯する」ないし、「最低でも中国と組んで西側と対抗したり単独講和しない」という程度なんだろうけど…。国務省やWHの分析官は伝統的な地域秩序について理解してるんだろうけど、問題は議員よな。
世界の国々は自国の都合で行動する。
アメリカファーストは、米国と日本だけだろ。
インドはいいとして、東南アジアの国々に全て中華の資金が大量に入っているのがな
中国への借金が焦げ付く国も多いし、東南アジアとアフリカではアメリカは負けたようなもの
一帯一路、債務の罠にはまったら中国に協力するしかない
そもそもデータリンク等ロシアに依存してるインドが
本格的に西側の安全保障下に入れるわけがない