ロシア関連

ナゴルノ・カラバフ紛争はアルメニア領土外、プーチン大統領が支援を否定

ナゴルノ・カラバフ地域を巡るアルメニアとアゼルバイジャンの戦いについてプーチン大統領は「軍事作戦はアルメニア領土の外で行われている」という認識を示したため大きな注目を集めている。

参考:60 минут. Путин о карабахском конфликте: Россия призывает к прекращению огня
参考:Russian President: Military operations are not conducted on the territory of Armenia
参考:Russia does not have obligation to defend Armenia in a war outside its territories, Putin says

ゼルバイジャンがアルメニア領土に手を出さない限りロシアもCSTO加盟国も動かない

アルメニアはロシアが主導して設立した集団安全保障条約機構(Collective Security Treaty Organisation:CSTO)の加盟国(ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)で、万が一加盟国が攻撃を受けると他の加盟国は軍事援助を含むあらゆる支援を提供する義務を有しており、ナゴルノ・カラバフ地域を巡る戦いで劣勢気味のアルメニア支援にCSTOが動くのか=集団的自衛権を発動するのかに注目が集まっていたが、ロシアのプーチン大統領の口から語られた認識はアルメニアの期待を裏切る内容だった。

出典:kremlin.ru / CC BY 4.0 CSTO集団安全保障評議会

プーチン大統領はナゴルノ・カラバフ紛争に関する露国営放送「ロシア1」の取材に応じた際「アルメニアは集団安全保障条約機構の加盟国でCSTOは条約の枠組み内で一定の義務を負っているが、今回の軍事作戦がアルメニア領土内で行われていないことを残念に思う」と語り、これは事実上「アゼルバイジャン領から独立してアルツァフ共和国を名乗っている地域(ナゴルノ・カラバフ地域)は正式なアルメニア領土ではない」と言っているのも同義だ。

元々ナゴルノ・カラバフ地域はアルメニア系住民(次いで多く暮らしていたのがトルコ系アゼルバイジャン人)が多く暮らす場所で、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国のボリシェヴィキ裁定によりアルメニア領編入が決まったが、アゼルバイジャン側の猛反発にあいナゴルノ・カラバフ地域に自治権を与えることを条件にアゼルバイジャン帰属が確定した。

出典:public domain

この決定に不満のアルメニアはソ連の政局が変わる度にナゴルノ・カラバフ地域の自国領編入を求め続けたためアゼルバイジャン側が危機感を覚え、1989年にナゴルノ・カラバフ自治州を廃止してアゼルバイジャン政府による直接統治に切り替えたのだが、これを口実にナゴルノ・カラバフ自治州はアルメニアの後ろ盾を得て独立を宣言「アルツァフ共和国(もしくはナゴルノ・カラバフ共和国)」と名乗っているもののアルメニア以外の国から承認を得られていないため、国際社会からは「アルメニア支配地域」と認知されている。

要するにロシアもCSTO加盟国もアルメニア領土外での戦いのためにアルメニアを支援する義務までは負っていないという意味で、アゼルバイジャンがアルメニア領土に手を出さない限り静観すると言っているのだ。

このプーチン大統領の認識はアゼルバイジャンやトルコを勢いづかせることになるのは明白で、こうなるとトルコは間接支援ではなく正規軍を動かして直接ナゴルノ・カラバフ地域のアルメニア軍を攻撃することに出ることも予想されるため、アルメニアにとっては非常に苦しい立場に追い込まれたと言っていいだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Hargi23 / CC BY-SA 4.0 T-90

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    アルメニア本土には保障義務があると言っているともいえ、調子乗ってアゼルやトルコがアルメニア本土を食うのを抑止しているようにも見えますな。

    21
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      自分もその見方です。
      アルメニア本土を聖域化するための牽制をしているだけで、軍事援助をしないなんて本気で思っていないでしょう。
      ウクライナでもシリアでも、前言を翻しまくってたしw

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    なかなかのシミュラクラ現象だな

    10
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    トルコ、間違いなく正規軍送って来るよね。

    11
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    写真のメルカバっぽい戦車は何というやつですか?格好良いなあ

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      ロシア陸軍のT-90Aだと思うよ(アゼルバイジャンもT-90を持ってはいるが、T-90Aは持っていないかも知れない)

      9
      • ウスチノフ国防相
      • 2020年 10月 08日

      シュートラ1
      アクティブ防護システムが起動してますな。赤外線投光

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    これは…….一波乱あるでしょうね。 
    ポイントは(曲がりなりにもキ教でつながる)EUが出張って来るかですね。
    火事場には儲け話があるーイランはこの状況をどう利用するでしょうね。

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    これで今回のナゴルノ・カラバフ紛争の決着は着いたな!
    (仮に、アゼルバイジャン・トルコ連合が調子に乗ってアルメニアに侵攻したら話は別だが)
    ロシアとしてはアルメニアへ救援に行けるルートが無いので事実上の白旗、その事を隠す為に旧ソ連の決定を踏襲する形にしたって所か
    一方、米国やNATOとイスラエルにとってはこのままアゼルバイジャンが勝ってくれれば文句無いし、アルメニアがロシアに見捨てられたと感じればCSTOを脱退してこちら側へ付く可能性もあるので飯ウマーな展開

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      アルメニアの外交活動・ロビー活動が成果を挙げられなかったのは、CSTO加盟国でロシアと親密だからってのが大きいので、これを脱退するのはありえますね
      ロシアの影響が無くなれば、EUもトルコ牽制のためにアルメニアに援助を始めるでしょうし

      5
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    ロシアの詭弁には呆れるものがありますね。
    アルメニアはロシアを切れないから関係が終わることはありませんが、下手をするとアメリカに接近しかねない。
    トルコの一人勝ちかな・・。

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      詭弁もなにも当然だろ
      トルコがシリアやリビアでボコられてNATOに兵を出してと泣きつくようなもの
      ロシアも知るかとしか言いようがない

      3
        • 匿名
        • 2020年 10月 08日

        その例えも変だろ、ギリシャとトルコの揉め事にNATOを要請する無理というほうが近い

        5
        • 匿名
        • 2020年 10月 08日

        次はアルメニア本土侵攻ですからね。
        やらないという確証がない以上アルメニア本土防衛に協力するのが筋というもの。
        それはまさに今だと思うんですけどね。
        でなければ相互防衛義務の意義を本当に失ってしまう。
        ま、ロシアからするとアルメニアはさほど重要じゃないのでしょうけどね。

        日米関係もこんなものなんだろうなあ。。。
        日本も防衛費を中国並みにする必要がかもですね。

        5
          • 匿名
          • 2020年 10月 08日

          記事をちゃんと読んでくれよ、アルメニア本土侵攻にはロシアが対応するって意味だろ?
          自分の意見が先走るから読み間違うんだよ(笑)

          5
          • 匿名
          • 2020年 10月 08日

          尖閣諸島は日本領で日米安保の適用要件て耳にタコが出来るほど確認して言質とってますがね
          なんのために毎度まいど必死こいて確認してると思ってんだよ

          8
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    超大国ロシア(笑)(笑)(笑)
    足元のボヤも消せないのに何が超大国じゃ

    8
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    日本側が主張する尖閣問題とやらに日米安保が適用されるべきではない。ナゴルノ紛争を見れば明白だ

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      この特亜の方の仰っている意味が解りません。どなたか、翻訳していただけませんでしょうか?

      18
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      南沙諸島は所有権ある台湾、フィリピン、ベトナムだけで話し合って平和解決するから心配しないでね

      2
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      まーたそうやって管理人さんの負担増やしそうなことする……

      11
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      はいはい自演乙。

      5
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      そのまま日本ですけど?アメリカにとって第一の防衛線なのでそのまま日米安保条約が適応されるとアメリカ政府の公式見解が過去に出ていますよ。それでもなおそう言い張るなら仕掛けてくれば?軍事力世界1位のアメリカの力を試したいならね、日本も世界10位以内ですしね。

      3
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      中共退散の呪文↓

      天滅中共 六四天安門 光復香港 解救維吾爾 習包子 吸精瓶 小熊維尼 当代秦始皇 現代版毛沢東 紅旗下的蛋 袁世凱第二 尖阁诸岛是日本固有领土

      8
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    あとは、一説によれば100万人にまで登るとされるアルメニア系アメリカ人コミュニテーの同項が気になりますね。ユダヤ系コミュニティによるロビー活動と比較して低調ですが、それでもアメリカ大統領選前には重要な要素の一つともいえます。(流石に、オクトーバーサプライズにはなりえないでしょうが。)これまでにも、アメリカーアルメニア関係の深化やアルメニア人虐殺についてアメリカ国内で活動し、成果を上げてきたといいます。
    さらに、アルメニア系アメリカ人の重要性については、別の面からも明らかです。ミンスクグループによる介入をトルコが失敗と断じた理由に、米仏露の三国にはそれぞれ国政に影響を与えるだけのアルメニア人コミュニティが存在することを挙げています。このことからも、アルメニア人ディアスポラの影響は無視できないということが見えてきます。
    ただし、直接米兵を派兵することを厭うトランプ大統領です。アルメニアに対する支援を行うにしても、イスラエルへの圧力や武器の輸出程度にとどめるのではないでしょうか。(目立った資源・産業もありませんし)

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    アルメニアの首都・原発「方向」への攻撃ってやはり集団的自衛権発動のための自作自演だったのか?

    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    ロシアがそういう外交理論をやってきたと言えるのか、グルジア紛争なんか微妙。いま単に本格支援する余裕がないごまかし?
    プーチンの失点になると思うよ

    4
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    ロシアっぽいね。土壇場で自国に有利な決断をするのは伝統芸。

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    プーチンは最初からこの戦争には及び腰だったからまあこれは予測できていた
    ロシアはアゼルバイジャンとも友好的関係を維持したいのでそれほど厳しい態度は取れないに決まってるしな

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    アルメニアって欧米寄りだったので困った時だけロシアに頼るという考えでは、ロシアが拒否するのは当然かもしれない。

    5
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      となると、アルメニアはNATOに更に接近かな?
      ロシアが周辺国からどう思われるかも注目。
      少なくともアルメニアはもう頼らない。

      3
        • 匿名
        • 2020年 10月 08日

        アルメニアがNATOにつくと、ロシアとイラン双方からにらまれるから無理でしょ
        立場の弱い国は泣き寝入りを強いられるよ、かつてソ連に攻められたゆえに選択の余地なくナチスについて敗戦国扱いされたフィンランドみたく。

        今回の飛び地の争いも、武力紛争始まった91年以前に民族対立が発生してることを見落としてはいけません
        我々の知らない背景がまだまだ

        3
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    一応訂正依頼で

    アルメニア以外の国から承認を得られていないため、国際社会からは「アルメニア支配地域」と認知されている。

    は「アゼルバイジャン支配地域」ですよね。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      アゼルバイジャン領だけど、アルメニア系勢力が実効支配しているので、「アルメニア支配地域ですね。

      4
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    ロシアが正式にアルメニア領土ではないと正式に認めたようなものだな、これはアゼルとトルコの勝利だな
    だたアルメニア本土に手を出したら動くからね?って釘を刺したのか、これはアルメニアの自作自演があるかもしれない
    しかし何も結んでいないシリアにあれだけ正規軍を送ったのは後ろ盾がないテロリスト叩きだからできたんだろうな

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 08日

      それと地中海に面した基地を維持するためでしょうね。

      4
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    これは流石に嘘だろうな
    既に秘密裏に軍事顧問派遣や銃を中心をした兵器供与をアルメニア軍に行っている可能性がある
    この紛争勃発前からアルメニアにはロシア軍が3000人以上駐留しとるしな

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 08日

    世界からも日本からも忘れ去られた戦争

    なにせ日本は日本学術会議で忙しいですから

    2

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