英国のTimes紙やGuardian紙は16日、ロシア軍の作戦が行き詰まりを見せるのは「部隊指揮官が下す戦術レベルの意思決定にプーチンが口を出しているからだ」と報じて注目を集めている。
参考:Russian failures fuelled by Vladimir Putin’s meddling
参考:Putin involved in war ‘at level of colonel or brigadier’, say western sources
ソ連時代に数年間だけ砲兵部隊を指揮した経験をもつプーチンは自ら戦争を管理してしまいヒトラーと同じ過ちを犯した
ロシア軍はウクライナ侵攻で信じられないような失態を次々を披露して世界中を驚かせてきたが、先週強行したドネツ川の渡河作戦では1個以上の戦術大隊を稚拙な作戦のせいで失ってしまい、西側諸国の軍事関係者は戦術的センスの欠如に驚きつつも「軍上層部がセベロドネツクやリシチャンシクの制圧を急ぐあまり無謀な渡河作戦を実行したのだろう」と指摘していた。
しかし英国のTimes紙やGuardian紙は16日、関係者が提供した情報に基づき「戦術大隊の指揮官(少将もしくは大佐)が下す戦術レベルの意思決定に大統領のプーチンと参謀総長のゲラシモフが口を出している」と報じており、別の情報提供者も「800人~1,000人レベルの旅団司令官が担当する仕事をプーチンが肩代わりしている。これはAmazonの創業者ジェフ・ベゾスが戦略の決定ではなく小包の配送をしているようなものだ」と述べている。
さらに欧米の情報機関は「ロシア軍がドンバスの主要都市を奪取するのに成功しないのはプーチンの細かい戦争管理に原因がある」と主張しているが、この状況をTimes紙は3月時点で予言しており、どうやらプーチンはスターリンではなくヒトラーを見習うことにしたのだろう。
自身の思い込みと偏見を信じてヒトラーの攻撃を警告する声を無視したスターリンは手痛い罰を受けたが、直ぐに過ちを修正して自身は戦略的な目標の指示に徹し、作戦の立案は現場を知る将軍に任せる方法を採用した。
一方のヒトラーは最後まで政治的要求や自身の見解を軍に押し付けたため「スターリンは勝利を収めヒトラーは地下塹壕で死ぬことになった。この教訓にプーチンが気づくのか、それともスターリン以上に手詰まりな状況に追い込まれ自滅するのかのどちらかだ」とTimes紙は指摘していたが、ソ連時代に数年間だけ砲兵部隊を指揮した経験をもつプーチンは自ら戦争を管理してしまいヒトラーと同じ過ちを犯したのだろう。
3月時点でプーチン大統領が歴史の教訓に立ち戻っていれば第二段階作戦で小さな軍事的勝利を収めたかもしれないが、キーウ方面に続きドンバス方面でもロシア軍は大きな損失を被ってしまったため、3回目のチャンスに挑戦するだけの戦力は残っていないはずだ。
勿論、四方の守りを全て捨てて戦力を動員するなら話は別だが、、、
追記:Times紙は戦勝記念日に姿を見せなかったロシア軍参謀総長のゲラシモフ上級大将が「停職処分」になったという情報について「職務を継続している可能性が高い」と報じている。
関連記事:プーチンの誤算、ロシア人を上回るウクライナ人の火の玉のような強い意思
関連記事:誰かに失敗の責任を押し付けたいプーチン、ゲラシモフ参謀総長が停職?
※アイキャッチ画像の出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0
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・ドネツ川渡河作戦の詳報(texty.org.ua/fragments/106679 抄訳)
ロシア軍は同時に渡河を試みることでウクライナ軍の混乱を狙い、数キロの間隔で4つの渡河作戦を行った。報道で取り上げられたのはその3番目のもの。
渡河にあたっては一帯を煙幕か森林火災で渡河地点の隠蔽を図った。
3番目の舟橋は一定数の渡河後に破壊、右岸に立往生した兵力の救援に再架橋したところに攻撃され、ロシア軍の損害はここに集中した。
・私見
ドネツ川の渡河の全貌は思ったより大規模な作戦で、事前砲撃や煙幕の展張を含め4地点の渡河自体は常道だったように思えます。ウクライナ砲兵の充実を別にすれば、リスクある渡河を敵前で強いられたのが敗因で、つまりそれが上の圧力ということでしょうか。
なお、3番目の渡河地点以外に戦車が見られず、損害の集中からここが主攻だとすると、事前偵察を含め砲撃を指向したウクライナ軍は的確にロシア軍の意図を察知していたのでしょう。
作戦失敗後の空撮(youtube.com/watch?v=ovHdiXuALfU)で渡河地点に刻まれた破孔の密度から、とんでもない量の砲撃が伺えますし、10数キロ圏内に相当量の砲撃兵器があるということはポパスナ方面のロシア軍も安泰でない気がします。
・砲撃下撤退するロシア装甲車の空撮(censor.net/ua/video_news/3341369)
映像の内容もともかくウクライナの煽りセンスからするとロシアのブロガーもお気の毒です。
渡河作戦を実施しようとして集結したロシア軍に対し、ウクライナ軍はドローンによる事前偵察の上で砲撃を実施、攻撃により混乱したロシア軍に対してドローンによる攻撃や歩兵の対戦車ミサイルによる装甲車両の撃破を行った模様。また砲撃は西側諸国より供与されたM777榴弾砲によって行われ、砲弾もGPS誘導によりピンポイント攻撃が可能なM982エクスカリバーが使用されたとの情報もあります。
報道で見る限りロシア軍はBMP-2やBMP-3といった水陸両用の歩兵戦闘車を大量に動員しているようなので先陣はおそらく歩兵戦闘車が強襲渡河、戦車や他の装甲車両が渡河できる様に舟橋を架けていたところウクライナ軍に攻撃されたといったところなのでしょう。BMPシリーズは浮航能力を確保する為に車体は軽量なアルミ合金で出来ているので戦車以上に防御力が低いといった欠点がある(BMP-1やBMP-2に至ってはRPGの直撃は勿論、重機関銃や対物ライフルで貫通させられる場合もあり「穴あきチーズ」と揶揄される)
BMP-1やBMP-2はIFVなんだからそりゃ当然だろとしか
用途が違うもん
歩兵を小火器から守るための代物だぞ
それを敵前での強襲渡河の先陣に使ったから失敗したのではないか、という推測でしょ?
BMP-2やBMP-3それ自体を本来の用途を無視して低評価してる訳じゃないよ。
兵員輸送が主目的のIFVを戦車以上に防御力が低いって評価すること自体おかしいのよ
それにBMP-1や2ならともかくBMP-3は防御面ではかなり気を使ってる方で全周43㎜で正面に至ってはRHA換算60㎜+傾斜で米軍の25㎜機関砲のAPDSすら防げるぐらいに頑丈でしかも渡河能力を維持できる程度にERAも搭載できるから若干違う
大体IFVだろうがMBTだろうが天板の装甲は薄いから上部からの砲撃は碌に防げないからBMPだったから~ってのは認識が間違ってるのよ
言いたいことを整理しないまま書いちゃったけどつまるところ兵器の性能とかは今回の件とは関係なくて、戦術レベルで最初から判断ミスってるから世界中のどんな兵器を使っても失敗するって話なんだ
戦車を先陣に使ってようがダメなのは一緒に黒焦げになってるT-72が証明してる
無論BMPにも当然欠点があって水上を航行中の時に砲撃を受けると転覆するってのがあるけど、実際に写真を見る限りだと上陸した後に戦車と合流した段階で撃破されてるからやはり関係ないのよね
>ウクライナの煽りセンス
トップの人の経歴が、ここでも活きてる?
なんかロシア軍が弱すぎたから、なんかカラクリがあると思っていたけどこういことか。プーチンは馬鹿なのかな?いつの時代のことしてんだろ?
こうなったら最後は80年代筋肉アクション映画の悪役よろしく自分で銃持って前線まで出てきてほしいですね。
ソ連時代に政治将校してたんじゃないですかね、
それが基礎ならそりゃ全部の部隊に口出しするのが常識まである
ますますやってる事がヒトラーだな
ヒトラーは有能な素人であって専門家ではなかった、パフォーマンスで人気をとる役者タイプ
兵士の目線はよく理解していたが指揮官の目線が判らないままだった
スターリンは革命時の表舞台には立たず、共産党の事務方と人事を掌握することで後に権力を握った、基本的には陰からの支配者
プーチンは?
プーチンは歴史家なのでは…?
ただの自国マンセーだったのか。
プーチン史観の提唱者ということで
× 歴史家
○ 歴史上小説家
もしくは、歴史研究家﹙趣味レベル﹚。
・独裁者は戦略レベルでの失敗したときに現場に責任転嫁しようとし、結果「素晴らしい戦略を台無しにした無能な現場指揮官」を越権して権限を奪う行動に走りがち
・下士官や下級士官の経験がなまじあると、戦争に対する見方が小部隊単位になり、マイクロマネジメントに走りがち
負けるほど現場に介入したくなり、現場に介入するほど負ける負のスパイラルですわ
うん、まぁ本当にヒトラーの焼き直しですな…今のところ「死守命令」とかの話を聞かない分、まだ理性を残していると信じたいですが。
ところで、記事トップのサムネ画についてここの諸賢にお伺いしたいことが。
ロシア衛兵が要人を迎える際、『DQNがオラつくような顔の角度でメンチを切る(汚くてすみません)』所作をしているのですが、これはどういう意味がある作法なんでしょうね。また、ロシア特有なのか…
物知らずで恐縮ですが、どなた様かご存知であれば。
>ロシア衛兵
顎の先を敬礼対象者に向けるという儀仗作法らしいです。
ロシアでの場合敬礼する対象人物は軍服着用者限定で、例外がロシア大統領及び首相だったかと。
つまり、アイキャッチ画像ではプーチン一人に対し敬礼中で、その間顎先と視線をプーチンに向け続けている状態、ということですかね。
.
おお、ありがとうございます。
今回、こういう事態になってからプーチンの動画が頻りに流れるようになり、その中で気になりましたもので。
ガンつけに見える動作も「視線で追う」という礼儀なんですねぇ。所変われば品変わる…
勉強になりました。
軍事パレードだと受礼者は高い位置に居るんで、顎を上げ視線を送る礼式で違和感は全く無いんですが、
アイキャッチ画像のような状況だと衛兵がプーチンを文句あっかと睨みつけるような絵柄になりますよね。w
伍長閣下(実際は一等兵?)†
中佐閣下(予備役大佐) ←New!!
エリツィン「俺なんでこんなバカを後継者に指名しちゃったんだろ(-_-;)」
プーチン「あんたが、バカだからだろう!」
>Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが戦略の決定ではなく小包の配送をしているようなものだ
菅〇人「HAHAHA」
ロシア兵かわいそ。
百歩譲って自軍戦力と敵戦力をリアルタイムで把握して指示するならありかも知れんが、プーチンの命令とのラグや情報の正確性には問題しかないと思う。
全く『ヒトラーと同じ過ち』ですなあ、、、
ナチ嫌いなのに何故にアドルフ君の後追いするのかねえ?
プーチンもまた普通の人間だったてことなんでしょう。現代社会でもヒトラーと同じことをやって大爆死した組織は山のようにある。
逆に言えば、自身の記憶力と情報収集力に絶対的な自信があったからこそ、一步もモスクワから動かずにドイツを押し返したスターリンの異能さを際立たせてると思います。
将軍たちは戦争経済を知らないからね。ちかたないね
なろう系の小説みたいに、前世ヒットラーの転生で、
コロナ下の孤独期間に前世の記憶を取り戻した、
とか。
アメリカでもベトナム戦争時にペンタゴンのお偉いさんたちが前線部隊に細かい指示を出し、それが原因で大きな失敗がいくつも発生した、という話があった。
アメリカの場合はさすがに大統領が口を挟むということは無かったようだが、どこの国でもお偉いさんは自分の思い通りに部隊を操りたくなるもの。
ただアメリカの場合はベトナムでの戦訓を生かして、その後は部隊指揮官に権限を与えるようにした、とのことだが。
ロシアの場合はソビエト連邦軍の時代から、督戦隊やら政治将校やら、部隊兵士を信用していないという伝統(?)がありましたからね。
前線を見ていないお偉いさんの指揮を拒めない風潮が、強く残っているのでしょう。
いろいろ書くと叩かれますが、プーチン大統領のやったことはロシアをほろぼすことと等しい。18歳から27歳を徴兵して送り出していますが以下のページを見てもらえばそれがどんなことかはわかってもらえると思います。
リンク
プーチンはずっと諜報畑だと思ってたけど、国境警備軍の砲兵部隊にいたの?
KGBの国境警備軍は戦車を持っていたから砲兵もあった?
ゼレンスキー氏は開戦当初、たかがコメディ役者が国を指導するからこうなったんだと散々叩かれてましたが
氏が芸歴を生かした国民および諸外国への演説・支持獲得に徹し、プーチンと違って軍事その他専門的なことは専門家にきっちりまかせた結果が現状だとしたら、凄まじい皮肉ですなぁ
(氏を非難する人々の裏側にどの勢力がいたかを考えると、特大ブーメランってレベルじゃねぇ)
>これはAmazonの創業者ジェフ・ベゾスが戦略の決定ではなく小包の配送をしているようなものだ
戦争というのはきわめて不思議です
さすがに個別の部隊の指揮に例えられるのは、配送そのものではなく、配送拠点への指示ぐらいだとは思いますが、
実際問題、ジェフ・ベソスが荷物の配送ルート決めについて個別のスタッフに指示をすることはありえないです。
でも、これが軍隊相手だとやってしまう。
今起きてる、ウクライナ戦争でもそうだし、ベトナムではマイクロマネジメントの失敗と言われるぐらいにやり玉に挙がってる。
実に不思議。