米国関連

日本のF-35整備拠点を利用するアジアの国は? シンガポールへF-35B販売を米国承認

米国防総省の国防安全保障協力局(DSCA)は9日、シンガポールに対し最大で12機の「F-35BライトニングⅡ」を販売することを承認する決定を下した。

参考:Singapore – F-35B Short Take-Off and Vertical Landing (STOVL) Aircraft

シンガポールがSTOVLタイプのF-35Bを最大12機調達へ

2020年1月9日、米国防総省の国防安全保障協力局(DSCA)は最大で12機の「F-35BライトニングⅡ」を、シンガポールに約27億5,000万ドルで販売することを承認する決定を下し、これを議会に通知するために必要な書類を発行したと発表した。

出典:pixabay F-35B

シンガポールはSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)タイプの「F-35BライトニングⅡ」を最大12機(4機+追加で8機購入するオプション)することを要求しており、エンジン「F135」13基(予備エンジン1基を含む)や電子戦用の搭載システム、保守サポート、 自律物流情報システム「ALIS」、シンガポール空軍の要員訓練、搭載兵器、各種予備パーツ、機体をシンガポールまで空輸するための費用などを全て含めた費用が約27億5,000万ドル(約3,020億円)という意味だ。

単純に取得費用を導入機数で割った場合、1機あたり約2.3億ドル(約260億円)となる。

この260億円という金額は機体価格ではない。

シンガポールが調達するF-35Bの機体価格は、昨年1億1,550万ドル(約127億円)だったが、今後、生産されるものについては約9,760万ドル(ロット14での予定価格)まで価格が引き下げられることになっているため、最大12機のF-35Bを購入するだけなら約11億7,120万ドル(約1,300億円)となる。

予備パーツや搭載兵器などは導入するF-35の数によって量が変動するが、それ以外の部分は導入するF-35の数が増えれば増えるほど割安になるので、シンガポールのように10機程度の導入では、どうしても総費用が割高になってしまうと言うわけだ。

昨年、これと似たような話があった。

出典:Radoslaw Maciejewski / stock.adobe.com

ブルガリアは、老朽化したソ連製戦闘機のMig-29を更新するための戦闘機としてF-16V(block70/72)を8機導入する費用として約16.73億ドル(約1,811億円)を要求され、取得費用を導入機数で割った場合、1機あたり約2.1億ドル(約220億円)となり、1機あたりの導入費用はシンガポールのF-35Bと大差がない。

しかし、66機のF-16V(block70/72)を導入した台湾に要求された費用は約80億ドル(約8,500億円)で、取得費用を導入機数で割った場合、1機あたり約1.2億ドル(約127億円)だった。

ただ台湾のF-16V導入パッケージには搭載兵器が含まれていないため、搭載兵器が含まれていたブルガリアと条件が異なるので、あくまで「参考程度」の比較にしかならないが、1機あたり約100億円近く安価なのは「66機(+旧型144機をV仕様へ改修中)」導入というボリュームが作用しているのは間違いない。

どちらにしても、アジアのシンガポールがF-35Bを導入すれば、アジア太平洋地域(北太平洋)のF-35重整備(機体やエンジンの分解整備、不具合の修理、アップグレード等)を担当する日本の整備拠点(MRO&U)を利用することになるので、日本の防衛産業にとっては歓迎すべきニュースなのは間違いない。

補足:F-35Aを導入中の韓国は日本の担当地域だが、日本で重整備は受けないといっているため、日本の整備拠点を米軍以外で利用するのはシンガポールが初めてということになるが、地理的に見るとオーストラリアの方が近いので、もしかすると担当地域を無視してオーストラリアの整備拠点で重整備を受ける可能性も無くはない。

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay F-35B

イランの攻撃方法が予想以上に賢かった? 米国が1発も弾道ミサイルを迎撃出来なかった理由前のページ

本当に必要か? ロールス・ロイスが第6世代戦闘機「テンペスト」に売り込む「世界初」のエンジン技術次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    どんどん増えていくHIMARS、まもなくウクライナへの追加提供を米国が発表

    国防総省のジョン・カービー報道官は「ロシア軍の前進を食い止めるのに効果…

  2. 米国関連

    高価過ぎたF-22、開発の終わらないF-35、この教訓を次世代戦闘機「FX」にどう活かす?

    米空軍が現在、研究を行っている次世代戦闘機「FX」は、F-22ラプター…

  3. 米国関連

    米国が新しいウクライナ支援パッケージをまもなく発表、4輌のHIMARSを追加提供

    ロイターは3日「バイデン政権が6.25億ドルのウクライナ支援を4日に発…

  4. 米国関連

    米海軍、戦闘機「F-35C」運用に欠かせない艦上輸送機「CMV-22B」の問題

    米海軍は、洋上で活動する空母へ補給物資をとどけるための輸送機「C-2 …

  5. 米国関連

    ロシアの要求は戦争の口実作り、英諜報機関はクリスマス・イブの侵攻開始を警告

    米上院外交委員会のジム・リッシュ議員は「受け入れ困難なことが分かった上…

  6. 米国関連

    米空軍に続き米海軍も高度な戦術訓練機の調達を発表、最大の目的はF-35運用時間の削減か

    米空軍はパイロット養成に使用しているT-38タロンを更新するため調達予…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 1月 11日

    シンガポール空軍のマーキングをしたの見られるといいな

    1
    • 匿名
    • 2020年 1月 11日

    F-35の整備だがバ韓国は日本に関わらなくて良いんでオーストチョリアか米に輸送して勝手にやってろ。
    シンガポールもまぁご自由に
    日本の機密保護ってなんか頼りないし心配だから出入りは少ない方が良い

    • 匿名
    • 2020年 1月 11日

    というか日本の整備拠点どうすんだろ。本来の国内組み立ての38機の製造の終わったFACOを改装する予定だったのを生産継続に変更するそうだし、追加で建てるのか。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP