米海軍は新型コロナウイルスの対応を巡って空母「セオドア・ルーズベルト(CVN-71)」の艦長だったブレット・クロジャー大佐解任問題でトーマス・モドリー海軍長官代理を失うというダメージを受けたが、このことは巡り巡ってジェラルド・R・フォード級空母を建造中止から救うという皮肉な結果をもたらした。
参考:Navy Scraps Big Carrier Study, Clears Deck For OSD Effort
新型コロナウイルスのおかげでジェラルド・R・フォード級空母が生き残る?
トーマス・モドリー元海軍長官代理は現在調達中のジェラルド・R・フォード級空母を4番艦「ドリス・ミラー(CVN-81)」で建造を打ち切ること示唆する発言を行ったり、大型空母の将来を左右することになる「Future Carrier 2030 Task Force」を立ち上げ、今年9月までに今後も10万トンを超える大型空母を建造し続けるのか、迎撃が困難な長距離精密攻撃兵器に晒されるリスクが高い沿岸海域からの航空作戦を今後も続けていくのか研究を行おうとしていた。
今となってはモドリー元海軍長官代理がどのように海軍を導こうとしていたのか不明だが、恐らく彼は金の掛かる大型空母の建造を中止して5万~6万トンの中型空母とライトニングキャリアによる新たな火力投射システム構築を目指していたのかもしれない。
しかし新たに海軍長官代理に着任したジェイムズ・E・マクファーソン氏は前任者が立ち上げた「Future Carrier 2030 Task Force」を廃止して大型空母の将来を左右する研究を中止すると発表したため、ひとまず海軍はジェラルド・R・フォード級空母建造計画を手放さずに済みそうだ。
ただマクファーソン海軍長官代理は海軍の空母調達や将来に関して考えるの「中止」したのではなく同じように海軍の戦力構成見直しを進めている国防総省を下駄を預け、似たような研究を一本化しただけとも受け取れる。
現在、国防総省ではマーク・エスパー国防長官の下で海軍の戦力構成見直しを進めており、この内部評価の資料を入手した米メディアの報道によれば国防総省は空母12隻体制を止めて9隻まで空母を削減することを検討しているらしい。もし国防総省の案が採用されても海軍は空母を数隻失うだけで、ジェラルド・R・フォード級空母調達を中止して中型空母への移行といった大きな変更は行われない見込みだ。
果たしてモドリー元海軍長官代理の進めていた削減案(ハードランディング)が正しいのか、国防総省が進めている削減案(ソフトランディング)が正しいのかは分からないが、目先の問題としてジェラルド・R・フォード級空母を放棄せずに済む国防総省の案の方が海軍にとって好ましいのは言うまでもない。
結局、海軍にとって今回の新型コロナウイルスは迷惑きわまりないものだが、ジェラルド・R・フォード級空母調達打ち切りを考えていたモドリー元海軍長官代理を葬ったという点ではラッキーだったと言えなくもないので本当に皮肉な結果と言える。
※アイキャッチ画像の出典:public domain ジェラルド・R・フォード級空母
航空機の進歩により、大火砲の戦艦が過去のものになった
ミサイル等の進化により、空母が過去の兵器になっても不思議では無い
今でも強力な戦力では有るが、損耗した際の被害が人的にもハード的にも大きすぎる
しかし、経済的なダメージとその補填にあたって真っ先に削られがちなのが軍事費なんだよな・・・
更に回り回って議会によって空母撃沈されなきゃいいけどね
フォード級を開発検討段階で
大型空母の建造を止め、中型空母を中心とした
戦略を練っていればこんなことになっていなかったんだろうな
まあ、中国という化け物がこれほどまでにモンスター化するとは
誰も予想できなかっただろうし
過去にも制海艦構想とかありましたよね。
「卵とバスケット論」のメリット・デメリットってやつは
どの国、どの時代に関係なく、検討・議論のマトなんですね。
アメリカ級強襲揚陸艦フライト0を空母扱いにして増産するのはダメなのか?
空母任務専門にするなら、非効率だからね。
航空機が有効である限り、空母機動部隊も残るよ。