米国関連

バイデン大統領、M777が含まれるウクライナへの追加支援を新たに発表

バイデン大統領は19日、榴弾砲「M777」の追加提供が含まれる1億ドルのウクライナ支援パッケージを新たに発表した。

参考:Biden administration announces $100 million security package for Ukraine

プーチンの報復を恐れて誰も対艦ミサイルを最初に提供する国になりたがらない

バイデン大統領は声明の中で「ウクライナが戦場で効果的に使用している大砲、レーダー、その他の装備を追加提供する」と述べているため、提供済みの榴弾砲「M777」や対砲兵レーダー「AN/TPQ-36」などがパッケージに含まれている可能性が高いと見られているが、国防総省は今回のパッケージの中身について今のところ説明を行っていない。

出典:Jonathan Mallard / CC BY 2.0

因みに米国はロシア海軍による黒海の海上封鎖を打ち破るため「ハープーンかNSMの直接提供もしくは同盟国を通じた移送を積極的に検討している」と報じられており、陸上から対艦ミサイルを運用する問題を解決するため米当局者は「海軍の艦艇に搭載されたランチャーを取り外すことも視野に検討している」とロイターに明かしている。

ただ提供した対艦ミサイルがロシア海軍の艦艇を沈めると「エネルギー資源の供給停止を含むプーチンの報復」を誘発する恐れがあるため米当局者は「誰も対艦ミサイルを最初に提供する国になりたがらない」とも述べており、仮に黒海艦隊の水上艦艇を全て撃沈したとしても4隻のキロ級潜水艦が残るため、対艦ミサイルの提供だけで海上封鎖を解くには無理があるという懐疑的な意見も存在する。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Zachary D. Bell/Released

追記:米当局者は400億ドルの追加支援資金が解放されると懸案だったM270/MLRSかM142/HIMARSがウクライナに提供されるかもしれないと述べているが、飽くまで匿名の関係筋による話なので正式発表されるまでは何とも言えない。

追記:1億ドルのウクライナ支援パッケージには「18門のM777、18輌の牽引車輌、3基のAN/TPQ-36が含まれる」と国防総省のジョン・カービー報道官が明かした。

関連記事:バイデン政権は米国製MLRSのウクライナ提供を躊躇、戦いの拡大を懸念

 

アイキャッチ画像の出典:Головнокомандувач ЗС України 榴弾砲M777を使用するウクライナ軍の様子

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コメント

    • 無印
    • 2022年 5月 20日

    ウクライナに対潜哨戒機は無いんですか?
    土地柄あまり優先度が高い装備ではなかったんでしょうか

    4
      • 幽霊
      • 2022年 5月 20日

      対潜哨戒機を保有していても現状ウクライナが黒海に飛ばすのは現実的ではないでしょう
      ロシア空軍が戦闘機を飛ばして迎撃して来ると思いますし、対空ミサイルでも狙われる事になると思います。

      12
      • samo
      • 2022年 5月 20日

      あるなしはおいておくにしても、有効であるのは間違いない。
      ただ、哨戒機を飛ばすにしても、ロシア軍の対空兵器の存在が驚異になってしまうので、戦闘機等の供与が無い限りは無理でしょうね…

      4
      • 2022年 5月 20日

      ムィコラーイウに対潜ヘリがいるにはいます

      1
    • 無無
    • 2022年 5月 20日

    出し惜しみしてると却って高くつくのが危機対処のコスト
    パトリオットとMLRS、はよはよ

    17
    • くらうん
    • 2022年 5月 20日

    本文にあるようにキロ級を追い払うにはASWの実施、そのために駆逐艦や哨戒機まで提供しなければならいから現実的じゃない。
    食糧危機になりつつある今はそれを前面に押し出してロシアに海上封鎖を一部解除させる外交的解決が一番近道に思うな。
    ロシアからすれば入港する船に武器が隠されている可能性も当然疑うだろうから、こちらも簡単ではないが。

    3
    • 月虹
    • 2022年 5月 20日

    黒海に浮かぶズミイヌイ島(蛇島)に最大射程300㎞と言われるネプチューン対艦ミサイルを設置するとクリミア半島のロシア黒海艦隊の艦艇を攻撃できる様になる。故にウクライナ軍は島を占拠しているロシア軍に対してドローンを主軸とした反復攻撃を行っている。ロシア軍もこの島を失うとクリミアが危うくなることを理解しているようで必死に防衛を行っている(士気の低い東部方面のロシア軍部隊に比べるとズミイヌイ島のロシア軍は精鋭なのかウクライナ側の攻撃にあいながらも懲りずに補給活動を行っている)。

    ただ島に補給へ行うロシア軍の軍用ヘリや海軍の艦船に対してウクライナ軍はドローンにより攻撃を継続しているので島が陥落するのは時間の問題だと思う。

    6
      • 通りすがり
      • 2022年 5月 20日

      そのネプチューンは配備が始まったばかり数がないんだよね。

      4
      • スネーク
      • 2022年 5月 20日

      そんな小さい島に貴重な対艦ミサイルを配備するわけない
      ロシア軍がなぜか上陸してたから攻撃したんだろう

      2
      • hiroさん
      • 2022年 5月 20日

      キロ級潜水艦は対地攻撃用巡航ミサイルを装備できるし、射程670km以上あるらしいので、危なくてネプチューンの配備は出来ないのでは?

      2
    • 榴弾砲
    • 2022年 5月 20日

    とりあえず、榴弾砲の大量投入をするしかないのでは。
    国内に侵略して来た敵を打ち払うのが当初の目的ですから。他国に技術支援できるほどのウクライナのミサイル技術なら自国生産も可能なはず。戦禍で製造不能なら、部品と工作機械等の生産設備を援助すれば良い。
    ウクライナを支援したい気持ちは有りますが、あくまで二国間の戦争のレベルを逸脱しない様に取り組まないと。支援の内容を吟味しなければならないところが悩ましいですね。

    9
    • 2022年 5月 20日

    エゲレスがハープーン渡すみたいなこと言ってなかったっけ

    1
      • nemo
      • 2022年 5月 20日

      でもイギリスはハープーン持ってない

    • kwsm
    • 2022年 5月 20日

    地対艦ミサイルも対潜哨戒機もヘリも大量に保有してる国がありますよね…

    2
      • 幽霊
      • 2022年 5月 20日

      どこの国?
      アメリカ?

      4
      • くらうん
      • 2022年 5月 20日

      地対艦ミサイルはともかく、対潜作戦ノウハウとその装備運用は超高度な上機密レベルも高いので難しいのでは。

      7
      • 成層圏
      • 2022年 5月 20日

      確かに日本は対潜哨戒機やヘリの装備密度は世界一かもしれんが、中・ロに対して必要だから出せないね。
      地対艦ミサイルに関しては期限切れがあれば(装って?)、廃棄品として第三国(アメリカ)経由で送ってもいいかもね。
      貴重な実戦データも取れるし、今後の改良にも役立つし。
      まぁ、無理だわな。

      13
        • Psyrus
        • 2022年 5月 20日

        重装備供与に消極的な国(ドイツとか)こういう会話がされてるんだと思うと、一概に彼らを悪く言えないもんですな

        13
        • 匿名
        • 2022年 5月 20日

        火薬は経年劣化を避けられないから﹙燃焼物と酸化材を最適比率で混ぜている代物だから﹚、有効期限があり、
        期限切れ間際のを演習で消費するのだっけ。

      • けい2020
      • 2022年 5月 20日

      命中しても攻撃されたミサイルが分かるわけじゃないですしね
      意外なところからの意外な提供ならありかもです
      (ロシアとしても難癖つけて東西で開戦できる余裕は皆無ですし)

      対潜哨戒機・ヘリは制空権を取れないと活動出来ないですし、
      隠蔽しやすい地対艦ミサイルを極秘支援したら、支援国の国防利益にもなりますし

    • 2022年 5月 20日

    前回の大規模支援に無人哨戒艇が含まれてたはずだけど、どうなったんだろう

    • 58式素人
    • 2022年 5月 20日

    もし、米海軍が黒海にもSOSUSを置いているのなら、
    相手の位置データをもらって、相手の真上から対潜魚雷を落とせば、
    あとは対潜魚雷が片をつけてくれるかと思います。
    対潜魚雷を持っていくには、高速艇かヘリコプター・大きめのUAVと思います。
    ASWをするならば、対潜哨戒機が使えないならば、小型の潜水艦と思います。
    前にも書きましたが、ライン〜ドナウ運河で500t級の潜水艦は送れると思います。
    適当な潜水艦ですが、古い資料ですが、コッベン級(207型)潜水艦が、
    デンマーク海軍でモスボールされているのと、ポーランド海軍で現役と思います。
    潜行深度は新造時で500m。キロ級で300mなので、相手ができますね。
    ただ、ここでもドイツが出てきます。あと不安要素で、ハンガリーとブルガリアです。

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