米国関連

在欧米空軍のヘッカー大将、ウクライナ空軍は既にJDAM-ERをもっている

在欧米空軍のヘッカー大将は「ウクライナは過去3週間の間にJDAM-ERを手に入れた。2回か3回の攻撃を行うに十分な数だ」と明かし、米国提供の航空機向け精密誘導弾薬がJDAMではなくJDAM-ERだというBloombergの報道は事実だった。

参考:Winged JDAM Smart Bombs Are Now Operational In Ukraine

ヘッカー大将曰く、低空から侵入して『あることをやって戻ってくる』という戦術もある

Air&Space Forces Associationのシンポジウムに出席したヘッカー大将は「我々はウクライナ向けに到達範囲が拡張された精密弾薬(JDAM-ERのこと)を取得したばかりで、自由落下爆弾より遠くに到達し、正確に目標へ命中する能力を備えている。過去3週間の間に我々が彼らに与えることができた最新の能力だ」と明かしたが、ウクライナに提供されたJDAM-ERの数は限定的で「2回か3回の攻撃を行うに十分な数だ」と付け加えている。

折りたたみ式の主翼を追加したJDAM-ERはJDAMよりも到達範囲が拡張(最大28km先→最大70km先)されており、より目標の手前から地上攻撃を行うことができるため生存性の向上(近距離防空システムの影響を受ける範囲外から発射して帰還できるという意味)も見込める上、HIMARSなどが使用するGMLRS弾(弾頭重量200ポンド)とは比べ物にならない破壊力(500ポンド~2,000ポンド)を持っているので重量物への攻撃により適した兵器だ。

既にJDAM-ERが戦場で使用された可能性を示す動画も登場している。

JDAM-ERは滑空爆弾(推進装置を非搭載)の一種なので最大到達範囲は投下高度に左右され、前線空域で1,000フィート以下の低空飛行を余儀なくされているウクライナ空軍機に上手く扱えるのか疑問だったが、ヘッカー大将も「正確な戦術には言及しなくないが、飛行高度が低空であればあるほど地球の曲率の関係で地対空ミサイルに捕捉されにくくなるが、同時にJDAM-ERの到達範囲にも影響を与える」と言及し、ウクライナ空軍が直面する戦場環境でJDAM-ERの到達範囲を最大限活かすのは難しいと示唆した。

但し、ヘッカー大将は「低空から侵入して『あることをやって戻ってくる』という戦術もある」と付け加えており、POP-UP maneuverによる運用で低空飛行からでもJDAM-ERの到達範囲を(ある程度)確保できると言いたいのかもしれない。

因みにボーイングが開発したJDAM-ERはオーストリア空軍しか採用していないため米軍備蓄に現物がなく、新たに製造してウクライナに供給する予定(数量は不明だがボーイングに授与された契約額は4,050万ドルで6月末までに契約内容を完了する)なのだが、ヘッカー大将はウクライナに引き渡したJDAM-ERの種類について「GBU-62」と名称を使用しており、Quickstrike(空中投下機雷)の到達範囲を拡張したQuickstrike-ERを改造(中身を通常弾頭に変更)したものをウクライナに提供した可能性がある。

関連記事:米国、ウクライナに提供する航空機向け精密誘導弾薬はJDAMではなくJDAM-ERか
関連記事:米国がウクライナにJDAMを提供か、ゼレンスキー大統領が今週中に訪米する可能性も
関連記事:米国、パトリオットやJDAMが含まれたウクライナ支援パッケージを発表

 

※アイキャッチ画像の出典:ボーイング

バフムートを巡る戦い、ウクライナ軍は新たな予備戦力の投入を決断前のページ

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コメント

    • samo
    • 2023年 3月 07日

    mig-29のレーダーに測距機能なんて実装していたっけ?
    これがないと、投下爆弾の侵入角、投下速度の計算ができないから、JDAM-ERの命中精度に大きな開きが発生するけれど。
    言うなれば、F-15C(J)とF-16AB(F-4EJ改)ぐらいの差がある。

    というか、これができるんだったら、西側基準の対地攻撃戦術を、ウクライナパイロットが既に獲得もしくは短期間で習得できるって言ってるようなもの。
    やっぱり、F-16の機種転換訓練に年単位でかかるなんて大嘘じゃないか

    13
      • hiroさん
      • 2023年 3月 07日

      レーザー誘導爆弾と違って、JDAM(-ER)は投下時の母機の姿勢は問わない(投げ上げ投下、水平飛行時の投下、目標と違う方向にも投下できる)と理解していますが、違うんですかね。
      MigまたはSuとの統合がどうなっているかは興味があります。

      11
        • ブルーピーコック
        • 2023年 3月 08日

        wikiより
        『目標座標は、離陸前に航空機へ読み込まれるか、離陸後も投下前であれば搭乗員の手動によって変更でき、さらに投下後にもデータリンクを通じた入力が可能になっている。2004年のリザルタント・フューリー演習では、B-52爆撃機が投下したJDAMを、E-8 JSTARSがリンクを介して誘導することで、洋上の移動目標への攻撃を成功させた。リンクを介した目標変更は、母機に搭載された「ライトニング2」か「スナイパー」照準ポッドのような搭載照準装置からも行うことができる』

        切り離すことができればミグやスホーイでも運用可能なんでしょうけど、その場合は事前に座標を入力していたのか、何かが誘導役をしたのかが気になりますね。

        2
      • TA
      • 2023年 3月 07日

      機種転換に数年かかるとかマジで信じてる人っておるんかいな

      5
        • 匿名
        • 2023年 3月 08日

        提供する気がない時はそれらしい理由で煙に巻き、
        提供されるときは提供できない理由をクリアしてないのに提供される
        これが去年学んだことです

        18
      • 匿名希望係
      • 2023年 3月 07日

      戦術含めてでは?

      1
      • ななし
      • 2023年 3月 08日

      照準ポッドも提供してたりして…

      1
      • nachteule
      • 2023年 3月 08日

       JDAM運用しただけで西側基準の対地戦術能力獲得とか乱暴な話じゃないか?兵士にSCARとか渡すだけでそれを使用している特殊部隊と同じことが出来ますとか思う人は居ないだろう。特定のことが出来るようになっただけ、現に取れる戦術のせいでJDAM-ERの能力をフルスペックで使えていないわけだし。

       間違っている可能性大だけどウクライナが使用する西側航空兵装は位置情報がアメリカで各種データをBluetooth経由で搭載兵装に送信して使う感じで、搭載プラットフォームが何かする自由がなくどこか操り人形みたいな運用をしている感じ。
       リモートで管理されている可能性すらあるのでウクライナが自由にフルスペックの性能を使えないケースすら有り得る。

       F-16の転換にどれくらい掛かるかなんて訓練内容次第だし最悪のパターンならそれ位でも不思議じゃない。転換訓練だけで2ヶ月程、実戦想定した訓練や西側システムへの慣れ。支援国が自国のパイロット分を削ってまでウクライナへの訓練に機体や時間を回すのかは蓋を開けて見ないことには分からない、短期間に密度の濃い訓練が出来れば短くもなろうが皆で公平に平均的にやってある程度に達するまでとかされるなら長くなる。

    • imm
    • 2023年 3月 07日

    離陸前に入力した場所に落としてくるだけでは

    6
      • ネコ歩き
      • 2023年 3月 07日

      目標座標を離陸前に入力するのはその通りですが、投下時にその地点座標等のデータ入力が必要です。
      ただし、ウクライナがMig-29に米海軍のAGM-88対レーダーミサイルを統合した機体を保有していることが確認されています。入力信号に互換性があるならばですが、JDAM や JDAM-ER の運用は可能なはずです。

      3
    • 774rr
    • 2023年 3月 07日

    > 『あることをやって戻ってくる』
    機首を上げて斜め45度で打ち上げるとかかな?

    これが普通の爆弾ならとても命中は見込めないけど
    GPS誘導ならどうとでもなっちゃうのか〜 凄い!

    13
    • ブルーピーコック
    • 2023年 3月 07日

    誘導爆弾でトス爆撃でもやったのかね。そうだとしたら、なんとまあ古典的な。

    1
    • 58式素人
    • 2023年 3月 07日

    JDAM-ERが70km飛行するとしても、それは高度5,000〜6,000m程度から投擲した場合でしょう。
    現実には母機は300m以下で飛行し、投擲の時だけ急上昇ですから、飛行距離は期待できないでしょう。
    HIMARSの射程には及ばないのは間違いないと思います。最前線で重要目標相手に使うことになるのでは。
    ベースの爆弾が2,000lbなら破壊力に不足はないでしょうけど。
    そして、最前線で使うならば、GPS誘導だけでは不足に思えます。レーザー誘導が必要では。

    1
      • 匿名希望係
      • 2023年 3月 07日

      対応している母機が確実なのはF/A-18ぽいですね>最新型

      • クローム
      • 2023年 3月 07日

      低高度+レーザー誘導爆弾というのは相性が悪いです。現状のような低空飛行では無誘導爆弾であっても高い精度が期待できます。
      またSu-24やSu-25のレーザー誘導の機器はレーザー誘導ロケットやミサイルを前方に打つときに誘導する用なので、真下に投下する兵器を誘導するのは対応していません。
      APKWSなどのレーザー誘導ミサイルは役に立ちそうです。

      1
    • 黒丸
    • 2023年 3月 07日

    バフムートでウクライナは強気の抵抗姿勢を見せているけど
    これの投入が関係しているのかな?
    これまで破壊困難だった弾薬庫や補給拠点を破壊し、ロシアの砲兵火力を弱体化できる自信がある
    というなら、バフムートを維持する方針も理解はできるのだが

      •   
      • 2023年 3月 07日

      バフムートをセベロドネツクのようにする必要があるのかっていうと、まぁ費用対効果ではあるのかもしれんけど…
      失う兵士の価値はそれに見合うのかは何ともいえんね

      1
    • 山田さん
    • 2023年 3月 07日

    2,3回の攻撃って何だろって思ったけど、a couple of strikesだから正しい訳なのか…
    となると、一回の攻撃を何機でするかによるんだろうけど、多くて十数発って感じ?
    少なくない?

    1
    • きっど
    • 2023年 3月 07日

    >ヘッカー大将はウクライナに引き渡したJDAM-ERの種類について「GBU-62」と名称を使用しており、Quickstrike(空中投下機雷)の到達範囲を拡張したQuickstrike-ERを改造(中身を通常弾頭に変更)したものをウクライナに提供した可能性がある。

    弾頭を変更も何も、QuickstrikeはMk.80シリーズの汎用爆弾の信管を機雷のソレに変更しただけの代物ですので、弾頭は元の汎用爆弾そのままの筈ですが(でなければ「ウリ」が無くなる)
    変更したのは信管だけかと(見方に依れば、元に戻しただけとも)

    • paxai
    • 2023年 3月 08日

    しかしイゴール・ガーキン氏の言う通りの展開だなあ。
    クレムリンが総動員を決断せずグダグダやってる内にウクライナにはドンドン新兵器が供与されていく。
    別にJDAM-ERが戦場をひっくり返すとは思わないがロシアの軍事的勝利は遠ざかるよね。

    1
      • 匿名
      • 2023年 3月 08日

      でも総動員ボタンは核発射ボタンより押しやすそうだよな…

      3
        • XYZ
        • 2023年 3月 08日

        どちらのボタンも押してもプーチンの期待通りに動作しない可能性が高そう・・・。

        集まらない、持たせる装備が無い、輸送手段が無い

        飛ばない、故障して自国領に着弾、ちゃんと着弾しても起爆しない

        6
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