米空軍は作戦機に関する2023年度のMission Capable Rate=MC率(少なくともミッション要件の1つ以上を実行できる状態)を公開、全体的に米空軍機の即応性は前年度よりも悪化しており、特にF-35Aは毎年最低の数値を叩き出すF-22Aを下回っている。
参考:Air Force Mission Capable Rates Fall in 2023, Led by Declines for F-15C and B-1
米空軍の戦闘機戦力はじわじわと運用時間が蝕まれている
米軍機の稼働率に関する数字はミッション達成率(Mission Capable Rate:MC率)とフルミッション達成率(Full Mission Capable Rate:FMC率)に分かれており、MC率とは作戦機が少なくともミッション要件の1つ以上を実行できる状態、FMC率とは作戦機がミッション要件を完全に実行できる状態のことだ。
例えば照準ポッドとの接続不良で空対空任務しか実行できないF-16Cはミッション要件の1つ以上を実行できる状態、空対空任務も空対地任務も実行できるF-16Cはミッション要件を完全に実行できる状態という意味で、この数値は当該機種の準備状態や即応性を示している。
トランプ政権時代の国防長官のジェームズ・マティス氏は2018年、低調だったF-16C/D、F/A-18E/F、F-22A、F-35AのMC率を2019年9月末までに「80%」へ引き上げるよう命じたが、これをクリアできたのは海軍のF/A-18E/FだけでF-16C/D、F-22A、F-35Aは一度も80%をパスしたことがなく、数値目標自体は2000年に廃止されたものの、米空軍は「引き続きMC率の改善に取り組む」と表明していたが、今回公開された2023年度のMC率は前年度よりも全体的に低下している。
2022年/MC率 | 2023年/MC率 | |
A-10 | 69.70% | ▼67.00% |
F-15C | 45.70% | ▼33.00% |
F-15E | 51.60% | ▲55.00% |
F-15EX | 84.60% | ▲85.00% |
F-16C | 70.70% | ▼69.00% |
F-16D | 68.90% | ▼65.00% |
F-22A | 57.40% | ▼52.00% |
F-35A | 65.40% | ▼51.90% |
E-3G | 63.90% | ▼60.00% |
E-4B | 55.40% | ▲61.00% |
E-8C | 49.20% | ▲63.00% |
B-52H | 59.30% | ▼54.00% |
B-1B | 54.80% | ▼47.00% |
B-2A | 52.80% | ▲56.00% |
MQ-9A | 89.90% | ▼86.00% |
RQ-4B | 70.80% | ▼50.00% |
U-2S | 73.50% | ▲76.00% |
KC-10A | 80.40% | ▼79.00% |
KC-135R | 72.00% | ▼69.00% |
KC-135T | 69.60% | ▲69.70% |
KC-46A | 69.90% | ▼65.00% |
米空軍はF-35AのMC率を明かしていないものの、米政府説明責任局(GAO)は4月に発表したレポートの中で「F-35AのMC率は51.9%に低下した」と言及しており、Air&Space Forces Magazineは「KC-46AのMC率は69.90%から65.00%に低下し、同機と交換されるKC-135のMC率は69.70%だった」と言及、これは最新鋭のKC-46Aが旧式のKC-135に即応性で負けていると言いたいのだろう。
数年前までF-22AとB-2AのMC率が低すぎて異常に目立っていたが、個人的に「全体のMC率が下がり続けて違和感が無くなってきた」「毎年最低の数値を叩き出すF-22AにF-35Aが負けている」という点が非常に印象的だ。
戦闘機戦力全体のMC率が下がっているのはF-35Aによる更新が進んでいないことに、そのF-35Aが依然としてメンテナンス問題に躓いていることに原因があり、MC率が比較的良好なF-16Cが戦闘機戦力の即応性を下支えしている格好で、もしF-16CのMC率が低下し始めると有事の際の作戦機が足りなくなるかもしれない。
因みにF-15CとF-15Eの数値が異常に低いのは退役予定の機体が含まれているためだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Senior Airman Karla Parra
海軍の稼働率も低下している様ですし、帝国の斜陽を感じますね
日本人の多くは米国が世界のリーダーと思っている節がありますけどいい加減現実を見る時です、今の米国はアフガンから尻尾巻いて逃げて、フーシ派すら倒せない、国内に深刻な分断を抱えた国なんですよ…
中国やロシアは公表してないからね。
Spring 2024 HASC TALF F-35 PEO Testimonyによれば。大きな原因はコロナによるインフレとウクライナ戦争でのエネルギー高騰、あとアップデート待ちの機体によるものだから、時間と共に回復していくんじゃない?
少なくともアメリカが斜陽であるとかそういう話であなさそう
コロナによるインフレ→アメリカ経済のインフレは止まる気配も無いので時間経過した所で…
エネルギー価格高騰→西側諸国においてエネルギー価格は高騰する事はあれど当分下落する事はないのでは?
アップデート待ち→TR3とブロック4開発がグダグダの現状では行列の解消はいつになるやら…というより、TR3が役立たず同然レベルの現状では現行のTR2機をTR3機へ改修する事は当分無いのでは?一応戦闘任務に就ける現行機をわざわざ鑑賞用に改修しないのでは?
時間と共に稼働率回復…とは簡単には言えない状況では
とりあえずレポートを読んでみては如何ですか?
この手の数字って各所の思惑で利用されるだけですよね
●●機種はこの有様だから××機種にするべき。ここに予算使うなら福祉に使え。とか
予算もちゃんと増やしてメンテしましょうねー っていうための数値であってほしいのですが。
参議院で尾上定正氏が、『F-15戦闘機の確保すら困難な状況が常態化』という証言を行っています。
旧来機の整備・部品確保・共食い整備問題が続き、F35が使えない問題(アップグレード問題)が加わり、航空自衛隊のさらなる相対的な弱体化が確定しています。
尾上元補給部長は、F15の共食い整備や部品不足など、航空自衛隊のロジスティクスの脆弱さについて、以前から再三指摘されています。
極東情勢は、極めて危なくなっています。
アメリカの防衛企業、ものづくりが本当にダメになっていますね…。
(2023年05月30日 参議院 外交防衛委員会 元自衛隊補給本部長・空将 尾上定正 7:43~)
U-2Sが今も頑張ってるんだなあ。操縦が難しい事と整備性は別って事か。
10年くらい前に科学番組の怪しい伝説でU-2がもうすぐ退役するからって出演者が乗せてもらった回があったのをふと思い出しました
この調子だとこれ以上飛ばすと木っ端微塵になるくらい老朽化するまで使い倒しそうですね
>>木っ端微塵になるくらい老朽化
バンドのほうのU-2の解散とどっちが早いかな
Boeingなんとかしなきゃ空軍キレるんじゃ?
正直、アメリカの兵器の購入などやめて自国でとかよく思うのですが、まぁ政治的に難しいのでしょうね。値段の割に問題も多く、正直状況が悪くなるとしか思えませんが。もっとも、戦車を見ても、独自で作っても安くもならないのは見えてますが。。
ホントそう思います。今は他国から買った方が安くても、いざという時には売ってもらえないか買うのを妨害されるのはロシアやトルコ見てても分かりますので。性能や値段はともかく一通り自国で賄えるようにしておきたいですね。
個人的に思うのは、もうちょっと枝葉を落として、コストを下げれないかなぁと戦車を見て思いますね。お役所からの依頼だから余計にそうなるのも分かるのですが、コスト下げて、数増やしましょうと。
現行主力が80年前の爆撃機に稼働率が劣るという、、、
80年前だと1944年だから戦中なんだけど戦中の爆撃機ってどれのこと?
予備部品などがたっぷりあるはずの現在生産中の機体がすでに製造が終わってしまった機体より、しかも前年度よりも数値が落ちている、というのがさらにこの問題を深刻にしてる気がする
F22なんてどちらかというと稼働率その他で劣等生なのにそれ以下とか
しかも米本国でこれだと海外組ならもっと落ちるんじゃないか?
前記事で韓国にも重整備がどうたらいうのがあったが、アレって政治がどうとかでなくてこれが関連してるんでは
単純に重整備の頻度がシャレにならんぐらい多すぎて一々海外の整備拠点まで運んでいたら飛行時間より輸送されてる時間のほうが長くなりそうと。それかオーストラリアの整備能力軽く超えるからとか
つまり英軍機のティーポットが故障したら、紅茶を飲むミッションが遂行できないから、MC率が下がるわけだな。
マックカフェ行かないと。
第6世代の戦闘機の前に5.25世代で整備性や運用効率やコストを抑えた機体を開発したら?
ローコスト版は、無人機や練習機と兼用の軽戦闘機の方が選ばれるので、本格派では現行の第4世代系統の改善型の方が安くなると思いますよ、F-35の1時間辺りの運用コストとF-15の運用コストが同じですが、ステルス塗装の費用とかは別計算ですし、コスト重視ならSU-75みたいな塗装に頼らない構造のみステルスにしても、航続距離が減少して、結局調達数を増やさなければならないのならば、忠実なるウイングマン型の無人機がそれに当たり‥有人機は必然的に第6世代になるというのが現実的ですよ。
なので、第5世代で練習機と無人機と連携出来る戦闘機を兼用出来て外見上有人か無人化判別出来ない(キャノピー廃止?)機体も開発した方が良いと主張した方が良いと思います、無人機も大型化していくでしょうし。
F-35はTR3待ちの機体を除いてもこの稼働率なんでしたっけ
F-15EXでは代替できない任務がどこまで想定されているか次第でしょうが、NGADとCCAは間違いなく開発遅延するので、2~3年後にはF-15EXが再生産されてそう
ウクライナ戦争ではSAMの脅威がある中で双方が非ステルス機を運用し続け、Su-57が前線で目撃されたことはまだないようですが、ステルス機(第5世代機)はイマドキに言えばコスパもタイパも悪過ぎで、よほどの非対称戦以外では実用性低いのでは…
米軍の問題って悪化する一方なので・・・
これからさらに加速度がついていくと思います
???「稼働率が50%なら、機体を二倍にすればいいじゃない」
整備員が倍必要にになるし
そもそも機体の購入費がない
F-35は立派に役割を果たしていますよ
米国にとって「他国である以上は仮想敵国でもある各国」の国防もまとめて弱体化させたという
阿漕な商売されたからといってじゃあ今後は米国製兵器を一切買いませんとはそうそうならないorできないので…
もしフランスなり韓国なりが米軍需産業を脅かす程になるならば「同盟国とは」レベルで叩き潰しにかかるでしょうし
ここの人達が大嫌いなF‐15EX優秀じゃないの
え?みんな嫌いなの??
俺はかっこいいから好きだよ。
そりゃあ既存のF-15シリーズから消耗部品、治具が流用出来る上に
まだ調達数が10機にも満たないF-15EXまで悪化していたらおしまいでしょう。
F-15EXは新規導入機材なので部品消耗による劣化などが起きていないという点が数字に反映されているだろう点は考慮されて然るべきでしょうね
それを思えば古い機材も相応にあるF-16の70-65パーセントというのはかなり頑張っていると言っていいでしょう
F35のいい話をたまには聞きたい
事故で墜落したしなあ
アメリカ空軍以外に打撃(strike)を与えた
F-35Aがまともに運営できるまでの繋ぎで、F-15EXや輸出用のF-16C/Dblock70辺りも少々買う必要があるのか知らん?
F-15についてはパーツサプラーヤーの問題が記事にされていてダメポですが…
軽戦闘機大好きなジョン・ボイドが「F-16は数の上でもソ連に優位に立てる」と主張して空軍の戦闘機追加配備など連邦議会の同意を得た&ヨーロッパでも採用した、で大量生産したのが今のF-16の高稼働率ですからね。
V型アップグレードには機体構造強化も含まれていて米軍のSABRアップグレードも機体構造強化をやるので、V型アップグレードと新造機製造終了までは下支えしてくれそうです
F-35の稼働率が悪化しているのは
1. F135エンジンのオーバーホールが間に合わない
がメインだと思いますが、
2. TR3搭載機が増える事前提でTR2保守パーツの製造ラインを絞ってる
だとすると最悪ですね。
TR3搭載機は訓練機にも怪しい状態なので、TR2で稼働率を上げなければならないのにエンジンもアビオニクス部品も、となればミッションに使えるF-35はいずれ枯渇します。
この状況はTR3の改善と新エンジンが出るまで続きそうですね