米ディフェンス・メディアのDefenseNewsは14日、空軍の作戦機に関する稼働率向上の取り組みは4年間停滞したままだと指摘している。
参考:US Air Force fleet’s mission-capable rates are stagnating. Here’s the plan to change that.
全般的に2020年に改善を見せたMC率は2021年に再び後退、特に早期警戒機や爆撃機のMC率悪化は顕著
米軍の作戦機に関する稼働率はミッション達成率(Mission Capable Rate:MC率)とフルミッション達成率(Full Mission Capable Rate:FMC率)に分かれており、MC率とは作戦機が少なくともミッション要件の1つ以上を実行できる状態、FMC率とは作戦機がミッション要件を完全に実行できる状態のことを指している。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Joseph Pick
例えば照準ポッドとの接続不良で空対空任務しか実行できないF-16Cはミッション要件の1つ以上を実行できる状態、空対空任務も空対地任務も実行できるF-16Cはミッション要件を完全に実行できる状態という意味で、今回取り上げる稼働率とはミッション達成率の数値だ。
トランプ政権時代の国防長官のジェームズ・マティス氏は2018年、低調だったF-16C/D、F/A-18E/F、F-22A、F-35AのMC率を2019年9月末までに「80%」へ引き上げるよう命じたが、これをクリアできたのは海軍のF/A-18E/FだけでF-16C/D、F-22A、F-35Aは一度も80%をパスしたことがなく、数値目標自体は廃止されたものの空軍は引き続きMC率の改善に取り組むと表明していたのだがDefenseNewsは「空軍の作戦機に関する稼働率向上の取り組みは4年間停滞したままだ」と指摘した。
2020年/MC率 | 2021年/MC率 | |
A-10 | 72.04% | ▲72.54% |
F-15C | 71.93% | ▼69.48% |
F-15D | 70.52% | ▼68.56% |
F-15E | 69.21% | ▼66.24% |
F-16C | 73.90% | ▼71.53% |
F-16D | 72.11% | ▼69.32% |
F-22A | 51.98% | ▼50.81% |
F-35A | 71.40% | ▼68.80% |
E-3G | 70.73% | ▼60.65% |
E-4B | 58.65% | ▼57.11% |
E-8C | 66.49% | ▼61.54% |
B-52H | 60.51% | ▼59.45% |
B-1B | 52.78% | ▼40.69% |
B-2A | 62.41% | ▼58.58% |
MQ-9A | 90.77% | ▼89.91% |
RQ-4B | 73.61% | ▼65.84% |
U-2S | 73.37% | ▲75.62% |
全般的に2020年に改善を見せたMC率は2021年に再び後退しており、特に早期退役を開始した707ベースのE-8Cや後継機選定が開始されたE-3GのMC率悪化が目につくが、元々MC率が芳しくなかった爆撃機を構成する3機種もさらにMC率が悪化しているのでB-52Hのエンジン換装やB-21への更新が急務だというのがよく分かる。

出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Sam King
戦闘機のMC率は空軍保有機の中では比較的良い方で、昨年初めてMC率を70%台に乗せたF-35Aは(恐らく)エンジン問題の影響で再び60%台に後退しているのが気になるが、論外のF-22Aと比較すると上等な部類と言えるだろう。
逆にMC率が50%台のF-22Aに大金を投じてアップグレードを行うのは非常に効率が悪い=極端に稼働率が悪いので実戦に投入できる機体の割合が少なく投資効率が良くなく、放置すれば益々役に立たなくなるため空軍としては1年でも早く次期戦闘機へ切り替えたいと思っているに違いない。

出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Samuel Eckholm
因みに昨年5月の資料ではF-35Aが全戦闘機中トップのMC率(76.07%)を記録していたのだが、今回の資料でF-35AのみMC率が修正(71.40%)されており、もしかすると議会への予算説明を行うため意図的にMC率を高く見せるよう細工されていた可能性も、、、あるので中々興味深い点だ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Matthew Plew
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米軍はこう言う数値を出してて羨ましいな
自衛隊もそろそろハリボテを真に役立つ盾に変える為メスを入れる時期が来たのではないか?
ドイツすら数年前に大手術を執り行ったぞ?
真実を明らかにする事が国益になるか、は微妙だけどね
ハッタリは大事
欲を言えば各国ごとのデータを比較して同時に出して欲しいよ
とくに中国ロシアの稼働率が知りたい、最新鋭でもあまり飛んでないという噂の時期もあったし
過ぎた透明性は民主主義の弊害、隠すところは隠すべき
米空なら対地攻撃用の外装ターゲティングポッドと接続不良で非フル稼働機扱いされるか知らんけど空自は大綱定数の機数分もの外装ポッド持ってさえいないというね
空自の場合はF2がマルチロール機でも平時は実質単機能運用でアラート待機は空対空のみ対応で対艦戦闘はできる状態ではないだろうし比較にさえならん
何と言うかアラート待機の意味、履き違えてんじゃないのか。
アラート待機は基本スクランブル対応だから対空対応のみが正解。どこの世界に領空侵犯する航空機並みの速度出す艦船あるのよ。艦船がキナ臭い動きしてから対応しても普通間に合うでしょ。流石に無害通航権を行使して攻撃に転じるアホな国はそうはないだろう。
艦載の長距離ミサイル云々の可能性があったとしても、それ積んでいるからもしもの事態に備えて対艦攻撃準備している国ってあるの?
他の国なら対潜警告で爆弾使いませんか?空自アラートでそれは無理ですがね
無論ながら艦載戦爆機なら空対空単機能なはずもなく
今はF-2アラートの話ししているのに何で対応も考えていない潜水艦の話になるのよ。
日本なら対潜なんてP-1かP-3の仕事でしょ。
対潜考慮してスクランブルで空軍機に爆弾積んでいる国はあるの、こんな話するならそこからだと思うが。
日本みたいに任務内容が防衛に特化してる場合、公開するメリットよりもデメリットが勝つ場合もあると思うけどね
アメリカみたいに、対外での活動が多く、稼働率と一概に行っても、一体どの分野ではどの程度なのかまでははっきりしないし
「防衛行動だけ」で公開しちゃうと、日本の実際の防衛戦力を晒すリスクとイコールになりやすいから
そのリスクをかけてまで、国民に公開するメリットが勝つのかと言われると…
熟考あって然るべき事柄だと思うけどね
アメリカでこれくらいの数字なのだから、ロシアではもう少し悪いくらいなのかな?
東側の情報は謎につつまれているが、ウクライナ侵攻である程度分かるのかも知れない。
今の時点では侵攻間際なので万全の整備状況で臨んでいることでしょう。
しかし現在の状況が長引けば移動や訓練等で早晩ガタガタになるでしょう。
現状が長引くとロシアに不利になると推察します。
メスを入れるための予算をどこから持ってくる?
他の省庁は、自分たちの予算が削られるとなると、徹底抗戦するぞ。
それこそ、政権を倒すつもりで。
必要経費の出し惜しみは、より大きな損失につながりますが?
数の上で最大のF-16は、もうメジャーアップデートの予定はなく、稼働率が上がる材料がないからなぁ
今後はさらに下がっていくのみ
空軍全体での改善は、F-35の配備と稼働率改善が全てを担ってると言っても過言じゃない
後継機やATTの配備が進めば分母(=運用機数)を減らせるから
稼働「率」は上がるんじゃない?
それはたしかに。
おっしゃる通り、稼働率は一つの指標でしかないし、高ければいいとも限らないからなぁ
意図的に稼働率を下げなきゃいけない場面もある
例えばアラスカのF-22
管理人はF-22を論外だと評しちゃってるけど、アラスカ配備であるが故に、予備機を確保して意図的に稼働率下げてる側面もあるから、論外は言い過ぎだとも思う
確かにF-22がもともとから稼働率が悪いのは事実にせよ、多忙な基地では稼働率下げないと、あっという間に飛行時間を超過しちゃうからね
稼働率を公開するならその辺まで含めて可視化しないと適正な評価ができないし、かといってそんなん全部公開したら敵に色々筒抜けですよね。
やたらに公開するより、軍外部の監査組織が詳細に監査した上で適度にぼかした「評価結果」だけを公開するくらいでいいんじゃないかなぁ。
B-1Bとかそれの格好の例。状態の悪い17機を砂漠送りにしたから2022年の稼働率は上がると思う。
しかし、現役機は45機まで減ってしまったのが微妙。
もし17機退役してもなお稼働率が40%まで低下し続けているならB-1艦隊は絶望的。
あと10年もしたらVPLUSとかいってF-16Block73/74がでそうな気がする。
米軍が採用するかは別として
ウクライナ情勢がヤバすぎる故に米軍のMC率が良くないという記事で一息つくことになろうとはw
俺の生え際も後退してるけど、引き続き米空軍と共に改善を目指します!
〜それから数年後〜
改善できず、もうしわ毛ございません!
そういえばコメ欄で大喜利なんてやっていいのかな?
A-10の稼働率はすごいね。
アメリカさん、廃止しちゃだめよ。
コータム積んだだけの74式みたいなもんで要は飛ぶだけできれば使えるローテクなだけでは?
データリンク装置が膝に乗るPCAS端末だけでMC率には関係ないだろうしそもそも有視界戦闘の対地攻撃専用機となれば要求基準は最低でアパッチよりローテクだろっていう
でもA-10で制空権は取れないし。
個人的にも神機だとは思うけど、そろそろ神を維持するためのリソースを他に回してもいい頃合いだと思う。
>今回取り上げる稼働率とはミッション達成率の数値だ。
つまり完璧な状態で出来る事が多い機体ほど高い数値を維持するのが難しく、出来る事が少ない機体ほど維持するのが菅という数値です
攻撃機のA-10は他機種と異なりもともと出来る事がかなり少ないため高い数値を維持しやすい機体ということであり、むしろマルチロール機より少し高いだけの数値は攻撃機としては低く、老朽化や時代遅れを示唆しているものだと思われます
正解
他にも、F-15CDの稼働率が他と比較して高めなのも、配備の殆どが後方に配置されたものしか残っておらず、ついてる任務自体が少ない。
少ない任務に合わせるだけでいいからそりゃ稼働率は高くなる
反面、F-22の極端な低さは、もちろん、F-22自体の稼働率の悪さもあるが、
そもそも配備機が少なく予備機の割合が少ない
後方配備機自体も少なく、稼働率を押し上げることができない
その上、その少ない後方配備機はF-22という性能の高さ故に、政治的にも使われることも多く、
対外派遣も少ない割によく派遣されるせいで、後方配備でも任務が多い
こういった運用面での悪条件が重なった結果でもある
>そもそも配備機が少なく予備機の割合が少ない
訂正。これじゃ意味が逆になってしまう
そもそも配備機が少なく予備機の割合が多い
が正しい
予備機の割合が全体の数より多くなると、数値上での稼働率は悪く出る
アイキャッチ画像かっこいいな!レイクンヒースのF-15E D-DAY75周年塗装かな?
DVIDS というサイトを訪れてみては?
この他にもかっこいい写真が沢山あり、管理人さんも米軍関連はここから画像を拾ってきてると思う。
な? A-10 だろ?