米空軍で戦略とマルチドメイン(多次元戦闘)作戦のコンセプト開発を担当しているクリントン・ヒノテ中将が戦闘機戦力の縮小に関連してF-35Aの一部を退役させる可能性を示唆した。
参考:Air Force Could Ditch Oldest F-35 Jets as Part of Fighter Downsizing, General Says
初期ブロックのF-35Aを処分して最新のF-35A Block4で置き換えることで戦闘機戦力を強化
米空軍の戦闘機は平均28.6年と異常に高齢化(米海軍の戦闘機は平均14.4年、豪空軍の戦闘機は平均8.9年、英空軍の戦闘機は平均16.5年)しているため機体の維持コストが毎年インフレ率の2倍の割合で増加、これが空軍の予算を圧迫しているため2026年度までの5年間で老朽化した421機の戦闘機を処分する計画を議会に提案する予定だ。
具体的に処分される戦闘機の内訳はF-15C/Dが234機→0機(234機削減)、F-16C/Dが936機→812機(124機削減)、A-10が281機→218機(63機削減)で、代わりに米空軍は2026年度までにF-15EXを84機とF-35Aを220機調達すると主張しているが処分と調達の数が釣り合っていないため米空軍の戦闘機戦力は117機縮小することになり、戦闘機の削減幅は2010年度代初頭に実施された250機削減に次ぐ規模と言われているのだが空軍のヒノテ中将はF-35Aの一部も退役させるかもしれないと言及して注目を集めている。
米空軍が導入した初期型のF-35Aは訓練用途に使用されているのだが搭載されているソフトウェアのバージョンが古く「これを最新のものにアップグレードするには多くの費用が必要なので最新のF-35A Block4で置き換えることを検討しなければならない」と米空軍で戦略とマルチドメイン(多次元戦闘)作戦のコンセプト開発を担当しているクリントン・ヒノテ中将が言及しており、空軍は訓練用途への過剰投資を見直すべきだと主張しているのが非常に興味深い。
米空軍の戦力にカウントされている戦闘機の中には訓練専用に割り当てられている機体が多数含まれており、例えば234機保有しているF-15C/Dの内26機は訓練専用のF-15Dで936機保有しているF-16C/Dの内150機は訓練専用のF-16Dだ。
さらにF-22Aは保有する機体の1/3は訓練用専用の機体で、これらの訓練用専用機は最新のアップグレード計画から除外されているため有事の際に戦闘任務へ投入できるほどの能力を備えていない。
要するに実戦に対応した機体と運用・維持コストが変わらない訓練用専用機を保有するのは大国間との戦争に備える新しい時代には相応しくない=つまり古い機体を訓練機に回すのは資金の無駄遣いなので有事の際に戦闘任務へ投入できる機体に置き換えるべきだと主張しているのだ。
恐らく訓練用途への過剰投資の見直しには地上シミュレーターや各固有機材の特性を疑似再現できるT-7Aの活用も見越したものだと思われるが、初期ブロックのF-35Aを処分すれば同機の稼働率向上の足を引っ張っている問題も解消するのでヒノテ中将の言及は相当含みのある話なのだろう。
補足:例えばF-22Aに搭載されたアビオニクスの基本的な操作方法を習得するのに高価なF-22Aを使用するのではなく、T-7Aレッドホークのコックピットに搭載された大型ディスプレイ上にF-22Aのアビオニクス操作画面や操作結果を擬似的に再現することで実戦部隊に配備される前に訓練を行い実機による訓練時間短縮を図るという意味
因みにF-35は機体設計に細かな変更が加えられていたりソフトウェアの更新とは別に搭載された電子機器の刷新「Tech Refresh」が複数回行なわれているため、訓練用途に回され放置されていた初期ブロックのF-35Aを最新のソフトウェアに対応させるためにはスキップされたTech Refreshを組み込み必要があるので、それなら新造に調達したBlock4で更新した方が手っ取り早いという意味(数が少ない初期ブロック専用のスペアパーツなどは時間が経過すればするほど入手困難になり調達コストが高騰する)だ。
物を大切にしろと言われて育った管理人からすると導入から10年しか経過していない初期ブロックのF-35Aを退役させるというのは何とも勿体ないと感じるが、運用・維持コストの観点や戦闘効率から考えるとヒノテ中将の主張にも一理あるのだろう。
関連記事:米空軍が運用するF-35Aの稼働率が大幅に改善、F-15やF-16を抑えてトップに立つ
関連記事:F-16の後継機計画が米空軍の公式資料に登場、新しい戦闘機「MR-X」の登場は2035年頃
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Evan Parke
日本のF35はどうなの
block3だから、大丈夫。
というか、財務省が廃棄を許さないだろう。
>というか、財務省が廃棄を許さないだろう。
20年後へのフラグである
初期型のF-35がもう退役とは、確かに勿体無い気がしますね。
とはいえ、最新仕様の新造機を入れた方が安いとは、ドンだけ維持費が高いのやら。
初期のF-35はハード的にアップデートできない部分があると聞いた事があるし、互換性のない部品を調達するより、新しいものを買っちゃった方が安いというのは、理屈の上では理解できる。
問題はブロック7に至る過程で、ブロック3FのF-35は生き残れるかというところだろう。
アプデ費高すぎるし老朽化で維持費上がってるし新品買ったほうが良くね?ってことか
格安で日本に売ってくれんかな。訓練用ならいいのでは?
全然よくない
記事に書かれてる運用・維持コストの問題どうすんだよ
アメリカ以上に酷い事になるぞ
これ仮に訓練用に日本がもらっても同じようにアプデする必要があるだろうから損するだけなんじゃなかろうか
アップデート費用が高額で運用、維持費も高い、さらに実戦にも使うことができない(しかもスペアパーツも少ない)から処分しようって話しなんすよ
F-35といえどもさすがにいらないよ
それならT-7を買った方が良い
初期型のF-35なんて、いうならば未完成の試作機みたいな物だからな
形態管理の都合上からも、厄介な機材は処分してしまいたいと
タイフーン・トランシュ1と同じ扱いになりそうだ
配備を急ぐ余り完成度の低いモノに手を出すと、後々ツケを支払わされることになるのか。
まあ、スマホみたいなもんやな。
GSMの第一世代iPhoneみたいなもんか.
先月プーチンに「そちらがレッドラインを越えたら開戦辞さず」とはっきり釘を刺された影響で、平時体制から実戦仕様への見直しに急に本腰を入れ始めた感じ。それぐらい敵対関係がエスカレートしたということでしょう。挑発して緊張を高めるネオコンの先走りに引きずられて後から米軍が準備を始めてる。バイデン政権の好戦的な外交姿勢が気になる。
アメリカ人の割り切りの良さに感心する
アメリカ人は割り切る前にもう少し自分の足下を見直した方がいいと思う
部品取りに使えないかしら…
その部品が古くて独自なことが問題なのでは? 訓練専用と割りきるならそれもよしと思うけどねぇ
その部品が古すぎて現行と互換性がないから処分してしまえって話になってるんでしょ
アグレッサー部隊のF35はどうするんだろ。初期バージョンを使用しているはずだが、最新型にするのだろうか。
アグレッサー部隊のF35はどうするんだろ。初期バージョンを使用しているはずだが、ブロック4にするのだろうか。
更に運用機数が減って運用コストが上がるであろう初期型を残し続けることは無いんじゃないかな?
もし初期型は処分と決まれば随時置き換えていくんでしょう
F-35Iやろ
空自の初期納品機は3Fに無償改修済みだろうしな
なんかますます西側の先進性も詰んできたって感じの話ばかりだなぁ。
日本の場合、訓練だけでなく頻発するスクランブルもあるからもっと深刻なのかな。
初期型のF-35をアップグレートしないまま比較的早期に退役させるというのは既に決定済みだった話だけど
それをF-35で置き換えるというのが新しい話なわけだな
これはつまりF-35の開発計画の中の、開発と量産の同時並行という部分のコンセプトに関しては完全に破綻したと
空軍側が事実上認めたということね
現実の試作機とか先行量産型なんてこんなもんだよね
元XF-2が試験機として岐阜を飛んでる日本人の感覚からは理解しがたいかもしれんな
そのXF-2も、アップデートを行っているF-2Aとかとの乖離が大きくなり、テストする上で問題になってるとの主旨の記事を見た覚えがあります。
Jwingsだったかな?
F-35の早期調達を望む国があれば、中古で売却する可能性もあるのかな?
訓練用として売却して、実戦部隊用のF-35が納品されるまでは、中隊人員の転換養成に使うみたいな
ギリシャ相手にこの手法は検討されていたかと。
売却ではなくリースとかで訓練用途に各国に出して、使い倒した上でアップデートさせずに退役が良いような気が
使い倒すにしても割高な維持運用費を誰が負担するのかという問題があるかと。
それが今後更に膨らみ整備体制上も余計な負担になるから米空軍は早期退役を計画していたわけで。
イスラエルなら、手を上げそう
F-15みたいに独自改修で魔改造できそうですね.