フルパワーでガスタービンエンジンを作動させると推進システムが損傷する問題に悩まされるフリーダム級沿海域戦闘艦に進展が見られたが、今度は低コストな運用を目指していた沿海域戦闘艦の年間運用コストが非常に高額である指摘され注目を集めている。
参考:Tests to Fix Big Design Flaw Plaguing Navy’s Littoral Combat Ships Will Start Soon
開発を進めていた新しいギアボックスが完成、今度は地上施設で検証後にフリーダム級に適用
フリーダム級沿海域戦闘艦は巡航用ディーゼルエンジンと加速用ガスタービンエンジンの動力をウォータージェット推進システムに伝えるための構造に致命的な問題を抱えており、米海軍はフルパワーでガスタービンエンジンを作動させるとクラッチベアリングが想定以上に摩耗してギアボックスに致命的な損傷を引き起こすのは「設計上の欠陥」だと主張してる。
しかしフリーダム級の建造を請け負っているロッキード・マーチンやギアボックスを設計したドイツのRENKは「クラッチベアリングの摩耗は潤滑剤の取り扱いが不適切だったためで設計上の欠陥ではない」と主張、最終的にギアボックスを再設計して交換することで合意したものの新しいギアボックスの検証作業や交換作業を完全に終えるには時間がかかるため、当面は「リスクを軽減する措置(急激な速度の変更やフルパワーでの航行を制限している可能性が高い)」を実施することで対応している。
発注済みのフリーダム級に関しても海軍は同様の措置を実施することで受け入れを継続してきたのだが突然方針を変更、推進機関の問題が修正されるまで新規の受け入れを停止すると言い出した。
要するにロッキード・マーチンは新しいギアボックスが同じ問題を引き起こさないと実証できるまで建造を進めている11番艦~15番艦までのフリーダム級を引き渡せないという意味で、これは設計上の欠陥を認めないロッキード・マーチンに対する米海軍の圧力なのだが、ようやく開発を進めていた新しいギアボックスが完成して地上施設での検証が始まると報じられている。
果たして新しいギアボックスはガスタービンエンジンのパワーに耐えられるのか注目されるが、そもそも推進システムの問題で10年以上悩まされることになった根本的な原因はフリーダム級に採用した実績の乏しい主要コンポーネントを事前に地上施設で検証することをスキップした海軍のせいで、事実上のプロトタイプと目されていた1番艦フリーダムの運用結果が判明する前に10隻もの大量発注を実行したため完成度の低い不具合を抱えた同型艦を大量に引き取るハメになったのだ。
そのため新しいギアボックスを地上施設で検証するというのは余りにも皮肉なプロセスで、1番艦フリーダムの建造前に実施しておけば推進システムの問題で悩まされることは無かっただろう。
因みに沿海域戦闘艦(フリーダム級/インディペンデンス級)は運用コスト引き下げを実現するため、水兵が担っていたメンテナンスの大部分を請負業者に委託することで艦の運行に最低限必要な乗組員編成を40人(後に50人編成に変更)まで削減する方法を採用していたのだが、米メディアのDefenseNewsは沿海域戦闘艦の年間運用コストは約7,000万ドル(海軍は5,000万ドルだと反論している)でアーレイ・バーク級駆逐艦の約8,100万ドルと大差がないと指摘している。
参考:High operating costs cloud the future of littoral combat ships, budget data reveals
果たして沿海域戦闘艦の年間運用コストが幾らなら適正なのか不明だが、海軍のマイク・ギルディ作戦部長が自ら同艦の年間運用コストが高額であることを認め「請負業者に頼ったメンテナンスを止めて整備担当の水兵を再配置を進める」と述べており、交換可能なミッションパッケージの開発に失敗したことで水上戦、機雷戦、対潜戦いずれかの単一任務に固定されることになった件も含めるとフリーダム級とインディペンデンス級の当初コンセプトは完全に崩壊していると言っていい。
関連記事:米海軍、設計上の欠陥を理由にフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止
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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain フリーダム級沿海域戦闘艦
今回得られた教訓をまた忘れて同じ失敗をしてしまうに一票
海軍ではなく空軍ですがデジタルセンチュリーシリーズの成否も気になるところです。
DCSは成功、と言えるのはメッチャ先だからなぁ。
失敗はすぐにでも起こり得るけど。
運用コスト年間70億円とか
一隻でこんなにかかるのか
中国とか他国の船の運用コストも比較したい
せやな
艦齢が若い現在ですらこの有り様。
ライフサイクルコストの概念は、「退役艦を海保に使わせろ」論者にこそ理解してほしい。
退役艦イコール老朽艦の維持費がすっぽり頭から抜けてて「そのほうが安上がり」と言う方々すらいる
海保も海自も論じられるレベルでライフサイクルコスト情報公開してないし
単なる一般論レベルなら海保の大型巡視船(PLH)なんか過半が老朽艦な有様だろ
そも大型巡視船は護衛艦と比べ致命的に速力差があるんで老朽化度合い以前に運行コスト差が生まれるから単純比較出来ないわ
アメリカの色々な問題が話題に挙がるけど、裏を返せば、情報の透明性があるともいえるよね。
自衛隊は問題あっても、ほとんど公開しないし、他国も似たようなものなのかも。
そういう意味では、問題をオープンにして解決していくアメリカは優れているともいえる。
一般論としてはそうだけど、機密性が重要な軍事分野でも同じかといえば議論のあるところ。
かといって、機密を盾にフリーハンドで好き勝手浪費されてもまた困る。
難しいところだね。
全てを公開していないけれども、比較的透明性の高いアメリカで問題があることを我々一般が知ることができているわけですから、ほぼほぼ都合が悪い情報を非公開の中国の兵器開発も、実はアメリカ同様問題がある可能性がありそうですよね。
いい悪いではなく兵器開発の実態としてです。非公開問題を解決後に公開すれば完全無欠に近い情報が世界に広がり中国はすごいという評価をインテリジェンス以外の一般大衆は持ちそうですが、はたして運用する中国軍の現場はアメリカ同様不具合修正が成るまではしわ寄せを食ってそうですね。いつの時代もどこの国々でも現場が大変。
フリーダム級の設計と製造がまともだったら本当に運用コストが下がるなら、海自も同じような艦を建造してもいいのでは?
沿岸での運用だからメンテを業者に任せて運用する隊員の数を減らせるのは実に魅力がある。
もがみ「……」
民間に委ねると別のリスクも発生しやすいから、安易に同意しかねる
省力化とはムダを省くことで、必要を省いた結果がこの体たらく
実際最初は海自もフリーダム級良いかもなって思って、海自としてちゃんと検討してたよ
ただ色々検討するうちに、フリーダム級を真似てもちょっと使えないかもなと考え直して、実現したかった省人化とかコストを抑えることや、任務や用途にあわせて柔軟に造れる船を日本流に考えることにした
それが最上です
沿海域戦闘艦って戦闘力ほとんどないよ
今の日本の環境に全く合わないと思う
今色々と防衛相もやらかしてるし私も批判的な意見を持っているけどこれを真似しなかった事だけは深く感謝している
あま良いではないか、日本のイージスショアの代わりのイージス艦…、自衛隊の要求が多胴艦イージスなんだよ(震え声)。
うーんこの不良債権…
多胴そのものは決して目新しい技術ではないから。 トラブルの出ないようにキチンと検証に手間をかければ大丈夫
未知の技術を見切り発車するような米軍的大胆さは海自には無いやろ
艦艇の整備って水兵がやってるの?
ずっと民間の造船所に丸投げが軍属の整備士がやってると思ってた
もがみ型買って下さい。
お願いします。
暇な三菱のドックで。
船体だけでも買ってくれるとありがたいね。
擬装はアメリカでやれば、そんなに反発でないかも。安いし、お互いたすかるよね。
でもなぁ、もうコンステレーション級が決まってるからねぇ
ざっくりとした捉え方だと、フリーダム級で失敗したアメリカの会社をイタリア公営会社が買って、コンステレーション級を作るんで、どうなんだろって思うんですけどね。
同じ型を別の造船場で作った方が良いのではと。
そうなると造船所と雇用の問題が出てきて、またややこしくなるので
十分な検証も為ないで複数艦建造するとは、何処かの半島の軍と同じじゃ無いか!?
作戦に制限が掛かる戦闘艦・・・方や潜れない潜水艦・PPの無い戦車 沢山有る!
自衛隊は反面教師として生暖かく見守ってください。
もがみ型の方が建造費も維持費もコスパが良くて
武装も強力で沿海で活動するにはアメリカにも最適だと思うけど
しかし、あいつらは失敗ばっかりだな
後続艦コンステレーションも失敗しそうw
今までの反省を踏まえてコンステレーション級は先進的なシステムを無理には使わず既存の兵装とシステムを組み合わせる方向で進めるらしいからあんまり失敗する要素はなさそうだけどねぇ
懸念があるとすれば、元になったカルロ・ベルガミーニと速度が同じで米艦船としてはちょっと遅いところかな
近年、米軍は艦艇でも航空機でも開発で大失敗が続いてる。半世紀以上も昔に開発されていた空中給油機を、21世紀の今再開発したら給油装置をうまく造れず遅延するとか。英国でもPOWのお漏しで半年謹慎事件とか、技術の屋台骨がおかしくなってる危惧を感じる。
根本的に、冷戦が熱かった?頃と違って軍・軍需産業の地位が下がって、軍も軍需企業も技術者にろくな人材を確保できないんじゃないだろうか。同じ就職するならITとかAI関連の方がずっと待遇がいいだろうし。
その中で中国だけは軍需産業が造船含めて勢いを感じるのが、西側の凋落と対比されて不安になる。最近の中国海軍には平賀譲の頃の日本海軍のようなイケイケ感を感じる。
なぜ失敗の連続なのか検証しないのかね
アメリカは
優秀な理系人材が製造業行かずにウォール街で金融工学駆使して変な金融商品作ってるんでしょ?
そりゃ産業も弱くなるわな
最近日本も似たようなルートに突入しつつあるんでね……
ズムウォルト級でヘタこいたから、せめて数が揃っちまったLCSは救われて欲しかったが……最近の米国人、見通しが甘くなってきたね
O·H·ペリー級と同等の戦闘力を最初から備えていたら、まだ使える子感はあっただろうに……
ていか、ペリー級の代替艦でもあったんだろ? いくら時代の流れとはいえ、何で武装を少なくしたんや?
ペリー級も末期は、使わなくなったターターランチャーを外して機銃を増設して、密輸業者を追い掛け回していたからね。そういった運用に特化しすぎてしまったのだろう
そうこうしている内に、中国が膨張してしまったと。なにしろ、LCSの1番2番艦が発注された時期は、中国がソヴレメンヌイ級を買っていた頃だからね
そこら辺は、欧州のフリゲートも非対称戦に振って武力過少になってたり。
冷戦終わって、軍事兵器の新陳代謝が滞ったのと軍事企業が統合して寡占化進んで競争しなくなったり。
フリーダム級ほど野心的でないとはいえもがみ型もCODAG方式だから他人事ではない。
もがみ型もすぐに量産しても大丈夫かね。2番館ぐらいで一旦止めて2年ぐらいのテスト期間を設けたらいいのに
大規模なものでなくとも棚の位置や艦内ドアの形状一つとっても使ってみてわかることがあるのだろうに
クルー制を導入するために同じ形を量産するならなおのこと。
NSM対艦ミサイルを追加装備したり三胴船特有の比較的広い艦内スペースと甲板で各種輸送能力も少なからずあって使い道がなんとか見出せそうなインディペンデンス級に対して、フリーダム級は…