米海軍は設計上の欠陥を理由にロッキード・マーチンが建造しているフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止したと報じられており、大きな注目を集めている。
参考:US Navy halts deliveries of Freedom-class littoral combat ship
設計上の欠陥を認めないことに業を煮やしてフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止か?
米海軍が調達中の沿海域戦闘艦は2種類あり、特にロッキード・マーチンが建造しているフリーダム級はディーゼルエンジン(巡航用)とガスタービンエンジン(加速用)の動力をウォータージェット推進システムに伝えるための複雑な構造に設計上の欠陥があると何度も指摘されてきたが、米海軍もロッキード・マーチンも「フリーダム級の問題は修正可能で着実にサービスの向上に向かって前進している」と主張してきた。
この問題の原因はフリーダム級が採用したドイツ企業RENK社設計のギアボックスに使用されている「クラッチベアリング」にあり、ガスタービンエンジンがフルパワーで作動すると想定以上の摩耗が発生して破損、ギアボックスに致命的な損傷を発生させるためで、2番艦フォートワースは不適切な操作で推進機関を損傷、3番艦ミルウォーキーは母港に指定されたメイポート海軍基地への処女航海中に推進機関を損傷、4番艦トロイトは南米派遣からの帰投中に推進機関を損傷、5番艦リトルロックもクラッチに問題が発生してエンジンのオーバーホールを受けるハメになりフリーダム級の信頼性や運用に深刻な影響を与えている。
当初、ロッキード・マーチンとRENKはクラッチベアリングを摩耗から守るための潤滑剤の取り扱いが不適切だったためクラッチベアリングが想定以上に摩耗すると主張していたが、最終的に問題を解消するため再設計することに応じて作業を進めているものの再設計された装置を検証して全ての交換を終えるには相当な時間がかかるため、米海軍は就役済みのフリーダム級に対してリスクを軽減する措置(具体的な中身は公表されていないが急激な速度の変更やフルパワーでの航行を制限している可能性が高い)を実施することでフリーダム級の受け入れ継続してきた。
しかしロッキード・マーチンとRENKは海軍が主張する「設計上の欠陥」を認めておらず、これに業を煮やした米海軍は遂に「設計上の欠陥」を理由にしてフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止する措置に出たという話で、恐らくロッキード・マーチンがフリーダム級沿海域戦闘艦の問題について責任を認めない限り同艦の受け入れを凍結するつもりなのかもしれない。
ジェネラル・ダイナミクスが建造しているインディペンデンス級沿海域戦闘艦はフリーダム級とは異なる推進システムを採用しているため同様の問題は発生していないが、同艦は三胴船(トリマラン)構造を採用した影響で船体に発生する亀裂問題やアルミニウム合金の腐食問題に直面したもの現在はほぼ解消済みでフリーダム級よりはマシと言える。
どちらにせよ極少数の米海軍上層部が「沿海域戦闘艦は海軍に不可欠だ」と擁護しているだけで、議会も大半の海軍関係者も沿海域戦闘艦を見限っているため後継のコンステレーション級フリゲートが軌道にのれば、早々に退役することになるだろう。
因みに沿海域戦闘艦の調達コストは計画当初1隻あたり2.2億ドルと見積もられていたが実際の平均調達コストは4.4億ドルで、76億ドルもの開発コストが投じられたにも関わらず交換可能な3つミッション・パッケージの開発に失敗したため沿海域戦闘艦はコンセプト通りに機能していない。
結局、海軍は計画のキャンセル=調達打ち切りを決定したが、就役・発注済みの沿海域戦闘艦を今後も運用するためには約20億ドル(アーレイ・バーク級駆逐艦1隻分の調達コストと同額)の費用をかけてアップグレードを施す必要があり海軍を悩ませている。
今後、沿海域戦闘艦の開発になぜ失敗したのか多くの議論や検証が行われ最終的な評価が決定されると思うが、全く互換性のない異なる設計案(フリーダム級/インディペンデンス級)を同時開発したためコスト高騰を招き、プロトタイプを建造して能力を実証する前にフリーダム級とインディペンデンス級を発注したため不具合を多く抱えた沿海域戦闘艦を引き取ることになったというのが現時点での一般的な評価で、今後の活躍次第で評価が変わる可能性も無くないが現在の評価が大きく変わることだけはないだろう。
関連記事:コンステレーション級に期待する米海軍、開発中の技術を土台にした艦艇開発から脱却
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo courtesy of Lockheed Martin/Released
戦闘機部門じゃ無双状態のロッキードも船舶は苦戦してるんだな
にしてもここまで絶不調だと米海軍は呪われてるのではなかろうか
F-22は未だに最強でこそあるが商業的には完全に失敗作(輸出を止められたせいもあるが)。
F-35Aが頓挫せず物になったのは奇跡に近いし
F-35Bはギリギリ微妙で調達数は削減傾向。
F-35Cはまだどうなるか分からん。
「多国共同での多用途機開発」としては辛うじて成功したが
「A〜Cの統合開発」は失敗と言っていいだろう。
順風満帆に近いのはF-16だけじゃないのか。
> この問題の原因はフリーダム級が採用したドイツ企業RENK社設計のギアボックスを使用されている「クラッチベアリング」にあり、
調達先変えなさいよ・・としか言えないねえ。
自動車業界でもドイツメーカーの設計のミスが割とあって過去ほどの信用はない感じ。
調達先を変える = この機構を放棄 になるのでは?
他社が似たようなメカを造っていたとしても、持ってきてすぐに据え付けて完了 とはならないから、おいそれとはいかないだろう…
ベアリングに問題があるならそうだけど実際は設計に問題があってベアリングが想定以上に摩耗するってことだぞ。
20世紀の米艦艇をググってたら、新鋭艦にも手堅く実績のある兵器を積んだり、で批判もされてない。
今の米軍には、悪い意味での民間のコストダウン意識が入り込んでるようだ
企業はしくじったら潰して別会社始めますの無責任連中が幅を効かせても、
軍はそういうわけにはいかないじゃない
結局、無理に速い船速を求めたたのがフリーダム級を祟った様に思う
実際、そこまでの船速は必要と言える程メリットを生まなかったんじゃないかと
ミッションに応じて載せ替えるコンポーネントとか、思考は面白いのだけど尽く失敗じゃあなあ…
実は小回りの効く船として米海軍が欲しているのは、これら2種では無く30FFMなんじゃないのか?なんて思うレベル
ギアボックスに関して言えば、30FFMも相当な難物であるはず。
CODAG方式だから、高速航行時に1機のガスタービンの低トルク高RPMを、2機のディーゼルの高トルク低RPMと同期させて2軸
のスクリューへと伝えるギアの負荷と難易度は高い。
逆に、ギアボックスがトラブるを起こさなければ、CODAG方式は軽さ燃費と高速性能が良い優れもの。
(2回分のエネルギー電気変換ロスが無い分)燃費がGOGLAGより良いのもグッド。
三井E&Sは良い仕事してるねえ
CODAG方式の機械としての評価はこれからだろう。就役してからの故障率をみないと。
と言っても、故障率なんて公開されないだろうから、いい仕事をしているのか否かは部外者にはわからないんじゃないかな。
あとLCSは数か月おきにクルーをフルローテすることで
水上要員の心身の涵養と陸上での技術研修などによる技量向上なんかもメリットに
挙げてましたね。
LCSは当初から現場では
「俺たちが欲しかったのは21Cに対応したO.H.Pなのに~」
とこき下ろされてましたなw
ホントそれ。LCSのコンセプトが示された時、どうしてもそれのメリットが理解できなかった。素人の自分には理解できない米国の軍事専門家達の深慮があるのだろうと思って必死に理解しようとしたが理解できなかった。
中国海軍が急速に近代化してるなど冷戦後のアジア軍拡傾向から、てっきり21世紀開始後の次世代フリゲートの構想は、スプールアンス級の役割も少し肩代わりできるペリー級の近代発展版だろろうと思っていた。ところが軽武装の高速コルベットを建造するというので困惑したよ。
ズムウォルト級も沿岸からの投射力重視だったし、水陸両用戦やLICばかり重視しすぎだろうと思った。中露やその他新興国の近代化した海空軍戦力に対抗できないという感想を持った。
そしたらこの体たらく。失敗を恐れず新しい事に挑戦する事は評価はしたいけど、ストリートファイター戦略といいあまりに奇抜すぎだし、中露イランの戦力を侮りすぎ。
開発方針に今一つ一貫性がなく、新規開発したくてもどんどん新たな要求されたら失敗したり開発費が高騰して当然。戦略状況がどんどん変化したから止む得ないとはいえそれにいちいち対応してたらキリがない。やはり以前の艦艇の発展拡大という堅実な路線を基礎にある程度将来の拡張させる余裕を残した艦艇を開発すべきだった。
いや、あれは「沿岸警備隊では対応できない、高速、高武装の船に対応するための陸上とのネットワーク連携艦を安価に建造する」がのが当初のコンセプト。
後から当時はやりのマルチユニット対応なんか入れるから、高価になっただけ。おまけにユニットも完成しなかった。
だから速度は大前提で譲れないところ。概念設計通りにやってりゃあまともな艦になってた。
CODAGは技術的挑戦だったから、やっぱり失敗してたかもしれんけど。。。
小回りが効くのは、コール事件で自爆ゴムボートを回避する速度が必要とされたから。
(指揮官をCIAが消してくれて、それ以降は起きていない?リーパーも活用してるみたいだし)
そして、時代は対艦ミサイルを積んでないとあおり運転をしてくる、中国への威圧が任務に移っちゃったし。
試験艦のはずの1〜4番艦が批判されるのは何だろ。今年6月に退役するのに。航空機の試作機のつもりは通じないのか。
まあね…。あれはLCSが当初のサイクロン級みたいなヘリ無しの哨戒高速艦みたいな艦だった時にこそ意味があった高速力だったと思う。そこにヘリも搭載する事を要求した時点で無理があった。それをやったら大型化高価格化は避けられない。ヘリ搭載時点で高速性能はきっぱり諦めて57mm速射砲と機銃、搭載ヘリによる対処に切り替え、従来型の艦体設計にすれば汎用性のある堅実なフリゲートにできた。つまりペリー級の発展型や平凡だが堅実な汎用フリゲートにすべきだった。
冷戦後の30年間は腐るのに充分な時間だったという事なのだろうか
実質敵無しだったから仕方ないと言えば仕方ないかもしれないが
どんな超大国も必ず腐り落ち消えていきますからね
それは歴史が証明しています
ですがアメリカがこのまま腐り落ちるとも思えないんですよね
肉も果物も腐る手前がいちばん美味だからね
米国のもうひと暴れに期待しとく
30FFMもフリーダム級と同じくCODAGだったと思いますが、同じような故障に悩まされたりしませんかね?…
“あすか”で試験してたのはCOGLAG(まや型に採用)で、そちらはかなり長いこと試験してたので大丈夫だと思いますが…
どなたかCODAGを試験した等ご存知ないですか?
最大速力30ノット程度としてるから大丈夫なんじゃない?
まさに今、「くまの」でそのあたりのことも含めてテストしてるはずで、祈る以上のことはできないだろう。
サウジアラビアにフリーダム級の強化版売るとか聞いてたけどそれも無しかい?
無くなるだろうね。というかLCS自体もう駄目。あんなんじゃイラン空軍のミサイルでたちまち撃沈されるに決まってる。
高速艇の対応は韓国海軍や台湾海軍の方がはるかに遥かに実戦経験がある。その2国にアドバイスしてもらって設計開発した方がマシだと思う。
>プロトタイプを建造して能力を実証する前にフリーダム級とインディペンデンス級を発注したため不具合を多く抱えた沿海域戦闘艦を引き取ることになった
新しい技術は大事だけど、試作くらいはしないとね・・
同感です。フォード級も似たような失敗してるし。
とうとう米議会のみならず海軍にも見放されそう。
コンステレーション級フリゲートも、まだ実証されてないSPY-6搭載しないでもっと安く仕上げてDDXに注力した方が議会も納得しやすいと思うんだけど。結局アレやコレやでコスト高になってまた叩かれそうな予感。
アメリカのProceedingsの2008年2月号でホランド退役米海軍少将がなぜ失敗したかを投稿していてその内容の抜粋を、世界の艦船2008年11月号で山崎氏が載せてたけど、装備の調達哲学や付随する調達組織の変更が艦艇の建造を、技術的な演習から財政会計事業にしてしまった事にある、とか色々書かれていて、なるほどなぁと思った覚えが。
艦船の設計にあたり、任務の定義があいまいで運用コンセプトの詰めが不十分。
技術面では、ビジネスモデルを大胆に取り入れた設計思想にあり、政府設計書を進歩への官僚的な障害とみなし商船の設計基準を採用、建造造船所には米海軍艦艇を建造した事のない造船所を選択した結果、大幅なコスト増と開発遅延に。
人的な問題はNAVSEAの権限を弱めた一方で、艦艇建造の経験がなく短命な政治任命幹部の手に高度に技術的な艦艇建造を委ねてしまった事。
とか。
どれも、今見ても、これは失敗するわ…と思う。
これも新自由主義の弊害ってやつになるんだろうか?
腐り方が大企業のソレと変わらん…
アメリカ海軍に限らず、兵器にフレキシブルな汎用性を求めすぎるとものにならない事例が多いような…。
それはさておき、海軍側の隠蔽体質が見えかくれ。
フォードも同じような経緯をたどっているし、心配になってしまう。
戦場においては単機能こそ求められる、器用貧乏って言葉は今でも的を得てるよ
多機能、多用途とは平時における文民のアイデアに過ぎない
平成家電のビデオ内臓テレビwかならず録画機能から先に壊れて、本来はもっと長寿命なテレビまで買い換える羽目になると。
そのメーカーの社員が、小声で詐欺だねって言ってたよ。
いまは海自が心配でならない
戦闘機専用空母や攻撃機専用空母は初期に検討されたけど結局廃れて全機種混載するようになったし大戦後しばらく対潜駆逐艦と対空駆逐艦を分けて建造していたソ連や日本も最終的にいろんな性能をバランスよく統合した汎用駆逐艦一種類を量産するようになっている。
LCSやFFMは空母に近い概念で艦載機の開発に失敗したらそりゃどんなコンセプトも機能しないという当たり前の話でしかないと思う。
開発の根拠が運用面の合理性からでなく経済性から来てるところに失敗の原因があるんだよ
充分な試験をしなかったから失敗したのでなく、はじめから試験という時間と手間を省くのを主目的とした企業的な損得計算こそ失敗の主因
LCSは一つでよかったんだよなぁ。
抑えが効かなったんだろうけど。。。
CODAGは難しいのは記事通り当初からわかってたこと、技術的挑戦だったんだが、さて川重は克服したのかどうか。
慎重な海自のことだから確証は得てるんだと思うけど、当初は苦労しそうだねぇ。
久しぶりのディーゼルってのもあるし。
まあ、あぶくまがまだ現役だから、これから人員移すんだろうし、見込みはあるんだろう。
対テロ戦争が大規模長期に及んでいたならば、あるいは有効必要だったかもしれないが
現実は、戦争は短期化、兵器開発と調達は長期化ですからミスマッチも発生するのだね。
石橋を叩きもせずに渡ろうとする米海軍…
橋がかかっているかも確認せずに河を渡り始めたのがアカン
海軍だから泳げばいいと思ってたんじゃない?
上の3人に座布団1枚ずつ!!
石橋だって崩れることもある、
まして目をつぶって渡る奴など落ちて当然
海軍のLMへの不信感が募らなければいいが。1件の契約が巨額だから、LM側も易々とは
非を認められないし、もちろん海軍側にもF級の導入について落ち度はあるのだろう。
まあこのLCSの根本的失敗とLCS追いかけ回され事件があったからこそ、DEXが30FFMになった。ある意味日本の防衛に寄与したと言える
LCSを目指していた自衛隊が
LCSが失敗して反面教師になったおかげで
前評判がいいFFMが出来たことに感謝だなw
まあ、FFMもかなり思い切ったシステム導入しているから
実際に運用してみてどうなるかわからんが
改修案でVLS搭載を拒否してレーダー積んだって話だから前線でVLS搭載UUVとかVLS搭載コンテナ船とか対空機雷置いて防衛線構築するんじゃないか。魚雷から逃げれればいいので速度極振りなのもうなずける。
LCSは、速力が早いという点が取り柄の一つだったのに肝心の動力伝達系に欠陥があったのではもうどうしょうもないですね。
一部にアルミとステンレスを接続させるとか素人並みの部材合わせをしてたからね。
マジ素人が設計したかものジョークが出た程。
ちゃんと絶縁材をかませたんだろwまさかな