韓国を訪問したデル・トロ米海軍長官が「ハンファオーシャンと現代重工業に米国進出を働きかけた」と報じられており、現代重工業も「韓国海軍やフィリピン海軍だけでなく米海軍の発展にも貢献する造船企業になるだろう」と声明を出した。
参考:In South Korea, Del Toro courts major shipbuilders to set up shop in US
参考:Anduril, Hanwha team up to bid for Army’s light payload robot
現代重工業は韓国海軍やフィリピン海軍だけでなく米海軍の発展にも貢献する造船企業になると声明を発表
海外の防衛産業企業が「7,000億ドル以上」とも言われる米国市場に参入するには「現地化」が必須で、欧州企業だけでなくアジア・オセアニア企業も「現地企業の買収」もしくは「合弁企業の設立」で米国進出を図っており、オーストラリアのAustalも「Austal UAS」を設立してインディペンデンス級沿海域戦闘艦やスピアヘッド級遠征高速輸送艦の建造、バージニア級原潜のコンポーネント製造を受注、2021年に米国進出を果たしたシンガポールのSTエンジニアリングも民間機や軍用機の航空機整備拠点の運営、沿岸警備隊向けの艦艇建造、米海軍の艦艇補修事業などを受注して20億ドル以上の売上を上げている。
米中対立がもたらす軍事的緊張を背景にインド太平洋地域での海軍戦力拡張が活発で、韓国のハンファオーシャンは海軍艦艇向けMRO(艦艇の整備・修理・点検)事業の需要が高まると予想、昨年6月「国際的な需要を獲得するため本格的な海軍艦艇向けのMRO事業を扱う専任部門を新設した」と報じられていたが、ハンファオーシャンは「米造船企業の買収を進めている」「造船所買収に必要な資金は最近発表した防衛部門への投資9,000億ウォンに含まれている」と明かし、フィリー造船所の買収に動いているらしい。
この動きを後押しするためデル・トロ米海軍長官も韓国を訪問、Breaking Defenseは29日「米海軍長官がハンファオーシャンと現代重工業の関係者と会談して米国進出を働きかけた」「世界的な韓国の造船企業2社が米国に子会社を設立して造船への投資に強い関心を示した」「会談内容の中心は商業造船及び海軍造船施設への投資誘致だった」と報じ、現代重工業も「韓国海軍やフィリピン海軍だけでなく米海軍の発展にも貢献する造船企業になるだろう」と声明を出した。
因みにハンファの米国法人=Hanwha Defense USAのケリー最高経営責任者は「10年以内に米国市場の陸上装備分野で主要サプライヤーになる」と言及しており、ハンファ・エアロスペースが開発した多目的無人地上車輌(Arion-SMET)は国防総省の比較評価プログラム(FCT)に選定され、ハンファとアンドゥリルは29日「米陸軍が実施する小型輸送用UGVの入札で協力する」と発表した。
この入札にはTeledyne FLIR、GDLS、Rheinmetall、ST Engineering、HDTが参加する見通しで、ハンファとアンドゥリルはArion-SMETを改良したUGVを提案する予定だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo courtesy of US Navy
これ利益率的にはどうなんでしょ?
一般的に、造船業の初期投資金額は大きく、資金回収期間は長く、利益率は低いです(重厚長大産業に共通です)。
ドル建て金利(調達コスト)も高くなっていますから、利益率も低いでしょうね。
アメリカは、造船産業が、スカスカになっていますからね。
人件費などの高コスト化が理由ですから、なかなか難しいだろうなと。
ハンティントンインガルスが、原子力空母を独占、原子力潜水艦もほぼ独占するなど、アメリカ海軍もコスト増加圧力は止まらなくなっています。
競争を促す事により、調達価格・メンテナンスコストを低下させたいのでしょう。
動向を見守りたいと思います。
新トランプ政権・バイデン政権継続どちらになっても
米国企業との合弁であれば受け入れられる という発想での行動でしょうか?
買収したほうが効率はいいかもしれませんが、USスチールの買収みたいに
感情的な反発を招くリスクもあるので、この1年間は米市場への新規参入対応は難しいかなと思います。
実際のところ、人と金の動きはどうなるんでしょうね。米国内での事業なら結局は米国人工員を使わざるを得ない(外国人労働者を連れて来ることは米議会のもっとも忌避するところ)ですが、その他の労務管理や物品調達役務をスケールメリットで効率化するというあたりを見てるんですかね。あとは事業体の資本規模が大きくなって掛け取引や各種手配や内部投資効率が上がるくらいしか思いつかないですが。
まぁこの半世紀で米議会に散々ほじくりかえされた日系自動車メーカーの北米事業も利益はしっかり出ているので、造船事業を買うことでハンファ側も相応の恩恵をうけるんでしょう。
韓国の造船シェアは世界2位、西側では1位でしたっけ。
中韓日で世界の造船シェアの大半を占めてるわけで欧米はそれに危機感を抱いてるそうですし
東アジアで有事があればそれが全部吹っ飛ぶと考えるとなかなか危うい業界だとも言えます。
ただ典型的な労働集約型産業なので少子化が激しく移民も忌避しがちなこの東アジアが
将来的に造船業の寡占を維持できるような職工を確保できるかと言われると疑問なんですよねえ。
韓国の造船シェアが高いのは政府が補助金出してダンピングしてるからだと日本がWTOに訴えてませんでしたっけ?
アメリカ進出したとしてアメリカ政府からも補助金もらうつもりなんでしょうか?
新造船受注シェア(2023年)は中国が60%以上で韓国と日本はそれぞれ24%と11%。
新造船建造シェア(2023年)は中国が51%で韓国と日本はそれぞれ26%と14%。
正直なところ、危機感を抱いてもどうにもならないような気が。
どうにもならない、とは?
1国で世界のシェア10%超って普通に途方もないんですが。
中国は世界シェア50%を超えていますね。
中国は韓国と日本を合算した分以上の船を造っています。
しかも韓国と日本の受注シェアは前年より低下して中国は上昇しています。
地元企業すら撤退しまくってるのに、外資にできるでしょうか?
一度製造業が衰退すると戻る可能性は低いです ウクライナが戦争に勝つぐらいに
アメリカは人件費が高いわりに、労働者の質が極めて低いです
請われて進出したとしても、納期遅れや品質に問題があれば訴訟され大ダメージでしょう
メリットがありません・・・
日本に受注だしてくれよ
アメリカの高校生で、同レベルの大学の機械工学と情報工学と金融工学に入れる学力がある場合、機械工学を選んでエンジニアになってくれる子は収入やキャリアから考えて多く無いでしょう
結局頭脳はアジアからの輸入に頼る他無いと思います
たとえ補助金をどれだけ注ぎ込んで機械工学を花形にしても今の高校生が1流のエンジニアになってくれるのは数十年後ですから
ナショナルジオグラフィックとか見ていると、韓国の造船所が良く出てくる。
設計はヨーロッパの会社で、製造は韓国のちょっと変わったオーダーメイドの大型船のことが多い。
意外と技術力があるのか、一品物の低コスト生産技術が高いのかは、不明だけど。
アメリカの会社が設計して、韓国企業に作らせるパターンなんだろう。
流石にアメリカに進出するのは大変だと思うけどな。
PS
アメリカの場合、高度人材は、IT、金融、弁護士、医者に人材が流れますからね。
金よりロマンの人材は、航空宇宙産業、生命工学に流れますし。
初等教育失敗しているし。
人口の多さの割には、中間層の人材が薄い。
PS2
軍需産業をやり始める企業は、民間部門が衰退する気がする。
国家機密でよくわかない部署が企業内にドンといて、人材の活用は妨げられるし、技術交流も止まるし、企業文化がおかしくなるだろうに。
これは西側先進国のどこもそうだよ。
いま工学部に進学する理系高校生なら多くはまずAIとかICTとか起業とかを模索するはず。
材料とか造船専攻を目指す学生の確保が難しいし、そもそも「製造業」的な真面目にコツコツとチームで頑張り続ける意識作りも難しいよ。
自動車産業で不祥事が続くけど背景の1つにはこの「製造業的マインド」維持が難しくなっているんだと思うから日本も徐々に米国製造業的になるよ。