ウクライナ戦況

アゾフ旅団がウクライナ統合軍司令官を告発、何千人もの味方を殺した

アゾフ旅団のボグダン・クロテヴィッチ参謀長は24日「どのロシア人将軍よりも味方を殺したウクライナ人将軍の調査を行うよう国家捜査局に手紙を書いた」と明かし、Ukrainska Pravdaは「参謀長が告発したのはウクライナ統合軍司令官のユーリー・ソドル中将だ」と報じた。

参考:Начштабу “Азова” подав заяву в ДБР на генерала Содоля: просить розслідувати великі втрати – джерела

ブトゥソフ氏は軍上層部を再三批判していたが、遂にアゾフ旅団が統合軍司令官を告発

第12特務旅団=アゾフ旅団のボグダン・クロテヴィッチ参謀長は24日「どのロシア人将軍よりも味方を殺したウクライナ人将軍の調査を行うよう国家捜査局に手紙を書いた。この事で彼らが私を調査しようが、私を刑務所に入れようが知ったことではない」とTelegramに投稿、Ukrainska Pravdaは「クロテヴィッチ参謀長が告発したのはウクライナ統合軍司令官のユーリー・ソドル中将だ」と報じており、ウクライナ国内で大きな注目を集めている。

クロテヴィッチ参謀長は「前線で戦う指揮官や兵士らは陣地や観測所を失った責任で裁かれるが、より広範囲な領土の喪失、数十もの街や拠点の喪失、数千人もの味方兵士を失ったことで将軍が裁かれることはない。全軍人は私が誰のことを話しているか理解しているはずだ。なぜなら全軍人の99%が彼のことを嫌悪しているからだ。もううんざりだ。現状を変えるにはメディアを通じて問題を告発するしかない。自分はどうなっても構わない。私が唯一恥じているのはもっと早く行動を起こさなかったことで、この行動の結果を私は全面的に受け入れる覚悟だ」と言及。

国家捜査局はUkrainska Pravdaの取材に「クロテヴィッチ参謀長の告発を受け取った」「告発内容に基づいて捜査局が動いている」と明かし、Ukrainska Pravdaも「クロテヴィッチ参謀長は領土の大部分を失うことになった職権乱用や無能な指揮で将軍を非難し、敵と内通していないか確認するよう求めている。この件で参謀長は証言を行う用意があると表明している」と報じ、DEEP STATEも「状況を注視している」「責任者が処罰されることを望んでいる」と述べた。

出典:АрміяInform ユーリー・ソドル中将

因みにウクライナ人ジャーナリストのユーリイ・ブトゥソフ氏も再三「軍上層部は失敗の反省も分析もしていない」「だから同じ失敗を繰り返すのだ」と非難、DEEP STATEもオチェレティネで起こったことについて「我々は兵士らの苦情をまとめた報告書を作成中で、これを必ず国防省に提出するつもりだ」と述べていたことがある。

追記:第110機械化旅団は24日「DEEP STATEはロシア軍がノヴォオレクサンドリヴカを占領したと報告し、この情報を多くのメディアが取り上げたが事実ではない。敵は集落の大部分を占領しているが完全に占領している訳では無い。現在も集落内の路上で激しい戦闘が続いており、優勢な敵が前進を続けているが、集落の一部は我が軍の火力管制下で敵を追い出すための努力が続けられている」と発表し、事実からかけ離れた未確認の情報を流布するなと訴えた。

これを受けてDEEP STATEは強烈な皮肉をTelegramに投稿しており、(第110機械化旅団の理屈なら)我が軍の砲兵部隊は数日前から「自軍の砲兵部隊を攻撃していたことになる」と指摘した。

関連記事:最小限の戦闘でオチェレティネを失った理由、街を守る兵士がいなかった
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関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、兵士の自己犠牲で前線が支えられている

 

※アイキャッチ画像の出典:Богдан Кротевич

侵攻851日目、ロシア軍がノヴォオレクサンドリヴカを占領し幹線道路に接近前のページ

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コメント

    • 2024年 6月 24日

    一方的な主張たから真実はわからないけど、ウクライナ軍内部も一枚岩じゃなくなってきてることと、軍内部で権力逃走というか戦犯探しで責任を逃れようとする感じが広まってるのほ間違いない。
    こんな話が出てしまってるのもウクライナが発表する戦況報告とは正反対のことが最前線では起こってるからで、それは毎日のようにどこかで後退を強いられてるのでもよく分かる。

    47
      • 匿名
      • 2024年 6月 24日

      おかしいな。日本のネット界隈ではウクライナの勝利は目前の筈なのに。(棒)

      51
      •     
      • 2024年 6月 24日

      元々一枚岩という印象はないですね…

      26
      • たむごん
      • 2024年 6月 25日

      仰る通りです。
      ウクライナ戦争は、5年間続く事も視野に入っていますからね。

      G7首脳のうち6人は、来年末までにいなくなる可能性もあるんですよね。
      このまま継戦、消耗戦を続けていった結果、どうなるのか見守りたいと思います。

      17
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 6月 24日

    内通を疑われるレベルの無能って、鬼畜牟田口と同レベル…ってコト!?

    25
      • 2024年 6月 24日

      こういう場合えてして無能はただの無能で有能な人が内通しているものですが
      わが国でもはとぽっぽとか空き缶とか赤松とか呼ばれた内通を疑われるレベルの無能がいた前科があります故。
      それはそれとしてそのレベルの無能が中将に上り詰めていることがまさにウクライナです。

      25
        • hiroさん
        • 2024年 6月 25日

        ウクライナに限らないと思うけど。
        アイゼンハウアー、モントゴメリー、カイテル、ヨードル、日本にも牟田口、南雲等々愚策で味方を殺した将官は多々いる。
        本人はベストを尽くしているつもりなんだけどね。

        15
          • 児玉
          • 2024年 6月 25日

          いくら何でもアイゼンハワーは違うんじゃないの?

          1
      • 朴秀
      • 2024年 6月 24日

      いっそのこと内通してくれていた方がいくらかマシですね

      13
      • 名無し
      • 2024年 6月 24日

      そもそも身内に肉屋さん呼ばわりされてる人が総司令官やってるわけだし…

      25
    • FAB
    • 2024年 6月 24日

    統合軍司令官に任命される前は海兵隊司令官だったからクリンキの悲劇も彼の責任じゃないの?

    23
      • Mr.R
      • 2024年 6月 24日

      だとしたらマジで許されないやつやんけ……

      16
    • センツァノーメ
    • 2024年 6月 24日

    第12特務旅団のアゾフなので、開戦初期のアゾフスターリ攻防戦に参加した方の元祖アゾフですね。
    軍ではなく内務省直属の組織だからここまで踏み込んだ告発ができたんでしょうね…

    34
    • paxai
    • 2024年 6月 24日

    ワグネルの乱からちょうど1年。アゾフの乱の可能性が微レ存?

    19
    • nk
    • 2024年 6月 24日

    色々と末期なことになってきてますね。
    ウクライナは将官の質が悪いことは無いしロシアの方が特段良いわけでもないと思う、単純な戦力差が開きすぎていて戦略や戦術云々ではもはや無いのではと思う。
    ハルキウ以外の各戦線が大分不味いことになってきているし、都市部は包囲され兵站切られて陥落させられるか必死の防衛中となると特にやりようもないと思われる。
    アメリカ大統領選後で無いと停戦も難しいだろうし後方に下がり戦線の整理もなかなか難しい状況の中でウクライナが今後国としてやっていく最適解は憲法改正してアメリカ無視して領土割譲し親露政権樹立での即停戦だとは思うが他に手はあるのだろうか。
    中国ロシアイラン北朝鮮シリアの派閥に加わることにはなるが、斜陽していく西側より以外と可能性を秘めているかもしれない。
    まあ個人的には上記の国は絶対に生活したく無い国ではあるが。

    40
      • a
      • 2024年 6月 25日

      後世から見たら絶対に手を組ませてはならない国を団結させた歴史の転換点ですよね、ウクライナ戦争とパレスチナ紛争。完全に欧米だけでは世界をコントロールできなくなっている。
      そもそも韓国は加速度的に日本も停滞どころか悪化しているので既存の東アジア秩序の崩壊は避けられなかったんでしょうけど。失われるのは50年で済めば良いんですが。

      17
      • kitty
      • 2024年 6月 25日

      大日本帝國は、まだ「ご聖断」というシステムがあっただけマシだったのですよねえ。

      5
    • ak
    • 2024年 6月 24日

    傍から見ている外国人の我々には、ウクライナ軍内部の誰が無能で誰にどの作戦の責任が有るのか、なんてのは到底判りようも無いので。

    果たしてこの告発が正しいのか?、告発する真の理由は何なのか?なんてのをネット上で語っても、それが床屋談義にしかならんのは頭に置いておくべきかと。

    個人的な印象では、武装SSの高級士官がドイツ国防軍司令官を告発するのか、この時期に・・・(;゚Д゚)、ですが

    38
      • nachteule
      • 2024年 6月 24日

       こんな時期にと言いますがどのタイミングでならベストなんですか?これから先に余裕が出た時じゃないと駄目だろうとか言うなら、損害が増える要因を放置する事でそのタイミングは後退する可能性はある。そのベストなタイミングが今後来るのかそれが何時なのかなんて誰にも分からないでしょう。

       この告発が結果的にウクライナのプラスになるかも不明です、将軍が消えるか残る影響どっちがロクでもないかは悪魔の証明でしか無いと思いますし。

      8
        • ak
        • 2024年 6月 24日

        今この時にやっても指揮系統の乱れで混乱しか生まないし、今更ドラスティックな軍内部の改革が出来るような状態でも、そもそもからしてそんな事が出来るような政治構造でも無いだろ。
        という印象からの事で、単なる個人的な意見に過ぎません。

        18
      •   
      • 2024年 6月 25日

       戦後、数年しないと分からない話だけど。面白いからネタにする。
       メディアに早めに公開している時点で、政治的なパワーゲームの様な気がする。
       本当だったら解任して別の人間が就任した後に、公開しないと信頼関係がグダグダになる。
       ミリタリ系だけど、ウクライナの政治は面白いな。ザビ家やジオンの内部闘争の様だ。

      12
        •   
        • 2024年 6月 25日

        これはティターンズのパターンかな。ジオン残党狩り部隊が連邦軍を指揮するまでになった。

        13
    • あるまじろ
    • 2024年 6月 24日

    記事のサムネ写真が悲しくてインパクトが強い。

    (もちろん主文も興味ありますが)

    7
      •     
      • 2024年 6月 24日

      調べてみるとクロテヴィッチ氏が昨年1月(プリゴジンがバフムトで元気に「肉挽き機」をやっていた頃ですね)にインスタにアップした写真でした。
      添えられた文章は「ウクライナにとって最も価値あるものは志願兵の命だ。兵士を大砲の餌にするロシア相手に正面から戦ってはならない。指揮官は頭を使わなければならない(1500文字を超要約)」と訴えるものです。

      3
    • ケン
    • 2024年 6月 24日

    少し前にアゾフのリーダーが督戦隊をやらされていたことを認めたことが報道されましたが、本件はこれに関連するかもしれませんね。

    引用元:The American Conservative
    Azov Leader Admits to Ukrainian Use of ‘Blocking Detachments’

    27
    • 名無し
    • 2024年 6月 24日

    個人的に告発されるとしたら今年に入って統合軍司令官になったソドルではなく、兵士たちから肉屋の蔑称で忌み嫌われているお馴染みのシルスキーの方だと思っていましたね

    とはいえ、裁くなら作戦責任だけではなく兵器類の横流しや前線陣地構築用の資金や物資の横領を行っているであろう将官や士官たちも裁く必要があるでしょうが、戦時下であることと元々の腐敗の酷さから難しいのかなと

    17
      • Easy
      • 2024年 6月 24日

      シルスキー司令官の方は、ゼレンスキーの取り巻きの1人であるベズグラヤ議員が攻撃してますね。
      結局、負け戦の不満のガス抜きがどこかに必要だ、ということでしょう。

      23
    • 774
    • 2024年 6月 24日

    もしかして:アンドリュー・フォーク准将

    9
      • kitty
      • 2024年 6月 25日

      ウクライナ軍は高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処もできていないような。

      6
    • もへもへ
    • 2024年 6月 24日

    じっさい無能なのか内通してるのかはともかく、公式発表だと後退は強いられているけど善戦して敵に大きな損害を与えているってなってるんだからなかなか処罰は難しいのではないかなと。

    処罰するとしたら汚職とか戦闘指揮以外の理由でないと、公式発表との矛盾が生じてしまう。

    23
      • 2024年 6月 25日

      確かに。只、前線指揮から外し、後方に栄転と見せ掛け閉職に追い遣る等、やり方は色々あろうかとは思う。
      軍司令官程の地位なると任命責任等や政治力学が働く為、難しいのは間違い無い。

      10
    • 黒丸
    • 2024年 6月 24日

    直接的な証拠がある内通・利敵行為か前線での臆病行為・逃亡でない限り
    こういう告発は戦後に行われるのが原則と思っていましたが
    知識が乏しいので思い込みかもしれません、もしかするとそれはアメリカ軍だけなのでしょうか?

    6
    • たむごん
    • 2024年 6月 24日

    シルスキー総司令官も、突き詰めると大丈夫なの?と思ってしまいますね。

    10
    • 外弁慶
    • 2024年 6月 25日

    追記部分の言い争いをみて。
    これって部隊が上級司令部に恣意的に虚偽報告してる可能性があるのでしょうか?
    上級司令部や報道部から否定するのではなく、部隊から直接、ブロガーに苦情を伝えてるんですよね。部隊プロパとしてボランティア支援品や部隊入隊希望が減少するからなら、まだ良いですが…。
    勝手な妄想ですが、もし虚偽報告して隠蔽の為なら、こちらも問題ですね。
    SNS全盛とは言え、前線部隊がブロガーの戦況報告に文句をつけるって、それはそれで軍隊規律や士気に問題が有る様に感じるのですが。現在は当たり前?

    17
      • 2024年 6月 25日

      虚偽報告の有無はわからないが、部隊プロパガンダとして国旗掲揚写真等の成果報告と同種だとは思う。只、反撃時や攻勢時には成果報告するが批判や苦情(文言で「もっと前進している」等)は余り見たことが無い。
      よって私見ではあるが、かなり戦況が悪いか疲弊や意気消沈と共に焦りが伺える。
      ウクライナ軍の戦局悪化と改善が見込めない閉塞感を現しているのではなかろうか。

      19
      • kitty
      • 2024年 6月 25日

      現役軍人がSNSを活用していると「武装SNS」とか言葉遊びをしてしまいたくなるw。

      10
    • Easy
    • 2024年 6月 25日

    “前線で戦う指揮官や兵士らは陣地や観測所を失った責任で裁かれるが”
    ちなみにしれっと書かれてるこのセンテンスの方が大問題のような気がします。
    待て待て待て、と。
    最前線の陣地保持は軍事的な力学で決定されるべきもので、失ったから罪とかそういうものではないぞ、と。不利なら引くのが戦術的合理性です。旧日本軍でもそこまで硬直化した作戦指揮はやってなかったはずです。
    ウクライナ軍が妙に戦術的に柔軟性のない作戦をやってるなと感じてましたが、こういうことだったのか,と。

    24
      • 犬の〆
      • 2024年 6月 25日

      私もこの部分気になりました。
      部隊の損失を防ぐために、後退することが後で軍法で裁かれるということですよね?

      あと、戦況の行方が不透明な時期に、大っぴらに上官への批判が飛び交うのも士気を維持するうえでもマイナスしかないと思うのですが。
      さっそくゼレンスキーがソドル中将の降格を発表したようですが、今後の行方が気なりますね。

      7
      • たむごん
      • 2024年 6月 25日

      仰る通りですね。

      ウクライナ軍の最前線部隊が、なぜそこでそんなに粘るのか?と思っていましたが理解致しました。

      8
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