ウクライナ戦況

侵攻858日目、ロシア軍がチャシブ・ヤール方向とトレツク方向で成功を収める

RYBARは「ウクライナ軍がテルニー方向で反撃を試みている」「ロシア軍はチャシブ・ヤールのカナル地区で前進した」「ロシア軍がトレツク方向に前進して墓場と要塞化されたテリコンを巡って両軍が交戦している」と報告しているが、最も激しい戦闘が発生しているのはアウディーイウカ方面だ。

参考:Сили Оборони відкинули ворога у Серебрянському лісництві
参考:АЗОВ
参考:Александро-Калиновское направление: бои на окраинах Кирово и продвижение под Дружбой обстановка по состоянию на 19:00 29 июня 2024 года
参考:Хроника специальной военной операции за 29 июня 2024 года
参考:Россияне больше всего наступают возле Очеретино, на Времовском направлении атак стало больше – Генштаб

トレツク方向への攻勢規模は「小さなちょっかい」を越えているが、ロシア軍の戦力が最も集中しているのはチャシブ・ヤールやトレツクではない

DEEP STATEはリマン方面について「ウクライナ軍がテルニー方向でロシア軍を押し戻した」「ウクライナ軍が自然保護区でロシア軍を押し戻した」と報告、第12特務旅団=アゾフ旅団も29日「今年に入ってロシア軍は人員や装備を惜しまずテルニー方向に攻撃し続けた」「第12特務旅団や第95空中強襲旅団などの部隊が反撃を行いテルニー方向から敵を押し返した」「敵は失った陣地を取り戻すため攻撃を仕掛けている」と発表。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RYBARもテルニー方向について「ウクライナ軍がテルニー方向で反撃を試みている」「ロシア軍が敵の猛攻を食い止めている」と報告し、主張してきた前線位置を後退(DEEP STATEが主張する前線位置とは若干異なる)させているため、テルニー郊外まで約600mの位置まで前進したロシア軍は押し戻されている。

さらにDEEP STATEは29日夜「ウクライナ軍が自然保護区でロシア軍を押し戻した」と報告、これによってビロホリウカ方向の状況は改善したと言えるだろう。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RYBARはチャシブ・ヤール方向について「ロシア軍がカナル地区の線路沿いで前進した」「ロシア軍がカナル地区で前進した」と報告、視覚的にもロシア軍兵士がシヴェルスキー・ドネツ・ドンバス運河のパイプライン沿い=を歩く様子、ロシア軍兵士がコンクリート工場付近=を歩く様子、ウクライナ軍がカナル地区のアパート=を無人機で攻撃する様子が登場。

視覚的証拠のはRYBARの主張を裏付けるものだが、RYBARもについては言及しておらず、他のロシア人は「この映像はロシア軍の前進を示すものではなく偵察部隊の兵士だ」と主張しており、カリーニンの南に広がる森林地帯をロシア軍が占領したどうかは何とも言えない。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEはホルリウカ方面について「ロシア軍がアルテーモヴェ市内に侵入した」と報告していたが、RYBARは「ロシア軍が運河方向に支配地域を拡大させてポンプ場付近を確保した」「ロシア軍が溜池跡陣地を確保した」「墓場付近で両軍が交戦している」「要塞化されたテリコンを巡って両軍が交戦している」と報告し、ロシア軍がアルテーモヴェ市内に侵入したかどうかには触れておらず「ほとんど客観的な現地映像がなく、ネット上に投稿された数少ない資料も1週間前の出来事を記録したものなので、この方面での成功は最も大きなものかもしれない」と指摘。

一つだけ確かなのはトレツク方向への攻勢規模は「小さなちょっかい」を越えており、ロシア軍は正面からトレツク攻略の条件(ピヴニチネ方向やアルテーモヴェ方向への足場確保)を作り出そうとしているのかもしれないが、ウクライナ軍参謀本部は「最も戦闘が激しいのはオチェレティネ付近(アウディーイウカ方面からポクロウシク方向への前進)だ」と報告しており、ロシア軍の戦力が最も集中しているのはチャシブ・ヤールやトレツクではなく「ノヴォオレクサンドリヴカから幹線道路に抜ける方向」なのだろう。

関連記事:侵攻856日目、ロシア軍がトレツク方向のアルテーモヴェ市内に侵入
関連記事:侵攻855日目、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻しリマン方面の支配地域を回復
関連記事:侵攻852日目、ロシア軍がシヴェルシク方面とドネツク西郊外方面で前進
関連記事:侵攻851日目、ロシア軍がノヴォオレクサンドリヴカを占領し幹線道路に接近
関連記事:侵攻850日目、ロシア軍がホルリウカ方面とドネツク西郊外方面で前進

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • もちもちさんちの
    • 2024年 6月 30日

    お得意の両翼包囲!オペレーションM!発動
    M字になっていくぜ!

    21
      • あばばばば
      • 2024年 6月 30日

      押し出している面積より、押し出されている面積の方が大きいのでは?

      11
      • たむごん
      • 2024年 7月 01日

      禿げあがるのか、植毛で止まるのか注目ですね。

      9
    • 無名
    • 2024年 6月 30日

    え~、ウクライナ参謀本部はカナル地域からロシア軍を排除した。カナル地域に残ってるロシア軍は排除しきれなかった少数の兵士だけ。とか昨日言ってたけど。

    22
    • 2024年 6月 30日

    溜池陣地やらテリコン要塞やらグーグルマップで確認してみると実際に存在してるのが面白いね。
    現場の兵士たちは何と呼んでいるのか気になるところ

    7
      • いそきち丸
      • 2024年 6月 30日

      本当にGoogleEarthに写ってますね!
      この陣地は2014年に作られたものですね。このレベルの充実した陣地が後方にあるといいですけど、ゼレンスキーラインの構築は進んでないので期待できないですね。
      あと関係ない話ですが、GoogleEarthを見ていたらノモンハン事件の塹壕跡も見えました。意外とただ地図を見るのも楽しいですね。

      10
    • &
    • 2024年 6月 30日

    名前空欄ニキまだ来てないな

    10
    • 名無し
    • 2024年 6月 30日

    チャシブ・ヤールの東地区は貴重な防衛戦力を擦り減らして維持しているだけだと苦言を呈している意見もありましたし、偵察部隊の可能性が高いとはいえ川の西側にロシア軍が侵入してきている以上は一刻も早く西岸に後退する必要があるでしょうね

    それにトレツクを抜かれればあっという間にコンスタンチノフカなので、正直ポクロウシクと結ばれている幹線道路に迫られるよりもある意味危機的状況だと思うのですが

    14
      • 事実
      • 2024年 6月 30日

      FIRMS、そのT0504までわずか2kmほどの地点で、結構エグい反応

      9
      • nk
      • 2024年 6月 30日

      高い確率でウクライナは今の所致命傷で済んでいる、本当の戦いはまだまだこれからだ!と言ってる未来が見える。
      トレツクはさすがに粘れそうな気はしますがロシアの間合いの詰め方が早いですね。
      まだまだ先でしょうけど東部2州全域陥落しても致命傷で済んでいるから大丈夫論で継戦する感じなのでしょうね。

      15
        • あるまじろ
        • 2024年 6月 30日

        最前線の州に兵器工場とか多分置かないし、EUからの兵器供給がある。
        東部2州を損失しても戦争継続能力にそこまで影響はない。(はず)

        東部2州自体はウクライナにとって直接の敗因にも致命傷にもならない。

        それこそハリコフか、キーウか、リビウ取らないと。

        4
          • ポンポコ
          • 2024年 6月 30日

          東部2州はウクライナにあまり影響がないとのご意見、おっしゃる通りかもしれません。しかし、ロシア軍はキーウまで取る気があるのでしょうか?

          とにかく、ウクライナ軍は東部2州に主力の歴戦の旅団らを貼りつけているので、ここの野戦軍が消耗したり壊滅すると今後の戦争のすく末には影響が大きいかもしれません。

          戦いの現状は、
          この記事のとおり、激しい戦いは、アウデイーイウカ北西方面でしょうね。ソキルがロシア軍に占領されていますね。

          13
          • 無名
          • 2024年 6月 30日

          ドネツク州って、2014年以前だとウクライナで最も人口の多い州だったし、ロシアに占領されてるソルダー市はウクライナ産の塩の9割を産出していた大産地だったし、鉱山が多くて重工業も盛んでいろんな大規模工場があちこちにある工業地帯だし、ロシアに取られる影響は凄く大きいです。
          だからウクライナも必死に死守してます。

          17
            • 通りがかりさん
            • 2024年 7月 01日

            地下資源マップを重ねてみると、大変さが分かりますよね

            11
        • M
        • 2024年 6月 30日

        >東部2州全域陥落しても致命傷で済んでいるから大丈夫論で継戦する感じなのでしょうね。

        領土を奪還するのがウクライナの戦争目的でしょ?
        それだと戦争を継続することだけが目的になってしまってるやん

        13
          • ak
          • 2024年 7月 01日

          >戦争を継続することだけが目的

          ウクライナを「支援」している欧米の目的はまさしく、その一点のみ。
          だと思っています。表面上の綺麗事は色々言ってますけどね。

          ロシアの弱体化とロシアに対する戦力拡充のための時間稼ぎこそが、この戦争を煽り立て和平会談を蹴り飛ばさせた欧米にとってのウクライナの唯一の存在意義で、領土奪回とかは彼らにとっては綺麗なお題目としてはともかく、事実上は正直「どうでもいい事」かと。

          7
    • ななし
    • 2024年 6月 30日

    ・ハルキウはウクライナが猛反撃を開始していて1ヶ月半膠着状態
    ・チャシブヤールはロシアがわずかだが前進している
    ・クレミンナはウクライナが数百メートル押し戻した
    ・トレツク(アルテーモヴェ)はロシア軍が市街地に侵入したとの
    情報があるがウクライナは言及していない

    ・ウクライナ軍参謀本部は「最も戦闘が激しいのはオチェレティネ付近
    (アウディーイウカ方面からポクロウシク方向への前進)

    ミリオタニキのみなさま、ウクライナ優勢で間違いないですね?

    14
    • しゅら
    • 2024年 6月 30日

    戦線が増えすぎてウクライナ軍が対応できていない感がありますね。

    9
    • たむごん
    • 2024年 7月 01日

    ノヴォオレクサンドリヴカ~オチェレティネ周辺は、アウディーイウカ要塞を突破した後なので、強固な陣地があまりないのでしょうね。

    ロシア軍の前進した面積を見ても、オチェレティネ周辺の方が、チャシブ・ヤール方面・トレツク方面よりも、(両軍の戦力差は不明ですが)戦果を拡張しやすいのだと感じてしまいます。

    6
      • 事実
      • 2024年 7月 01日

      誰か要塞の定義を作ってくれんかね?

      個人的に要塞の名が相応しいのはアゾフスタリくらい
      マリウポリは要塞ではない
      と思っている

      6
        • たむごん
        • 2024年 7月 01日

        仰る通りです。マリウポリ市は、要塞ではないでしょうね。

        1000ポンド爆弾の直撃に耐えられる陣地が、〇平方メート以内に×か所以上あるみたいなのがあれば分かりやすいんですけどね…。

          • 事実
          • 2024年 7月 01日

          「アウディーイウカは要塞じゃねーだろ」って言いたかっただけ

      • カリアゲ
      • 2024年 7月 01日

      トレツク方面はロシア軍の陽動だと考えてましたが、市街戦に入ったとは。本気で取るきか、防衛が弱く進めているのか、どちらでしょう。
      チャシブヤール方面は、カナル地区掃討戦を続けながら、カリーニン東端を狙い、運河地下部分を威力偵察ですかね。以前より運河地下部分の防備は堅いのでは?と議論されてましたが、その確認でしょうね。
      主攻勢点はオチェレティネ方面との事。勝手ながらソキル方向にも侵攻している事から、プロレス〜カリノヴェ〜ヤスノヴロディフカライン 運河東岸地域制圧も視野に有り。と妄想しております。

      8
        • 事実
        • 2024年 7月 01日

        運河は地下でなくパイプライン
        下手に攻撃して破損するとゴルロフカ、ドネツクの水が不足する
        谷を越えるためのパイプラインなので、パイプライン部分は両側の尾根から見下ろす位置にある
        パイプライン自体も盛り土の斜面にあるため、東から西に向かって上り坂、パイプライン沿いの天端が道路

        いずれにしても攻めにくいポイント

        4
          • カリアゲ
          • 2024年 7月 01日

          なるほど。パイプラインの件は無明にてお恥ずかしい限りです。それで北方側より侵攻しているのですね。
          となればカリーニンから東方、鉱山方向も上りと聞いてますし、カリーニンから南下してゾフトネヴィ市街地に進むかと考えてましたが、難しいかもしれませんね。ありがとうございます。

          1
            • 事実
            • 2024年 7月 01日

            鉱山はカリーニンの西側
            両側の尾根を抑えればパイプライン沿いの南北の移動は容易

            1
        • たむごん
        • 2024年 7月 01日

        戦線が長いため、非常に難しいですね。

        ロシア軍が、予備部隊(余力)をどの程度残しているのかによりますが、抵抗が弱いと判断されれば追加部隊の投入は有り得そうですね。

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