ウクライナ戦況

ポーランド、スロバキアがウクライナにMiG-29を送れば領空保護を提供

ウクライナが要求する戦闘機の提供問題は「扱い慣れたMiG-29を誰が供給するのか?」「供給に応じた国のギャップを誰がどのような方法で埋めるのか?」が問題だったが、ポーランドがスロバキアに領空保護を提供することを申し出た。

参考:Poland may guard Slovakia’s air space when it grounds MiG-29 jets -ministers

スロバキアの領空保護はF-16を使用するポーランド空軍部隊の活動範囲を拡張することで対応

12機のMiG-29を運用中のスロバキアは「領空を保護する代替手段が提供されるならMiG-29をウクライナに提供することが可能だ」と述べていたが、同問題についてポーランドのブラスザック国防相と協議を行なったスロバキアのナド国防相は記者会見で「ウクライナにMiG-29を提供すると決定した瞬間から、ポーランドがスロバキア領空を保護する準備が出来ることを確認した」と発表した。

出典:Rob Schleiffert / CC BY-SA 2.0 ポーランド空軍のF-16

ただしナド国防相は「これを実行に移すため国内の立法手続きが必要で、この問題に我々は現在取り組んでいる最中だ」と付け加えており、ブラスザック国防相も「スロバキアに提供する領空保護はF-16を使用するポーランド空軍部隊の活動範囲を拡張することで対応する」と明かしたが、いつ準備が整いポーランド空軍によるスロバキア領空の保護が開始されるのかについては不明だ。

因みにスロバキアはMiG-29を更新するため2018年12月にF-16Vを発注しており、これさえ手に入れば領空保護の問題は解消されるのだが、米国政府は同機の引き渡しが予定よりも1年遅い2024年になると通知したばかりだ。

出典:Lockheed Martin F-16V

F-16Vを構成する各コンポーネントの製造は国際的なサプライヤー(主翼はイスラエル企業、F-16Vの中央胴体、後部胴体、コックピットの構造体はポーランドのPZLミエレツなど)に依存しており、これらの製造ラインの立ち上げ・生産・納品がCOVID‑19の影響で遅延、ここに世界的な半導体の不足も加わってF-16Vの製造スケジュールは約1年遅れになるという意味で、ポーランドが提供する領空保護は2024年までを想定しているのだろう。

まぁ諸事情を加味してスロバキア向けのF-16Vを最優先で納品するという選択肢もあるが、スロバキアよりも先にF-16Vを発注した国はバーレーン(16機)だけで中東地域も不安定な状況が続いているため「お先にどうぞ」とは行かない上、中国の脅威に晒される台湾(発注順で言えば5番目)もF-16Vの引き渡しを前倒しして欲しいと要請しているので、ポーランドが提供する領空保護がウクライナへ戦闘機を供給する切り札だと言える。

関連記事:圧倒的なポーランドのウクライナ支援内容、T-72は200輌以上提供
関連記事:米国、スロバキアにF-16Vの引き渡しが1年遅れて2024年になると通知

 

アイキャッチ画像の出典:KGyS / CC BY-SA 3.0

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コメント

    • や、やめろー
    • 2022年 4月 30日

    とても賢い判断だ。ぜひやって欲しい

    38
      • けい2020
      • 2022年 4月 30日

      ポーランドの代わりに米軍が領空防衛を提供してもよいかも

      17
    • ミリオタの猫(時代遅れの「アンツィオ…いや、ロシア軍は強い!」主義者)
    • 2022年 4月 30日

    で、ポーランドさん…アンタの空軍のMiG-29はどうするんですか?(震え声)

    10
    • kankan
    • 2022年 4月 30日

    仲間がいるって大事な事だねぇ

    21
      • 無無
      • 2022年 4月 30日

      肝心なことは、肝心なときに仲間としての行いが出来るか否かだね、信用されたいならば言葉よりも行動
      感謝国一覧に名前が出てないだの、そりゃその程度の支援しかしてないんだから

      46
        • R
        • 2022年 4月 30日

        金だけ払えばいいでしょの日本人。
        湾岸戦争の時もそれで感謝されなくて怒ってる人いたよな。

        これだけ各国が支援してるんだから、日本も砲弾や、移送車両。
        食料支援などできることは山ほどあるわな。
        直接的に支援して初めて感謝されるってのがわかってない。

        28
          • SC
          • 2022年 4月 30日

          恐らく日本に最も期待されているのは戦後復興でしょうね…
          とりあえず、C-2を作っていたおかげで後方の輸送支援を行えているのがせめてもの救いですかね
          思ってたよりもかなりの頻度で国際支援に使われているので、当初予定数まで増備も検討してほしいな

          29
          • くらうん
          • 2022年 4月 30日

          今回は戦闘糧食その他防衛装備品も提供しているし、輸送機を使った支援もしているので、「金を出せば~」からは一歩前進していると思う。
          火器類の提供に関しては検討さえ無いのは問題だと思うけどね。

          34
            • バーナーキング
            • 2022年 4月 30日

            当初は距離もあるし運用や規格の問題もあるし、で日本の西側装備や国産装備送るより優先すべき支援があったと思うけど、
            大分フェーズが変わってきてますからね。
            西側装備もあれこれと供与されてる現状、送って意味のある装備弾薬がないのか、送ることができるのか、の検討くらいは進めるべきですよね。
            仮に今回は後手に回って間に合わなかったとしても検討・議論し、法整備をしておけば台湾やモルドバの有事の際には違った対応が取れるかもしれんし。

            17
              • 匿名
              • 2022年 4月 30日

              現状法律の壁で装備や弾薬が送れないのは仕方ないにしても、
              台湾有事などもにらんで、法整備は最低限すべきでしょうね。

              7
        • マル
        • 2022年 4月 30日

        必要な支援をせずに日英同盟破棄されて、二次大戦で負け組につかざるを得なかった日本としては切実な問題ですね。

        15
          • 匿名
          • 2022年 4月 30日

          うろ覚えですが、
          日英同盟の終盤、ドイツ海軍が崩壊したこともあり、英国海軍は日本を口実に予算要求していたようです。
          比較的早い段階で仮想敵扱いに移行と。

          一方の日本も、英国を英米一体の「アングロサクソン連合」として認識する風潮が、日英同盟が健在だった頃から見られたとか。

          米国の工作が無くても破棄される運命だったのでしょうね >日英同盟

          4
        • wc
        • 2022年 4月 30日

        早とちりしてるのがいるけど
        あれは軍事関連の援助への感謝なんだよな。

        17
    • 匿名希望
    • 2022年 4月 30日

    つなぎにNATOの使っていたF-16A/Bをリースするのも選択肢の一つよね。

    2
    • Vahagn
    • 2022年 4月 30日

    ポーランド(北)のフルクラムまたはチェコ(西)のグリペンはスクランブル発進してスロバキアまで来るのに25〜30分ほどかかるとのこと。できればハンガリー(南)からも来てくれたら全体のエアカバーはより良くなるが、親露派のオルバン政権では望み薄そう。
    それと米独蘭がパトリオット防空ミサイルをブラチスラヴァ近郊に4基展開中だと。

    2
      • zerotester
      • 2022年 4月 30日

      でもスロバキアにスクランブルかかるってどういう状況なんでしょうね。ロシアと国境を接しているわけでもないし。ハンガリーが親プーチン政権なのは気になるかな。

      13
    • samo
    • 2022年 4月 30日

    タイフーンのトランシェ1を代用でどこかに提供できたりしないかな?
    英国のタイフーンの早期退役が始まるか始まってたと思うけど

    1
      • カマ
      • 2022年 4月 30日

      どこかのMiG-29を1ユーロで譲渡ではありませんか、機体価格は捨て値でサポート価格で回収というのも有かも。
      それにトランシュではアビオニクス系のアップデートが多分行われていないでしょうから、ロシア国境の国での運用は厳しいかもしれませんね。

      2
    • 名無しさんZ
    • 2022年 4月 30日

    関係各国が裏ワザ抜け道あの手この手で試行錯誤し、工夫した様々な支援を素早く実行に漕ぎ着けていく姿は
    日本の周辺有事を想定する上でも非常に参考になる
    やはり外交のスピードと創意工夫というのも、純粋な軍事力と同じくらい、重要で必要な国防能力の一つなんだろう
    そして当初は無理だとされていた事でも考えて工夫すれば案外と出来てしまうものなんだなあ
    別に日本もウクライナに直接でも間接でも軍事支援しろとは言わないけど
    ここまで明確にウクライナ側に立ってロシアと敵対する負担を負うのであれば
    日本政府にはくれぐれも、戦争終了後にロシアと敵対したという結果だけが残るような結末ではなく
    日本は自由民主主義世界の防衛のために、自らも大きなリスクを負って
    ウクライナの生存と勝利に掛け金を払い、共にロシアの侵略に抗った連合国の一国ですと、
    将来胸を張れるような工夫ある外交姿勢でウクライナ支援に関与してもらいたい

    金と人道支援以外は法律上出来ないから出来ない、君等の国が将来生き残ってたら復興援助はしてあげるハイ議論終了
    ・・・ではなく

    64
      • 匿名11号
      • 2022年 4月 30日

       まあ、「法律上」というのは「遅れる理由」にはなっても「出来ない理由」にはならんでしょうね。改正すればいいんだから。

       むしろ改正に向けて動くことで、誰がどのような理由で反対するか見極めれば「出来ない理由」を明確にできるし、それで遅れるなら関係各国から見ても「仕方がない」ということになるでしょう。思考停止はいかんですよ。

      25
    • NATTO
    • 2022年 4月 30日

    砂漠に保管中でエアコン付きハンガーに入ってる機体を繋ぎでは駄目かな?

    • 無能
    • 2022年 4月 30日

    今使わなければ何時使うのか?
    この言葉の意味が重過ぎる

    4
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