ウクライナ国防省情報総局のスキビツキー副局長は最近「ロシア軍のミサイル攻撃はエネルギーインフラではなく軍産複合体、司令部、指揮統制システム、前線に位置する部隊を標的にしている」「敵も素早く学習しているためロシア軍の能力は変化している」と明かした。
参考:Вадим Скибицкий: У россиян есть мотивация воевать за деньги, ежедневно в армию идет около 1000-1100 человек
参考:Скібіцький: Ворог швидко вчиться, наприклад ракети Х-101 відрізняються від тих, які використовували у 2022 році
Kh-101の能力は2022年に使用されたものとは完全に別物
RBC-Ukraineのインタビューに応じたスキビツキー副局長は「ロシア軍が12月以降に再開したミサイル攻撃」「ロシアの防衛産業や生産力」「ロシアのミサイルや無人機の生産量」「ロシアの防空能力」「ロシアが制裁を回避する手法」「ロシアの停戦に関するレトリック」「2024年の展望」について述べており、17日にInterfax Ukraineが報じた内容(ロシア軍の学習能力に関するスキビツキー副局長の発言)も合わせると以下にようになる。
ロシア軍が12月以降に再開したミサイル攻撃について
ミサイル攻撃の主な標的は軍産複合体の生産施設、司令部、指揮統制システム、前線に位置する部隊等で攻撃精度が低いため目的は達成されておらず、特にキンジャールの精度は非常に低い。この攻撃で被害を被っているのは残念ながら民間人だ。今のところエネルギーインフラは標的になっていないものの今後も狙われないという保証はない。
ロシアの防衛産業や生産力について
2022年夏に労働時間の上限や条件を緩和する法律や政令が可決され、戦時体制に移行したロシアの防衛産業では3交代制で操業している企業もある。ロシアが主に取り組んでいるのは「戦場で損傷した装備の修復」「保管していた装備の現役復帰」「装甲車輌、砲兵装備、ミサイルを含む弾薬の製造」だが、イランや北朝鮮から弾薬を購入し、ベラルーシに保管していた弾薬を撤去したことからも「戦場のニーズ」に生産量が追いついていないことは明白だ。
例えば122mm砲弾と152mm砲弾を2023年に200万発製造したが、これだけは戦場のニーズを満たすことはできない。ロシアは生産量を引き上げようと努力しているものの、老朽化した生産設備、生産に必要な部品の調達、訓練された熟練労働者の不足などの問題に直面している。但し、ロシアが武器や装備を生産できる能力を持っているという事実は依然として我々の脅威だ。
北朝鮮は昨年9月~11月の間に約100万発の122mm砲弾と152mm砲弾を供給したと予想しているが、弾道ミサイルの供給に関する情報は精査中だ。
ロシアのミサイルや無人機の生産量について
長距離ミサイルの生産量(月115発~130発)に大きな変化はなく、特に海外製部品が必要なKh-101、Kalibr、キンジャールの供給は安定しておらず生産量が0の月もあるが、敵も素早く学習しているためロシア軍の能力は変化している。例えばKh-101の能力は2022年に使用されたものとは完全に別物で、新しいEWシステムを電子戦システムやフレアなどアクティブな保護機能を備えている。
構成部品の国内調達が可能な戦術クラスのミサイル(kh-31、kh-35、kh-29、kh-59など)は月100発~115発、Shahed-131/136の生産量は月330機~350機で、こちらも海外製部品の供給が生産数を左右しているが、2026年までに構成部品の内製化を達成したいと考えている。
ロシアの防空能力について
ロシア側が発表するミサイルや無人機の迎撃率についてはプロパガンダ的な要素もあるが、全体的にロシア(占領地域やクリミアを含む)の防空能力は大幅に強化されている。特にモスクワなど重要地域では多層化された防空体制が構築されており、これは極東や北部地域から防空システムを移動させることで実現しているため、前線から遠く離れた地域の防空能力は低下している。
この多層化された防空体制がどれだけ効果的かは一言で說明できないが、防空システムが提供する保護能力は決して完璧なものではなく、これを突破できるかどうかは「特性の異なる兵器の同時使用」や「緻密に調整された作戦の立案」にかかっている。我々は敵がどの地域のどの方向で防空能力を強化し、どこに防空システムを移動させたかを把握している。
ロシアが制裁を回避する手法について
ロシアが海外から調達する電子部品の約80%は中国を経由しているが、これは電子部品の大半が中国製という意味ではなく西側製が最も多い。ロシアは中国を含む複数の国を通じて必要な部品を購入し、これを国内に輸送するのに大きな問題がない状況だ。様々な合弁会社が設立されて部品の買付を行った後(約1週間程度)に消えていく。
ロシアの停戦に関するレトリックについて
プーチンの意図は明白で我が国を完全に占領して支配することだ。交渉に応じる用意があるというポーズは「西側諸国」と「グローバル・サウス」に向けられた政治的レトリックに過ぎず、どの様な交渉も戦力補充のための時間稼ぎでしかない。2014年以来、このことを何度も目にしてきた。
2024年の展望について
前線で何が起きるかはロシアが設定する戦略的目標に左右されるが、当面の第一目標はルハンシク州とドネツク州の行政境界線に到達することで、第二目標は現在の占領地(ヘルソン州、ザポリージャ州、ハルキウ州)を維持することだ。ロシアは我が国の継戦能力に打撃を与えるため防空システム、航空機、軍産複合体の破壊を優先目標に設定している。
ロシアでは毎日1,000人ほどの人間が金銭目当て(直接交戦が行われている地域で勤務すると約22万ルーブル~25万ルーブル)でロシア軍に加わっているが、これは前線の損失補充と予備戦力の編成で消えているため、強力な戦略的予備を作り出すためには大規模な動員を行なう必要がある。これを選挙前に実行する可能性は低いものの、2024年に動員が実行されるかどうかは何れ分かることで、その話を今するのは時期尚早だ。
どちらにしてもロシアは新たな動員に必要な条件を準備済みで、大きな違いを作るため何処かで動員を行なう可能性が高い。
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※アイキャッチ画像の出典:Dmitry Terekhov/CC BY-SA 2.0
希望的観測と現実の矛盾をウクライナ政府は気付かないんだろうか?
ウクライナ軍は全く被害を受けてない言い方だし、民間被害しかなかったら
しょぼすぎるロシア軍のミサイル攻撃、
毎日千人の被害をどうやって数えて何処にそれが転がってるのか自慢の映像で
映してほしんですが?ドニプロ川ではzの部隊が枯渇したとか言って
ロシア軍の突撃がもうないらしいのですが、そもそも無かったのでは?
見たいものしか見ないのはロシア側も同じですし
前線との人脈のあるロシアのミルブロガー達がこれまで何度ロシア政府の作戦や戦略の非効率を批判したかと言うと……
少なくともロシアの戦果映像だってウクライナ兵が数百数千倒れている映像なんてなくて、oryx等で計上されている装備損失を基準にすればロシア側の損害がウクライナ側の数倍と考えるのは不自然ではないのでは?
両軍の損失については、おっしゃるような面も含めて、色々な側面から、推測していくことが必要ですね。
映像は、沢山の映像を撮って宣伝に力を入れている方の戦果が多くなると思います。
私は、砲爆撃の量(砲弾の使用量とか、現実の損失は遠方からの砲爆撃によるものが多い)、現実の動員の量(損失の補填)、捕虜の数(多くの場合、死傷者数と比例するのが普通)、展開する旅団などの数と活動量など(現実の戦力と推移)などを重視しています。
個人的な意見ですが、ずっと一貫してウクライナ軍の損失の方が多いと推測しています。
まだoryxとか言ってるのかこの人…
ウクライナ兵はミサイル程度では死にません
“士気”が高いので
一方ロシア兵はいくら殺しても湧いてでてきます
恐らくロシアはゾンビウイルスの開発に成功したのでしょう
スコップを装備した士気の低い兵士を脅して万歳突撃させるしか能のない卑劣な野蛮国家ですからね
北朝鮮や中国に兵器流したりしてますよきっと
>ウクライナ兵はミサイル程度では死にません“士気”が高いので
士気が高い兵隊は、ミサイルが直撃しても死なないと本気で思っているのですか?
その考えは現実的ではないので、捨てたほうがいいと思います。
成りすましいますね……このコメントは自分のではありません
なりすましではなく皮肉られてるんだと思いますよ
それでもコテハンを他の人が使うのはマナー違反ですけどね。
同感です。記事をざっと読んだ限り、一番気になったのが相変わらずの「期限の勝手な設定」です。ウクライナは従来よりロシアが(戦勝記念日などの)特別な日までに一定以上の戦果を挙げようという政治目標を設定しているに違いないという予測のもと行動する(そしてそれを食い止めたぞと喧伝する)所が有り、それは戦況分析を見誤る原因にしかならないのでやめた方が良いと思います。
これは仰る通りです。
日本人として、太平洋戦争の大本営を思い出すのが辛いですね…。
プーチン大統領及び意思決定層に、何らかのコネクションがあるのなら別ですが、なさそうですよね。
仮にあったとしても、そんな情報を表に出さないでしょうし(情報提供者がリスクにさらされる)。
撃墜できているとまでは明言されていないので、おそらく軍関係の施設の抗堪性が優れていて、ミサイル程度の炸薬では致命的な被害は受けていないとかという落ちなのでは。
ロシア軍·ロシアに関する情勢分析のインタビュー記事にウクライナの損害が出てないことがそんなに不満なのだろうか?
将棋の感想戦じやないんだから、自軍の状況を正直に明かすはずがないのは当然だし、インタビュー自体も情報戦の一貫だと思うが。
「防空システム、航空機、軍産複合体の破壊を優先目標に設定している」とありますが、破壊された情報を聞かないので、状況がよく分かりません。おそらくは、破壊されているのでしょうが、ロシア側が破壊されたという情報ばかりなので、非常に片寄っていてよく分からないのです。ロシア側はウクライナほど、兵器の撃破をいちいち強調して言っている印象が薄いため、これは相手を踊らせるための意図的行為とも思えます。
防空システムの状況を把握しているともしていますが、逆に、ロシア側のほうが、防空システムの状況の割り出しに関しては熱心だったように思われ、どちらがより相手の状況を把握しているか?を想像すると、ロシア側のように感じられます。
このように思えてしまうのは、これまでの大本営発表によるところが大きいです。蓋を開けると、何故かロシア側が上手くいっているという認識です。
ザルジニー総司令官はロシアのミサイル攻撃で損害が出ていると主張し、防空システムの支援を訴えているのに情報局はそれを認めようとせず「精度が低くて目標に当たってない」と言い張るのはどうなんでしょうね?
組織が違うからこういう見解になるのか、対外的な発表としてこう言っているのか、それとも本気で言っているのか
ミサイル、シャヘド、砲弾の生産量予測や兵員の充足についても楽観的過ぎる数字に思えますし、いつまでプロパガンダを続けるのかと不安になってしまいます
ミサイルが実際に当たったか、被害がどれぐら出たか、撃墜されたかは敵味方ともに非常に重要な情報です。
しかし情報が洩れるのを防ぐのは難しいですから、そのような場合は意図的に偽情報を拡散させるのが定石かと。
つまり単純にロシアに対する欺瞞の為じゃないですか?
国民を鼓舞する為の、大本営発表的な意図ものもあるかもしれませんが。
戦果の隠蔽や偽情報の発表は、戦争初期には欺瞞目的なんですが。
当然ですが真実は政権のごく一部のスタッフにしか知らされませんから、国民の大多数は発表された欺瞞の方を信じます。
そうなると政治的にはその欺瞞をベースに行動しないと国民の不満が制御不能になるので、いつしか大本営発表に基づいて政治や戦略が構成されるようになり。
現実とのギャップを埋めるための「乾坤一擲の大秘密作戦」が計画され。その勝率の低いギャンブルに国力の大半を注いでしまい、落とし所のない戦況をさらに悪化させる。その上、欺瞞情報では自軍は勝っているはずなので戦争を軟着陸させるための交渉も出来ない。というのが我が国が300万人を死なせて得た貴重な教訓ですね。
そして「人間は歴史に学ばない」というのがもう一つの教訓です。
それは程度問題で、ケースバイケースでしょう。
どちらにしても、その判断はウクライナがやることで、我々があれこれ言っても仕方ないことです。
少なくとも、ミサイルによる被害情報は隠す価値があるでしょう。
犠牲者の数もそうです。
ロシアにとっては喉から手が出るほど欲しい情報です。
当然ウクライナは秘密にするでしょう。
ですから、もし本当の情報が公開されるとしても、それは戦後でしょうね。
あと率直に言って日本の戦争の教訓など、ウクライナやロシアに語るほど大したものではないです。
せいぜい原爆ぐらいです。
「目標(軍事施設等)に当たってない」とは言ってても「被害が出てない」とは言ってない、というかはっきり「この攻撃で被害を被っているのは残念ながら民間人だ(=民間人に被害が出ている)」と言ってるのでは?
ロシアの国境は広く、隣国も経済制裁に加わらない国も多いですから、第三国を挟むとどうしようもないでしょうね。
北朝鮮のレクサスが話題になりましたが、全ての民生品を監視する事は、現実的ではないなと。
>ロシアが制裁を回避する手法について