ウクライナ戦況

ウクライナ警察、首都に侵入したShahed-136を小銃と拳銃で撃墜

キーウ当局はパトロール警察(日本の交通警察に相当)が小銃と拳銃でShahed-136を撃墜したと明かし、Shahed-136を撃墜する様子を収めた動画まで公開している。

参考:Полицейские показали, как сбили вражеский дрон в Киеве из стрелкового оружия
参考:Глава МВД обратился к владельцам оружия: Не пытайтесь сбивать дрон самостоятельно

さらに興味深いのは「Shahed-136を撃墜するため市民がマンションのバルコニーから発砲している」という説明でSNSに拡散した写真のオチ

ウクライナ空軍は17日「首都に侵入したイラン製無人航空機は全て南から発射されたものだ」と説明してベラルーシ方面からの攻撃を否定、さらにキーウ当局は「首都上空に侵入したShahed-136の数は計5機で、重要なインフラに3機が命中、住宅に1機が命中して妊婦を含む4人が死亡した」と明かしたが、残る1機については「巡回警察(パトロール警察)が小銃と拳銃で撃墜した」と発表したため注目を集めている。

内務省直轄の「パトロール警察」は不正が横行していた国家警察の改革過程で誕生した比較的新しい組織で、ポロシェンコ政権は交通警察の全職員を解雇した上で志願者を募り、不正を排除するため透明性の高い採用システムや西側基準の法執行機関として必要な論理や知識や導入、2015年7月に約2,000人が国家に忠誠を誓いパトロール警察官(国家警察の一部門で他にも刑事警察、治安警察、紛争地域を担当する準軍事の特殊任務巡回警察などある)が誕生した。

要するに「日本の交通警察」に相当するパトロール警察が小銃と拳銃でShahed-136を撃墜したという意味で、Shahed-136を撃墜する様子を収めた動画まで公開している。

出典:Ukrainian Crisis Center Ireland

まぁパトロール警察によるShahed-136の撃墜は技量の高さよりも「運の要素」が強いのだが、さらに興味深いのは「Shahed-136を撃墜するため市民がマンションのバルコニーから発砲している」という説明でSNSに拡散した写真のオチだ。

この写真は2021年6月に撮影されたもので当該市民は警察に逮捕(麻薬所持)されており、これを真似る市民が出てくることを恐れたモナスティルスキー内相は「深闇に銃を上空へ向けた発砲すると怪我やトラブルの元になるので止めてほしい」と呼びかけている。

出典:Twitter経由

因みにShahed-136は徘徊型弾薬と簡易な巡航ミサイルのハイブリッドで、徘徊型弾薬として使用する場合は見通し通信(150km~200km)の範囲を長時間徘徊、搭載された光学センサーで発見した目標に自爆攻撃(人間の制御下)を仕掛けるが、約2,000kmとも言われる飛行距離を生かして見通し通信外の目標に攻撃を仕掛ける場合は事前にプログラムされたコースに従い自律的に飛行、目標を自律的に検出したり選定する機能はないため静止目標への攻撃にしか使用できない。

撃墜したShahed-136の残骸(機体番号が記載された部分)をネットにアップすると「事前にプログラムされる飛行コースの変更=迎撃を回避するための改善」に繋がるので、ウクライナ当局は「これを絶対に止めてほしい」と呼びかけている。

関連記事:キーウ中心部で4回目の爆発、インフラが破壊されたドニプロで緊急停電
関連記事:キーウ中心部で爆発が3回、ロシア軍が再びShahed-136で首都を攻撃

 

※アイキャッチ画像の出典:Олексій Білошицький

米国とEUがStarlinkへの資金供給を検討、ウクライナ向けのコストを負担する可能性前のページ

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コメント

    • XYZ
    • 2022年 10月 18日

    映像を見ましたが、撃墜されたとしても結局爆発はしているように見えました。

    当初の目標は防衛できたかもしれませんが、別の被害が出てしまっているのが内部まで侵入されてしまった影響だと思います。

    もっと郊外で迎撃できる装備や発射基地を攻撃する手段が必要でしょうね。

    13
      • 名無し三等兵
      • 2022年 10月 18日

      人口密集地内に入り込まれた自爆ドローンの迎撃は難しいですね
      警官隊はドローンを見つけて乱射している様に見えますが外れた弾は
      あの先のどこかに必ず落ちるし殺傷威力を持ちますからね
      流れ弾による巻き添え被害は無視出来ませんから

      12
      • うぃるびぃ
      • 2022年 10月 18日

      ↓ミリレポさんが指摘されているように
      「撃墜は出来ても弾頭は生きている」ので墜落後に爆発するようです、
      市街地郊外で迎撃を仕掛けるのが良さそうですね。
      リンク

      1
    • AX-5
    • 2022年 10月 18日

    撃墜したというか普通に着弾してる機動じゃないか?
    [警察も首都防空に参加している]ぐらいの発表にしとけばよかったのに。

    9
      • 名無し
      • 2022年 10月 18日

      レシプロエンジンで遅い(⇒人間には十分すぎるぐらい速い)ということは分かった。

      2
    • AAA
    • 2022年 10月 18日

    イスラエルのドローンを撃墜できるスコープ「SMASH」が欲しいところだな
    イスラエルが軍事支援するかはまだ揉めてるところだけどどうにか送ってほしい

    5
    • 名無し
    • 2022年 10月 18日

    ミサイルで迎撃しようとしても外れて着弾を許してる動画もあがってますね
    まあ市街地まで侵入されてしまうと建造物や高木等遮蔽物に遮られてしまいミサイルによる迎撃が無理ゲーになるのは理解していますが…

    3
    • 黒丸
    • 2022年 10月 18日

    Shahed-136はガソリンが動力の無人機だから
    撃墜して弾頭は無力化されても、中のガソリンが爆発する可能性があるんだな
    元々の飛行高度も低いので、ガソリンが燃えながら降ってくる可能性もあるし
    空飛ぶ自動車爆弾みたいな撃墜するのも厄介な代物です。
    レーザーで落とすのもガソリン引火を防げるか不明なので
    日本だと海の上で撃墜を考えますが、ウクライナですとそうもいかないだろうし
    ガソリン駆動の自爆無人機への対策はかなり大変かもしれません。

    14
    • 無無
    • 2022年 10月 18日

    ウクライナのことだから、想像もつかないようなユニークな対処を発案するかも知れない
    知恵比べでロシアには負けないだろ

    5
      • 無題
      • 2022年 10月 18日

      知恵という概念がない相手と知恵比べとはこれいかに

      14
        • 無無
        • 2022年 10月 18日

        悪知恵には長けるロシアなり

        5
    • 平八郎
    • 2022年 10月 18日

    懐かしの阻塞気球とか使えないですかね。
    このドローンは映像では小銃で狙えそうな高度を比較的低速で一直線に飛んでいるように見える。
    質量もそんな大きくないからネットに引っ掛かれば止まりそう。
    ポップアップしたり回り込んだりという賢い機動は多分出来ないでしょうから、狙われそうな施設をぐるっと囲めればまぁあまぁ有効かも。

    7
      • MMK
      • 2022年 10月 18日

      阻塞気球はもしかしたら有効かもしれませんね。
      低速・低高度のドローン対策には、どうも懐かしの武器の方が効き目がありそうな気もします。
      三式弾とかVT信管とか…ダメかな(笑)

      4
        • ナイトアウル
        • 2022年 10月 18日

         今のウクライナ向けならインドが試験した機関砲による撃墜と同じような体制作れたら行けるんじゃないの?

      • XYZ
      • 2022年 10月 18日

      発電所や変電所といったインフラ付近などに展開すると一定の効果がありそうですよね。

      ドローン側もワイヤーカッターなどで対抗してくるかもしれませんが・・・。

      4
    • 2022年 10月 18日

    ドローンにロボットアームを付けて
    自律的に送配電線を認識・破壊って使い方をされたら
    ものすごく破壊の効率が良さそうで恐ろしいな
    日本のドローン規制には不満の声も大きいけど
    ドローンの持つ潜在能力を考えると正しいのかもしれない

    1
      • 名無し
      • 2022年 10月 18日

      人間の俺でもワイヤーカッターで太さ2mmの針金切るのに四苦八苦するのに。。。

      1
    • ゆうき
    • 2022年 10月 18日

    理不尽と戦うウクライナの人々に敬意を。
    必ず勝利する

    11
    • makumaku
    • 2022年 10月 18日

    ウクライナ軍兵士(と思われる)が、建屋の屋上からMANPADSを発射している映像もある。
    残念ながら、MANPADSでは撃墜できなかったらしい。
    リンク
    様々なUCAVに対応する防空ミサイルシステムの都市配備は喫緊の課題だね。

    3
    • 58式素人
    • 2022年 10月 18日

    昔の話。勤めていた会社の先輩社員の談話ですが。
    イラン〜イラク戦争の頃、現地で仕事をしていたら、その国の政府に
    揚重機(クレーン車のこと)を貸してくれと言われたそうな。
    数日貸してあげたら、高射機関砲をビルの上に載せていたらしいとのこと。
    多分、ビルの上の高射機関砲は低空を侵攻する飛行機にとって脅威なのでしょう。
    プログラムの通りに飛ぶ低速のドローンならば、飛行経路を見切ってしまえば、
    有人機よりも簡単に対処できるのではないでしょうか。

    7
      • 名無し
      • 2022年 10月 18日

      高所に置くと射線通るからね。
      地形効果(ビル含む)による遮蔽は、射線に甚大な影響がある。

      4
    • Atx
    • 2022年 10月 18日

    韓国なんかまさにそれですね、数は減っていますがある程度以上のビルの上には対空機関砲が設置してあります。

    1
    • 黒丸
    • 2022年 10月 18日

    日本の平時の電力供給の予備率(裕度)が7~8%なので30%を奪われるとだいぶ厳しいかと
    ライフラインの維持、病院や役所のような公共用途と鉄道網の維持・軍需への対応で手一杯かと
    2011年3月13日の、明日は輪番停電や計画停電・使用制限になる可能性あり、という連絡を受け
    工場の電力使用をできるだけ減らしながら震災復旧に必要な資材の生産を維持する方法を
    検討補助した時の恐怖感と緊張感・責任感を思い出します。
    ウクライナの人たちには頑張ってほしいと思い
    またこのようなことをするロシアとイランには激しい憤りを感じます

    4
      • 黒丸
      • 2022年 10月 18日

      ロシア軍が発電所の30%を破壊、ウクライナで大規模な停電が発生
      リンク
      こっちに書くつもりが間違えた

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