米国関連

トランプ大統領がGolden Domeの概要を発表、任期満了前までに完全稼働

トランプ大統領は20日「Golden Domeの初期費用として250億ドルを支出する」「これが完成すれば世界の何処からミサイルが発射されても迎撃できる」「任期満了前までに完全稼働する」と発表、Breaking Defenseは「最大の障害は資金調達と宇宙配備型迎撃ミサイルの開発だ」と指摘した。

参考:Trump: Golden Dome to cost $175 billion, will be led by Space Force’s Guetlein
参考:Trump unveils plans for ‘Golden Dome’ defence system
参考:Trump: Canada has asked to join missile-defence program

恐らく国防総省が提出したプランの中で「最も壮大でコストがかかるプラン」を選択した可能性が高い

トランプ大統領は昨年の選挙戦で「我が国の上空に誰も見たことがないアイアンドームを建設する」「最新鋭のミサイル防衛システムを全米に建設したい」と述べ、政権樹立後「The Iron Dome for America(イスラエル製防空システムを連想させるため現在はGolden Dome for Americaに名称を変更)」という大統領令に署名し、弾道ミサイル、極超音速ミサイル、最新の巡航ミサイル、その他の次世代航空攻撃から国土を守る壮大な計画が動き出した。

出典:Israel Defense Forces 

この大統領令は「弾道・極超音速ミサイルを追尾可能な宇宙センサー層の展開加速」「上昇段階の迎撃が可能な宇宙配備型迎撃ミサイルの開発と配備」「対価値戦略を打ち破るための下層・末端での迎撃能力配備」「全ての脅威に対応可能な非運動能力による迎撃手段の開発と配備」を要求しており、米議会予算局は「大統領が要求するGolden Domeを実現するには今後20年間で5,000億ドル以上の費用がかかる」と見積もっているが、そもそもGolden Domeを構成するシステム要件が決まっていないため、予算局の見積もり額も空想上の産物に過ぎない。

CNNは19日「国防総省は能力の異なるGolden Domeのプランを3つ提出している」「トランプ大統領は近日中に選択したプランと費用を発表する」と、Politicoも「トランプ大統領は火曜日の午後、Golden Domeの初期費用として250億ドルの支出を発表する予定だ」「これは大統領が要求している野心的なミサイル防衛システムに要求される費用のほんの一部しかない」と報じていたが、トランプ大統領は20日「Golden Domeの初期費用として250億ドルを支出する」「これが完成すれば世界の何処からミサイルが発射されても迎撃できる」「Golden Domeは任期満了前までに完全稼働する」と発表した。

Breaking Defenseも当局者の話を引用して「Golden Domeは単一のシステムではなく、複数のセンサーと迎撃ミサイルで構成されたシステム・オブ・システムだ」「少なくとも宇宙に配備された複数のプラットフォームが含まれる」「宇宙に配備されたプラットフォームは上昇段階のミサイル破壊を目的にしている」「Golden Domeにとって最大の障害は資金調達と宇宙配備型迎撃ミサイルの開発だ」「トランプ大統領はシステムのコストを1,750億ドルと見積もったが数千億ドルになるという声もある」「一部の議員らはコストが数兆ドルに達する可能性かもしれないと指摘している」と報じている。

さらにGolden Domeの初期費用=250億ドルの原資は「共和党主導の法案に盛り込ま割れた1,500億ドルの追加国防支出」に含まれているが、下院の共和党議員が反対しているため成立の見通しが立っていない。

出典:HAA / CC BY-SA 4.0 部分軌道爆撃システムの原理

トランプ大統領はGolden Domeの迎撃対象についても「地球の反対側から発射されたミサイル(恐らくFOBSのこと)」「宇宙から発射されたミサイル」と述べ「全て空中で叩き落される」「迎撃成功率は100%に近い」と述べているため、恐らく国防総省が提出したプランの中で「最も壮大でコストがかかるプラン」を選択した可能性が高い。

因みにトランプ大統領は「カナダがGolden Domeへの参加を要請している」と明かし、カナダ国営放送=CBCも速報で「トランプ大統領が『カナダが電話を掛けてきてGolden Domeに参加したと言ってきた』『費用負担についてはカナダと協力していく』と述べたが、今のところ政府のコメントは得られていない。トランプ大統領の発言が何を意味するのか極めて不明瞭だ」と報じている。

出典:The White House

現在の米国とカナダの関係を考えると「カナダの方から参加したい」とアプローチしたのかどうかは不明だが、Golden Domeのカバー範囲(特にセンサーの設置場所)を考えると米国が「カナダの参加」を必要としているように見える。

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※アイキャッチ画像の出典:The White House

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コメント

  • コメント (22)

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    • 寒い
    • 2025年 5月 21日

    トランプ大統領は退任式の挨拶で頭上を通過するF-47、そして遥か上空のGolden Domeを指さして、「私は再びアメリカを偉大にした!」とやりたいんでしょうが、資金高騰と開発遅延で無理じゃないか?

    15
    • nk
    • 2025年 5月 21日

    計画倒れの可能性が極めて高そうな案件にしか見え無いのですが任期中は計画進めるのでしょう、名称も流石はトランプアメリカという感じですがもう少し違う所にリソース廻した方がアメリカの防衛に良い結果生みそうな気もしますがどうなるか興味深い所ですね。

    12
      • kitty
      • 2025年 5月 21日

      SDIの時は、どういう畳み方したんでしたっけ?
      ソ連が崩壊したから中止とか言い訳したんだっけかな。

      3
        • 山田
        • 2025年 5月 21日

        明確な形での終了宣言はなかったかと。そもそも技術的、財政的には無理筋で、レーガン政権の終了を契機に自然消滅だったような。その後のブッシュのマルタ会談と冷戦終結で決定的な形で終焉したんじゃなかったと思います。

        5
          • Whiskey Dick
          • 2025年 5月 21日

          レーガン大統領は軍事費の上昇と原油価格の低下(当時のソ連の軍資金)にソ連が耐えられなくなることを見越してSDI構想を立ち上げたようで、SDI自体は完成しなかったがソ連崩壊の目的は達成した。レーガン大統領は新自由主義政策の旗手として非難されることもあるが、ソ連を無血で崩壊させた功績は偉大であった。
          一方、現代でレーガンの真似をしたとしても中国とロシアの体制が崩壊すると思えないし、同じ手段を実行すること自体不可能だ。

          4
            • 匿名
            • 2025年 5月 21日

            アレを今やるなら、倒れるのは米国の方でしょうね…🙄

            8
            • 山田
            • 2025年 5月 21日

            なるほど。ソ連弱体化と崩壊への誘導が主目的で、レイズを続けるアメリカに、コールできなくなったソ連がポシャったという図式ですね。一方、アメリカも、それと引き換えに双子の赤字とレーガノミックスの破綻という返り血を浴びたというわけでしょうか。SDIと超核軍拡がどの程度寄与したのかは評価が難しいですが。しかし当時は、核爆発によるX線レーザーなど、真剣に追究していたように見えていました。

            2
            • kitty
            • 2025年 5月 21日

            しかし、2025年になっても実用的なDEW兵器が配備されていないとは思わなかったです。
            まあ、ドローンバスターは一応、実用的なのか。

            2
    • ゴモラ
    • 2025年 5月 21日

    アイアンドームは、そもそも安価なロケット弾の対抗として開発された訳で対弾道ミサイルでは無いんよ。同じコンセプトで弾道ミサイルの防衛もアイアンドームみたいにポコポコ出来るとは到底技術的にも予算的にも思えない。

    12
    • 戦車
    • 2025年 5月 21日

    21世紀盤のスターウォーズ計画ですかね?

    3
    • Ard
    • 2025年 5月 21日

    GPIで満足してくれたらええんやけど

    1
    • ido
    • 2025年 5月 21日

    Golden DomeはNORADが運用すると思いますし、そうなるとカナダの協力を得られなければ非常に難しいと思います。カナダは参加参加するかしないかを選択する立場ですが、国防総省からすればカナダがいないと話にならないでしょう。そしてGolden Dome計画は既存の防衛システム(GBI、THAAD、PAC3)に宇宙空間での迎撃が可能なシステムを統合しただけになるんじゃ無いかなぁと。しかも費用がぶっ飛んで開発ぶっ飛びそうだし。こんなのならAL1を開発しとけば良かったのに。

    2
    • 追剥強盗武士の手習い
    • 2025年 5月 21日

    スターウォーズ計画のトランプ版。国境には高い壁。輸入品には関税。宇宙空間には、金(キン)ドーム。国際的なつきあいはしないし、交際費や協力金は出さない。教科書では、すべてをエホバ(日本の神ではない)が作って、ユダヤ人とアメリカ人はのエホバが選んだ選民。ホワイトハウスは押し入れに改造。アメリカ人て「引きこもり」。

    3
    • 名無し
    • 2025年 5月 21日

    トランプはなんでも思いつきでしゃべるからなあ
    どうせ無駄金使って立ち消えでしょ

    13
    • ゲストさん
    • 2025年 5月 21日

    任期満了まであと3年半しか無いんで、それまでに完全稼働するとなるとそろそろ量産始めないといけないですね(笑)
    憲法変えて3期目以降もやるなら、いくらでも時間はありますが。

    6
    • たむごん
    • 2025年 5月 21日

    防衛予算を圧迫して、全体の抑止力が低下したら、元も子もないというか…

    アメリカ本土に攻め込んでくる国は、まず考えられないと考えられないわけですが。

    これも開発費高騰・計画遅延を、当然考えるべきですから、何だかいろいろ大丈夫なのか心配になりますね。

    6
    • あさひ
    • 2025年 5月 21日

    ユーラシア大陸からのミサイルなら迎撃可能なシステムは出来るでしょう
    相手の撃ってくる数考ると構築に必要な予算と常時作動させる予算は余り考えたく無いですが・・・
    迎撃システム出来たらそれ以上を同時に撃てるようにするのは当たり前で、アイアンドームも同じ発想で破られてますし
    それに近海からの潜水艦から発射された場合、南米から撃たれた場合などは迎撃間に合わずに着弾するでしょうし
    盛大な予算の無駄遣いになるとは思いますが挑戦する事に意味があるさ

    3
    • ななし
    • 2025年 5月 21日

    ミサイルを宇宙に配備しちゃいかんでしょ
    空中発射型で我慢しておきなさい

    3
    • L
    • 2025年 5月 21日

    このまま中国とコスト競争やっても負けるのが目に見えてるのでMAGAでアメリカの製造業を復活させる試みは支持したいんだが、なんだろうなこの応援できない感
    産業界はトランプの嵐が過ぎ去るのを待ってるだろ。トランプの次の大統領は反動くるでこれ。絶対そうなる
    ならばMAGAは成らず、対中国も負け。日本オワタ

    15
      • たむごん
      • 2025年 5月 21日

      ほんと仰る通りですよ。

      薄利多売を高速回転させ続けた結果、機械の性能を上げる+減価償却、これを愚直に繰り返してきたわけで。

      コスト競争を、いきなり挑んだところで、勝てないですよね…

      1
    • zzzzzzzzzzzz
    • 2025年 5月 21日

    対中国なら、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイなどで海上封鎖が良いのでは?

    • nimo
    • 2025年 5月 21日

    専門家の本音が聞きたい

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