米議会の軍事委員会はトランプ政権の政策を推進するため「1,500億ドル追加支出」を発表、戦術航空機関連に計72億ドル、F-15EXの生産増加には31億ドルもの資金が割り当てられたが、F-35Aは1ドルも資金を得られず、米シンクタンクも「F-35の無視は同機に対する世論を物語っている」と指摘した。
参考:As Army leaders reconsider needs and rumors swirl, industry braces for potential ground vehicle cuts
参考:Congress Unveils $150B in New Defense Spending for 2025
参考:Shipbuilding, Golden Dome and munitions win big as GOP unveils $150B bill to boost defense
参考:Lawmakers Eye $7.2B for New Fighters, CCAs and More—but Nothing for F-35
参考:F-15 Eagles Win Big In Supersized Defense Spending Bill
減少し続けているF-35A調達に追加資金が割り当てられなかったことは「何か」を暗示しているのかもしれない
米国の2025会計年度は2024年10月1日に始まっているものの、2025年度予算が成立していないため連邦政府機関は2025年9月末まで=2025会計年度全体をカバーする繋ぎ予算で運営されているため、2025年度予算の支出は「前年度レベル」という制約が発生しており、前年度からの継続プログラムは問題なくても、前年度に支出実績のないもの=新たな武器システム開発への資金供給などは大きな支障が出ている。

出典:Israel Defense Forces
さらにトランプ政権による大幅な安全保障政策の変更、政権が要求するGolden Dome for Americaの実現、ヘグセス国防長官による主要プログラムの見直し、ウクライナでの教訓を反映した国防総省の方針変更なども2025会計年度の国防調達を予測不可能なものにし、陸軍参謀総長のジョージ大将も「戦闘車輌を含む大規模調達計画を根本的に覆せす大改革が進められている」「この数年でテクノロジーがどれだけ変化したかを考えれば今まで伝統的に購入してきた種類の装備を買わなくなるのは当然のことだ」と述べたため、米防衛産業界はパニックに近い状況だ。
特にMarathon Initiativeが2023年に発表した報告書=拒否戦略への資金供給(従来装備品の調達削減など防衛装備品に関する調達改革を提案した内容)を書いた人物がトランプ政権下で国防次官に抜擢されており、米防衛産業界の関係者も「2026会計年度が始まるまで身動きが取れない」「何も信じられないので新しいものに投資できない」「誰が勝利して誰が退場することになるのか誰も分からない」「国防総省から資金を確保できたと思った途端に全てが変わる」「ただ業界は嵐が過ぎ去るまえ耐えることしかできない」と述べており、恐らく海軍や空軍の請負業者も同じ状況だろう。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class James Finney
この状況で議会の軍事委員会はトランプ政権の政策を推進するため、2025会計年度内の1,500億ドル追加支出計画を発表し、造船業界は約337億ドルもの新たな資金を獲得して本支出計画における最大の勝者となったが、トランプ政権肝いりのGolden Dome for Americaも247億ドル、商用技術の軍事利用、低コスト巡航ミサイル、消耗可能な無人機、小型ドローンなども135億ドル、核抑止力関連としてB-21の生産加速、新型ICBM=センチネル開発、ミニットマンIIIの改良なども129億ドルの資金を獲得。
戦術航空機の調達や近代化にも計72億ドルの追加資金が投入され、F-15EXの生産増加に31億ドル、CCAプログラムの加速に6.7億ドル、F-47の開発加速に4億ドル、F/A-XXの開発加速に5億ドル、C-130Jの生産増加に4.4億ドル、EA-37Bの生産増加に4.7億ドル、V-22のセナル改良加速に1.6億ドル、一部のF-22A(恐らくBlock20)退役を阻止するため3.6億ドル、F-15E退役を阻止するため1.2億ドルが配分され、この分野における最大の勝者はBoeingとなった。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
F-15EXの生産増加に割り当てられた31億ドルが「予定された98機調達を加速させるための資金」なのか「98機を超えるF-15EX調達のための資金」なのかは不明で、もし後者の場合「32機~34機の追加調達」となるが、F-35Aには追加資金が1ドルも割り与えられておらず、ミッチェル航空宇宙研究所も「F-15EXは素晴らしい航空機だが、この法案がF-35についても何も言及していないことは非常に憂慮すべきことだ」と、American Enterprise Instituteも「1,500億ドルもの追加資金を与えておきながらF-35を無視するのは、同機に対する世論を物語っている」と指摘。
元空軍当局者によると「下院軍事委員会にはBoeing出身の上級スタッフが含まれているためLockheed MartinよりもBoeingを支持する傾向がある」「F-35は維持コストやテスト遅延など数々の問題を抱えているため『非常に広範囲な不満』が広がっている」「造船業界の窮状に対して航空戦力縮小の深刻さはあまり理解されていない」と述べており、米空軍の調達数が減少し続けているF-35Aに追加資金が割り当てられなかったことは「何か」を暗示しているのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by 1st Lt. Rebecca Abordo
ものになるかどうかもわからんゴールデンドームに大金かけるくらいならF-35の改修に金かけてくれ。中露による米本土核打撃は、現状の米国の核戦力でも普通に抑止できるから別になくても構わんが、F-35のアプグレ停滞は全同盟国の航空戦力に影響するぞ。
抑止には足るが、防げるかはまた別なんだよな。まあ核なんて殆ど政治カードに過ぎないのだろうけど。てか、核が完封出来た時点でその効力は無くなるわけか………、核もまた水物か…
だからこそABM条約があったわけですし
F-35の問題解決、F-47の戦力化までは非ステルス戦闘機(F-15EX)+防空網(米版アイアンドーム)の防御的な航空戦術取るつもりか?
アメリカ以外での拒否反応に加えて母国でも拒否反応広がってる感じですかね。F-35は。
つい数年前までは今から戦闘機を買うならF-35以外にあり得ないってレベルで激推されてて鉄板だと思われてたのにそれが今は導入するっていうだけで叩かれるようになってしまった。
ここまで世間の評判が悪くなるともうF-35の未来は潰えたと言っていいのではないでしょうか?
>>もうF-35の未来は潰えたと言っていいのではないでしょうか?
パラレルワールドの話ですか?
パラレルワールドっつーか、世界で最もF-35を信仰しているのは日本のミリオタでは?
なんというかF-35関連になると意見が極端に別れすぎる。
ゴミ呼ばわりする人と問題を見てみぬ振りする人が両方いるけど、開発がぐだって先行きが暗いのは明らかだけど同時にある程度完成していて西側が入手可能な唯一の第5世代機という光と影の両方の側面があるわけで、そこは個人の捉え方の違いだからどっちかの側に立って相手を言いくるめる必要はないのでは。
日本国内に限れば欧米のように自前の戦闘機が生産中ではなく、強力な敵対国に囲まれ、化石のようなF-15SJが約100機も現役なのでF-35への期待が高いのも仕方ないでしょう。
既にTCOの面で問題がある、アメリカの調達削減と共に悪化していく見通し……なのが問題なわけで
日本はトランプが売ってくれると言っているうちに手を上げてF-47の購入契約にさっさとサインしたほうが良いと思う
どうせアメリカの議会でも最新鋭の機体を日本へ売っていいのか、と揉めるだろうし、完成が見えてきたら他の国も欲しいって言い出すよ
マジで列に並ぶなら今(まあ、どうしてもギャンブルになってしまうが……)
それにさっさとF-47に切り替えていけば
調達を減らされて困ったLMが不良在庫と化したF-35を日本に売りつけようとするのを防げる
米軍機じゃないGCAPだとどうしてもこういう圧力にさらされるのでメインプランはF-47の方が筋が良い
大統領は米軍と同じF-47は同盟国にも売らないと宣言しているし、LMもF-47の成果を取り入れた新型F-35を売り出すと言っている。恐らく米国向けF-47の代わりに新型F-35を勧められるんじゃないかな
LMの主張する「アップグレードしたF-35が安い」は取得コストだけの話
第6世代はステルス機に共通の病だった運用コストを抑制すると言われているのでTCOで比較するとどうなるかわからない
この観点からも日本がF-47にコミットして取得コストを下げるのは合理的な解となる
トランプの言う10%性能を抑えた輸出型F-47でもまだF-35より高性能
しかも意図的に抑制するのだから、必要(対中国)に応じて程度が調整できる
F-47は輸出モデルであってもアップグレード版のF-35より明確に高性能な機体になるだろう
今後の戦場では有人機は無人機にどんどん活躍の場を取られていくのが見えている
だから有人機はハイエンドを志向するべき
既にロシアがAWACSを飛ばせなくなっている事実は軽くない
中国を相手どる日本はより厳しい状況に置かれている
アグレッシブな研究開発を続ける中国に5.5世代で対応しようってのは甘えだと思う
また、F-35はプロジェクトの起源が古く、中国の脅威にも、ウクライナの戦訓にも対応できる余地が本質的に少ない
そもそも論として第6世代の80%の性能というLMの謳い文句はかなり怪しい
最後に、LMとF-35は鼻で笑うレベルのトラブル・遅延が続出しているという事実
これまでの経緯を見れば、これは典型的な失敗したプロジェクトだろう
今はまだ他に選択肢がないから購入・運用しているだけ……というのが現実
異なる選択肢が積極的に検索されていなければおかしい状況
もはや単なる下馬評ではなくて、LMとボーイングの代理戦争めいてるし、怖いわ。大なり小なりペンタゴンの無謀な要求を両社が満たせなかった事には違いがないのに。
逆に言えば外資特有の金のかかったネガキャン、場外乱闘を元に、西側諸国は軍事政策を決定せねばならんのかと。
LM独占体制では供給に難がある。故に出遅れていた航空各社が周回遅れでステルス戦闘機を開発する。そのギャップは防空兵器の拡充と非ステルス戦闘機でどうにかする
と言う至極単純な話が、感情的で金が掛かった宣伝合戦で見えなくなるのが残念だ。
やはり今からでも遅くは無いからF35はゴミ箱に捨てて
X32を復活させる方向が世界の意思な予感
F-35は先ずどの機能を切り捨てるか決めてからでないと、予算をいくら突っ込んでも改修は出来ないだろう。
イスラエルがレバノン(ヒズボラ幹部)での空爆、シリアでの空爆により投射力と安定性を、F15は見せつけてましたからね。
2000ポンド爆弾7発といわれてまが、映像も強烈だったなと…
安全保障の問題なのに、F-35が納期が守れないどころか、いつ届くのか・いつ改修できるのか分からないというのは、少し論外なのかなあと感じる時があります。
輸出規制なんか厳格なのに、兵器の納入に関わるもので、あまりにもF-35いい加減だなあと…
やっとこさ現有航空戦力の老朽化と稼働率低下に危機感を覚えたということでは無いのかな。F35についてはとにかくLMが自腹で作戦行動に投入できるようにしろと言っている気がする。
ボーイングの経営方針(製品開発に金をかけずロビー活動に大金を突っ込む)の正しさが証明されましたね!
米国では物作りなんか時代遅れなんですよ
数の揃わないステルス戦闘機の代替として、防空網内で戦う前提で非ステルス戦闘機を維持するにしても、生産性が高いほうが良いなあ…別にF-15EXでも新型タイフーンでも良いんだが、何とか安くならんのか?
ボーイングがロビー活動に勝ったというより、ペンタゴンがロッキードやボーイングを酷使するやり方が破綻したと言った方が正しいんでは…
ボーイングへの不満をもみ消すコンサルは有能だね・・・。なお燃えてる部分への対応
F-15EX は国産で F-35 は多国籍で、
さらに苦境にはまりこんだ国策企業を緊急支援した、
つたゆー感じに見えました。小並感
1,500億ドルって追加ってレベルじゃないぞw
露骨なまでのボーイング救済のための政治的判断…
LMにとっては到底容認できないことだろうな…
そしてボーイングは欠陥品を納品しまくると
大統領と軍と議会に、メーカーが振り回されてますね…。
ここのコメントで言われているように、ボーイングはじめメーカーにも悪い点は多々あるわけですが
兵器調達という、民間側も莫大な投資をしなければならないジャンルで、大方針がコロコロ転換されえてしまうと
メーカーは設備投資やR&Dに予算をつける決心が出来なくなり、兵器開発が滞るんですよね…。
このゴールデンドームとかいうのも、どうせ政権が変わったら調達数量減とか、そもそも開発中止とかになるんでしょうし…。
初期生産型のF-15Eの退役分やANG用の後継機の問題が未解決の為F-15EXの追加生産が行われれば朗報ですが、以前の記事で空軍側はイラネという記事も有りましたが、F-35AのBLOCK4完全実用化のメドが立っていないだけに仕方がないのかも。
F-22A初期型の延命処置の内容もアップデートが難しいといわれていただけにどん太手段を行うのか続報を待ちたいですね。
F-15イーグルIIって言われるほど悪いかな?
Block4にならないとほとんど何もできないF-35の現状では、ワークホースのプランBとしてむしろあって良かったレベルだと思いますけど。
今買っとけば30年は使えるだろうし、米軍なら第5,6世代機のカバーの下、戦闘爆撃機としてツブシの効く使い方も可能でしょう。
システムもそうなんですけど出力も発電能力も冷却能力も、機体サイズ的に余力が無さそうなF-35だと明るい展望が見えないのが何ともですね…
これ、F-35を増産する予算とアップデート費用は別なんですよね?
こうなったら改良改善ということでF-18みたいに大型化した「スーパーライトニングII」を作って…ついでに双発化して…F-47?
今までのアメリカの製造業の凋落ぶりからすると、戦闘機、攻撃機を1種類に絞るのは危険でしょ。誰の目にもわかるほどピークを過ぎている。
毎年、空軍と海軍に100機以上は納入しないと訓練にも支障が出るので、金はかかるけど、全機種を生産維持が必要ではないか?