欧州関連

アゼル軍、ナゴルノ・カラバフ地域への補給路遮断まであと一歩

アルツァフ共和国(旧ナゴルノ・カラバフ自治州が独立国だとして名乗っている国家名)の国防大臣兼陸軍司令官のジャラル・ハルティニャン中将がアゼルバイジャン軍と交戦して負傷したと報じられている。

参考:Karabakh presidential spokesman: Jalal Harutyunyan’s wound not life-threatening

今後数週間の動きがナゴルノ・カラバフ紛争の行方を決定づけるかもしれない

アルツァフ共和国は27日、首都ステパナケルトから北に約40km離れたマルタケルト地区の塹壕でアゼルバイジャン軍と交戦していた国防大臣兼陸軍司令官のジャラル・ハルティニャン中将が負傷したと発表、命を脅かすほどの傷ではないが職務に支障をきたすためミカエル・アルズマニアン少将が後任の国防大臣に指名された。

アルツァフ共和国側は「彼は傷が癒えれば直ぐに戻ってくる」と強調しているが、同じ日にナゴルノ・カラバフ地域に展開するアルメニア軍第18歩兵師団の指揮所が破壊され同部隊の参謀長が死亡するなど、アゼルバイジャン側は無人航空機(UAV)を駆使(※)して軍の命令系統の破壊を目論んでいる=ハルティニャン中将は意図的に狙われていた可能性が高い(アゼルバイジャン側はアルツァフ共和国側の国防大臣を倒したと盛んに発信している)かもしれない。

※UAVによる攻撃という意味ではなくUAVを使用して指揮所の位置を特定したり、高級将校の移動を監視することで砲兵が狙い撃つと言う意味。

もしそうなら後任にアルズマニアン国防大臣は首都ステパナケルトの塹壕から外出しないほうが懸命だろう。

因みにナゴルノ・カラバフを巡る戦いは佳境を迎えつつある。

ナゴルノ・カラバフ地域は険しい山岳地帯のためアルメニアからアルツァフ共和国の首都ステパナケルトに通じる幹線ルートは北と南に1本づつしかなく、これを遮断されればナゴルノ・カラバフ地域に展開するアルメニア軍やアルツァフ共和国への補給は絶たれてしまい今回の紛争の勝敗が決してしまう。

ハルティニャン中将が負傷したマルタケルト地区はアルメニアからアルツァフ共和国の首都ステパナケルトへ通じるルート上の要衝で、ここでアゼルバイジャン軍を食い止めないと北ルートの補給路が潰されることになる。さらに昨日、アゼルバイジャン軍は首都ステパナケルトの背後に当たるグバドリ県から北へ攻勢を掛け始めたと言われており、アルメニアから首都ステパナケルトへ通じる南ルートの拠点ラチン制圧も視野に入ってきた。

この地域はアルメニアとナゴルノ・カラバフ地域と結ぶ「ラチン回廊」と呼ばれており、ここは元々ナゴルノ・カラバフ自治区ではない=アゼルバイジャン領なのだがナゴルノ・カラバフ戦争(1988年~1994年)でアルメニアとアルツァフ共和国側に占領されアルツァフ共和国の行政区域に組み込まれた地域だ。

要するにマルタケルト地区とラチンを制圧するか、安定的に両地域を自走砲や榴弾砲が射程に収めればナゴルノ・カラバフ地域への補給を遮断(空路による補給を遮断するにはステパナケルト空港を破壊するしかない)することが可能でアルツァフ共和国降伏も時間の問題だろう。

結局、3度の人道的停戦が全く遵守されないのはアゼルバイジャン側からするとナゴルノ・カラバフ地域奪還まであと一息だからで、アルメニア側が盛んにロシアや米国を動かして停戦に持ち込もうとするのは補給路にアゼルバイジャン軍が迫っているためだと解釈すれば分かりやすい。

管理人の予想では現状のまま戦況が推移すればアゼルバイジャン側が補給路遮断に成功すると見ているが、逆にロシア、米国、イランなどが軍事介入を行うなら最適なタイミングだとも言えるので、今後数週間の動きがナゴルノ・カラバフ紛争の行方を決定づけるかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:アゼルバイジャン国防省が公開した動画のスクリーンショット

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    これまでの経緯を考えると、仮に補給を断たれたからといってステパナケルトが抵抗を止めるようにはとても思えない。

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 28日

      アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフを完全に制圧したら、同地のアルメニア系住民がどうなるか、考えると恐ろしい。

      14
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    ロシアが介入するのなら今しかない
    いちど回廊を押さえられたらアルメニアの敗北は確定
    それを黙認するプーチンからアルメニアは確定的に離反するだろな

      • 匿名
      • 2020年 10月 28日

      離反したところでアルメニアがすがれる国なんてあるのかね。
      アメリカもEUもコロナや内政で忙しい上に、
      産油国で金があり、しかもイスラエルとトルコが味方についてるアゼルバイジャンを敵に回すメリットなんてないし。

      10
        • 匿名
        • 2020年 10月 28日

        キリスト教国だからイラン・サウジ等にも頼れないしね。

        5
          • 匿名
          • 2020年 10月 28日

          宗教でダメってことはないでしょ。
          宗教だけを考えるならば、アゼルバイジャンとイスラエルが手を組むことはないし。
          ロシアの代わりに手を差しのべるとすれば、イランだろう。
          アゼルバイジャンとトルコの結びつきが強くなれば、イラン本国までトルコに脅かされる可能性もあるし…

          6
        • 匿名
        • 2020年 10月 29日

        すがれるかは怪しいが、隣のグルジアなら手を結べるだろう。

      • 匿名
      • 2020年 10月 28日

      一方ロシアは今、シリアのイドリブ(トルコが支援する反体制派の最後の拠点にしてシリア人傭兵の供給地)を激しく空爆。トルコの後背地叩きでもある。

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    実際にはハルティニャンはジープで移動中にドローンに爆殺されていてその様子もアゼルバイジャン側に公開されてる
    リンク
    あとmartakartは補給路ではなくアゼルバイジャンに面する東の最前線の街

    7
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    この戦争で犠牲者が増えれば、やがて責任のなすり合いが始まるだろう。
    いまの欧州やロシアの態度は「未必の故意」(悪い結果を望まないが、それはそれで仕方がないと割り切ること)そのもの。
    どの国もコロナパンデミックを逃げ道に使うだろうな。期待はしていないが、PKOが必要なときだと思う。

      • 匿名
      • 2020年 10月 29日

      PKOで派遣された隊員が感染しても困るし、派遣された隊員から感染しても困る。
      まあアゼルバイジャンはいい時期に仕掛けたということで

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    ステパナケルトに通じる幹線ルートは実は西ルートもあるから北と南ルートが占領されても補給はまだまだ大丈夫なんやで
    でも今まで険しい地形を利用して防衛してたのが首都まで繋がる進撃路を与えてしまうから結局やばいんやで
    あと南ルートからめっちゃ迂回すれば西ルートも遮断可能なんやで
    そうなれば首都は東西南北4方向から完全包囲されて一貫の終わりなんやで

    6
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    嗚呼~サイパン陥落しちゃう~

    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    やっぱ制空権って神だわ。アルメニアはどこまで耐えられるかねぇ…というか大将やられているとか駄目でしょ。

      • 匿名
      • 2020年 10月 28日

      節子、大将やない。中将や。(無粋)

      2
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    首刈りされてるって事はシギントかヒューミントかわからんけど、諜報戦でもアメル側が負けてる感じか?
    地上・航空戦力、更に情報も劣るとくればアメル側が劣勢を覆す手段は外部勢力の介入だけだわな

    2
  1. ANNA Newsっていう報道局がアゼルバイジャン軍が無人機でアルメニア本国を攻撃しているという報道をしているのを見たんだけど、それが本当ならロシアが介入してくる日もそう遠くはないはず。

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 28日

    国防大臣兼陸軍司令官が最前線で位置特定されてピンポイントで攻撃されるとかまるで山本五十六みたいだあ(直喩

    7
    • 匿名
    • 2020年 11月 01日

    榴弾砲にしては小型だね。
    薬莢も残るタイプだし、山岳地帯は運搬がしやすい小型の歩兵砲ばかり使うんだ。
    自衛隊みたいに筒状の枕みたいな炸薬と砲弾を分けた方がいいと思うけど向こうでは無理なんだろうか。

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