欧州関連

フランスとの関係強化に動くエジプト、ラファール30機を37.5億ユーロで追加導入

エジプト国防省は今月4日、フランスから戦闘機ラファールを30機追加導入する契約を締結したと発表して注目を集めている。

参考:مصر وفرنسا توقعان عقد توريد 30 طائرة طراز رافال

エジプトの人権問題を問題視するバイデン政権のおかげでフランスが漁夫の利を得たか?

エジプトはナセル政権時代まで親ソ路線を掲げていたため軍の装備はソ連製で占められていたが、その後誕生したサダト政権では親米路線に転換したので軍の装備供給先も米国に変更された。

しかし2012年にシナイ半島の過激派に対する軍事作戦を実施したことで当時のオバマ大統領がF-16やAH-64Dといった装備品の引き渡しを拒否、これを契機に同国の装備調達先は複数の国に分散化されエジプト空軍の戦闘機は米国製のF-16×218機、ロシア製のMiG-29×44機/Su-35×24機、フランス製のミラージュ2000×19機/ラファール×24機で構成(MiG-29やミラージュ2000の数については諸説ある)されている。

出典:public domain ロシア空軍のSU-35

エジプトはイタリアと110億ユーロ(約1兆3,000億円)以上と推定される大規模な武器パッケージ(ベルガミーニ級フリゲート×6隻、型式不明の哨戒艦×約20隻、タイフーン×24機、M-346×24機、偵察衛星やミサイル発射装置などを含む)に関する交渉を進めていると報じられており、これが実現すれば主要国の第4世代戦闘機を全て保有するというレアケースが発生するため注目していたのだがイタリアとの交渉よりも先にフランスとの交渉が成立したらしい。

エジプト国防省はフランスから戦闘機ラファールを30機追加導入する契約を締結したと今月4日に正式に発表、ロイターなどの海外メディアもエジプトのラファール追加導入について契約総額が37.5億ユーロ(約4,930億円/調達資金の85%をフランス政府が融資する条件)になると報じている。

参考:France to sell Egypt 30 fighter jets in $4.5 bln deal -Egyptian defense ministry, report

出典:public domain ラファールB

では何故ラファールの追加導入にエジプトが踏み切ったのかだが、米国のバイデン政権は「エジプトの人権問題が今後の2ヶ国間関係の中心議題になる」と言っているため米国からの戦闘機導入は不可能でロシアからのSu-35追加導入にはバイデン政権が「敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)」に基づく制裁発動をチラつかせておりイタリアとの交渉も発表以降に何の進展も見られない。

しかしフランスのマクロン大統領はエジプトの人権問題について取り上げない=つまり問題視しない姿勢を打ち出しているのでエジプトは自国に都合の良いフランスとの関係強化を図るためラファールを30機追加導入して見せたの言うのが管理人の予想だ。

果たして今回の契約はイタリアとの大規模な武器パッケージ取引にどの様な影響を与えるのだろうか?

関連記事:各国の第4世代戦闘機を調達するエジプト空軍、今度はタイフーンを導入

 

※アイキャッチ画像の出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    ここに来てラファールの調子いいな、インドネシアも導入予定だし

    19
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    米国で人権屋が政権取ると
    フランスの武器屋が儲かるわけか

    19
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      何だか嘗てミラージュ3がよく売れたのと同じような感じだね

      13
        • 匿名
        • 2021年 5月 04日

        戦闘機業界の隙間産業でしょうか?
        ミラージュⅢはよく売れましたから隙間でもなかったですが。

        3
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    発注が重なるけど、いまだと発注から納入までどれくらいになるんだろう。
    いまさら生産ライン増設ともいかないだろうし。

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      ラファールの生産ペースはあんまり早くないらしいです
      ミラージュ2000の売れ行きが今一だった事も有って、
      元々フランス以外にはそんなに売れる目算ではなかったみたいなので

      9
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    ほんまもんの死の商人は一味違うでぇ

    9
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      本邦もフランス製兵器って導入してたっけ?
      FHはなんとなくわかるんだよね

        • 匿名
        • 2021年 5月 04日

        120RTなんかが自衛隊で導入してる仏兵器?
        海保だとシュペルピューマとあとユーロコプターのも導入実績あったかと
        警察も各地で入れてるかな

        4
        • 匿名
        • 2021年 5月 04日

        そう言えば、今建造中のもがみ型FFMに搭載する予定の対機雷用水中無人機OZZ-5に装備されている高周波合成開口レーダーはフランスのタレス社製だった筈ですよ

        7
      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      死の商人?どこのパヨカスの主張なん?
      力の空白を生み出さない事は平和につながる。
      フランスが居なけりゃ手に入らない=力の空白が生じる=紛争拡大

      3
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    相手国がF-35やSu27なんかを持ってれば一方的にボコれれそう。

    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    ラファールの製造ペースそんな高くないのに
    ギリシャやらエジプトやらに売っていては本国用の機体が揃わなさそうだな…

    6
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    スエズ運河の件で日本に1000億円とかアホみたいな金額請求してこれか
    舐められてんな

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      その件とラファール導入に何の繋がりが?

      13
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      請求されてるのは日本じゃない、運行会社ね
      1000億円がアホみたいな金額とか言っちゃうのは無知が過ぎる
      海運で動く額を知らんのか?

      20
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    偵察衛星って輸出出来るもんなの?

    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    相変わらずカッコいい。
    本国ばりに民間人射出しないかな?

    4
      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      欧州イカ三兄弟の中で一番格好いい

      11
        • 匿名
        • 2021年 5月 05日

        イカしてるよな

        2
        • 匿名
        • 2021年 5月 05日

        特別にブサイクな異母兄弟のタイフーン君がかわいそう(涙)

        1
      • 匿名
      • 2021年 5月 06日

      胴体中央部の胴から翼にかけての滑らかなボディラインが堪らん。
      正面から見ると中々のイケメン戦闘機。

      1
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    いっそ地上空母も作ってくれないかな。
    西武砂漠なら活動可能かと

      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      所沢バカにしてんの?

      6
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    今エジプトはどこと敵対してるのかいまいちわからんな。アラブの春でムバラクが消えた次の政権が経済的に失敗して軍国主義に逆戻りしたって情勢だから軍へのプレゼントなんだろう。
    いまさら第4世代を入れても戦力的にどうかと思うが。

      • 匿名
      • 2021年 5月 04日

      今更第4世代機と言っても、F-35以外に輸出されている第5世代戦闘機が有るとでも?
      結局、中露が色々言いだしたり憶測が流れた所で、国外輸出された中露第5世代機なんざ目撃もされていないが?

      5
      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      トルコとリビアで代理戦争中
      トルコは暫定政府、エジプトはリビア国民軍

      5
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    なーんか各国4.5世代機導入しとんね
    F-35(第5世代)買えない?あえて買わない?

      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      ステルスなんかより武装搭載量を選んでるんでしょ。
      値段の割に搭載量が低下してて問題が頻発中のと値段が安くて信頼のある搭載量が多いのといったら後者だよね

      6
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    売れん売れん言われてたラファールがここ1,2年でいきなり売れ始めてるやん
    やっぱ最初は売れなくても戦闘機は国産しておくもんやなあ
    営業は絶好調だけど製造現場はどんなやろなあ

    8
      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      ギリシャに中古のラファールを売った後、相当な期間代替の新造機が空軍に引き渡されなさそうな予感がしますね……

      1
    • 匿名
    • 2021年 5月 04日

    ラファールの紹介画像でよくこの写真使われるけど本当にセクシーだよな( ´Д`)=3
    ただただ美しくて自国で見られるエジプトが羨ましい
    米国縛りの政治的調達制約がなかったら是非我が国にも…いいなぁ

    1
    • 匿名
    • 2021年 5月 05日

    フランスはいつまで中古の兵器で商売をするつもりなんだ、イギリスは日本のAESAレーダーやエンジン技術を利用してテンペストを作り上げるだろうからFCASはたとえ完成できたとしてもテンペストより一段劣る機体になる。
    将来的にはイギリスは日本と要素技術を共通化した潜水艦や戦車を持つようになるかもしれない。
    こまで先を読んでのブレグジットだとしたら、さすが機を見るに敏なイギリスと言わざるを得ない。

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      陰謀論ここに極まれりですな( ´Д`)=3

      12
        • 匿名
        • 2021年 5月 05日

        陰謀論の使い方が間違ってるぞ、ブレグジットはあらゆる損得を考えてイギリスの出した結論で陰謀なんかが関与する隙間はない。

        2
          • 匿名
          • 2021年 5月 05日

          ブレグジットはそこまで緻密に考えられたものじゃないでしょ…

          7
      • 匿名
      • 2021年 5月 22日

      日本が英国と共同開発した所で、ぶっちゃけ本邦がブリカスの足を引っ張るのが関の山だと思いますよ
      リアルで

      2
    • A
    • 2021年 5月 05日

    改めてエジプトっていろんな所から武器買ってるんだね。
    日本製もシレっと売れないかな。

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 05日

      他国が欲しがる様な日本製兵器なんて無いだろ

      9
        • 匿名
        • 2021年 5月 05日

        日本の兵器が売れないのは高官への賄賂を出さないから。
        軍事費の一部が関係者に流れて結局は輸入国の軍事力を毀損する、民度の低い国はそれを理解していない。
        そういう国は軍事機密も漏れやすいから日本としても手を出さない。

        8
          • 匿名
          • 2021年 5月 05日

          所詮袖の下の山吹色のお菓子の量で決まるとはなぁ

          2
        • 匿名
        • 2021年 5月 05日

        61式戦車を欲した国はあったね
        博物館向けだけど

        2
    • 匿名
    • 2021年 5月 05日

    隙間的には、P-1かな。
    P-8以外にまともな対潜哨戒機は無いからね。
    アメリカが文句言い出すかも。

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 05日

    ミストラル級2隻は、どう活用するつもりなんだろう?
    揚陸作戦ならリビアかな。
    ヘリ空母としては使えるかな。
    ラファールが離着艦できるわけではないし。

    3
    • 匿名
    • 2021年 5月 05日

    何はともあれ正面から見たラファールはカッコいい

    4
    • 匿名
    • 2021年 5月 05日

    つまるところ、ギリシャ対トルコ紛争についてエジプトはギリシャ側であることを表明した、とも取れます。
    明確でないにしろトルコ側ではないことがはっきりしています。

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 08日

    ここ最近で
    インド   :36機(2016発注)
    ギリシャ  :18機
    インドネシア:36機(未確定)
    エジプト  :30機(追加)
    合 計   :120機

    フランス(180)・エジプト(24)・カタール(36)の既発注分が240機だったのが、1.5倍に増えてる。ただしこれまで最大の年間生産数15機(2006)のペースでも追加分だけで8年かかる計算。これだけ増えると単価も下がり(急造のため上がる可能性もあるが)、採用国での評価も高そうなので更に次の採用を呼びそうな気がする。インドが空母用にラファールMを発注するとか。

    中国関連で世界的な緊張の高まり、米露以外からも調達する傾向、5世代機は開発が遅れ気味、その不足を新型の4.5世代機でサポートという最近の状況からすると、最良の4.5世代機として今後ブレークするかも知れない。

    FCASが難航した場合、そっちは延期して予定されていたラファールNGの開発が再開されるかも。

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