中東アフリカ関連

各国の第4世代戦闘機を調達するエジプト空軍、今度はタイフーンを導入

伊メディアのラ・レプブリカ紙は5月29日、イタリア政府がエジプトに対する大規模な武器販売パッケージの承認を準備中だと報じている。

参考:Navi e caccia all’Egitto di Al Sisi. Governo diviso sulla maxi commessa

エジプトがイタリアから4機種目となる第4世代戦闘機ユーロファイターを調達

ラ・レプブリカの報道によればイタリア政府はエジプトに対し、FREMM計画に基づいて設計されたベルガミーニ級フリゲートを6隻(内2隻はベルガミーニ級+残り4隻はエジプト向けに設計を改めた専用艦)、型式不明の哨戒艦約20隻、戦闘機ユーロファイター・タイフーン 24機、訓練機/軽攻撃機M-346 24機、偵察衛星、ミサイル発射装置20基が含まれた武器販売パッケージの承認を準備中らしい。

出典:public domain カルロ・ベルガミーニ級フリゲート

既にイタリア国防省の販売承認はおりており内閣の承認手続きが完了すれば、エジプトに対するイタリア史上最大の武器輸出が成立する運びで、このパッケージの総額は明らかにされていないが過去の取引から推測すると恐らく110億ユーロ(約1兆3,000億円)以上の規模になると予想される。

エジプトはナセル政権時代までは親ソ連を掲げていたためエジプト軍の装備はソ連製で占められていたが、その後誕生したサーダート時代は親米国に方針を転換したためエジプト軍の装備供給先も米国に変わっていくのだが、2012年にシナイ半島の過激派に対する軍事作戦を実施したことで米国のオバマ大統領はエジプトが発注していたF-16やAH-64Dの引き渡しを拒否、これがエジプトの装備調達先多様化のキッカケになった。

出典:public domain ロシア空軍のSU-35

一応、米国からの装備調達は継続されているが、2015年にフランスから戦闘機ラファールを24機、2019年にロシアからSu-35を24機購入する契約を結び、今回イタリアからタイフーンを24機購入することで特定国との外交関係が拗れても軍事力行使への影響(要するに消耗品や保守部品供給の多重化)は限定的になり、エジプトの外交や政治手段は自由度が増したと言える。

それにしてもエジプト空軍はこれで米国製のF-16、ロシア製のSu-35、フランス製のラファール、欧州エアバス製のタイフーンと第4世代戦闘機を代表する機体が一同に揃う事になり、これらを競わせて貴重な比較データーを手に入れられることになる。

恐らく海外製第4世代戦闘機を4機種も導入した国はエジプトが初めてではないだろうか?

勿論、同一機種に統一した方がパイロットの訓練や機体の保守面で負担が少ないのは間違いない。しかしエジプトは効率を捨てて調達先の多様化を敢えて選んだので気にしていないのだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Alexander / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    元々エジプト空軍の戦闘機は米国(F-16、F-4等)やフランス(ラファール導入以前にミラージュ5や2000の導入実績あり)、旧ソ連(MiG-35やSu-35導入以前にMiG-21等の導入実績あり)に中国(J-7)から導入して来たので、多国籍の兵器を運用するのは慣れているのだろうが、これだけ多数の種類の戦闘機を導入すると運用や整備面で大丈夫なのか気になるな。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    不具合が起きて飛行停止になった場合のリスク回避で複数機種を装備するのは良くある話だけど、基本的に出来る事が似通っているラファールとユーロファイターを両方装備するのは面白い。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    >恐らく海外製第4世代戦闘機を4機種も導入した国はエジプトが初めてではないだろうか?

    あれ、インドの海外製第4世代戦闘機、まだ4機種に到達していなかったでしたっけ?

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      自分も気になって調べたら
      海外製の第4世代と言えるのはSu-30MKI、ラファール、Mig-29Kあたりですかね
      あとはミラージュ2000、Mig-21-93、ジャギュアIM、Mig-29UBが現役
      内製のテジャスを第4世代に含めるか悩むところ

        • 匿名
        • 2020年 6月 03日

        ありがとうございます。
        テジャスは、JF-17やグリペンと同級だから、同世代に入れてあげて良いとは思いますが、内製ですから今回の括りからは外れますね。

        • 匿名
        • 2020年 6月 03日

        ミラージュ2000やMig-29UBは第4世代戦闘機と言って良いのでは?
        第4世代というより、4.5世代戦闘機を4機種揃えたというのが正しいのではと

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    ある意味リアルエリア88 多国籍過ぎぃぃ。

    1
    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    通常ならここから魔改造蠱毒兵器の誕生を期待したいのですが、無いですな。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    「敢えて多様化」というよりも、ブレまくる外交方針と一貫性ない軍事政策、そのときどきの上級担当者への収賄戦略の結果がコレでしょう。
    ここまでくるとデメリットの方がよほど大きい気が。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    航空祭とかあったら楽しそう(小並感)

    3
      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      模擬でドックファイトとかして欲しいですね。

      2
      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      パリ航空ショーとかの国際見本市を兼ねるとこ除けば
      これだけ色々な機首が揃う機会は無いからマニア垂涎だろうね

      1
      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      航空祭楽しそうですね。
      旅行ツアーの目玉になるかも?
      とりあえずエジプトってお金持ちなんですね。

      1
    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    エジプトってそこまで金があるか?

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    ラファールとタイフーン…
    面白い。

    そう言えばトランシェⅢってどうなったのだろうか?

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      >そう言えばトランシェⅢってどうなったのだろうか?

      それに関する過去記事です。

      リンク
      ドイツのCaptor-E換装のことも記載されてるけど、昨年11月と少し古い話し。
      コロナ不況の影響でどうなるかだね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 04日

    同じ国の戦闘機でも機種が違えば工具も治具も整備運用ノウハウも違うから、燃料と弾薬にさえ気を付ければ多国籍な運用でも割とどうにでもなる説

    0
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