ドイツ軍はティーガーを退役させて市場で入手可能な軽攻撃ヘリで代替したと考えていると報じられており、オーストラリアに続きティーガーを見捨てる可能性が浮上した。因みにドイツは対戦車ミサイルを統合したH145Mを検討中らしい。
参考:Bundeswehr will Tiger-Kampfhubschrauber langfristig ersetzen
エアバス製H145Mを調達、対戦車ミサイルを統合してティーガーの代替機に仕上げることを検討中らしい
フランスとドイツが共同開発した攻撃ヘリ「ティーガー/PAH-2」は商業的成功を収めているとは言いにくいが、スペインやオーストラリアも採用したため約180機程度の量産が行われ、継続的な投資が続いているものの同機に対する評価は両極端で、ティーガーの運用や性能に概ね満足しているフランスやスペインはアップグレード規格(Tiger Mk3 upgrade)の開発契約を2022年に締結、しかしオーストラリアは導入したカスタム仕様のティーガーに失望してAH-64Eへの交換を発表した。

出典:Bidgee / CC BY-SA 3.0 au ティーガーARH
オーストラリアのティーガーARHは「独自の安全基準」と「豪陸軍の要求要件に準じるための改良」が施されているカスタム仕様で、2010年までに計22機の納品、2011年2月までに完全作戦能力(FOC)を獲得するはずだったのだが、敵味方識別システム(IFF)、無線及びデータ通信、自己防衛用の電子戦システム等に技術的欠陥が潜んでおり、わざわざ豪陸軍の要求で統合したAGM-114Mは製造中止によって調達が出来なくなる問題に直面。
この問題を解決するため頻繁な改修が行われた結果、豪陸軍が要求した稼働率(70%/年間飛行時間に換算すると272時間)を一度も達成できず、1時間辺りの飛行コストは3.4万豪ドルに高騰、予定よりも5年遅い2016年にFOCを宣言し、フランスやエアバスはオーストラリアにアップグレード規格開発への参加を呼びかけていたものの2021年にAH-64Eへの交換を発表した。

出典:public domain AH-64Eアパッチ・ガーディアン
開発国のドイツでもティーガー(PAH-2)は品質上の問題で何度も飛行停止を経験し、スペアパーツ不足が足を引っ張って満足な運用(2022年4月に当時のランブレヒト国防相が「51機中9機しか飛べない」と議会で言及)も行えず、国防省も開発参加を検討したアップグレード規格について「Tiger Mk3計画はコストと時間の問題で非常にリスクが高い」と批判的で、2021年にAH-64Eの情報提供を米国に要請していたが、独メディアは最近「ティーガーを退役させて市場で入手可能な軽攻撃ヘリで代替したと考えている」と報じている。
アップグレード規格を適用しない場合、ドイツのティーガーは2038年までに姿を消す予定(2031年頃から退役する機体が出てくるらしい)で、新たな攻撃ヘリを新規開発するでもなく、噂されていたAH-64Eを調達するわけでもなく、市場での調達性が優れるエアバス製H145M(EC145のミリタリーバージョン/ドイツ軍も多目的用途で導入済み)を調達し、対戦車ミサイルを統合してティーガーの代替機に仕上げることを検討中らしい。

出典:Tim Rademacher/CC BY-SA 4.0 H145M
まだ正式に決定された訳では無い(今年中に議会へ提案する予定)が、オーストラリアに続きドイツまでティーガーを見捨てると同機の運用規模は約100機程度となるため、規模の経済が縮小して運用コストが高騰することになるだろう。
因みに米国の研究機関(MITRE)は「AI技術の進歩にも関わらず、攻撃ヘリの無人化に要求される自律性の獲得レベルは2030年~2040年まで大きな変化はなく、戦場で発生する『複雑で高度な問題』を瞬時に対処するにはパイロットを攻撃ヘリに乗せる必要がある」という技術分析を発表して注目を集めており、認識力を拡張するため無人機を使用することはあっても「戦場認識のコア=攻撃ヘリが担っている高度な作業、繊細さ、反応速度などをAIで代替するのは当面不可能で、兵士は最良のセンサーで有り続ける」と主張している。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Sarah D. Sangster
戦闘機分野でも無人戦闘機を制御するコアとして有人機が予定されているので、技術的に戦場からパイロットを追い出すのは当分先の話なのだろう。
関連記事:開発中の技術を信用しない豪州、ティーガーを見切り「AH-64E」導入を決定
※アイキャッチ画像の出典:Gunnar Ries/CC BY-SA 2.0
まさかドイツが日本の方針を真似たわけではないでしょうが、専用の攻撃ヘリが費用対効果に合わないってのは世界的な傾向になるのかもしれません。
無人機の制御なら専用機体の必要もないですしね。
いいえ、日本の場合は専用の攻撃ヘリどころかドイツの様に汎用ヘリを武装化する事もせず、攻撃ヘリの後継はUAVや徘徊型ドローンに極振りすると言う世界的にも極端な方針になっていますよ
それで本記事の後半に触れられていますが、米国の研究機関・MITREが「AI技術の進歩にも関わらず、攻撃ヘリの無人化に要求される自律性の獲得レベルは2030年~2040年まで大きな変化はなく、戦場で発生する『複雑で高度な問題』を瞬時に対処するにはパイロットを攻撃ヘリに乗せる必要がある」という技術分析を発表したのは重要で、言い換えれば「自衛隊が兵士と言う最良のセンサーを持つ攻撃ヘリを全廃してUAVや徘徊型ドローンに切り替えるのは間違っている」と言ったに等しい内容なので、今後の成り行きがどうなるか注目ですね
無人機ネットワークのコアを担うハードが自衛隊には実在しません。米軍とは前提が違うのですよ。
AH64DをE型+UAVコア仕様にアップデートしても僅か12機です。これでは安定した戦力展開は不可能です。
今更戦闘ヘリを大量導入など不可能ですのでUAVに全振りの選択肢は仕方なかったと思います。
確かに、その違いは有りますね
第一、攻撃ヘリに無人機ネットワークのコアを担わせようと言う事自体が、近年生残性の低下によって存在意義を失いつつあった攻撃ヘリの生き残り策と言う一面が有りましたから
自衛隊では必要に応じてuh-60を武装化することになっているので汎用ヘリの武装化はされるかと思いますが。後半部分もOH-1に無人機の管制能力をつける実験が行われているのでセンサーとしての兵士は残りそうですけどね。OH-1が退役予定なのになんで実験もやってるのは謎ですけど…
陸自のUH-60JAの武装化ですが、現状ではせいぜい12.7mm重機関銃や5.56mm機関銃をドアガンとして使う他、ミニガンを搭載する程度でヘルファイアATMやロケット弾の搭載は考慮されていないし、追加装備する話も出て来ていないですね
無人機の管制能力付与に関する実験ですが、OH-1は退役が決定する以前に実験予算を付けてしまったので、一応試験だけはするのでしょう
それとOH-1とは別にCH-47にも無人機管制能力を付与すると言う話を聞いた事が有りますので、今後の成り行きに注目すべきかと思います
もしかすると陸自の無人機運用は前線に汎用・観測ヘリを飛ばして管制するのでは無く、前線後方から管制機がスタンドオフ的な位置で管制するつもりでCH-47を用いるのかも知れません
>もしかすると陸自の無人機運用は前線に汎用・観測ヘリを飛ばして管制するのでは無く、前線後方から管制機がスタンドオフ的な位置で管制するつもりでCH-47を用いるのかも知れません
CH-47での運用とかは仰る風な構造なのでしょうが、
そこまでするなら後方からの管制でも良いのでは?、とも思ってしまいます。
後方からの管制と言う事は地上施設を想定されているのかも知れませんが、電波の届く範囲の関係も有ると思いますし、戦時では管制施設が真っ先に狙われる可能性も有るので大型でも移動可能なヘリに搭載したいと言う意図が有るのかも知れません
そこは移動式の中継局で対応出来る問題な気がします。
新野外無線機など、その手のノードを構成出来るようにシステム形成されてますよね?
その技術の応用です。
間違いとは言えないでしょ。
自分の師団長が乗ったヘリすら探すのに時間かかるし、米国から高価格で買ったAH64も市街地に落とすし、下手に攻撃ヘリ持つよりその分ドローンとかに振り分けるのが合理的
大体日本は海自と空自が肝心なんだから、基本的に陸自は災派に備えとけばいいんだよ。
と陸自に所属してると感じる。まぁ普通科だけど()
沖縄の事故後の経緯を知ってたら捜索に時間が掛かるのは分かりそうな物だし、目達原の事故でも周囲に住宅地がある場所で離陸直後にローターブレードの飛散というパイロットにはどうにもならん事が起きた訳だし、陸自の役割とか考えたら災害派遣だけに備えれば良いだけじゃないのは明らかだと思う。
何かSNS・まとめサイトの極論でも見て来た人みたいだ。ホントに陸自なの?
確かにそうでしょうけどそれでも貴重なパイロットの命が危険に晒されない事を考えればオール無人機という選択も有りだと思いますよ。
特に深刻な人員不足に悩まされてる日本は尚更。
防衛省の文章に武装ヘリの導入が記載されていますが
>>その際、既存ヘリコプターの武装化等により最低限必要な機能を保持する。
リンク
>言い換えれば「自衛隊が兵士と言う最良のセンサーを持つ攻撃ヘリを全廃してUAVや徘徊型ドローンに切り替えるのは間違っている」と言ったに等しい
そこは日本の国土事情も絡みますからその言い換えは雑過ぎるでしょう。
他国の軍が攻撃ヘリに求める役割の大半が日本では洋上で求められる訳で、航続距離数百kmしかない攻撃ヘリでは満たせず、また洋上故にある程度単純化されるので無人機でも代行でき、できない部分はP-1やRC-2他に任せる、とか色々考えられるでしょう。
攻撃ヘリは多目的ヘリで十分代替出来るということかな。陸自が攻撃ヘリを廃止するという話を最初に聞いたときは驚いたけど、このままだと他の国も追随するかも。
攻撃ヘリ、退場な潮流になるのですかね。
慣れて親しんでいた機種が役割を終え退場するのは、何だか寂しいものがあります。
帆船の戦列艦が、蒸気船の台頭と共に退場した時(『解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号』をイメージ)とかもこんな感じだったのかな?
『戦艦テメレール号』の場合、ナポレオン戦争時に20台後半で愛国心の強かった英国画家が、60台の時にトラファルガーの戦いで活躍した『テメレール』を見送ったものなので、感傷はよりあったでしょうが。
>技術的に戦場からパイロットを追い出すのは当分先の話なのだろう
とくに中小国はヨーロッパやアメリカの様に軍事費が潤沢でなく最新兵器を買ったり開発したりすることが難しいですから攻撃ヘリはしばらく残ると思います。トルコのT129 ATAKはAH-64EやAH-1Zより価格が安いことからフィリピンが気に入って6機を導入していますし、韓国もKAIが中小国向けの軽攻撃ヘリコプターLAHを開発するなど低コストの攻撃ヘリの需要はまだまだ続きそうです。
ナゴルノカラバフでDEAD任務に従事した機体も戦後にMi-17のスパイク搭載型であることが判明してました
ミサイルの射程がさらに伸びたり徘徊型無人機を搭載すると危険な前線まで飛行する必要性が薄くなり、整備やコストの観点から武装ヘリの採用が増えていくかも
冷戦中に使われていたBo-105攻撃 ヘリコプターを彷彿されますね。
平時には役立つ機体かと思います。
結局フランスみたいに国境がロシアから遠く短い地域だと地上に電子戦のシステムおいてドローン攻撃防げばよいが、ドイツみたいにロシアとの国境が近い国だとドローン攻撃に素早さで対抗しないといけないから重武装ヘリのスピードの遅さが難点になりますね。
電子戦装備のヘリヘの搭載が失敗したのが致命的ですね。ウクライナ軍がしているように、軽装備ヘリで銃撃でドローン落としているから、軽量装備ヘリならまだ活躍の可能性はありそうですね。
そうなると、レシプロ機のどこが悪いんだ?
低速のドローンを機銃で迎撃するならホンダジェットに機銃を付ければ安上がりなのでは?
歴史の一巡を感じる。
むしろBo 105P/PAH-1とか使用していてウクライナ戦争で現状自分達が使用するレベルの攻撃ヘリがMANPADSレベルにすらかなり撃墜されたからそう言う発想に至った感じもする。
ドイツがH145Mに対してどこまでの能力を求めるかが分からないけど米国UH-72武装型ですら長期的にはペイするけど各種改造するにはかなりの金額が必要として辞めた筈だが先が有る選択肢なのか?結局の所、性能にどれだけ妥協出来るかと機体の安全をどれ位考えるか。ドイツ保有のティーガー同数を交換するとしても51機でそれすらパイが少ないが冷戦時の対戦車Bo 105から1/4以下の規模になったから実際はもっと少ないと思われる、内容が大したことなくても1機辺りの改修費用が高騰しそうで、メジャーな攻撃ヘリ運用した方がマシって感じがするんよね。
旧Bo 105だと有線誘導で軽量なミサイルであるHOTをメインに使用していたから、発射時は安定した姿勢で命中まで留まるような温い運用していたけど、ヘルファイアを運用するならミサイルだけで2倍ほど重く撃ちっぱなし能力を使うならかなり射撃に関して自由度が増す。
それに対するスタブウィングや射撃時の姿勢テストが必要だろう、アパッチだってヘルファイアを発射する時には時期の安全確保とか含めてそんなに適当に発射出来ない。
攻撃ヘリ自体が対照戦争には厳しいからなぁ
性質上前線で戦うのに、速度は遅くステルス性も低い
自衛隊が廃止する方向なのは正解な気がする
ウクライナでも、両軍共にかなりの数が落とされてる
中国は防空もしっかりしてるし、人員がカツカツな自衛隊はもっと厳しいでしょ
ただ安価な攻撃ヘリは非対称戦争には使いやすいから、途上国にはしばらく売れるだろうね
開発国ドイツですら投げ出す、ティーガーのあかん子具合に泣く
陸自のコブラ後継候補になった事もあったけど、選ばなくてよ良かった
OH-1は暫く保有しておいても良いのでは。
自動運転までは行かなくても、
空中で操縦桿から手を離して静止できるそうだし、
偵察機材や攻撃機材を載せた無人機はまだ不足でしょうから。
それらが充実するまで、維持しておいた方が良いのでは、と思います。
無人偵察機をコントロールする仕事も発生するような気がします。
多少は小火器で撃たれても大丈夫なようだし。
今話題のドローンによる観測業務でも、オペレーターは最前線にいるのですから。
ウィキペディア情報だとモジュール式兵装システムで武装したH145Mをセルビアやハンガリー軍に引き渡す予定らしいので、ドイツも似たようなのを導入するのかな。
EC145というかBK117はエアバスと川崎重工が共同開発した機体だから、日本が「やっぱり攻撃ヘリコプターが必要だわ」となったら採用するかも。
UH-60の武装型よりはお値段がお安そうですけれど、ある程度の機数を購入しないと運用インフラ整備でそこそこな費用が掛かる気もしますね。
アメリカ陸軍のUH-72ラコタもEC145ベースな上、トランスミッションなどは日本製なので、同仕様のを導入すればそこまでコストは高騰しないかもしれません(素人意見)
ただ、自衛隊がラコタに興味を示しているとかの話は聞いたことありませんけど。
BKなら海自の訓練ヘリやドクターヘリや官庁で使われてるので、色々と勝手は良いでしょう。
ただ、攻撃ヘリがマトモに戦えないというのにこんなヘリではカンオケだと思います。
マリンコベノムにほぼ同じ内容でハイドラとM3ドアガンに中多目的の機載化追加のUH2軽戦闘型は事実上のコブラ後継枠で整備されるから新たに5t級以下のヘリが陸自に加わることは絶対にないよ。
あのセンサーやカメラが潜望鏡みたいに10mも伸びたら
まだまだ対戦車ヘリも使えそうだ
MITREの技術分析は、AIが攻撃ヘリパイロットが担っている任務を完全代替可能な自律性(ACL7以上;状況を判断し自律的に最適行動計画を再構築できるレベル)を確立するのは、早くて2030年から遅くて2040年頃になるという予測です。
そこまでの要求が無い限定的運用条件ならば無人機での代替は有りですが、「戦場で発生する『複雑で高度な問題』」に臨機応変かつ的確に対処したいならば、有人攻撃ヘリは当分は存在価値が高いということかと。
本邦では本土への大規模着上陸侵攻の蓋然性が極めて低いという情勢分析を元に、31大綱の時点で攻撃ヘリ部隊の縮小と偵察UAV活用の方針が示されていました。防衛装備品について、その後も情勢判断に応じた戦術シミュレーションと評価を重ねてきたのは疑いありません。
その結果が攻撃ヘリ及び偵察ヘリの全廃、無人機で更新という基本方針でしょう。有人ヘリでなければ対応できない範囲は、性能も向上し情報共有システム装備だろうUH-2で十分に賄える判断なのだと思います。
コストダウンしないと運用するのが難しいという事なので、ハインドを参考にして汎用ヘリでタンデム型コクピットを造るのが良いのでは?ブラックホークかUHー2がハインドみたいな外見になって出てくればそれが答えなのでは?汎用ヘリにもC-RAM標準装備とかしないとダメだろうし‥やはり対戦車ミサイル乱射してこそのヘリの様な気がします。
参考
イラク戦争の頃のなので古いですよ
攻撃ヘリ[ガンカメラ]映像
AH-1
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AH-64
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