オーストラリアのリンダ・レイノルズ国防相は15日、幾つもの問題に悩まされてきた攻撃ヘリ「ティーガーARH」の後継機として米国製のAH-64Eアパッチ・ガーディアンを選択したと明らかにした。
参考:Defence Minister confirms Tiger replacement selection
ティーガーARHの後継機にAH-64Eアパッチ・ガーディアンを選択したオーストラリア
オーストラリアは採用を決めた攻撃ヘリ「ティーガーARH(豪州独自の安全基準と豪陸軍の要求に準拠するため幾つかの改良が施されているためオリジナルとは仕様が異なる)」は2010年までに計22機の引き渡しが完了して2011年2月までに完全作戦能力(FOC)を獲得する予定だったのが、幾つもの問題に直面して豪陸軍を失望させることになる。
あまりにも多くの問題が複雑に絡み合っているので一言で失望の中身を説明するのは難しいが、敢えて挙げるとすればユーロコプター(現エアバス)が豪陸軍の要求や仕様をオリジナルのティーガーに上手く反映させるのに失敗した点、欧州製の攻撃ヘリに米国製の対戦車ミサイルを安易に統合した点だろう。

出典:Bidgee / CC BY-SA 3.0 au ティーガーARH
豪陸軍に引き渡されたティーガーARHは敵味方識別システム(IFF)、無線及びデータ通信、自己防衛用の電子戦システム等に技術的欠陥が潜んでおり、わざわざ豪陸軍の要求で統合した対戦車ミサイル「AGM-114M」は製造中止によって調達ができなくなった。このような問題を解決するため頻繁な改修が行われた結果、同機の稼働率を押し下げると同時に運用・維持コストが上昇してティーガーARHの飛行コストは1時間あたり3万4,000豪ドル(約270万円)という酷いものになってしまった。
補足:自己防衛用の電子戦システムの問題はユーロコプターの負担で修正されたが、敵味方識別システムと無線及びデータ通信の問題を修正するための資金はオーストラリアが負担しており、AGM-114Mの代わりにAGM-114Rを統合するための資金もオーストラリアが負担している。
さらに豪陸軍にとって技術的に複雑なティーガーARHの整備に悪戦苦闘した点と安全性の問題が生じて計2回の全面飛行停止措置は行われたことも同機の稼働率を押し下げた要因の一つで、豪陸軍が要求している70%台の稼働率(年間飛行時間272時間)は今だに達成されていない。
結局、数々の問題を修正してティーガーARHが完全作戦能力を獲得したの予定よりも5年遅い2016年4月だが、ここでオーストラリア政府は思い切った行動に出る。なんとオーストラリアは十分に耐用年数を残しているティーガーARH(2040年まで運用可能)に見切りをつけ、後継機の調達検討に着手することを発表したのだ。

出典:U.S. Army photo by Chief Warrant Officer 3 Mark Leung, 25th Combat Aviation Brigade/Released
この動きに名乗りを挙げたのがティーガーARHをオーストラリアに売りつけたエアバスとAH-64Eを製造しているボーイングで、エアバスは「ティーガーARHに大掛かりなアップグレードを実施すればコストを大きく節約することができる」と提案したがオーストラリアはこれを正式に拒否、リンダ・レイノルズ国防相は今月15日「米国製のAH-64Eアパッチ・ガーディアンをティーガーARHの後継機として選択した」と明かした。
レイノルズ国防相の説明によれば2025年以降にAH-64Eの導入を開始すると言っている。
なぜオーストラリアはティーガーARHのアップグレードを拒否してまで、コストのかかるAH-64E導入を選択したのかについて現地メディアは「ティーガーのアップグレード技術は開発中のものなので十分に成熟していないエアバスの提案よりも、運用実績と技術的な成熟度が高いボーイングの提案の方が確実だ」と説明している。
さらにAH-64の生産ラインは米陸軍からの資金提供で2030年まで維持されることが確実視されており、AH-64に対する能力向上プログラムは2040年後半までカバーしているためオーストラリアは2050年以降もAH-64は主要な攻撃ヘリとしての能力を維持する見ているのが興味深い。
管理人的には気になるのは「開発中の新技術をベースにした兵器開発はリスクが高い」という趣旨の発言や主張がオーストラリアからも出てきた点で、イージス艦の父と呼ばれるウェイン・E・マイヤー少将の「少しだけ作り、少しづつテストを行い、多くを学べ」という格言を引用するメディアが増えており、中々考えさせられる問題だ。
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※アイキャッチ画像の出典:public domain AH-64Eアパッチ・ガーディアン
もともとのティーガー採用の経緯を知りたいとこ
国策として米軍との共通化を進めてたオーストラリアが何でって感じ
ティーガーARH採用当時のオーストラリアは、今程米軍との装備共通化を進めていなかったと言う事情がある
因みにオーストラリアがティーガーARHを採用したのは2001年
それにしても、潜水艦では「開発中の新技術をベースにした兵器開発」を推し進めているオーストラリアがねえ……(苦笑)
だから懲りたのでは?
だとするとアタック級の凄まじいコストも勉強代としてなんとか折り合いを…いややっぱ高すぎるな
トラブルが絶えませんでしたとさ、ティーガーだけに
何でもないようなことが幸せだったと思うんですね
ティーガーARHは、武装偵察ヘリだけど、アパッチ・ガーディアンAH-64Eは、
最新型の攻撃ヘリで、あのボーイング製。ティーガーはそれほど豪軍部を苛立たせた?
代替案がボーイング製では同じ事を繰り返しそうな予感。
そもそも戦闘ヘリというオワコン(死語?)に固執する意味がない気も。
レオナルド、ベル、シコルスキー等々が新型を研究開発している攻撃ヘリをオワコン認定することに固執する意味はあるんですか。
往々にして現場の声よりも、何らかの政治的理由で優先された結果がポンコツだった場合、こういう反応がでる
〉ティーガーARHは敵味方識別システム(IFF)、無線及びデータ通信、自己防衛用の電子戦システム等に技術的欠陥が潜んでおり
これが、全く動かないみたいだね。
大は小を兼ねるから、偵察ヘリが攻撃ヘリでもいい。と思うほど。
というか、小型で脆弱な偵察ヘリじゃ機関銃レベルでも危なくて、米陸軍でも頑丈なアパッチで偵察任務を肩代わりしている現状
戦車の方も足回りのトラブルが多かったからセーフ
>>なんとオーストラリアは十分に耐用年数を残しているティーガーARH(2040年まで運用可能)に見切りをつけ、後継機の調達検討に着手することを発表したのだ。
おフランスの潜水艦に言ってやったらどうかな?
→ティーガーARHの飛行コストは1時間あたり3万4,000豪ドル(約270万円)
戦闘機並かそれ以上の飛行コストじゃね??て気になって調べてみたら
米軍の攻撃ヘリAH-1Zの1飛行時間当たりの経費(CPFH)は5,000USD(米ドル)、AH-64Dが8,000USD弱、AH-64Eが6,000USDだ。
このように具体的にコストを示してもらえると、豪空軍の頭痛の度合いも
何となくわかってくる。同時に、強行偵察がこのヘリの主任務なら、
UAVのほうがさらにお得感が高いと思うけど、豪空軍がまだUAVを
選択しない理由は、パイロットの失業問題なんだろうか。
海軍は他の3軍と違って第二次世界大戦以降本格的な海戦を経験していない、というのも原因ではないだろうか?まあ先の大戦以降の本格的な海戦はフォークランド紛争ぐらいで、それも大戦中に日米がバチバチにやり合ったのと比べると小規模なものではあるが。
お題に海軍関係ないだろう?
誤爆?
新技術の獲得・搭載を前提とした兵器→資金沢山貰えるから、
「冒険すんな、手堅くやれ。」への変更。
会社としては、どっちがおいしい話なんでしょうね?
見た目はティーガーのほうが好きやなぁ。
……豪州首脳部も、見た目で選んでたりしてな。
自衛隊はコブラとアパッチの更新どうするんだろ
現状だとあまり良いニュースは聞かないけど
ヴァイパー好き
海自ヘリと共同採用(AH-1Z)するか、一足飛びに複合ヘリにするんじゃない。
離島防衛やヘリ空母にも使えて、水陸起動団に最適では?
ヘリは高いし、最近有効性が疑問視されてきてるし、いるんですかね?みなさんはどうおもいますか?
上の方にあった良い意見
レオナルド、ベル、シコルスキー等々が新型を研究開発している攻撃ヘリをオワコン認定することに固執する意味はあるんですか。
複合ヘリはどちらかというと攻撃ヘリではない
VTOL可能な軽攻撃機で攻撃ヘリと呼んでいいか疑問
イラン戦争の時だけど、壊滅的というほどではない。ただ、待ち伏せされると割りに合わない損失。
米軍限定で言うと、常に戦ってるので、歩兵より死傷率が低いならF16より高い装備を買えるんだけど。
開発中のSH-60Lの攻撃ヘリバージョンも開発しよう。今さら前面投影面積が小さい方が被弾率が下がる時代でもないだろうから、センサと長射程ミサイルをより多く積めた方がいい。
イラン戦争の時だっけ?アメリカの戦闘ヘリ隊が壊滅的攻撃を受けたとかいうのって。
制空権がとれてる中での島嶼防衛には良いと思う。
その事態に陥ったとして、
制空権、取って欲しいけど、取れるのかな?
将来型攻撃偵察機FARAが選定されたら買うのではないか
FARAにはインヴィクタスが通って欲しいな
カイオワとUH-1イロコイ武装型の後継機で調達したものにアパッチ・ガーディアンを充てる。。。 意味が分からん。
全く別のカテゴリーで運用も違うはずなんだけど。。。
大は小を兼ねるにしても40年代後半までしか確定してない高価な機体を調達するものか?
うーん、フィリピンみたいに大幅に装備削って安く調達するのかなぁ。
何より、他国で普通に運用されている機体が豪州では運用できないことが最大の謎だけどな。
アフガンも行ってるし非採用国との共同作戦も経験してると思うんだけど。。。
コスト面ではヨーロッパからの部品調達が高いらしいので。そら自前で用意してるEUとは勝手が違いますわね。
あとはC4Iシステムの相性が悪かったとしか。
オージーも中々兵器調達に関してはやらかしているよね。すんなり決まったのってF-35ぐらい?
F-35よりヘリの方が高いってのは何とも言えないもどかしさがあるな。携帯SAMにすらやられてドローンに突っ込まれれば落ちる。戦車と双璧をなす不要論の主役なのにまだ調達する気なんだ。その方が驚き。
まったく同感です。でも上の方のコメントを見ると
研究開発を継続しているメーカーがあるから
これからも需要があるらしいですよw
そもそもナゴルノ、カラバフ戦争で実証された様に今後はUAVを始めとした無人兵器主体の軍事力が物を言う時代に移り変わろうとしている中で戦闘ヘリなんて必要なんだろうか?
滑走路なしで離着陸できるし同じ場所に滞空し続けられるから要る
AH-64Eには無人機と直接情報共有したり・運用・指揮する能力があるよ。
無人機と有人機は対立する概念じゃないことに気づけよ。
脆弱性とコストの話だから。
安価な無人機の体当りでも簡単に落とされそうな高価なヘリを
配備する意義は薄れているんじゃないのって話。
印象論ですが、安価ので体当たりに持ち込むの、難易度高くない?
だからアメリカはアパッチで攻撃することを諦めドローンのAWACSになろうとしている
ドローンを有効活用できるように攻撃?ヘリを活用するつもり
世界中の軍事メーカーがヘタこいてる感じ
→ティーガーARHの飛行コストは1時間あたり3万4,000豪ドル(約270万円)
戦闘機並かそれ以上の飛行コストじゃね??て気になって調べてみたら管理人様の過去記事見るとF16戦闘機の飛行コストより高いとかワロッシュ。ステルス戦闘機のF22やF35並です。
ネットでググった限りだと
米軍の攻撃ヘリAH-1Zの1飛行時間当たりの経費(CPFH)は5,000USD(米ドル)、AH-64Dが8,000USD弱、AH-64Eが6,000USD。
うん、ティーガー要らない子だね。
ぶっちゃけてボーイング製って次点で・・・
ヘリもいらんとは言わんけどどいつもこいつも高くなりすぎだ
お手軽に数用意して兵員運んだり地上のお掃除をちょっと手伝ったり的なワークホースだったのに
あれもこれもと任務増やして対応機器つんだら高くなって微妙な性能とか初心に戻れと…
ベルのOH-58カイオワやヒューズのMD520とかはどうなんですかね
いや、これカイオワの後継機だから。
正確には後継機の後継機なんだけど、ご先祖様は能力不足だそうです。
フィリピンやアフガニスタンのような武装勢力相手なら需要は無くならないね
開発国の生産停止で調達中止とか価格高騰とか多いね