欧州関連

仏独、140mm砲と130mm砲を搭載した次期主力戦車を並行開発か

フランスとドイツは次期主力戦車=Main Ground Combat System(MGCS)の開発が「新たな段階に入った」という認識を示し、ドイツのピストリウス国防相は「140mm砲と130mm砲を搭載したプロトタイプを並行開発する可能性」に言及した。

参考:Neue Phase für deutsch-französisches Kampfpanzerprojekt
参考:French, German defense chiefs jolt languid next-gen tank project

共通の車体と砲塔をベースに140mm砲と130mm砲を搭載したプロトタイプを並行開発する可能性を示唆

ドイツとフランスはレオパルト2(約300輌)とルクレール(約200輌)を更新するため次期主力戦車=Main Ground Combat System(MGCS)の共同開発プログラムを進めている最中で、2025年までに技術検証用車輌を製造、MGCSのプロトタイプを製造、各種テストを経て2035年頃に量産車輌の引き渡しを予定しており、本プログラムにかかる最終的な研究開発コストは約15億ユーロ(約1,850億円)を予定している。

出典:U.S. Army photo by Visual Information Specialist Markus Rauchenberger/released

この取り組みについて両国の国防相は10日「新たな段階に入った」という認識を示し、フランスのルコルニュ国防相も「本日から外交レベルにあったMGCSは本格的なプログラムの運用が開始される。工場から新しく出荷される戦車は現行システムとは似ても似つかないものになるだろう」と、ドイツのピストリウス国防相も「MGCSは単にレオパルト2やルクレールを発展させたものではなく、それ以上のものになるだろう」と述べており、ドローンとロボットを搭載して協調運用を行う新しいカタチの戦車になるというのがもっぱらの噂だ。

仏Nexterはユーロサトリ2022で次期主力戦車のコンセプトモデル「EMBT」を公開していたが、これらの取り組みはアーキテクチャの研究や実験に過ぎず、MGCSは(運用思想を含めて)もっと別のカタチになるという意味で、今後は定期的にMGCSに関する会談を行いプログラムを前進(9月22日の会談で次期主力戦車の要求要件に対する評価を実施)させる予定らしい。

出典:Rheinmetall 130mm砲を搭載するKF51

特に興味深いのはMGCSが採用する主砲の口径に関する言及だ。

MGCSにはKNDS(KMWとNexterが合併した誕生した持株会社の名称)の140mm砲とRheinmetallの130mm砲が検討されており、ピストリウス国防相は「共通の車体と砲塔をベースに140mm砲と130mm砲を搭載したプロトタイプを並行開発=競争試作を行い最終的な決断を下すかもしれない。両国はどちらか一方だけを残すか、両方を残すことも選択できる」と述べている。

関連記事:仏Nexter、次期主力戦車のコンセプトモデル「EMBT」の映像を公開
関連記事:独仏の主力戦車開発プログラム、Rheinmetallの裏切りとK2の登場で危機感
関連記事:レオパルト2は誰のもの? KMWとRheinmetallが法廷で争う問題に発展

 

※アイキャッチ画像の出典:Nexter

インド海軍の潜水艦入札に新たな挑戦者、ドイツ、韓国、スペインが競合前のページ

ドイツとトルコがウクライナに兵器製造工場の建設を開始、ロシアが反発次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    トルコとギリシャの対立が再燃、レーダー照射を裏付けるレーダーログを提出か

    ギリシャはNATO司令部に「トルコの戦勝記念日を祝うメッセージを削除し…

  2. 欧州関連

    センサーとシューターの分離が進む欧州、UAVを活用して対戦車ミサイルを視界外の目標に発射

    欧州のミサイル開発・製造企業「MBDA」は21日、マイクロドローンで収…

  3. 欧州関連

    ギリシャ軍、クレタ島配備のS-300でトルコ空軍機にレーダー照射か

    トルコ国防省の関係者は「エーゲ海を飛行中のトルコ空軍機がギリシャ軍のS…

  4. 欧州関連

    日本にも参加を呼びかける第6世代戦闘機「テンペスト」の価格は1億ポンド(約140億円)?

    英メディアは、第6世代戦闘機「テンペスト」は極超音速で4,000マイル…

  5. 欧州関連

    6年前から準備していたポーランド、ロシアがガス供給を止めても問題なし

    ロシアはルーブル決済に応じなかったポーランドへの天然ガス供給を中止する…

  6. 欧州関連

    米英仏独、ウクライナ向けに調整された新たな安全保障の枠組みを協議中

    ウクライナはNATO加盟に対する明確な約束を得られない可能性が高く「N…

コメント

    • TA
    • 2023年 7月 11日

    ここまでくるとカエサルを突撃砲化した方が良いのでは?という気分になってくる
    140mmは戦車で有効活用できるのか?

    • 鼻毛
    • 2023年 7月 11日

    欧州にはろくな仮想敵MBTがおらんので130mmで十分な気がしますね

    1
    • キサイ
    • 2023年 7月 11日

    130ミリのほうは聞いたことがあるが、140ミリもあるのか。

    3
      • 2023年 7月 11日

      ルクレールに実際に乗せてテストしてたぞ

      10
      • ネコ歩き
      • 2023年 7月 11日

      件の140mm戦車砲はNexterが開発中の「ASCALON 140mm戦車砲」でしょう。
      リンク
      リンク
      ASCALON 140mm砲弾はテレスコープ弾で、APFSDS完成弾全長は130cm。
      また、同砲は50t未満のプラットフォームで運用可能だそうです。

      ちなみに、Rheinmetall 130mm戦車砲の解説記事
      リンク
      砲弾は120mm 44/55L滑腔砲弾から派生したものだそうです。APFSDSの全長は画像から120mm砲弾の約1.3倍ですね。
      MGCSはアルマータMBT等の将来脅威に対抗するため、レオパルド2とルクレールを代替すると書かれています。

      3
    • のののの
    • 2023年 7月 11日

    140mm砲弾って重量どれくらいなんだろう?
    一人でハンドリング出来るのかな?

    3
      • 航空太郎
      • 2023年 7月 11日

      120mm砲弾(M829)で、18.6kg
      130mm砲弾で、20~25kg
      140mm砲弾で、40kg近くらしい。

      で、120mm砲弾が人力のほぼ限界とのことなので、130㎜以上は自動装填必須。
      人力なら榴弾砲のように砲弾と装薬を別装填するしかない。
      ただ、砲弾の数が全然搭載できなくなるし、そんな強力な砲を作ってどこと戦うんだ、という根本的な疑問も大きい。

      19
        • のののの
        • 2023年 7月 11日

        やっぱ重いね。自動装填は当然として砲塔内に運び入れるのも辛そう。

        2
          • 戦略眼
          • 2023年 7月 11日

          ウインチを付けよう

          1
            • kitty
            • 2023年 7月 12日

            装填手用のパワードスーツを開発とかサイボーグ化でw。

        • kitty
        • 2023年 7月 12日

        湾岸戦争後に、MBT同士が殴り合いした事ってあるのかな。
        ミサイルや爆弾にやられてばかりの印象。

    • ななし
    • 2023年 7月 11日

    よし、次は155mmを積んだ戦車作ろうぜ

    8
      • 霞ヶ浦
      • 2023年 7月 11日

      個人的にはそれがベストなんだけどなー
      日本の次期戦車では候補に入れて欲しい

      1
    • 無印
    • 2023年 7月 11日

    >研究開発コストは約15億ユーロ(約1,850億円)
    見積通りに行くことはあまり無いんでしょうけど、戦闘機や艦艇に比べたら安いと感じるのは、感覚がマヒしてしまっているのでしょうか?
    イージス艦1隻分で新型戦車開発出来るんだー、って妙な気分

    24
    • DEEPBLUE
    • 2023年 7月 11日

    見出しを読んで「まさかの多砲塔戦車復活?」と一瞬思ってしまいました

    27
    • AH-X
    • 2023年 7月 11日

    こういうセンサーでゴテゴテの戦車って見た目はかっこいいけど戦闘になったら重火器でセンサー類簡単に潰されてすぐ無力化しそう。見かけ倒しだったりして。

    7
      • パラオナボーイ
      • 2023年 7月 11日

      実際の戦争になるとメンテも大変そうだし今までの戦車の方が使えたりして。 ウクライナ戦争のような高烈度戦を見てると戦術によって個々の性能は無意味になるのが改めてわかったわ。まあ他のヨーロッパ諸国は航空優勢でなんとかしそうだけど。あと高価で数が揃えられんってなったら悲惨だなあ。

      10
    • 58式素人
    • 2023年 7月 11日

    差し当たり、砲塔に60mm後装式迫砲を付けたら、と思います。
    迫砲弾の他にスイッチブレードを大型化した偵察/自爆ドローンを
    運用できれば良いですね。迎撃ドローンも”アリ”。でしょうか。
    WW2の英/独戦車には50mmのものが付いていましたから、復活ですね。
    イスラエル戦車には既に60mm迫砲が付いているそうですし。
    この記事の感じでは、多分、独/仏は重戦車路線を突っ走るのでしょうね。
    とすると、新型戦車の他に多目的戦車(?)も必要になるのでは。

    1
    • ブルーピーコック
    • 2023年 7月 11日

    3人乗りらしいけど、装填手続投かドローン要員の追加とかで最終的に4人乗りに戻ったりしてな。

    10
  1. どんな戦車になるか楽しみですね!

    2
    • ミリオタの猫
    • 2023年 7月 11日

    余談ですが、実はレオパルド2の試作車も105mmと120mmの滑腔砲(これとは別に米国でテストされたレオパルド2AVは105mmライフル砲を装備)を搭載していますので、その後継車であるMGCSも同じ事をやるのはデジャヴを感じますわ

    3
    • かっぱ巻き
    • 2023年 7月 11日

    新型戦車開発するより、既存戦車を量産しなよ。
    ロシア戦車相手に既存戦車で十分と実戦で証明されたのだから数作らないと意味ないし、既存戦車の補修部品だって不足しているのだから新機種転換する意味ある?

    9
      •  
      • 2023年 7月 11日

      そもそも戦車同士が殴り合うような戦いはウクライナでほとんど発生してない

      3
        • かっぱ巻き
        • 2023年 7月 11日

        質も大事だが、同一車種の数が揃わなければ兵站に負担が必要以上にかかる事を学んだはずなのに。
        新規開発したところで弱点であるトップアタック防御には重装甲化ではなくAPSの搭載が不可避だが、既存のエンジン出力では発電量が足りないなら、エンジンだけ新規開発でもいいと思います。
        エンジンが大きくなるから車体も大型化するのかな?
        非対称性で戦車戦主軸の設計思想も変化を求められますね。

        2
    • starship
    • 2023年 7月 11日

    130・140mm砲は50~70%の威力向上を達成できます。ただ、120mm砲の改良計画も進んでおり、どうなるのかまったく分からないですねー

    2
    • 匿名ちゃん
    • 2023年 7月 11日

    そんな巨砲で何を撃つのか分からない。
    むしろ今はアクティブディフェンスや熱迷彩含む防御力が課題なのでは?

    10
    • ばく
    • 2023年 7月 11日

    口径10mmの違いで威力ってどの程度変わるもんなのだろうか

    0
      • のののの
      • 2023年 7月 11日

      砲腔内圧が同じなら威力は砲口断面積に比例するから
      120mmに対して130mmなら17%、140mmなら36%増になるな。
      砲の内容積増えるし弾頭重量も変わるのでそう単純じゃないけど。

      6
    • 白髪鬼
    • 2023年 7月 11日

    口径どうなるんでしょうね。
    44口径とした場合、130mmで5.72m、140mmで6.16m。55口径の120mmの6.60mほどでは無いにしても、それなりに取り回しには影響しそうですが。120/55は、市街戦は元より野戦環境でも小太刀がある場合の取り回しが不評だという話もあります。
    いくら大口径とは言え、口径を減らすと威力が低下するので本末転倒でしょうし。ウクライナは、搭載段数を減らしてでも乗員保護を優先して、キャビン内に予備砲弾を置かないことを優先するようなこと言ってますから、やはり最大でも130mmぐらいが妥当なんじゃ無いでしょうかね。

    あと戦車用のVLSとかできないもんでしょうか。58式素人さんが60mm迫撃砲に言及されてますが、いっそ最大80mm径の弾体を扱えるVLSにして多様な兵器やドローンを随意に打ち出せるようにするとか。もっともただの迫撃砲弾と違い、全て誘導タイプか、ドローンになるのでコストが上がるでしょうけど。(あとメルカバのようなFFが前提になりますかね)

      • あああ
      • 2023年 7月 11日

      エンジン整備ごとに砲塔外装装甲を取り外すメルカバを見るにフロントエンジンで戦車砲塔を搭載するのは無人砲塔以外では現実的にありません。フロントエンジンは容積で高さの必要な輸送用途に機関砲砲塔を組み合わせる場合でのみ最適化可能です。
      なので次世代戦車が砲塔無人化するとしてもリアエンジンで確定でしょう。車体弾庫の廃止が確実で車体前部に乗員を集約し砲塔は無人化、ALSは必須で現時点では砲塔バスル式か車体ドラム式かが最大焦点でしょうか。この車体を共通化で戦車砲砲塔のかわりにVLS搭載型が出現するのは驚く事ではないように思えます。

      3
      • Whiskey Dick
      • 2023年 7月 12日

      ※あと戦車用のVLSとかできないもんでしょうか。

      ロシア軍のトール地対空ミサイルのことでしょうか。

    • ステンレスブラウン
    • 2023年 7月 11日

    韓国では昨年から始まった「次世代戦車用低騒音動力装置及び大口径武装設計技術事業」で130ミリ戦車砲と高エネルギー貫通弾技術の開発を行ってるけど、この発表を見て140ミリ戦車砲の開発を検討するかな。

    1
    • らっしー
    • 2023年 7月 11日

    先日の弾数は少なくていいやーって話とリンクしてる感じですかね。
    弾薬の重量的にもマガジンとか装弾クリップみたいなのに纏めて、
    支援しやのロボアームでガチョンと一発って感じでスピード補給はやはり現実的?
    実際には挿し込む隙間とか砲弾の種類的に数セット差し込みそうですが。
    全自動装填で無人砲塔なら、砲弾と装薬別々でも却ってスペース効率的にも好都合?

    1
    • 必殺の技が撃つのは我が身なんですか
    • 2023年 7月 11日

    1980年代にスウェーデンが開発検討していたStrv.2000戦車は140ミリ戦車砲のほかに40ミリ機関砲を装備して
    ソフトスキンや装甲車などには40ミリ機関砲を使用して主砲砲弾を節約しようとしてました。

    2
    • 戦略眼
    • 2023年 7月 11日

    砲塔だけ開発して、既存車体にポン付けしよう。
    エンジンは消耗品だから、ユーロパックに載せ換え。

    • 半分の防衛費の国から
    • 2023年 7月 12日

    MGCSは時間をかけて開発するので、スマートシューター機能とかも普通に要求されて、今までの戦車とはかなり違うのになりそうですね、弾薬ラックが装填手から遠いと時間が掛かるからと弾薬ラックが可動式になったり、自動装填装置になったり、空薬莢捨てる時が危ないと、燃焼式薬莢や自動排莢装置が開発されてきたり、今はトップアタック対策が必要なので、そこかな?後は装甲の進化に合わせて主砲威力向上と、今回はスマート弾の使用能力も要求されているようですね。後はトイレ標準装備とか普通になりそう。

    MGCS解説
    リンク

    3:47の所観てね、152mm砲の貫徹力が‥
    リンク

    • DEEPBLUE
    • 2023年 7月 12日

    ドローンだロボットだ言ってる時代に今より重い重戦車って必要なんですかね?運用的に主力戦車として扱えるのかとか

    • 折口
    • 2023年 7月 12日

    ラインメタルが10年前に完成させた140ミリ砲は色々な課題を残した上でポシャりましたが、特に砲弾の命中精度低下と砲身長の増大がかなり問題視されていたと記憶しています。このうち後者の砲身長に関してはその後に55口径長の120ミリが登場しているので、使ってみたら何とかなるレベルだったのかもしれません(森林部での取り回しが悪化するという問題は依然ある)が、命中精度問題は実質的に克服したという事なんですかね。

    1
    • けい2020
    • 2023年 7月 12日

    130mmと140mmって砲塔から車体まで想定が変わりそうなんだが・・
    これが同じ砲塔・車体で出来るなら120mmを130mm変えるだけで行けることになるし

    この段階で、もう暗雲しか感じないぞ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP