欧州関連

平均稼働率は20%? ドイツ軍、戦闘機「トーネード」や歩兵戦闘車「プーマ」等の稼働率

ドイツのデア・シュピーゲル誌は、ドイツ軍の主要装備が依然として故障に悩まされている現状を赤裸々に報じている。

参考:Ausfälle bei Hubschraubern, Kampfjets und Panzern

ドイツ軍の実態を偽る報告が、問題改善を阻害し事態を悪化させる

ドイツの前国防相フォンデアライエン氏(現:欧州委員長)や、その後を引き継いだクランプカレンバウアー氏によってドイツ軍の改革が行われているが、以前としてドイツ軍が装備する低調な稼働率の問題は改善しないままだ。

出典:Olaf Kosinsky / CC BY-SA 3.0 de クランプカレンバウアー国防相

クランプカレンバウアー国防相は、ドイツには飛ぶことの出来る飛行機もなく、走行可能な車両もなく、海へ乗り出すための船もないと言われていることについて「うんざり」しており、ドイツ軍の装備や機器の調達を担当するドイツ連邦軍装備情報技術運用庁の改革に乗り出した。

2006年から7年間、メルケル首相の軍事政策顧問を務めたエーリッヒ E. ヴァッド准将は、ドイツ軍とイスラエル軍の国防費を比較し、この問題は「資金不足」ではなく「官僚主義」に染まった軍指導者が多すぎるのが原因だと指摘した。

さらにドイツメディアは、欧州の国々は東西冷戦終結後、軍を整理し縮小したがドイツほど軍の規模を縮小した国はなく、多くの兵舎が閉鎖され、同時に徴兵された兵士を服務期限前に大量に解放したことで、軍を維持するために必要なノウハウが失われ、施設や装備は適切に維持することが出来ず組織崩壊に繋がったと報じている。

出典:MoiraM / stock.adobe.com

結局、行き過ぎた官僚主義とやり過ぎた軍縮がドイツ軍崩壊の真犯人だ。

クランプカレンバウアー国防相は、ドイツ連邦軍装備情報技術運用庁の職員の前で「ドイツ軍は笑いものではないはずだ」と語り、ドイツ軍の装備や機器の調達システム改革への決意を示した。

この改革は「必要な装備や機器を、より速く、より簡単に、必要とされる所へ直接届ける」ことを掲げているが、この改革を円滑に行うには「大きな改革」ではなく「小さな改革」を多く行いたいと述べており、改革の実効性については疑問が残る。

出典:Sirpa Marine / CC BY-SA 3.0 多用途ヘリ「NH90」

ドイツのデア・シュピーゲル誌は、ドイツ軍の主要装備が依然として故障との戦いを継続しており、特にヘリコプターや航空機、戦車の稼働率がドイツ軍の足を引っ張っていると報じている。

ドイツ海軍や空軍が導入した多用途ヘリ「NH90」は、複雑すぎる技術的な問題により75機中31機は修理中か定期的なメンテナンスを受けている最中で、44機しか使用できないとされているが、実際に稼働しているのは9機(稼働率12%)だけと報告されている。

ドイツ陸軍が導入した攻撃ヘリ「ティーガー」は、地上軍を空から支援するために欠かせず、海外派遣されるドイツ軍の任務に不可欠な装備だが、保有している53機中36機使用可能といわれているが、実際の飛行任務に耐えられるのは12機(稼働率22%)に過ぎない。

出典:public domain ドイツ陸軍 攻撃ヘリPAH-2(ティーガー)

輸送ヘリとして導入した71機の「CH-53G(D型ベースの輸出型モデル)」は、海外派遣されたドイツ軍の空中輸送を支える重要な戦力だが、これも実際に飛行可能なのは18機(稼働率25%)に過ぎず、特に不足しているのは敵からのミサイル攻撃に対する自己防衛装備を搭載したタイプだ。

今の所、CH-53Gを改良する計画はなく、新しい輸送ヘリを調達する計画は存在するが契約までには至っていないため、海外へ派遣されたドイツ陸軍の「CH-53G」は高いリスクに晒され続けている。

さらに最新の装甲歩兵戦闘車「プーマ」は現在までに284輛が納入され、191輛が使用可能と言われているが、実際に稼働可能な67輛(稼働率23%)のみだ。

出典:Boevaya mashina / CC BY-SA 4.0 装甲歩兵戦闘車「プーマ」

ドイツ空軍が運用を続ける老朽化した93機の戦闘機「トーネード」は、57機が使用可能と言われているが、実際に飛行可能なのは20機(稼働率21%)に過ぎず、依然として保守パーツ不足に悩まされている。

このような問題を記載したドイツ軍の報告書は、2014年まで連邦議会に提出されていたため公の場で議論されていたが、前国防相のフォンデアライエン氏が「機密」に指定したため、限られた人間しかドイツ軍の実態を把握することができない。

過去、ドイツ軍は全体的に70%以上の稼働率を維持しており、これは海外の国と比較しても非常に優秀な数字だとアピールしてきたが、これ実際の現場で起こっている事実を反映しているは言えず、偽りの数字は問題を見えにくくし、本当に必要な改善を更に遅らせることに繋がり、さらなる稼働率低下を招く悪循環に嵌っていると言えるだろう。

そのため後任のクランプカレンバウアー国防相は、問題の報告書を一般に公開し、公表されるドイツ軍の稼働率と、実際の稼働率の差についても抜本的な改善を検討しているという。

 

※アイキャッチ画像の出典:fotogenix / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 28日

    自衛隊より(数%とはいえ)多い軍事費が有り、対して人員は3/4程度なのになんでこんな酷いことになってるんだろう?
    物価の差を考えて(ビッグマック指数で)も日独の間にそこまで酷い差が生じるとは思えないし、根本的になにかひどい問題があるとしか思えない

    戦争が起きても戦える軍隊がいない、ってレベルじゃね?

      • 匿名
      • 2019年 11月 28日

      だから、記事でも述べられているように
      「官僚主義に染まった軍指導者が多すぎる」
      「徴兵された兵士を服務期限前に大量に解放したことで、軍を維持するために必要なノウハウが失われた」
      のが原因なんでしょう
      使い物にならない軍官僚は首を切ればすむだろうけど、失われたノウハウはヤバいんじゃないですかね? 相当期間がかかりそう

      2
      • 匿名
      • 2019年 11月 28日

      自衛隊よりもドイツ軍が酷い事になっている理由としては「冷戦終結後、隣国にこれと言った仮想敵が居なくなった」「ドイツ政府が軍の余剰装備をポーランド等の隣国(しかもロシアに近い場所にある国)に売却する事で、対ロシアの国防政策を事実上丸投げ出来る様になった」点が大きい。
      幾ら予算と人員があっても、政府が真剣に国防を考えられない環境ではどうにもならないと言うのが、今のドイツの状況だと思う。

      2
      • 器用貧乏
      • 2019年 11月 28日

      自衛隊も油断できない。
      いつ崩壊するか分からん。

      1
        • 匿名
        • 2019年 11月 30日

        崩壊するかは政治がドイツを反面教師にできるかどうかですね。
        自衛隊は文民統制がとれている組織ですから。

    • 匿名
    • 2019年 11月 28日

    今のドイツにはプロジェクト管理ってできないのかもね。
    報道されてる補用品の欠品、トルネードのアップデートの問題、タイフーンの翼端の管制ポッドの調達(会社が売却されて、改めての認証のスケジュール管理がダメ)、何を目的としてるのか判らない海軍(フリゲートまでしかもっていない・・・でもって、新造は対テロだけに特化した超ショボイ艦艇を3隻も建造)、国内の兵器企業との兼ね合いだけでF-35A/B/Cを全く採用しない、政府/軍の方針に反対した軍・幹部を更迭。
    EUのお笑い韓国軍状態、 今後のNATOはポーランドとかが背負うのかな? (イジース・アショア配備、空軍の拡張などを見てると)

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