英国は空軍向けの自律型協調プラットフォーム(ACP)戦略を27日に発表、この中で「無人機、非対称戦、接近阻止・領域拒否(A2/AD)の有効性が明らかになった」「ACPは2030年までに空軍の部隊構造にとって不可欠な部分になる」と述べた。
参考:Royal Air Force Autonomous Collaborative Platform Strategy
英国のACP戦略は分散アーキテクチャに重点を置いたDistributed Teamの概念に近いのかもしれない
英国はタイフーンやF-35Bとチーミング可能な無人機を2020年代中に配備したと考えており、2023年までに技術実証機(モスキート)を製造して初飛行させる予定だったが、国防省は2021年1月「有益な能力と費用対効果を獲得するためには『より小型で安価でなければならない』という結論に至ったため技術実証機の製造を中止する」と発表、英空軍参謀総長も「モスキート中止は『もっと早く実用化できるシステムに焦点をあてるべき」と判断したからだ」と述べていたが、英国は空軍向けの自律型協調プラットフォーム(ACP)戦略を27日に発表した。
この戦略文書の中で「ACPは2030年までに空軍の部隊構造にとって不可欠な部分になる」「戦闘に勝利する能力を提供するためACPは有人機と連携して日常的に活動する」と言及し、2020年代中のACP実用化を再確認しているが、特に興味深いのは「ウクライナ、ナゴルノ・カラバフ、レバントの戦いは無人機、非対称戦、接近阻止・領域拒否(A2/AD)の有効性を証明するきっかけとなった」「ACPに必要なAIテクノロジーも悪意のある活用者や無関心な活用者によって後押しされ、無人機と同様のスピードで普及・拡散する可能性がある」と指摘している点だろう。
ウクライナとロシアの戦いで「高度な防空システム」が「航空戦力の運用を大幅に制限できる」と実証された上、大量投入されたドローンの抑制手段が欠如しているため「有人機が飛行する高度と地上の間に広がる空域」で「低空の戦い」が成立し、米空軍のアルヴィン参謀総長も最近「以前のように航空戦力を強化して『何日も何週間も制空権を維持する』というのはコスト的に無理がある」「空の心配をすることなく『恒久的に軍事作戦を実施できる』という考え方から転換しなければならない」と言及。
英国も戦略文書の中で「今後も空軍は敵防空能力の圧倒に重点を置くものの、ハイエンドの航空機による地上目標への攻撃は安価な無人機の普及で変化するだろう。このようなプラットホームは現在の作戦範囲よりも遥かに広い範囲で作動し、製造技術や自律性が向上し、ハイエンドシステム(次世代戦闘機のこと)が提供する能力にも影響を及ぼす」と指摘し、ACPについて「手頃な価格で再利用できるものでなければならない」と定義している。
具体的なACPの開発スケジュールや要求要件などは不明だが、ACPの構造は使い捨て前提のTier1、損耗を許容できるTier2、生存可能なTier3で構成されているため、ACPは任務やリスクに応じて使い分けるべきという意味になり、英国のACP戦略はロッキード・マーティンが提唱している分散アーキテクチャに重点を置いたDistributed Team(分散チーム)の概念に近いのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:BAE
”ACPの構造は使い捨て前提のTier1、損耗を許容できるTier2、
生存可能なTier3で構成されている” 噛み砕くとどう表現するのでしょう。
いずれもステルス性能を持つものとして。
Tier1:ミサイルに羽の生えたような物(≒長射程ドローン/ミサイル)
Tier2:ミサイルの航続距離を延ばす物(≒親子式ドローン/ランチャー)
Tier3:XQ-58ヴァルキリーのような無人機(≒有人機/編隊の2番機)
勝手に割り当ててみましたが、どのような物でしょう。
ステルス機には搭載量の少なさがつきまといますから。
「使い捨て前提のTier1」にステルスはコスパ悪過ぎる気がします。
多分ですが。
親機が根拠地から引き連れて行く形では、と想像しました。
であれば、途中で見つかるのは上手くない、と想像します。
親機の代わりに墜とされるのは、まあ、良いとして。
多分、Tier1は普段は燃費重視の巡航していて、攻撃指示がでたら
アフターバーナーを作動させて、ミサイル化するのでは、と想像しました。
最終はARHかIRを使ったの自己診断で。
自力で離陸して随伴飛行して標的まで辿り着く航続性能にアフターバーナーまで備えたターボジェットorターボファンエンジンにステルス…本邦の目標観測弾=12式能力向上型派生機?より上のシロモノになりそうですが、そんなん英国がポンポン使い捨てにできますかね。
個人的には親機に搭載できる「展開翼付き滑空弾に滞空出来るだけのささやかな推進機とセンサー詰んだ程度のシロモノ」を想像しますが。
頭に浮かんでいたのは。
ストームシャドウをステルス化して、
途中まで親機から誘導し、
アフターバーナーをつけたような物です。
発進はカタパルトでも良いと思います。
再利用はないのですから。
>このようなプラットホームは現在の作戦範囲よりも遥かに広い範囲で作動し
つーてるのにストームシャドウの地発じゃカタパルトアシストしても航続距離/滞空時間はたかがしれてるでしょう。
ターボファン化したりブースターつけたりしたら結局コスト増えるし。
発想が「使い捨て前提」からどんどん離れてる様に見えます。
ステルス機の場合、
仮にステルス化されたミサイルの場合でも、
翼下に懸架すればステルス性を失うのでは?。
そして、爆弾倉の容量は限られています。
B2くらいなら何ということはないのでしょうが。
そして、爆弾倉を開いた瞬間に探知されるでしょう。
親機にステルス子機(兼爆弾)を多数随行なら、
例えば、F35のビーストモードよりマシと思えます。
おっしゃる通り、航続距離は問題ですね。
燃料を余計に積む必要があり、そこは、
改設計の対象と思います。
例えばストームシャドウじゃなくてJSMの UAV版にすればそれだけでかなり色々解決するかと。
離陸加速上昇に必要な大推力要らないから航続距離は大幅に伸ばせるしコストも下がります。
放出時の露見は一瞬の事だし、言わばデコイを放出する訳だからセンサーはまずそっちを向くでしょう。
JSM以上の航続距離、つまり500km以上手前で放出できる訳でそんな距離での一瞬の露見でがっつり捕捉されるならそもそも「エッジマネジメントによるステルス」なんて成立しませんし。
なるほどです。
敵レーダーまでの距離があれば、
ということなのでしょうね。
有効なのだろうと思えます。
ただ、ひとつ欲を言えば、
ステルス親機なのですから、
もう少し敵に近づけたらとは思います。
近づけば、敵情報も増えますし、
敵後背の攻撃も可能になるかな、と。
あくまで機体のコンセプトの話だし放出タイミングの話でしかないので、
放出後に親機も別コースで接近してもいいですし、
任務によっては絶対に親機が露見はもちろん警戒すらされたくないとかならUAVは非ステルス戦闘機なり輸送機なり別のキャリアに運ばせたって良いし、ブースターつけて目的地に送り込んだって良いかと。
あともちろん「使い捨てだからこそ強引に敵地深くに浸透して目的を遂行する」ステルス機だってあり得るとは思いますよ。
ただいきなり「(Tier1含めて)ステルス性能を持つものとして」は無いと思っちゃったので。
繊維強化樹脂や木材といった非金属材料にすればレーダー探知はかなり逃れられそうに思います。
これらもプレス成形できるようなのでコスト低減もできるかと思います。曲げ木もプレスでできちゃうんですよね。積層合板やチップ化してから固めたものなら均質な材料を大量調達できます。
小型ドローンの規模ならプレス金型もあまり高価にはなり過ぎないと期待します。
非金属材料でそこそこステルス配慮した形状にすれば小型ドローンはもともとレーダーで探知しにくいですし結構厄介な代物は作れるかもしれません。
一旦探知、検出できても継続的に探知できなければ照準をつけて直接破壊はできません。レーダーの高性能化や多種レーダー使い分け、可視あるいは赤外線領域で見ることを強いて高い迎撃コストを強いるだけでも相手は困るでしょう。
ただし動力は問題でしょうか。プロペラを露出するとステルス性を損ないますし、ターボファンエンジンは高価ですし。ダクテッドファンも機体規模肥大化させて高くなりそう。
非金属材料の筐体だとエンジンやモーターの熱処理も課題に。
的外れな部分はあるはずながら、まあ妄想はミリ趣味の醍醐味かな、と思ってつらつら書いてます。
そうですね。もちろんそうしたコストに大きく響かない低視認技術は採用される可能性は高いと思います。
エンジンについては大推力が要らないなら先日も記事の出てたパルスジェットとかモノによってはCO2ボンベロケットとかですら事足りるかもです。
何ならTier2機搭載のTier1(0?)子機としてバルサプレーンやダンボールプレーンに簡易なセンサーと短距離通信積んで高度数千mからばら撒いて無動力で沈下率数十cm/sでフラフラ滞空させるだけなんてのもありでしょう。対空レーザーが実用化でもされない限りは防空になかなかいやらしい負荷を掛けられそうな気がします。
問題はこーゆーのはむしろあちらさんの方が得意そうな事ですが…
既に実戦投入されている段ボールドローンはどれだけ探知できているのか興味有ります。
言われている通りエンジンが高いことは問題視されて開発はされてますが、上手くいくのかどうか。
あちらさんの方が割り切って消耗品作るのも大量生産も得意そうなのは恐ろしいですね。
我々が持つ価値観では消耗品を消耗品と割り切ってしまうのはなかなかできません。
特に軍事では命が掛かっているんだからの印籠で高コスト化して、結果として配備数が足りず人命の損失へ…
物凄く単純化して、持っていないと必ず死ぬような装備があって100人に持たせなければならないとします。低価格な低品質品だと持ってても10パーセントは落命、高価格な高品質品だと落命する人はいないとします。
低品質品は100人全員に持たせられるものの10パーセント落命で10人が死亡。高品質品は50人にしか持たせられず、貰えなかった50人は死亡。低品質品を採用した方が結局は人命の損失を抑えられていた。
こんなことは多々起きていると思います。
Tier1〜3というカテゴライズは妥当な考え方だと思われます。
コンセプトとして大量にばら撒く足の短いセンサドローン(AAMみたいな感じの放出ですかね)もあれば、有人機とそうは違わない無人戦闘機もありうるでしょうね。
F3戦闘機の想定随伴機は願わくばTier3タイプを目指して研究して欲しいんですけどね。まぁ1種類しか随伴しちゃいけない訳でもないでしょうから日米共同開発以外でもいろいろと楽しめそうです。Tier1タイプならぶっちゃけコスト重視で規格揃えての輸入もありかもね。
仰る通り、無人機なんて「1種類しか随伴しちゃいけない訳でもない」どころか何種類並行して運用しても良いし、有人機と違って5年10年とかのスパンで更新したって良い訳で(旧機種はまた違う用途がいくらでもあるし)、公表してる日米共同開発だけじゃなく、英伊の共同開発とかの首突っ込めそうな計画には一通りツバつけて欲しいし、MQ-28みたいな「イジれる既存品」にもどんどん手を出して欲しいですね。
なのでその手の「お試し参加」の機体はあんまりライ国とか最輸出とか入れ込まずに完全輸入のお客さんポジションでも問題ないと思います。
Tire1は機載型位の大きさで、センシングの拡張とかジャミングユニットとかでは?
Tire2でセンサーと武装を少量携えた先行攻撃機
Tire3で親機のウェポンベイ兼拡張用のユニット搭載機に成るのかな?親機の僚機扱い
Tier1無人機は使い捨てなので射出されたAAMが変形して、より危険な空域で長期滞空するセンサだろうと思います。これが複数で敵ステルス機をも検出するのかなと。
Tier3は将来のAI無人戦闘機の先駆けみたいなもんで、ステルス有人機と一緒に出発して一緒に基地に戻って来るそれなりに高価なステルス機だと思います。行動の指示自体は親機パイロットが実行する随伴機の位置付で、センサだけってことはなく親機の外付ウェポンベイの要素もあるでしょうね。Tier3機からTier1機を射出することもあるでしょう。
Tier2は多少の損耗は覚悟という機体で、多分ASM抱えた機体なんでしょうけど、有人機との連携は可能としても、ちょっと色が違うというか、おそらく一緒に有人機と作業はしても行き帰りの場所は別々なんじゃないかと思います。
概ね同意ですが、TierはあくまでTierであって3機種とか3タイプではないので、Tier内でも(特にTier1〜2は)色んな形態を開発・運用すると予想します。