欧州関連

ギリシャ、F-35Aではなくラファールを選択したのは納期の違い

ギリシャがF-35Aではなくラファールを選択したのはフランスが自国の保有機を提供するなど短納期に対応したためで、F-35A導入は遠のいたと報じられている。

参考:Greece Is Buying French Rafale Fighters In Light Of Tensions With Turkey

ギリシャのF-35A導入希望をラファール導入に決断させたのはフランス政府の便宜

ギリシャのミツォタキス首相は今月12日、軍の近代化プログラムの一環として戦闘機ラファールを18機調達すると発表したが、契約の内容は伏せられていたため詳細が良く分からなかった。しかし複数の海外メディアが報じた内容を総合するとラファール導入の詳細が分かってきた。

まずフランスから調達する戦闘機ラファールについてだが、ギリシャ空軍が保有しているミラージュ2000EG(16機)を更新するため仏空軍が使用しているラファールを12機、さらに新造機のラファールを6機導入すると言われており、未確認ながら中古のラファールは最新のF-3仕様にアップグレードされてギリシャ側に提供されるらしい。残る24機のミラージュ2000-5 Mk.2についてはフランス側と新たに2億6,000万ユーロ(約320億円)の契約を締結、電子機器やエンジンのアップグレードを含む7年間の保守サービスを受ける予定だ。

あとギリシャ空軍から退役するミラージュ2000EGはキプロスに売却される可能性があると報じている海外メディアもあるが、キプロス空軍は固定翼のジェット戦闘機を運用していないため実現は難しく、中古ラファールを無償でギリシャに提供するという話もギリシャメディア以外報じていないため恐らく誤報の可能性が高く、結局ギリシャがラファールを選んだのはフランスが短納期(仏軍のラファールをギリシャに提供)に対応したためだろう。

出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Brandon Shapiro

因みに、米メディアは今回のラファール導入でギリシャのF-35A導入推進は棚上げされる可能性が高いと報じている。

ギリシャは昨年、F-16C/Dのアップグレード契約発表の際にミソタキス首相が「F-35プログラム参加を希望する」と発言、今月1月にホワイトハウスでトランプ大統領と会談した際にも「F-35導入に興味を持っている」と述べていたが、ラファールの導入には通常1機あたり約2億ユーロ(約250億円)が必要になるため18機導入に20億ユーロから30億ユーロほど必要で、F-16C/Dのアップグレード費用(約15億ドル:約1,650億円)と合わせると、F-35A導入に回せる予算は残っていないという意味だ。

ただトルコの軍事的対立が激化するようなことになれば、再びF-35A導入も浮上するかもしれないが発注から引渡しまでに3~5年という時間が必要なので、フランスのように米空軍が保有しているF-35Aを回すなど便宜を図らない限り、フランスのラファール追加導入に流れるかもしれない。

長期的な視野で判断すればラファールよりもF-35Aの方が価格も性能も優れていると言えるが、ギリシャが直面している状況が状況なので今回の決断は仕方のないことなのだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:mashleymorgan / CC BY-SA 2.0

米空軍、次世代戦闘機のプロトタイプを製造して試験飛行中だと明かす前のページ

全く機能しない? 中国視点から見た米日豪印による太平洋版NATO構想次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    米英の大手防衛産業企業と組んだエアバス、NATOのE-3後継システム開発に名乗りを上げる

    エアバスは8日、2035年までに廃止されるE-3の後継システムを開発す…

  2. 欧州関連

    バフムートは危機的状況、クリシェイフカがロシア軍に占領された可能性

    バフムートを守るウクライナ軍の状況は危機的な状況に陥りつつあり、露ワグ…

  3. 欧州関連

    独ラインメタル、130mm砲を搭載する主力戦車KF51をまもなく発表

    ドイツのラインメタルは9日、130mm砲を搭載する新しい主力戦車「KF…

  4. 欧州関連

    エストニアが過去最大のウクライナ支援を発表、FH70やD-30などを提供

    エストニアは過去最大となる1.13億ユーロのウクライナ向け軍事支援を1…

  5. 欧州関連

    スイスが契約内容を公開、F-35Aとパトリオットに投資する約1兆円の半分をオフセットで相殺

    スイス政府は26日、米国側と合意に達したF-35Aとパトリオット導入に…

  6. 欧州関連

    ウクライナ国境の封鎖63日目、保証を手に入れたポーランド人農民が封鎖を解除

    ポーランドのトゥスク政権はシェギーニ検問所を封鎖解除に成功したものの、…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    緊急時だと時間はすべてに優先するからなぁ

    20
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    トルコ相手のその場しのぎなら仕方ないか、どうせトルコのF35も暗雲のまんまだから

    11
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    アメリカがトルコに忖度してギリシャへのハープーン売却を拒否ったというニュースが今年あって紐付きのF-35Aよりは自由に使えるラファールを選んだのが真相

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    米国大統領選挙の行方次第では、まだまだ二転三転しそう。

    2
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    F-35だってトルコが買うはずだった分の在庫があるから
    やろうと思えば短納期にできるはずだけどな
    アメリカはそこまでやる気なかっただけでしょ

    3
      • 匿名
      • 2020年 9月 17日

      トルコ枠を敵対するギリシャに流したらそれこそトルコが激怒するでしょ、
      そこまで荒らしはしないよ
      建前だけでも西側、NATO内部の身内のいさかいだから丸く収めたいのは米国の本音

      10
        • 匿名
        • 2020年 9月 17日

        第1次世界大戦の時もよく似た話があったような。
        歴史は繰り返すのか。

        5
      • 匿名
      • 2020年 9月 17日

      トルコの枠は米軍が自分で使うとか最近急にエントリーしたポーランド行きとかになってるんじゃないかな。

      1
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    この状況でF-35Aをギリシャに渡すのは、墜落や撃墜やらで鹵獲されるリスクがありますからね。F-16Vなら構わないでしょうけど。

    1
    • 匿名
    • 2020年 9月 17日

    もしF-35Aが来たら切り札になるな

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
PAGE TOP