伊レオナルドは「C-27Jの契約をアゼルバイジャンから獲得した」と発表、高まる中型軍用輸送機の需要に乗ってC-27Jは17ヶ国目の運用国を見つけるのに成功した。韓国もKAIもMC-Xの海上哨戒機バージョン開発をMADEX 2023で発表した。
参考:Italy-Azerbaijan energy talks spawn C-27J aircraft sales for Leonardo
参考:Leonardo: contract signed for C-27J to the Azerbaijan Air Force
参考:MADEX 2023: KAI introduces maritime patrol variant of MC-X transport aircraft
1,000機以上という巨大な需要を巡る戦いは既に始まっている
中型軍用輸送機のシェア(1,500機前後)はC-130が独占しているものの平均機齢は30年を越えており、アフガニスタン撤退やウクライナ侵攻を経験した欧州諸国は「旧式の輸送機によるロジスティックシステムが時代遅れになっている」と再認識、C-130Jと比較して平均稼働率、運用性、メンテナンス性、調達性が優れているエンブラエルのC-390に関心が集まっており、オランダ空軍がC-130Hの後継機にC-130JではなくC-390を選択、スウェーデン、チェコ、オーストリアも同機の導入に関心を示している。
中型軍用輸送機に対する需要の高まりは欧州だけの話ではなく、エンブラエルは米国、エジプト、インド、韓国、南アフリカにもC-390を売り込んでおり、C-390ベースの空中給油機(フライングブーム方式)や早期警戒機の開発や提案など同社の動きは非常に積極的で、もう需要の高まりは世界中に拡大している格好だが、今度はイタリアのレオナルドがアゼルバイジャンからC-27Jの受注を獲得したらしい。
レオナルドは取引の詳細を明かしてないものの「両国の協力関係は当初エネルギー分野に限定されていたものの、現在では防衛産業製品にも協力関係が拡大している」と述べており、ロシア製のIL-76しか保有していないアゼルバイジャン空軍がC-27Jを4機発注したと推定されている。
ロッキード・マーティンと共同で開発したC-27Jはサイズ的にC-130JではなくC-295と競合する戦術輸送機で、イタリア、ブルガリア、ギリシャ、ルーマニア、オーストラリアなど16ヶ国が採用(総生産数は117機/2022年時点)しているものの、250機以上の受注(2021年にインドから56機を受注)を集めているC-295に商業面で差をつけられており、暫く新規受注が途絶えていたため「アゼルバイジャンとの契約」はC-27Jの存在を再び思い出させてくれたと格好だ。
韓国航空宇宙産業(KAI)が開発を進めているMC-X(中型輸送機)もMADEX 2023で新たな動きがあり、KAIはMC-Xの海上哨戒機バージョン(MPA)開発を発表、この機体は韓国空軍から退役が予定されているCN-235の後継機ニーズを埋めるもので「MC-X/MPAの詳細は2024年に提供する」と述べており、国産の対潜魚雷(レッドシャーク)を携行できるようにすると付け加えているのが興味深い。
韓国のMC-X開発にはアラブ首長国連邦が参加する見込み(今年1月に両国は多目的輸送機の共同開発で合意)で、フランス、ドイツ、スウェーデンの3ヶ国もC-130とCN235の更新需要を狙って新たな中型戦術輸送機の開発で合意しており、1,000機以上という巨大な需要を巡る戦いは既に始まっている。
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※アイキャッチ画像の出典:Hpeterswald/CC BY-SA 4.0 C-27J
積載量30tクラスのC-2とA400Mがちっとも売れていないということは、このクラスの輸送機の需要が無いのでしょう。大抵の国ではC-130を超えるような大型輸送機は必要としない。(軍用輸送機を必要とする場面は災害派遣と平和維持活動ぐらい、平時の物資輸送は殆ど民間に委託されている)
30tクラスの装輪装甲車両は、明らかに非対称戦想定していたもので、一方でそのクラスの車両は、ウクライナ戦争では全く役に立っておらず、当然それの輸送に主眼を置いたAM-400やC-2 の中途半端感は否めない。
欲しい国のために作られた両機は、その国にはとりま売れたのでは。
小さくても良かったなと、買った国は思っているのでしょうか?
出来ないってことはわかってるんだけれどC-1を今っぽく改良できればいい線行くような気がするんだよなぁ。
文谷氏の話だと、輸送機の使用の大部分が人員輸送(空挺部隊、連絡人員、離島の急患)なので、重量的には空気を輸送しているようなものらしいです。なのでC-130ですら平時は持て余すそうで「航続距離の長いC-1」を希望する声はある。(文谷氏は「軍事研究」誌で米海軍の空母連絡機グレイハウンドの再設計を提案していた)
なるほどそういうことなんですね。
エンジン換装による燃費向上及びパワーアップ、空中給油機構付与、グラスコピット化等々。
夢は尽きません。
人員輸送のためにそっちのC-2(グレイハウンド)の再設計を始めるくらいなら、航続距離が3分の2程度な以外は、巡航速度などのスペックがほぼ変わらないMV-22とかで良いような。Bも立場あるから口が裂けても言えないだろうけど。
ボーイングのサイトやウィキペディアで数字違うけど、
4500kg搭載時のオスプレイの航続距離:約1600km
4500kg搭載時のグレイハウンド:約2400km
ただしオスプレイは滑走路を使った時のスペック。垂直離陸だと650kmとか700kmになる
V-22は高コストで自治体が良い顔をしないのが痛いところ。
V-22の最大の売りである垂直離着陸を使うと航続距離はC-1以下になるし、通常離着陸のみで使用するとなればグレイハウンドの方が航続距離が長い上に運用コストも圧倒的に安い。(政府が武器輸出を本気でやるのなら)C-27ですら買うことのできない中小国で需要があるかもしれない。
尤も、陸自のV-22を空自か海自に配置換えするというのなら賛成する。V-22の高額な運用コストのせいで陸自のヘリコプター稼働率は落ちており、これを例えば海自に配置換えすればDDHへの物資輸送に役立つでしょう。
日本もダメもとでもっといろんな国にC-2を打診してみればいいんじゃない?
国土の領域が広い国や細長い国(チリとか)滑走路が短い国とか、意外な国に需要があるかも。
営業に出ることで、マーケティングに必要な情報(顧客の本当に欲している性能や「物」)が得られると思う。
主語は「日本は」じゃなくて「川崎は」でしょう。
官製マーケティングはクールジャパンとかロクなものにならない。
C-1とC-2の中間クラスでC-3とか言う輸出専用機が造れれば…
エンジンとかコックピット周りがスーパーハーキュリーズと同じなのは強みだよなあ。一時期はアメリカ軍も採用しようとしてたし。今はコーストガードなどに払い下げ処分するとか言っているけども。