NATO軍事委員長を務めるバウアー氏は3日、出演したラジオ番組の中で「戦闘機をウクライナに提供する時期は反攻作戦の後になるだろう。この問題を現在の反攻作戦とリンクさせて議論すべきではない」と明かし注目を集めている。
参考:Ukraine won’t be given fighter jets until after counter-offensive against Russia, top NATO admiral tells LBC
参考:Топ-чиновник НАТО: Украина не получит западные истребители, пока не завершится ее контрнаступление
F-16が2023年中の反攻作戦に影響を与える可能性は0に近いものの反攻作戦で結果を残せる
バイデン大統領は5月に広島で開催されたG7で「F-16を含む第4世代戦闘機でウクライナ人パイロットを訓練する同盟国の取り組みを支援する」と表明、米国が英国主導の戦闘機連合に加わったことで「ウクライナへの戦闘機提供」が本格的に動きだし、6月15日のラムシュタイン会議後にウクライナのレズニコフ国防相も「ウクライナ人パイロットの訓練開始に関する決定を戦闘機連合から受け取った」と明かした。
戦闘機提供に対する期待の高さからSNS上で様々な憶測や噂が流れているが、現段階で公式に確認されているのは「オランダとデンマークが主導するウクライナ人パイロットの訓練開始に向けた取り組みが動き出した」ということだけで、訓練を何処で行い、訓練に使用する機体を誰が提供し、訓練環境のインフラを誰が構築するのか決まっておらず、ウクライナ人パイロットが機体にアクセスするための法的手続き、専用シラバスの開発なども目処が立っていない。
ウクライナのクレバ外相も3日「F-16を使用したウクライナ人パイロットの訓練が6月中に開始されるものと思っていたので、2024年初頭までにF-16を受け取れると確信していた。しかし期待された訓練は6月中に始まらず、これは当初予定よりも訓練スケジュールが遅れ始めていることを意味している。インフラ準備、訓練に使用するための航空機移転に関する法的要件の決定に時間が掛かっており、このプロセスは非常に複雑だ」と述べていたが、NATO軍事委員長も「戦闘機の提供時期は反攻作戦の後になる」と言及して注目を集めている。
NATO軍事委員長を務めるバウアー氏は3日、出演した英国のラジオ番組の中で「戦闘機提供に関する議論は重要なものだが短期的に解決するものではなく、この反攻作戦中にパイロットとエンジニアを訓練し、戦闘機を運用・維持するためのインフラを組織する作業は完了しないだろう。ウクライナが戦闘機を求めているのは理解できるが、この問題を現在の反攻作戦とリンクさせて議論すべきではない」と指摘し、戦闘機がウクライナに提供される時期は反攻作戦の後になると示唆した。
ラジオ番組の司会者は「戦闘機なしでもロシアとの戦争に勝つことが出来ると思うか」と質問、これにバウアー氏は「ウクライナ側には西側製の兵器システムがあり、優れた訓練を受け、士気とモチベーションが高いのでロシア軍よりも有利だと思う」と指摘。
さらに「軍事作戦において極めて基本的で重要な部分、すなわち『何のために戦っているか』という部分においてウクライナ人は国家の存亡をかけて戦っていることを十分理解しているが、ロシア人は自分たちが何のために戦っているか全く理解していない。これが戦いにおいて大きな違い生むことになることを我々は過去の歴史から学んで知っている。反攻作戦を成功に導くことは簡単な仕事でもないし、多くの時間がかかるが、それは達成可能だ」と述べ、戦闘機抜きでも反攻作戦の目標を達成できると述べている。
ウクライナ軍が反攻作戦をいつまで継続できるのか不明なため「戦闘機の提供時期」を推測するのは不可能で、反攻作戦が達成すべき目標も定義されていないため「何をもって目標を達成できた」と判断していいのか分からない。
ただ「F-16が2023年中の反攻作戦に影響を与える可能性は0に近いものの反攻作戦で結果を残せる」という意味なので、地対空ミサイルで前線をカバーしながら前進は可能だと言いたいのだろう。
因みにウクライナに提供されるF-16について米ディフェンスメディアは「HARM、AGM-84、 AGM-65、AIM-120A/B、AIM-7、AIM-9、IRIST-T、GBU-53/B、JDAM、JDAM-ER、APKWS、MALDなどが使用可能になる可能性が高いものの、これらの兵器は目標にある程度接近し、殆どの攻撃シナリオにおいてある程度の高度が要求されるため、現在の戦場状況でF-16を運用すれば生存性が低く、地上部隊の攻勢と敵防空網制圧作戦を組み合わせれば航空作戦を実施できる範囲を拡張できるかもしれない」と述べている。
ただし、ロシア軍の防空システムを検出して位置を特定するのに効果的なHTS=HARM Target Systemについては「高度の訓練だけでなく戦術的な作業や技術的な繊細さも要求されたるため、余裕のない現在のウクライナ軍には提供される見込みは低い。ただ戦いが長引けば状況は変わるかもしれない」と、AN/ALQ-131のような電子妨害装置は「提供される可能性がある」と、R-37に悩まされているウクライナ軍がAIM-120C、AIM-120C-7、AIM-120C-8、AIM-120Dを受け取れるかは「未知数だ」と指摘している。
関連記事:ウクライナ軍、東部戦線に18万人以上の戦力をロシア軍は保持している
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Taylor Solberg
アイキャッチの画像素敵ね
戦闘機なしで軍事的勝利は不可能ではないかもしれないが
戦闘機出さないなら
必要な数の防空システムや長距離ミサイルを出す準備は進んでるんだろうか?
中途半端な支援で泥沼化することは辞めて欲しい
今回の反攻作戦にF16が間に合わないのは衆目の一致する所でしたが
航空支援無しだと今行っている浸透戦術でジリジリ押して行くしか無いんですかね?
ロシアの防衛陣地を、歩兵で攻略しようとするとは・・・まさに、「二百三高地」って感じだな。
ジリジリ押してたら、ウクライナの体力が持たないと思う。
ウクライナの動員条件が厳しくなっているという話も流れてたから、
かき集められるだけかき集めて、一斉突撃により一気に突破していく作戦かも。
NATO側としては「歩兵で勝てるなら別にわざわざ高い戦闘機送らなくても大丈夫でしょ」という理屈が成り立ちます。
そもそもNATOとはNATO加盟国の国土と国民を守るものですから。
非NATO国の国民が何人死のうが「それって我々に関係ある?」というスタンスにならざるを得ません。ボランティア団体ではないのですから。
NATOの第一仮想敵であるロシアが西進して領土拡張を実際に行ってて「それって我々に関係ある?」ってどういう理屈なんだろ🤔
しかも当初はキーウ攻略を目論んでたわけで国境紛争どころでなく国家転覆の事態ですね。こうもなれば難民大発生で周辺国(NATO加盟国)の安全保障になんの影響も出ないわけありませんがボランティアとは?
西側有権者に戦費を払わせるキャンペーンではそういうことになっていますが。
現実に起きている事実は「NATOの仮想敵であるソ連が分裂して内戦を引き起こし,双方再起不能なレベルで国力衰退を引き起こしている」というNATO大勝利シナリオです。
現在のロシアを見て、あれが真剣に西側諸国の脅威になると思えるんでしょうか。F16でゲームチェンジャーとか言ってるレベルですよ。
もはや「ロシアが弱過ぎてこのままではNATOの存続意義がなくなってしまう危機」の方がよっぽど深刻です。NATO盟主のアメリカとしては、もっとロシアに頑張ってもらわねばならない状況ですね。
そしたら次は対中国で同じことするだけだと思いますが。何故そこまでロシアに存在意義を依存しなければならないのか。
というか最近露骨ですけどどうにも資本主義、というかアメリカが憎くて仕方ないらしいっすね。
対中国でNATOがまとまるわけないでしょうが。。。
同盟というのは共通の軍事的脅威があって初めて機能するんですよ。
ドイツやイタリアが中国の何に脅威を感じるというのでしょうか。それこそ「地球の反対側で勝手に日米でやっててくれ」という反応しか返ってこないでしょう。
「キャンペーン」で世論はどうとでもなるという貴方の論調に乗っかったまでです。
だってそもそも核大国のロシアを脅威じゃないとか言ってる時点でお察しレベルですし。
横からですが
北大西洋条約第5条は「ヨーロッパまたは北アメリカにある1つまたは複数の加盟国に対する武力攻撃を、加盟国全てに対する武力攻撃とみなす」と規定しています。
米中対立の結果、中国による武力攻撃がハワイやグァムに及べば、NATOは対岸の火事を決め込むことはできません。在日米軍基地も対象になるかもしれない。
「地球の反対側で勝手に日米でやっててくれ」という態度でいられないのは確か。
だからこそ英仏独伊は太平洋展開演習実施で中国にNATOを意識させ牽制してるんです。
いつまで強大なアメリカとかいう妄想に浸ってんだか
だいたい軍事費=無駄金だった西側諸国がロシアが弱くなると困るなんて思うわけ無いでしょ
今NATO加盟国の内政状況だって悪いし、中国が台頭してきてるんだから弱くなっても困るわけ無いでしょ
大体、2014年のクリミア危機が起きだってNATOは何もしなかったでしょ?
ソ連を「である」と現在形で語らないでいただきたい。
私も同意見ですね
NATOは戦闘機なしでもウクライナが一定の結果を残せると踏んでいるのでしょう
少なくとも「反抗作戦後の大きい支援」を明確にしたと言うのは事実として大きいのかなと感じますね
ボランティアの意味を勘違いしているように思うしNATOのアライドフォース作戦なんて自分達に直接関係するようなケースなのかね。
自分達の庭に近い所であんな事が起こっているのにウクライナに対する支援無しなら、どんな非道の国家の所業であろうとも最初からスルーすればいい。ただNATOが域外での紛争防止や危機管理に舵を切って過去に介入した国に対する大義が失われると思うが?
コソボ空爆なんて今から振り返るまでもなく大義もクソもないと思うが
『長時間滞空できるALARM』みたいなミサイルなり無人機があればな。
でもまあ、こんな思いつきで浮かぶような兵器が有効なら、既にどこかの国が作ってるよな。
イスラエルのハーピー
ありがとうございます
>>ウクライナが戦闘機を求めているのは理解できるが、この問題を現在の反攻作戦とリンクさせて議論すべきではない
反攻作戦の停滞がF16の供与遅れが原因だとNATOに責任転嫁するかのような最近のウクライナ側の姿勢に対し、NATOとして反論したかったのだろうな。
そもそも作戦計画時にF16などなかったわけだし。
今回の記事見る限りこれまでのウクライナ主張(今回の反抗作戦は厳しいから長い目で見て欲しい&NATO加盟させろ!etc)はやっぱり戦闘機の提供やさらなる支援のための西側諸国へのプロレスでしたね。
プロレスと言っても、ウクライナが現在やっている主張はウクライナ支援の継続と戦闘機等の兵器提供を西側諸国の国民(つまり各国の有権者)に対して訴えかける事で西側諸国の政府に働き掛けて貰おうと言う意図を感じますから、これは一種の情報戦ですね
今後もウクライナと西欧諸国の間でこの様な鞘当ては続くと思います
F-16AMを渡されても、Su-35SやMiG-31BMが飛び回ってS-400が敵側にある状況下では、できることが非常に限られているのでは…
私もそう思います。
1.おっしゃるようなロシアの防空網
2.渡されるF16の数とバージョン
3.パイロットの熟練
以上の点から、F16もゲームチェンジヤーにはならないと思います。
ウクライナ戦争は、大雑把に言うと、一貫してウクライナ軍の人海戦術とロシア軍の火力戦術との戦いで続いています。
ウクライナ側は兵士の数や今現在の供給力ではロシアを圧倒的しています。しかし、ウクライナは、今の総動員でも、ここままでは少しずつ兵士の供給力に陰りが出てくるのてまはないか。そうなると、まずくなるのではないか。
仮にF16を渡すとしても。それだけでは不足と思います。
今の状態では、戦闘機の損耗を補填するだけではないかと想像します。
現在の脅威は、Tu22M3/95/160とそのASM、そしてR37を運用するMig31とA-50では。
ウクライナの立地がロシアに近すぎるので、領空内にAEWレーダーが必要でしょう。
E2Dが良いのですが、NATOに加盟していない現在は無理でしょう。
可能性が有りそうなのは、スウェーデンとイスラエルの物では、と思います。
将来的には、国土の西半分のどこかに、ロシアの西半分を見張るOTHレーダーも必要では。
F-16だけじゃダメって、F-16だけでいくらすると思ってるんだろうか?
これで今回の反攻で壊された陸上兵器の補填でしょ、こりゃキリが無いな
きりがないので、どちらかが力尽きるまで、無限の消耗戦かと(ロシアにはその覚悟がある)
キリがないからと言って出し惜しみして小出しにしていれば、余計に長期化して支援国にはより大きな負担として跳ね返ってくるでしょうね。かと言って、今更支援を切り上げて、手打ちとするには、ロシアは国際法と慣習を毀損し過ぎ、西側諸国が妥協できる余地をなくしてしまいました。
今後もNATOは「まだ時間がかかる」と言いながらズルズルと支援を続けさせられる展開が続くのかと思われます。
思うのですが。
ロシア空軍相手に局所的にでも航空優勢を取ろうとしたら、
最低限、イスラエル空軍と同程度の努力は必要なのだと思います。
そうでなければ、違うやり方をしないとですね。
多分、それはロシア軍に対し機材と兵員の消耗を強いることかなと。
特に兵員でしょうか。ベトナムで米国がやられた方法ですね。
それと、ロシア国内のインフラの破壊でしょうか。
ベトナムでは、米国は合計して約6万人ほどの戦没者を出しています。
ロシアはどこまで頑張れるでしょうか。
西側は、ロシアが頑張れなくなるまで、
制裁と武器弾薬の提供を続けることになるのでは。
砲弾と対空ミサイルを充分に送れば言わないとおもいますよ。
それすら出来ないからの話でしょう。