欧州関連

アゼル軍のUAV攻撃の前では無力のロシア製アンチドローンシステム

ロシアメディアは1日、アルメニア軍に供給したロシア製アンチドローンシステムがアゼルバイジャン軍の無人航空機(UAV)によって破壊されたと報じている。

参考:Передовая российская система РЭБ “Репеллент” уничтожена в Армении

ロシア製のアンチドローンシステムがアゼルバイジャン軍のUAVによって破壊される

ロシアメディアによれば、アルメニア軍が陣地防衛のため使用していた電子妨害システムはロシア製の最新型アンチドローンシステム「Repellent-1」で、UAVの制御を妨害することで攻撃を抑制することができると製造メーカーは主張していたがアゼルバイジャン軍のUAV接近を検知することも攻撃を抑制することにも失敗して破壊されてしまったと報じており、ロシアの軍事アナリストは「アゼルバイジャン軍が実行した電子妨害の影響で敵UAVに干渉することができなかった可能性がある」と推測している。

現時点でアルメニア側はロシア製アンチドローンシステムが破壊されたことに言及していないが、仮にアゼルバイジャン軍が使用するUAVや戦術に対してRepellent-1の妨害が効果がない場合、アルメニア軍の重要拠点防衛は致命的な脆弱性をさらけだすことになると指摘した。

電子妨害と対電子妨害対策は常に進化しているため、これだけでロシア製アンチドローンシステムが役に立たないと判断するのは早計で、たまたまアゼルバイジャン軍のUAV戦術の方がロシア製アンチドローンシステムを上回ったというだけだろう。

恐らくロシアは今回の教訓を生かして改良や対策を講じてくるため同じ手が今後も通じる可能性は低いが、現時点で役に立たないロシア製アンチドローンシステムに頼るアルメニアにとっては致命傷となるかもしれない。

イスラエルが無償でアゼルバイジャン軍に新型UAVを与える?

さらにアゼルバイジャン軍はイスラエルから無償でS-300やS-400のレーダー破壊に効果的だと言われている新型の自爆型UAV「ミニハーピー」を受け取ったと報じられている。

参考:Израиль перебросил в Азербайджан системы для уничтожения С-300

この自爆型UAVはレーダーが発する電波(マイクロ波)を受信して自爆攻撃を仕掛ける仕様で対レーダーミサイル「AGM-88 AARGM」のUAV版と言うべき存在だ。今回アゼルバイジャン軍が受けったのはハーピーシリーズの中でも最新型の「ミニハーピー」で旧型機(ハーピー)とは異なり推進方式が電動化されているため静寂性に優れており、指定された空域を約2時間(航続距離400km~500km)静かに徘徊することが出来る。

勿論、一般的な自爆型UAVと同じ様に搭載されたEO/IRセンサーを通じて発見した目標に自爆攻撃を仕掛けることも可能で、昨年に発表されたばかりの最新自爆型UAVだ。

問題はイスラエルが何故「無償」でアゼルバイジャン軍に「ミニハーピー」を与えたのかだが、恐らく新型UAVの交戦データ収集が目的なのは容易に想像がつく。

 

※アイキャッチ画像の出典:アゼルバイジャン国防省が公開した動画のスクリーンショット

トルコ、早期警戒管制機を使用してアゼルバイジャン空軍の空爆を支援か前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    まーたモンキーモデルをぼったくり価格で売りつけてんのか

    11
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      モンキーだろうが何だろうが実戦で役に立ってんだから問題無いだろ

      4
        • 匿名
        • 2020年 10月 02日

        ロシアに言ってんじゃね?

        27
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      だね、
      ロシアの「Repellent-1」の既存ユーザーはどうするんだろうね?
      アップデートを要求(当然、有償)?  怒るだけ? 
      ユーザーはロシアぐらいからだけしか買えない国だろうし・・・
        

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    アルメニアに本国仕様の電子戦システムを輸出するわけないので商売に支障が出たら多少輸出型をアップデートするかもという程度だろう

    9
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    >イスラエルが何故「無償」でアルメニア軍に「ミニハーピー」を与えたのかだが、
    >恐らく新型UAVの交戦データ収集が目的なのは容易に想像がつく。

    日本政府・日本の防衛産業には、こんな真似できないな。
    売り込みしていくなら、これくらいのエゲツなさが必要なんだろうけど。

    22
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      イスラエルは建国した瞬間に周りの国々4ヵ国に宣戦布告されていきなり戦争で、しかも武器はチェコが売ってくれたナチスの武器使っているのでその方面は進んでる、アメリカと裏で繋がっている事も有りイスラエルの歴史は戦争の歴史だと言っても差し支えないかと。そういう国は当然何でも有りになっていきます、ロシアの新型のデータが欲しいので自分の国の兵器を提供してデータを貰います、そして次を開発します、以下繰り返し。
      日本もタイとかインドに軍事援助を行って中国との模擬戦闘のデータ収集して次の開発を行うか、イスラエルと仲良くしてデーター貰うとかすれば良いのでは?
      UAVはアメリカ製だと高いのでそれ以外にも必要なのでは?日本はUUVに集中して輸出していけば良いのでは?

      8
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        防衛装備庁が研究開発中の哨戒型UUVは米も興味を示してますからね。UAVに比して実用化は遅れてますし。
        当該UUVは基本ブロックに必要な機能ブロックを組み合わせる構造ですから攻撃型も開発可能です。
        攻撃型は「防衛装備移転三原則」の関係で輸出のハードルが高いですが、それ以外のタイプは売れるかも。
        日本の無人機開発はUAVで大きく遅れをとりUUVで先行している状況かと思います。

        4
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    自国兵器の評価かも知れないが、イスラム国家であるアゼルバイジャンに無償供与とは。
    イスラエルも現実路線でしたたかだね。

    18
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      イスラエルは、自国製の攻撃型ドローンをロシア製防空システムにぶつけることを狙っていたのかも。
      ほかにも裏はありそうだが、さし当たってはデータ取りのためだろうね。

      20
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      アゼルバイジャンはイスラムだけどイランと仲が悪い
      (イランはアゼルバイジャンを潜在的自国領と看做している為)

      10
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      いよいよはユダヤだのイスラムだのの宗教的対立よりも国家の利害関係優先なんですよ、
      これからイスラエル承認のアラブが増えるって予想は間違いない

      11
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      アゼルバイジャンはソ連時代のユダヤ人弾圧で保護してくれたことで
      恩があるからイスラエルとの仲はかなりいいぞ?
      この戦争が始まる数日前にアゼルのIL-76×2機がイスラエルに飛来していたらしいけどピーパーを積み込みに来たんだろう

      16
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      イスラエルが輸入する石油の約半分はアゼルバイジャン産
      ついでにいうと石油はパイプラインを通ってトルコで船積みなので、イスラエルはこの2国と仲良くし続けてる

      12
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    小国(ごめん)でも普通に電子戦やってるんだねえ…自衛隊もこれから強化するらしいが。

    12
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      他人のふりみて我が身を直せ、だな。ガラパゴスと島国根性を混同してると進歩も改良もない

      25
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    イスラエルが無償提供した国が、アゼルバイジャンなのかアルメニアロビーなのか、blog本文の最後の方メチャクチャになってない?

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      タイプミス(予測変換ミス)
      アルメニアロビー×
      アルメニア○

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    世界中の軍隊が大慌てだろうな
    こんなオモチャに毛が生えたようなドローンでMBTがお釈迦になるんだから

    8
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      何を言ってるんだ、全然オモチャに毛が生えたレベルじゃないだろ。専用設計でレーダー波/光学/IRセンサーまで積んでるのだからそれなりに金がかかってるよ。
      あとこいつはMBTの上面を抜けるのか?宣伝の映像でもソフトスキン用に見えるが。(センサー類はダメになるだろうけど)
      費用対効果に優れるって話ならATMでも同様。

      13
        • 匿名
        • 2020年 10月 02日

        スマホ作る技術があったら応用で作れちゃいそうな気がする
        軍事用技術と民間用技術の境目が曖昧になってる感じ

        2
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      1990年~1991年の湾岸戦争のデザートストーム作戦時に歩兵携帯型対戦車ミサイルでイラク戦車お釈迦になりまくったでしょ?それの対抗策がロシアAPSアリーナで、イスラエルのトロフィーAPSも同じですよ。ミサイルの誘導妨害から迎撃までしてくれるので護身用(拳銃みたいな物)はこれで、後は付随する車両で対応する、このシステムを破れる攻撃手段が出て来たので対応が必要なだけ、ドローンとミサイルの融合が予想されていますので、迎撃システムもそれと安価なシステムとの組合せになるハズです。

      9
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      オモチャにでも毛を生やせば役に立つというのと面白い
      皮肉な言い方だが、戦争のないときの兵器はみなオモチャと変わらないって批判されてるしな

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    今ごろ大慌てする国はすでに負け組だよ
    現実の後追いしてるようじゃダメ、過去の成功体験から抜けられない、取り残され老人思考こそ大敵
    他人よりほんの少しだけ前を進み続けることが勝利につながる
    今や、ドローン対策の出来てないMBTでは何両揃えてもガラクタというわけだ

    4
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      MBTよりも、防空システムの方が重要でしょう。戦車は地上目標との交戦が主目的
      何しろ、防空システムは空中目標との交戦が目的の兵器なのですから

      16
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    >ロシアの軍事アナリストは「アゼルバイジャン軍が実行した電子妨害の影響で敵UAVに干渉することができなかった可能性がある」と推測している。

    中国軍は電子戦を行えるドローンや、電子妨害に強い自立型のドローンをすでに運用中。
    自衛隊は周回遅れで完全に出遅れましたな。

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    ドローンなんて対抗手段が開発されてすぐ無効化されるって言ってた人いるけど
    この様子だと無効化される日はなかなか来そうにないね

    3
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      いわゆるドローンというよりかミサイルだもの

      13
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        「貧弱の巡航ミサイル」と評している人もいるね。
        装備の整った先進国の軍隊に対しては余り有効では無いだろうとも。

        1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    無人機も防空側もどちらも電子戦やるとすると、結局どうなるんだろうってなかなか想像しづらいんですよね。
    どの兵器がどんな電子戦やるのかよくわかんなくて。

    >問題はイスラエルが何故「無償」でアゼルバイジャン軍に「ミニハーピー」を与えたのかだが、恐らく新型UAVの交戦データ収集が目的なのは容易に想像がつく。

    この交戦データ、見てみたいわ。マジで。ムリだけど。

    2
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    すでに研究されまくってイタチごっこってことか。お金がある方が勝つw

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    こういう俳諧型って目標を発見できずに燃料切れや電池切れになったらどうなるの?
    通常は自爆して相手に資料等を渡さないようにするはずだが、
    日本の場合、自国内で運用するというのが前提条件だから、人家のない所や海に移動してから自爆するのかな。
    それとも帰投・回収し整備後に再度運用になるのかな

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      面白いとこに着目したね、基本使い捨てとは思うけど、再利用が可能ならば費用効果や訓練にも可能性が拡がる
      この点が今後、UAVとミサイルとの区別になるのかも

      7
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      基本的に一定時間の飛行の後に指定地に帰投回収なんてシーケンスは可能かと。
      攻撃兵器搭載型や爆薬搭載自爆型は回収前に投棄するんでないと危険が伴うけど。
      日本の場合、東西冷戦集結により本土への本格侵攻はとりあえず無視可能な国際情勢なんで、攻撃型UAVを装備化するとすれば運用想定は南西諸島地域になるかと思います。

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    ゲパルト自走対空砲や87式自走高射機関砲みたいな装備が
    注目されるようになるんですかね?

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      1周して結局そうかもね。
      センサーや射撃管制周りは進化するだろうけど、最後は昔ながらの弾幕対抗策というね。
      UAV対策に特化するなら35mmはオーバースペックかもしれんが。

        • 匿名
        • 2020年 10月 04日

        35mmでは、UAVが搭載する誘導兵器にアウトレンジされるかと。

        空からの誘導兵器や、対輻射源誘導弾は以前からあった脅威で、
        それらをUAVにより大国でなくても運用出来るようになったのが、今回画期的な点なのだと思っています。

        1
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      自走対空砲も撃破されてるから、一気に評価が下がった。
      インドも対自爆ドローン用に購入予定だったがキャンセルされた。

      1
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      電波を出すと逆探されて攻撃してくるから、画像か音声によるパッシブ索敵システムが開発されれば注目を集めそう

      3
        • 匿名
        • 2020年 10月 02日

        パッシブの音波探知でしょうね。
        エンジン付きなら赤外線でも探知できますが電動ならば無音になってしまいます。
        プロペラの風切り音を探知する方法で対応できないでしょうか?
        これを複数置いて距離と方向を測定できるようにすれば良いと思います。
        第一次大戦のロンドンみたいな感じと・・・。
        でも飽和攻撃されると弱いか。

        2
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    ハードウェアよりもソフトウェアの仕上がりが勝敗を分けたっぽいな

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    値段的に折り合いが付きつつ適度な性能ですぐに開発出来そうなモノを考えると、サイドワインダーの地上発射型位かなあ。

    1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    システムが想定していたもの→RQ-4、MQ-9などの遠隔操作機
    実際に来たもの→レーダー感知して自爆攻撃を行う自立型機

    3
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    JSFがアゼルはドローン化したAn-2(アントノフ2:複葉機w)使ってるんじゃなかろうか、と書いてたね。
    なるほど、そういうこともあるかもねw

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      自己レスだけど、やっぱりドローン化してたみたいねw

      リンク

      An-2は、第二次世界大戦の混乱後にソビエト連邦が再建されていたため、1947年に最初に飛行した古風な農業用航空機であることは言及する価値があります。そして、戦場でのこの種の航空機のこのような活発な出現は、多くの人にとって完全な驚きでしたが、後にアゼルバイジャンが敵の防空位置を特定するためにこれらの航空機を使用していることがわかりました。

      3
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    遠隔操作型でも電子戦で有利だったり、ハーピーなどと一緒に飛ばせば結構使えるのかも。
    これは防衛側が余計不利になってるのかな。現在のドローンでこれなら将来のスウォーム戦術とか
    かなりやばいですね。規制しようというのも解る気がする。

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