スイス政府はF/A-18C/Dの後継機にF-35Aを選択したと今年6月に発表したが、本当にF-35A導入を法的に確定させることが出来るか正念場を迎えている。
参考:The movement to stop Switzerland’s F-35 deal
参考:Let’s Crash This Luxury Fighter Jet At The Ballot Box! Swiss Blowback On The F-35 Buy
国民投票が実施される14ヶ月前までにロッキード・マーティンと契約を結んでしまえば政府の勝ち、議会で揉めればひっくり返る可能性も
スイス国民は昨年9月に実施された国民投票で政府が進めている次期戦闘機調達プログラムを承認(賛成50.1%)、これを受けてスイス政府はF/A-18C/Dの後継機として提案された4つ機種(F-35A、F/A-18E/F、タイフーン、ラファール)の比較検討を進めて6月末にF-35Aを次期戦闘機に選択したと発表したが、これを合法的にひっくり返すため動きが加速しており「スイスがF-35Aを導入する」と断言できるのはもう少し先の話だ。
スイスの政党(スイス社会民主党や緑の党)や市民団体(軍隊なきスイスを目指す会)は政府の発表直後に「反F-35イニシアチブ」を発表、F-35A導入の是非を問う国民投票を実施するために必要な10万人分の署名集め「Stop F-35!」を開始して約1ヶ月で2万5,000を上回る数の署名を獲得、管理人が今月28日に当該団体(GSoA)のwebサイトで確認すると署名獲得数は4万人を越えていた。
しかも現地メディアは「もし政府がF-35Aを選択すると知っていれば昨年9月の国民投票で50.1%の賛成は得られなかった」と報じており、このままF-35A導入の是非を問う国民投票に持ち込まれると政府の決定はグリペンの時と同じ様に白紙化される可能性も0ではなく、これを阻止するには国民投票が実施される14ヶ月前までにロッキード・マーティンと契約を結んでしまう以外に対抗手段がない。
補足:政府ではなく有権者自らが発議する国民投票で提案が可決されるためには有権者の過半数から支持を集める以外に「州の過半数」も同時に獲得する必要があるため、一般的な投票よりもハードルが高い。
アムヘルト国防相は「もし国民投票が実施され反F-35イニシアチブが可決されるような事態になればスイスは戦闘機を失うことになる=F/A-18C/Dの退役までに次の戦闘機を調達することが事実上不可能になるという意味」と語り、年内にロッキード・マーティンとの契約を完了させたいと発言して注目を集めている。
恐らくロッキード・マーティンや契約の窓口となる米政府も早期のFMS契約締結に応じると思われるが、この契約を締結するには軍のF-35A調達要求を審議している議会が承認が必要で、ここをクリアできるかが一つの焦点だと言えるだろう。
スイス国内では政府がF/A-18C/Dの後継機にF-35Aを選択した最大の理由=F-35Aのライフサイクルコストが他の提案より20億フランも安価だったという理由について懐疑的(ロッキード・マーティンが評価プロセスでポイントを稼ぐためF-35Aの運用コストを異常に安く見せかけた資料を提出したのではないかと疑っている)で、アムヘルト国防相は「ロッキード・マーティンが提出した数字には法的な拘束力があるので我々は保護されている=調達コストを含む30年間分のライフサイクルコストは法的に保護されているという意味」と説明して政府の決定を擁護したが、この嘘は直ぐにバレてしまい政府の決定に対する不信感を決定づけてしまった。
F-35Aに敗れた競合企業の関係者は「運用コストの大部分は戦闘機を提供する企業の影響が及ばない燃料費や運用組織の人件費といった部分で占められているので、運用コスト30年分の試算結果を企業が保証することなどあり得ない」とアムヘルト国防相の説明を一蹴、執拗なメディアの追求にアムヘルト国防相も降参して「ロッキード・マーティンが提出した調達コストを含む30年間分のライフサイクルコストに対する法的な拘束力は10年間分しかカバーしていない」と明かしており、どうやら法的な拘束力をもつ10年間分のコストが提案の数字と異なっても特にペナルティ等は設定されていないと噂されている。
補足:管理人のざっくり計算だとスイスのF-35Aの年間運用コスト(30年分の運用コストが100億フランと仮定)は1機あたり大体1,000万ドルなので、米空軍の年間運用コスト780万ドル(2020年実績の数字でこれを370万ドル削減することを要求している)と比較すると非常に高額だ。あくまでざっくり計算なので何とも言えないが1機あたり1,000万ドルの年間運用コストで計算しているなら今後の削減分を加味すると155億フランという提示額を大きく超える可能性は低いのかもしれない。
つまりスイス政府は提出された数字の検証を行わず意図的な不正を防止するためのペナルティも課していないため、ロッキード・マーティンが「状況が変わった」と言えばスイスは受け入れるしか手がないという意味だ。
このような問題が指摘されているため議会が原案通り軍のF-35A調達要求を承認するのかに注目が集まっており、仮に議会がロッキード・マーティンの提出した数字を検証して契約条件の見直しを指示すれば契約時期がずれ込み「国民投票が実施される14ヶ月前まで」という条件が満たせなくなる可能性も出てくるかもしれない。
まぁF-35A導入に反対するスイス社会民主党や緑の党の議席数は24.6%(55議席)なので主流派とは言えないが、スイスの政治システムは「与党VS野党」というシンプルなメカニズムで動いていないので今後どのように事態が推移するのか個人的に注視している。
関連記事:スイス政府は次期戦闘機にF-35Aを選択、但しグリペン導入を撃墜した国民投票の実施が濃厚
関連記事:メッキが剥がれてきたF-35Aの運用コスト、スイスに提示した155億フランは空手形か
※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
どうせ他の欧州が裏で糸引いてんだろうさ
F-35A、F/A-18E/F、タイフーン、ラファールの選択肢でF35に反対する意味がないもの
同世代の選択肢が別にあったなら別だけどさ
F35以外、生産ラインがいつまで閉じずに残ってるものやら
少なくともタイフーンとスパホは50年代までは現役だよ
生産はもっと早く終了するだろうね。
中立国だから極力ブラックボックスの無いものがいいんだろ
陰謀論は勘弁して欲しい
F-35以外は、ステルッスじゃないしね
ステルス以外は捨てるっす♪(何点?)
それくらい、知ってるっす
以前の記事でF35Aが一番コスパが良かったという話が語られていて非常に怪しいなと思ったのだけど、やはり嘘だったか。国防機材なのでコスパだけで選ぶのもおかしいんだけど、トータルコストバカ高いけどなお取得すべき利点が性能やその他の面にあるならそこをちゃんと説明すべきだよな。調達の公正さという意味では日本も他国のことは言えない部分があるにせよ…。
しかしまぁ、直接民主制の気風が強い国は大変ですね…
安い物がコスパのいい物というのもどうかと思うけどね。
現状の性能でも最強クラスなのにアップデートで更に伸びしろがある機体なんだし。
画一的対案を出せおじさんにはなりたくないけどstopF-35に加担した人達が後継の戦闘機を決めてくれるかと言うと、そうではないわけで
この国民発議はf-35キャンセルならば代わりに何を導入するかという選択肢とセットですべきではないかね
スイス社会民主党はともかく後者の団体については、日本の左翼勢力や護憲派市民団体と一緒で、最有力の候補を頓挫に追い込んだら次は二番目、三番目の候補を順に潰していって軍備廃止を達成させる腹積もりなのではという気がする…。
ラファールが最有力と以前は報道されてた記憶があるので、
それにするだけではないでしょうか。
フランス空軍に時間外は対応してもらっているので、ラファールで良いのかな。
一応スイス空軍も24時間スクランブル対応するようになりました。
フランス空軍がスクランブルを肩代わりしてるからと言って、スイスがラファール入れる理由にはならないかなと。
9時5時空軍は解決しそうかな?
こっちの方が、問題が重いのだが。
NATOにでも加盟しないと解決しないよね。
以前ここでも取り上げられてるけど、去年の大晦日から24時間年中無休化したらしいよ。
↓そのときのネタ再掲
リンク
軍隊なきスイスを目指す会とか、とんでもないこと企てる団体もいるもんだな
まあ日本も似たの抱えてるから人の事をとやかく言えんけど
周辺国はEUとして統合され内陸国だし、日本よりはだいぶヌルゲーだしそういう声も出るのも納得。
一方、中露北に核ミサイル向けられ、シーレーンの南シナ海を中国に実質占領されてる極東の島国から軍隊不要論出てるのはヤバすぎだけどね。
専門的知識もない一般人が判断するとか、ミリオタが判断するよりなお酷い
ポピュリズムと民主主義は違うのにね
その点うちはより進んだ間接民主主義で良かった
まあ残念ながら地方自治に直接民主主義が残ってしまってはいるけど
お陰であの県とか実に迷惑な事する
何言ってんだこいつ?
リニアじゃね。
専門知識を市民に説明し、理解得て支持を受ける事が政治家の仕事であり、大衆の支持を得て、国家、地方自治体の議会で発言権を得るのが選挙だろう。
我が国でも議員は国民の話に耳を傾けるし、政府はパブリックコメントという形で話を聞く
もし選挙結果の意思を尊重しないなら、民主主義という理念に反し、選挙というシステムに意味がなくなってしまう
選挙が国益にならないと考えるのであれば、占拠による政治の方が好ましいだろうか?
米国製が嫌ならば最初からグリペン入れておけば金もかからなかったのにね
軍備を無くすって…永世中立の為とはいえ傭兵として多くの血を流してまでスイスという国を築き上げた先人達に顔向けられないだろうに
傭兵どころか、WW2では連合、枢軸双方の領空侵犯機を撃墜してますからね。
グリペンなら安いかというと、金額的には安いのですが、システムとして考えるとうーんですわ。
そこにスイスの特性を考えると、どちらを入れるのも理由が立つ訳で…
グリペンは何で否決されたんだっけ?
反対派の主張が通ったから
・今あるF/A-18で十分
・グリペンでは現代の脅威に対応できない
・教育や技術革新、社会福祉に資金を回せ
リンク
その理論だと、F/A-18C/Dが退役を迎える現在、グリペン以上の戦闘機を導入しなきゃいけないじゃないか
グリペンを明確に圧倒する戦闘機となると、やはりF-35しか選択肢は無いぞ。なにしろ今後はステルスが標準装備の時代に成るのだし
反対派の主張は、老朽化したF5タイガーを手放しても空軍にはまだ完全に機能する32機のFA18戦闘機が残りスイスの安全保障上十分、というものだったらしい。
スイスの潜在敵は周辺諸国だから、EU製の戦闘機は避けたいだろう。
戦闘力のある米国製が一番無難のように思う。
スイスなんだからBにしろよと普通に思うんやが
今でもレガホが主力だし、他の航空機も普通に離発着しているのだからA型でも問題なかろう
それにB型を選択すると機銃はないし、航続距離も短いし、A型よりも構造が複雑で整備しにくい
あれ、てっきりレガホ→スパホの流れでB=ボーイングだと思ってたんだけど、もしかして読解力ゼロ?
Bだけ書かれていても、F-35Bなのか、ボーイングのBなのか、ボマーのBなのか、わかる訳ないだろ
大体スイス空軍はノースロップのF-5だって運用していたし、スイスだからボーイングなんて結びつきない
(ついでを言えばその前はミラージュIIIを運用していた)
スイスなんだから短距離滑走路 vtol機のF-35B→わからんでもない
スイスなんだからボーイング→西側企業ならどこでも選考に値するのでは?意味不明
説明をお願いします
リンク間違えた、御免なさい。
今使ってるのがレガホなので、その流れでスパホ採用されないかなと思ってBはボーイングのBかな、と思った次第です。
アホですみません皆様><
ありゃ冷戦終わって手抜き許されてた時期だったからの話で今やNATO圏各国で戦争準備再開しまくり状態だろ。
継戦最重視で航空機の残存性向上を考えるならジャンプ台無し300mのSTOと垂直着陸できるBが適当じゃねえの。