欧州関連

伊首相がキーウを訪問、SAMP/Tを含むウクライナ支援パッケージを発表

キーウを訪問したイタリアのメローニ首相は「SAMP/T、Aspide、Skyguardを含む支援パッケージを提供する」と発表、ゼレンスキー大統領も「長い間SAMP/Tの入手に取り組んできた。これは本当に高度な技術で遂に手に入れた」と述べた。

参考:Италия передает Украине другие системы ПВО в дополнение к SAMP/T

米独阿が提供するパトリオットシステム(6月頃)よりも早く実戦運用に入る可能性がある

仏伊が共同開発してSAMP/Tはパトリオットシステムに相当する高度な防空システムで、SAMP/Tに接続される長距離レーダー(仏GM400/伊Arabel)は最大100個の目標を同時に追尾することができ、迎撃弾のAster30(作動範囲は高度3,000m以上の目標に対して100km/高度3,000m以下の目標に対して50km)を使用して16個の目標と同時交戦が可能で、Aster30Block1(PAC-3弾に相当)なら射程600kmクラスの弾道ミサイルを迎撃することもできる。

出典:Italian Army/CC BY 2.5

ウクライナ空軍は繰り返し「我々のシステムに弾道コースを飛行するイスカンデル、S-300/S-400の地対地モードを使用した迎撃弾、高高度から目標に向かって突っ込んでくるKh-22(最終速度はM3.5以上)の迎撃能力はない」と主張しており、これらの兵器(イスカンデルを除く)はインフラ攻撃にも積極的に使用されているため大きな被害(空軍の公式発表には迎撃できないS-300/S-400は含まれない=迎撃率を高く見せるため)をもたらしてきた。

そのためゼレンスキー大統領はパトリオットシステムとSAMP/Tの提供を再三要請、これに応えるためフランスとイタリアはSAMP/Tの提供を準備してきたものの、メローニ政権がウクライナ支援の法的根拠延長に失敗して提供の具体化作業に停滞が生じてしまうが、先月末に議会が武器供与法令の修正案を可決したためメローニ政権は「2023年末まで自由に武器をウクライナに提供できる法的根拠の確保」に成功。

出典:ПРЕЗИДЕНТ УКРАЇНИ

これを受けて両国はSAMP/Tのウクライナ提供に関する政治的決断を下し「技術的な詳細の詰めが終わればマクロン大統領とメローニ首相が正式発表する」と報じられていたが、キーウを訪問したメローニ首相が「SAMP/T、Aspide、Skyguardを含む支援パッケージを提供する」と正式に発表、ゼレンスキー大統領も「長い間SAMP/Tの入手に取り組んできた。これは本当に高度な技術で遂に手に入れた」と喜びを顕にしているのが興味深い。

SAMP/Tを受け取るための訓練は正式発表前から始まっており、タヤーニ伊外相は今月3日「ウクライナを保護するミサイルシールドが運用が2ヶ月以内に開始される」と明かしているため、米独阿が提供するパトリオットシステム(6月頃)よりも早く実戦運用に入る可能性がある。

出典:Italian Army/CC BY 2.5

因みにイタリアがウクライナに提供する武器パッケージは6回目で「155mm榴弾砲、装甲車両、戦術車輌なども含まれている」と伊メディアが報じているが、これまでに相当量の武器(M270MLRS、PzH2000、M109、M113、FH70、イヴェコLMVなどを提供しているのが非公式に確認されているため『ドイツ支援に匹敵する』とも言われている)を送っているので、イタリアは目立たないだけでウクライナを軍事的支える主要国の1つだ。

関連記事:イタリア外相、2ヶ月以内にウクライナでSAMP/Tの運用が始まると明かす
関連記事:ウクライナが切望する高度な防空システム、仏伊がSAMP/T提供を間もなく発表
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関連記事:イタリアのウクライナ支援は英独に匹敵、M270、PzH2000、M109を提供

 

※アイキャッチ画像の出典:ПРЕЗИДЕНТ УКРАЇНИ

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コメント

    • 名無しさん
    • 2023年 2月 22日

    この方、当選した直後は親露派という向きもありましたが、実際にはむしろイタリアの支援は加速していると言えますね。日本では報道が少ないですが、イタリアの支援量はポーランドにも匹敵するレベルなので、ドイツとは違う外交上手の一面を見せていると思います。

    51
    • ido
    • 2023年 2月 22日

    SAMP/Tは地対空ミサイルというのはわかるんですが具体的のどのような性能なんでしょうか。調べてもそこまで出てこなかった。

    1
      • 半分の防衛費の国から
      • 2023年 2月 22日

      記事上でも大体の性能は書いてあるので余り変わらないのですが・・使用しているアスター30ミサイルの射程が120km 射高20kmと出て来て、主に船用みたいですけど・・アスター30NTが射程600km位までの弾道弾迎撃用だそうです。簡単に言うと日本の03式中距離地対空誘導弾(改)のフランス、イタリア版のシステム、みたい。チョット前までは平和だったので意外とリーク情報も多かった(密かな販売活動)のですが、今は戦争してるので新しい情報は手に入らなくなる方向になると思いますよ。

      アスター30NT、解説

      リンク

      5
        • ido
        • 2023年 2月 22日

        ありがとうございます

        3
    • 大群
    • 2023年 2月 22日

    Visegrád 24 のツイートより

    リンク
    ここにspike 対戦車ミサイルも供与ってTweetしてあって、他のソースの探したんですけど確かなリンク先含めて見当たら無かったので、spikeは誤報かな?

    • 58式素人
    • 2023年 2月 22日

    “米独阿”の”阿”はどこの国だろう。
    普通なら、南アフリカを指すと思うのだけれど。

    5
      • どど素人
      • 2023年 2月 22日

      話の内容で、阿蘭陀かと。
      一般的には、和蘭陀。

      1
        • 58式素人
        • 2023年 2月 23日

        なるほど、ありがとうございます。

    • 戦略眼
    • 2023年 2月 22日

    日本も密かにスクラップを供与しようぜ。

    3
    • 戦略眼
    • 2023年 2月 22日

    岸田君は、行くんじゃないぞ。
    裏方なんて、死ぬ程苦労しても評価ゼロだからな。

    4
      • 匿名
      • 2023年 2月 22日

      行くどころか向こうから来いとか言い始めたんですが
      いや本当にすごいな、すごい・・・言葉が出ない

      1
    • xyz
    • 2023年 2月 22日

    イタリアは露助へのエネルギー度が高かったので及び腰になるかと思われましたが
    積極的な支援をしていますね。
    何がそうさせているのか是非知りたいところだ。

    7
      • 2023年 2月 22日

      たしかに、そこが気になるんですよね・・。

      イタリアも昔、過激極左にずいぶんテロられましたし、その関係でソ連(ロシア)に対する嫌悪感とか意外と強かった・・とかあったりしたりするんですかね・・・・??

      4
        • なか
        • 2023年 2月 23日

        子供用拷問室とか出てくればそりゃあねえ。

        1
      • 無題
      • 2023年 2月 22日

      勝ち馬に乗ってるんだろう
      先進国が全部敵に回ってる以上ロシアの局地的な勝利はあるかもしれないが完全勝利はありえないからな
      まともな国ならウクライナの方に賭ける

      13
      • ネコ歩き
      • 2023年 2月 22日

      ジョルジア・メローニ首相の「イタリアの同胞」は他の右派連合連立2党と違い、政権奪取前から「米欧の団結を守るべきだ」と主張し対露制裁を支持していましたので不思議は無いのかと。

      2021年には天然ガスの約40%をロシアに依存していましたが、ウクライナ侵攻後に方針転換を図り、前首相時代からアルジェリアに協力を求めていたそうです。
      1月の統計ではアルジェリアが国別取引先のトップだったとのこと。2024~2025年冬には天然ガスの脱ロシア依存も可能になる見込みとか。
      (2/3付け JETRO ビジネス短信より)

      9
    • ホテルラウンジ
    • 2023年 2月 22日

    今日ミヤネ屋で解説してましたけど
    岸田首相が向こうに行けない理由に外国訪問は国会へ事前説明が必要な仕組みになってるというのがありましたね。
    つまり日本は仕組み上、バイデンのようなサプライズ訪問が出来ないみたいです。

    2
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