欧州関連

ウクライナが切望する高度な防空システム、仏伊がSAMP/T提供を間もなく発表

ロイターは26日「フランスとイタリアがSAMP/Tのウクライナ提供に関する政治的決断を下した」と報じており、技術的な詳細の詰めが終わればマクロン大統領とメローニ首相が正式発表するらしい。

参考:France, Italy close to deal on supplying air defence system to Ukraine -sources

間もなく発表される6番目のウクライナ支援パッケージにウクライナが切望していたSAMP/Tが含まれる

ゼレンスキー大統領は昨年10月末のG7緊急会合で「ロシアがイランに徘徊型弾薬Shahed-136を2,400機も発注している、ウクライナ軍の指揮管制システムに統合された防空システムを提供してほしい」と要請、これを受けて米軍のミリー統合参謀本部議長はラムシュタイン会議後「統合された多層式防空システムをウクライナに提供する」と発言、米国(1基)、ドイツ(1基)、オランダ(2基?ランチャー2基と迎撃弾の提供だけという説もある)はパトリオットシステムの提供に踏み切った。

フランスとイタリアもパトリオットシステムに相当するSAMP/Tの共同提供(フランスがランチャーとAster30をイタリアが長距離レーダーのArabelを提供する方式らしい)を模索してきたが、カウンターパートのドラギ首相が退陣し、新たに発足したメローニ政権もウクライナ支援の法的根拠延長に失敗するなど政治的ゴタゴタが続き両国の交渉は停滞してしまったが、今月25日にイタリア議会が武器供与法令の修正案を可決したためメローニ政権は「2023年末まで自由に武器をウクライナに提供できる法的根拠の確保」に成功。

ロイターは26日「フランスとイタリアがSAMP/Tのウクライナ提供に関する政治的決断を下した」と報じており、技術的な詳細の詰めが終わればマクロン大統領とメローニ首相が正式発表するらしい。

出典:Quirinale.it

因みにSAMP/Tに接続される長距離レーダーのArabelは最大100個の目標を同時に追尾することができ、Aster30(作動範囲は高度3,000m以上の目標に対して100km/高度3,000m以下の目標に対して50km)を使用して同時に16個の目標と交戦することが可能で、Aster30Block1(PAC-3弾に相当)なら射程600kmクラスの弾道ミサイルを迎撃することもできる。

追記:イタリアのCorriere della Sera紙は間もなく発表される6番目のウクライナ支援パッケージにはSAMP/T、Aspide、155mm榴弾砲、装甲車両、戦術車輌などが含まれると報じており、イスラエル製の徘徊型UAV「Hero-30」もパッケージに入っているという噂もある。

関連記事:ウクライナ支援で大きな役割を果たすイタリア、議会が武器支援継続を承認
関連記事:イタリア新政府、ウクライナへの武器供給に関連した法令の延長を断念
関連記事:イタリアのウクライナ支援は英独に匹敵、M270、PzH2000、M109を提供
関連記事:ウクライナが切望していた高度な防空システム、仏伊がSAMP/T提供を準備中

 

※アイキャッチ画像の出典:Italian Army/CC BY 2.5

ウクライナ向けエイブラムスはM1A2構成、戦場への到着は来年以降になる可能性前のページ

エストニア、ドイツにクラスター爆弾のウクライナ移転を承認するよう要請次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ノルウェーが長期防衛計画に基づく国防費増額を表明、12年間で約23兆円

    ノルウェーのストーレ首相は5日「国防費増額を議会に提案した」「2024…

  2. 欧州関連

    トルコが開発中の第5世代戦闘機「TF-X」、調達コストは1億ドルで試作機は2023年完成

    トルコ国防省調達部門のイスマイル・デミール氏は28日、開発を進めている…

  3. 欧州関連

    ウクライナ国境の封鎖38日目、ヤゴディン検問のみ封鎖の解除が実現

    ポーランド南部ドロフスクの市長が運送業者の抗議者に解散を命令し「ヤゴデ…

  4. 欧州関連

    チェコ大統領、反攻作戦は期待外れで支援国も戦争疲れを感じている

    チェコのパベル大統領は「ウクライナ軍は戦場での優位性を示しておらず、来…

  5. 欧州関連

    米海軍、ギリシャとトルコの衝突防止のため帰国途中の空母打撃群を派遣

    米海軍は中東での任務を終了して帰国途中だった空母「ドワイト・D・アイゼ…

  6. 欧州関連

    ポーランド国防相、困難な状況下における責任を共有しろとドイツに要求

    ブラスザック国防相はドイツに宛てた28日付けの親書の中で「(ドイツとの…

コメント

    • 58式素人
    • 2023年 1月 27日

    イタリアは、目立たないけど結構な支援をしていたみたいですね。
    今回のミサイルは、数はともかくですが、供与が決まっているパトリオット、
    ブーク用シースパローとHAWK、既に供与されている MANPADS,
    自前の57mm対空砲、23mm機関砲、14.5mm機銃と合わせれば、
    一応、拠点の重層防空ができそうに思います。
    誰も言わないみたいですが、23mm機関砲弾の信管はどうも着発だけなのでは。
    無駄弾の自爆信管は無いのではと感じています。それでは市街地では撃てないのではと思います。
    米国の20mmは自爆機能(ひょっとしたら時計信管?)はあるみたいですね。
    西側のどこかのメーカーで市街地でも撃てる信管を作れないものでしょうか。

    6
    • 匿名
    • 2023年 1月 27日

    ウクライナでロシアが侵略に時間かかっているうちに西側諸国も日本のぞいて軍事強化はじめましたね。日本は防衛費をコロナにつかえなどの時代勘違いの医師会や60年国債返還ルールに基づいた国債調整費名目の800兆円積立金と外貨積立金で借金あるようにみせかけた財務省やマスコミの抵抗をはやくおさえて防衛費増やさないといけない。

    14
      • kitty
      • 2023年 1月 28日

      ちなみに防衛予算の捻出のために国立病院機構が上納金を貯めて積み上げた800億円から400億円国庫にボッシュートしました。
      GDP2%のために国もなりふり構っていません。

    • 蟹たべたいね
    • 2023年 1月 28日

    最後にイスラエル製の徘徊型UAVも供与すると書いてあるけど、これはつまりイスラエルがウクライナへの武器供与を許可したという事になるのかな?

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
PAGE TOP