アルメニアのパシニャン首相は16日、アルメニアが占領していたアゼルバイジャン領に関する交渉が行き詰まったため軍事力による打開を図ったが失敗に終わったと認めた。
参考:Pashinyan Admits Military Gamble to Impact Karabakh Negotiations Failed
ナゴルノ・カラバフ問題を平和的に解決する交渉が行き詰まったため戦争で打開を図ったアルメニア
アルメニア議会に出席したパシニャン首相はナゴルノ・カラバフ紛争に関する議員達からの質問に答えた際「2016年4月に発生した4日間戦争はアルツァフ共和国(旧ナゴルノ・カラバフ自治州が独立国だとして名乗っている国家名)の現状が通用しなくなってきた最初の兆候だった」と語り注目を集めている。
ナゴルノ・カラバフ問題を平和的に解決するため1998年以降、米仏露が共同議長を務める欧州安保協力機構(OSCE)のミンスク・グループ仲介の下でアルメニアとアゼルバイジャンの交渉が何度も行われたが、アルメニアが占領していたアゼルバイジャン領のアルツァフ共和国編入が認められず、シュシャを含む全てをアゼルバイジャンに返還することを求められたため、アルメニア側は領土返還プロセスを1年でも5年でも10年でも15年でも20年でもいいので長引かせることにしたが「この戦略は4日間戦争の時点で通用しなくなっていた=政治・外交的にアルツァフ共和国を救うことに失敗した瞬間」だと説明。
※因みにミンスク・グループ仲介の下で行われた交渉では「ナゴルノ・カラバフ地域の最終的な地位については未定」だったと当時の交渉内容をパシニャン首相が明かしている。
2020年7月に発生したアゼルバイジャン軍との軍事衝突で「アルメニア軍とアルツァフ共和国軍は戦争準備が整っていることを確信した」と語ったパシニャン首相は「最終的に有利な交渉立場を得るため戦争という選択を決断した」と初めて認めた。
パシニャン首相の説明をわかり易く要約すると旧ナゴルノ・カラバフ自治州の地域はともかく、アルメニアが占領したアゼルバイジャン領(ゴランボイ、ラチン、グバドリ、ザンギラン、フュズリ、ジャブライル、アグダム等)に関しては返還しろとミンスク・グループとアゼルバイジャンから要求されたため領土返還プロセスを長引かせることで現状のアルツァフ共和国維持を図ったが、アゼルバイジャンは口先だけの領土返還に我慢できなくなり武力による奪還を決意したため「領土返還プロセスを長引かせる」という戦略が通用しなくなった=破綻したと言っているのだ。
結局、パシニャン首相は戦争に勝利することで不利な立場に立たされている交渉状況を打開しようと決断したのだが、今回のアゼルバイジャン軍にはシリア人傭兵とトルコ軍の支援があったためアルメニア軍とアルツァフ共和国軍は負けてしまったと説明、なぜ降伏に等しい停戦条件に同意したのかについては「戦闘を続けることで問題の解決が図れる可能性が理論的に1%でも残っていれば諦めなかったが、それが不可能だと分かったため方針を転換した」と述べている。
今回パシニャン首相が明らかにした状況を踏まえるとアルツァフ共和国の維持は国際的に相当厳しい状況だったにも関わらず、領土返還プロセスの遅延で時間を稼ぎ状況の打開を図ったが、口先だけの領土返還にアゼルバイジャンが痺れを切らして武力に訴えてきたため「戦争による状況打開」を選択、これにも失敗してアルメニアが占領していたアゼルバイジャン領を取り上げられてしまいアルツァフ共和国の運命も風前の灯火となってしまったという訳だ。
アルメニアはアゼルバイジャンへの領土引き渡しを控え感傷的・同情的な報道も見受けられるが、この条件は元々ミンスク・グループ仲介の下で行われた交渉で提示されていた内容に近いためアルメニアの悪あがきは無駄に終わってしまったと言える。
※アイキャッチ画像の出典:President.az / CC BY 4.0
いろんな意味で「備えろ」ということか
ともかく、領土問題を武力で「解決」という前例がまた一つ増えてしまいました。
それを言うなら逆だろ
国際社会の承認を得ずに武力で領土をもぎ取っても、結局最後は敗戦とともに返すことになるっていう前例がまた一つ増えたんだよ
ハイそうですね。ロシア人と韓国人がそれを学んでくれると良い。
両者とも武力による解決を選んだのだから、合意の上の解決でしょう
アルメニアはアゼルバイジャンの侵攻を撃退できる、又は阻止停滞させその間に諸外国の介入による和平=現状保持が可能と踏んでいたてことでしょうね。全ての目論見は失敗に終ったわけですが。
アゼル側がアルメニア本国に侵攻すれば、ロシアはアルメニア側に立って参戦せざるを得ません。その場合でも国境まで押し返えす反撃までしかしないでしょう。記事にある通りロシアはナゴルノ・カラバフ地域返還をアルメニアに求めていたのですから。
よって戦争が続けばアゼル側の侵攻はナゴルノ・カラバフ地域の完全占領で終ります。
それはアルツァフ共和国の滅亡を意味しますから、少しでも有利な条件=アルツァフ共和国の存続を認める停戦協定に同意したのでしょう。何時の日か捲土重来の機会が訪れないとも限りませんし。
ナゴルノ・カラバフ地域の喪失はアルメニアの存続に関わるほどのダメージではありません。しかし前記事にあった500億ドルに及ぶ賠償金はアルメニアの国家財政を破綻させるに十分で、これを条件にした停戦同意は有り得ないと思います。
領土はともかく、賠償金の大きさについての疑問が解消したのが今回の記事ではないでしょうか。アルメニア側から仕掛けたのであれば納得の額でしょう。支払い不履行ならアルツァフ全土占領の口実にも出来ますしね。
この記事を読んで、逆に、充分にあり得ると思った
1、旧ナゴルノ・カラバフ自治州のアゼルバイジャンへの返還
2、500億ドルに及ぶ賠償金
のどちらかを選択しろ! って条文があるんじゃね?
むしろ、債務不履行をたてに残ったアルツァフ全土占領もできるというのがアゼルバイジャン国内側の理屈になっているのでは
日中関係を考えるときにも参考になると考える。頑なに尖閣を自国領だと主張するだけが問題解決につながるだろうか?こいうことを言うとすぐに右翼から売国奴とレッテル張りをされるが、勇気をもってハッキリと言うべきだと思う。尖閣の領有権について現実的な中国との対話を開始するべきだ。中国が実効支配を固めている状況も十分に尊重しなければならない。日本側だけ100%を要求するのは現実的ではない。不幸な歴史的背景や両国の国益の存在、多角的な観点から両国の利益を十分に考慮した解決案を目指さなければナゴルノ紛争のような戦争になってしまうだろう。日本の頑迷な姿勢が戦争を引き起こさないことを切に願う
日本政府は国際機関による裁定を中国政府に働きかけていますよ。
中国はそれに応じようとしません。平和的解決を拒み、力による現状変更を試みているのはに中国です。
力による現状変更の試みとは、現状通り実力行使による強引な実効支配の実績作りですね。
尖閣問題に関しては、右も左も関係なく、中国の強引な手法による領有権主張にどう対峙するかです。
中国が100%の主張を行っているのに、日本が主張を譲らねばならない理由はありません。
中国が武力による解決に踏み出さぬよう、日本政府はあの手この手の外交政策を実施しています。
アルメニアも交渉による解決を主張し続けてはいたので、反論の仕方としては今一では。
まあ、日本の場合と違ってアルメニアには一部の理もない交渉でしたが。
>日本政府は国際機関による裁定を中国政府に働きかけていますよ。
ソースよろ。
少なくとも、竹島を巡って南朝鮮にICJへの共同付託を提案したのと違って、
「解決すべき領土問題がない」が日本政府の公式見解だから、
自らICJへ話を持っていくことは有り得ない。
おっしゃる通り勘違いでした。指摘ありがとうございます。
念のため外務省HPで政府見解と主張根拠、一貫した対応政策を再確認しましたがその通りです。
対話論者って必ずといっていいほど「両国の利益」「多角的な観点」この辺の文言を入れるよね?
具体的に何をさしてるの?教えてよ。
あと何故か日本側から仕掛けて戦争を起こそうとしてる論もセットででるけど具体的にはどういった方法?
これも教えて。
釣りにマジレス…
上の流れ的に本気で言ってると思ったんだけど間違いを指摘してる人は別の人なんだね。
IDとかの表示無いからコメント主かと思ってしまった。
要約すると「たとえ保守の立場でも中国の利益になる主張をすることが勇気ある正しいことだ」と言っているだけなので、ただの釣りか、多少格好良く言ってあげるとプロパガンダでしょう。
2国による共同統治は現実的な解決策の一つだと思います
両国の妥協点を探す交渉を始めるのは悪い手段では無いと思うのですが、如何でしょうか?
あたおかで草
ファ!?
何いってるの?
70年代に入って、尖閣に石油資源可能性の話が出るまで中国は領土問題を言い出してないことを念頭にな。
うまい話と知ってから途中から割り込んでくる相手を尊重しろとか、それヤクザに屈服しろよって話
>中国が実効支配を固めている状況
君は全くもって真のリアリストじゃないね。
頑なに尖閣を自国領だと主張して問題解決してるんだよなぁ…
その証拠に尖閣に上陸できてないじゃん?
上陸したら警察権発動して捕まえるしそれで抵抗するなら自衛権発動して攻撃するのが分かってるから中共は手が出せない
これを実効支配というのだよ
なので尖閣諸島では紛争等は一切起きておりません
ありもしない紛争で協議しようとか馬鹿のやることじゃないかな?
仮に国連で採決取るなら普通に中国側優勢の判定が下るでしょうし、
日本もそろそろ「現実的」な解決策を模索する段階なのでしょう
そもそも尖閣諸島を日本領と主張するのは本邦と米国の2カ国しかない訳ですし、
その米国ですらバイデン政権では180°手の平を返すでしょうし
準備万端だったからアゼルバイジャン側が先に手を出したのかと思ったらアルメニアが始めたのか…たまげたなぁ
現場ネコが首相だったら仕方ないね…
宣伝戦のうまさ(動画投稿とか)といい快進撃といいほとんどの人がアゼルバイジャンの先制攻撃で始まったと思ってたはず。
アルツァフ兵士が語った防衛特化とは一体なんだったのか…
この記事を額面通りに受け取れば、戦端を開いたのはアルメニアととれますね。
しかし開戦後の進行を見れば、アゼル側は万全の開戦・侵攻準備が整っていたとしか思えません。
どちらが先に動いたかは分かりませんが、開戦時には境界線を挟み両軍が集結し対峙した状態であり、開戦を決断したのはアルメニアだったということでしょうか。
蒋介石がゼークトラインに日本軍を誘引して出血を強要する事で状況を優位にしようとした先例があるから、それと同じような感じじゃね
「過去アゼルバイジャンから奪い取った」ことがアルメニアが始めたことで、奪還作戦を開始したのはアゼル側ですよ。
まあ、外野としてはどっちでもいいんですけどね。
「首相が大バカ者なら国持たぬ」と言った優秀な首相がかつて我が国いたけど、
そのとおりになったね。
国民は自らに相応しい首相を選ぶってことわざもあるよ、
ヒトラーやらムッソリーニへの当てこすりらしいが
現代でも通じるさ
戦争仕掛けてなかったら、どっちにしろアゼリ側から攻撃受けて領土を失うところだったのだから、
ワンチャン、領土を維持できる博打を打って、結果、負けて領土を失った、ということは、
戦争負けた責任負う部分は仕方ないにせよ、戦争仕掛けた判断としては、それほど間違っていたわけでもないのでは。
アベ政権と菅政権の2つを経験した今だから言える事実だけど、
相対的に見たら鳩山政権はかなりマトモな政権だったね…
日本はこのまま最貧国への道のりを一直線ですわ
ソースの記事がどこまで信用できるのかわからんから、続報待ちかな
外交と軍事の両輪揃わんと国は走れませんぜ、っていういつもの原則を踏襲しただけですね。こんないアルメニアはどちらも失敗した訳ですが。
武官を現地に派遣して、徹底的に調査検証
日本の軍事戦略の弱点の発見に活用して欲しい
>2020年7月に発生したアゼルバイジャン軍との軍事衝突で「アルメニア軍とアルツァフ共和国軍は戦争準備が整っていることを確信した」
この判断の根拠となった詳細な内容がわからないので、気になる。3、4ヶ月でそんなに軍備は変わらないよな…それともトルコによる大規模支援を読みきれなかったのかな…
> 口先だけの領土返還にアゼルバイジャンが痺れを切らして武力に訴えてきたため「戦争による状況打開」を選択、これにも失敗して
先に手を出したのはアゼルバイジャン、と読めるのだが?
アルメニアが先に攻撃したとは言ってなくね?
言葉通りに読むと
アゼルバイジャンの侵攻開始
↓
やむなく武力の使用を決断
って読めるけど。
アセルバイジャンからナヒチェヴァンまではまだまだ遠いですね