ルーマニア国防省は「事故率が異常に高い」という理由で空軍のMiG-21に飛行停止を命じたと15日に発表、手続きを進めている中古F-16の取得を加速させる方針だ。
参考:Romania suspends all MiG-21 LanceR flights
痛ましい事故を受けてルーマニア国防省はMiG-21に飛行停止を命じるも退役は中古F-16を取得してから
NATOに加盟したルーマニアは防衛装備品を旧ソ連製からNATO規格に対応した西側製に変更している真っ最中で、空軍はアップグレードを中止して退役したMiG-29の更新用としてポルトガル空軍から中古F-16AMを導入、アップグレードされたMiG-21も運用限界(2024年退役予定)に達しているためノルウェーから中古F-16AMを導入する手続きを進めている最中だったのだが、先月2日にMiG-21が墜落したためルーマニア国防省は飛行停止を命じたと15日に発表した。
ルーマニア空軍のMiG-21はスペアパーツの入手性が思わしくないた稼働率は50%以下、10万飛行時間あたりの事故件数は30件を超えており、過去5年間だけでも2017年6月、2018年7月、2021年4月、2022年3月に墜落事故が発生している。
特に3月2日に発生した墜落事故ではMiG-21のパイロットが死亡、さらに同機の捜索に向かっていたIAR-330まで墜落して計8名(MiG-21パイロット1名+IAR-330に搭乗していた7名)が命を落とす結果となり、この痛ましい事故を受けてルーマニア国防省はMiG-21に飛行停止を命じ、手続きを進めている中古F-16の取得を加速させると発表した。
ただMiG-21の飛行停止は「技術的な不具合によるリスク軽減」が目的なので、何らかの対策を講じて「安全性の確保」に目処がつけば飛行を再開する可能性が高く、ノルウェーから調達する中古F-16が届くまで退役するのは難しいと思われるが、この件を聞きつけた海外の軍事アナリストは早速「飛行停止を命じたMiG-21をウクライナに送るべきだ」と主張している。
因みにエルビット・システムズによってアップグレードされたMiG-21は第4世代並(大型のヘッドアップディスプレイ、西側製のミッションコンピュータ、多機能ディスプレイ、INS/GPS複合航法システム、NATO規格の通信システム、レーダー警報受信機等)だと言われており、AN/APG-66と同等のEL/M-2032に換装されているため空対空と空対地の両方が実行でき、照準ポッドのライトニングが統合されているためマーベリックやレーザー誘導爆弾による空対地攻撃が可能だ。
さらに自己防衛電子戦ポッドのEL/L-8222を携行できるため「ウクライナ空軍の戦闘機よりも生存性が高い」と指摘されているが、ルーマニアはノルウェーから調達する中古F-16が手に入るまでMiG-21を手放す気はなく、どれだけ役に立つ性能を備えていても稼働率が劣悪なMiG-21をウクライナに移転したところで持てますだけだろう。
追記:ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領は中古F-16を調達後、空軍の航空戦力を強化するためF-35A導入を発表(飽くまで導入したいというだけで米国との交渉はこれから)している。
関連記事:ルーマニアがノルウェーから中古F-16取得を発表、1機あたりの導入コストは約18億円
関連記事:ルーマニアのヨハニス大統領、空軍近代化の一貫としてF-35A導入を約束
※アイキャッチ画像の出典:Alan Wilson / CC BY-SA 2.0
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旧式機の事故率が高くなるのはどこの国でも同じか。それにしてもミグ21は名機だよね。半世紀以上運用されているうえ、F7にいたっては2010年代まで生産が続いていたし。この小型な戦闘機でも相応なアップデートはやっぱりできるんだなあ。
二乗三乗則というやつで小型であることは有利ですからね。翼面積やエンジンのタービン面積はサイズの二乗だけれど重量は三乗になるので、機体が大きくなるほど重量比が厳しくなります。今どきの技術でコンパクトで高性能な電子兵装が積めるなら十分優秀な兵器かもしれないです。ただ寄る年波には勝てずに足腰にガタが。
エンジンの推力重量比を見ると、
・MiG-21MFの搭載エンジンR-13-300が5.4
・F-4Eの搭載エンジンJ79-GE-17が4.6
・F-5Eの搭載エンジンJ85-GE-13が6.8
・ミラージュF1の搭載エンジンAtar 9K-50が4.7
・三菱F-1のTF40-IHI-801Aが4.7
といった具合です。
小型エンジン双発なF-5Eを除くと、Mig21は当時としては最良な部類のエンジンを使用。
F-5Eの方は、二乗三乗の法則がもろ効いた故の例外、といった感じ。
三菱F-1は、小型エンジンの割に推力重量比が悪いですが、アフターバーナー付きターボファンの第一世代なので、諦めましょう。
空虚重量÷エンジン重量を見ると
・MiG-21MF:4.4
・F-4E:3.9
・F-5E:7.1
・ミラージュF1:4.7
・三菱F-1:4.5
とMig21は、エンジン重量と機体重量のバランスも普通で、上記のエンジンの推力重量比がそのまま活きてくる印象。
一方のF-5Eは、エンジンが小型過ぎたのでしょうね。
エネルギー機動性理論が表舞台に立てた一因に、Mig21の存在があったかと思いますが、
推力重量比の優れたエンジンと、それに見あった機体の組み合わせが、Mig21をそうさせた様に思えます。
興味深いデータありがとうございます。今どきのエンジンは推力重量比がもっと良いですが、そのために高価な素材や精密な加工が必要でコストが上がります(ロシアの場合耐久性も下がりがち)。機体も大型化した分の重量増を抑えるために高い材料を使います。Mig-21は小型のおかげで低コストでも比較的良好な性能を出せているので、長年使われているのだと思いました。
ウクライナにカミカゼやれとか言うなよな、こんなのお荷物にしかならない
だから、ドローン化してね。
エリア88で堂々たる敵役ポジのMiG-21君。初飛行が1955年とかでしょ。物持ちいいな。こないだまでF-4が現役だった我が国が言えた義理じゃないけど
中身は西側のMiG-21とかまさにエリア88ですな。
日本人が被災地に要らなくなったゴミ送りつけるノリを戦争に持ち込むんじゃねえwww
マッコイ商会を地で行くMig-21。マッコイ爺さんは逆だったけど。次から次に西側最新兵器が供給される88基地。
今読んでも良くできたマンガだった。
たしか連載当時の世界情勢的に娯楽漫画というにはきな臭い漫画になってしまったため、その風潮を一新する目的で荒唐無稽な砂漠空母やドリルミサイルを登場させたのでしたっけ
MiG-21の事故率はインドが1番高そうですな。
インドは874機のMiG-21を導入しているけど、今までに300機近くを事故で喪失し、200名以上のパイロットが殉職しているとのこと。
これはMiG-21が旧式というよりも、インド軍の維持管理が杜撰なだけだと思う。
インドは身分制度の関係でMiG-21しか乗れないパイロットがいるという話を聞いたことがあります。
これが本当なら闇が深いですね
この事故で墜落した機体はおそらく領空侵犯して強制着陸になったウクライナのSu-27を本国に送り届ける際の護衛だったはず
何故、大規模改修を計画した際、MiG-29ではなくMiG-21を対象にしたのだろう?
比較的新しいMiG-29の方だったら、運用限界の問題は先伸ばし出来ただろうに。
高いからでは?
マレーシアが運用コストの高さに値を上げてますし。
①Mig21:老朽化による諸問題﹙人的喪失や時間の浪費など﹚
②Mig29:背伸びして高性能を求めた故の高コスト体質
といった感じだと思うのですが、
コストを優先して後者を切ったと。
老朽化の弊害を甘く見ていたのでしょうが。
①金に換算出来ない問題
②金で解決出来る問題
の選択なら、金で解決する方を選んだ方が益しな気がするけど、
後知恵な類いなのですかね?
古すぎるから故に西側電子機器で制御可能だったんじゃないの?
MIG29だと中途半端に近代化してあるから、全部載せ替えは厳しそう
Mig21を調達するぐらいなら、西側のF-16かタイフーンの調達した方がいいよね
今問題になってるウクライナと西側の規格問題が解決できるし
MiG-21にしようが西側戦闘機だろうが、同じように要員の転換訓練が必要になるんだったら、西側装備の更新をやったほうが良いに決まってる。
おまけに性能ではどうやっても西側戦闘機が上なんだったら尚更