欧州関連

奇妙な協力関係、トルコの第5世代戦闘機「TF-X」にロシアがエンジン提供

ロシアはトルコの第5世代戦闘機「TF-X」開発に協力すると提案、この提案にはTF-X開発のネックとなっている戦闘機用エンジンの提供が含まれているらしい。

参考:Russia Offers Turkey Fifth Gen Jet Engine, Talks Advance on Additional S-400 Systems

第5世代戦闘機TF-X開発に手詰まりのトルコに対してロシアが助け舟?

ロシア連邦軍事技術協力局のドミトリー・シュガエフ局長はトルコメディアの取材に対し「ロシアはトルコが発注していた防空システム「S-400」2次納品分の引き渡しスケジュールについて協議中で、現在はトルコ側の最終的な決断を待っている状況だ」と話した。

さらにこの協議でロシア側はトルコの第5世代戦闘機「TF-X」開発に協力すると提案、ロシアはTF-X開発のネックとなっている戦闘機用エンジン、アビオニクス、機体制御用システム、生命維持システム等の提供を申し出たらしい。

出典:JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 TFXのモックアップ

トルコは英国の防衛産業企業BAEの協力を得て独自に第5世代戦闘機「TF-X」を開発中なのだが、この計画最大の問題は英国のロールス・ロイスと共同開発するはずだったTF-X用戦闘機エンジン調達が不可能になってしまったことに尽きる。

ロールス・ロイスはユーロファイター・タイフーン用に開発されたEJ200をベースにトルコとTF-X用エンジンを開発する予定だったのだがトルコ側が突然、開発したTF-X用エンジンの知的財産権を全てトルコ側に帰属することを要求したため揉め始め、最終的に交渉が決裂してロールス・ロイス側が計画から手を引いてしまったのだ。

出典:Attribution: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0

その後、トルコは海外のジェットエンジン製造企業に対し「TF-Xプログラム参加の扉は開かれている」と話すなど戦闘機用エンジンの供給先確保を模索してみたが、ロールス・ロイスの時と同様に「共同開発するエンジンの輸出制限なし、開発したエンジンの知的財産権は全てトルコ側帰属」を条件にしたため手を挙げる企業は出てこず、とりあえず国内でライセンス生産している米国製エンジン「F110」で開発を進めようとしたが、これも米国の圧力で不発に終わったらしい。

結局、トルコは交渉が決裂したロールス・ロイスに再交渉を持ちかけたのだが、ロールス・ロイスは既にトルコと共同開発ためアンカラに派遣していた研究者や技術者を全て引き上げ他のプロジェクトに再配置を済ませているためトルコ側の要請に応じることはなかっと言われている。

要するにトルコは西側からTF-X用エンジンを調達するのは不可能(条件を緩和すれば可能かもしれないがTF-Xは海外輸出前提なので、いちいち輸出許可が必要なエンジンを搭載すれば輸出先が限られるため嫌っている)という意味だ。

出典:kremlin.ru / CC BY 4.0

シリア内戦やリビア内戦で戦火を交えるトルコにロシアが何故協力を申し出たのか、その意図は依然として謎だがトルコにとっては計画が遅れる事を覚悟して戦闘機用エンジンを独自開発するか、ロシアからエンジンを入手するかの2択しか残されていない。

軍事的緊張がなく時間に余裕があればトルコは戦闘機用エンジンの独自開発も十分可能なのだが、問題は米国から調達するはずだった第5世代戦闘機F-35Aが入手できなくなったことで空軍の近代化計画が大きく狂い、逆にエーゲ海の支配権を巡って対立するギリシャがF-35A導入を含む空軍近代化計画を進めているため、国産の第5世代戦闘機TF-Xの完成まで遅れれば相対的にトルコ空軍の戦力低下は避けられない状況だ。

関連記事:トルコの失策、ギリシャのF-35Aはエーゲ海上空のゲームチェンジャー

このように見ていくと、トルコにとってロシアの申し出は喉から手が出るほど魅力的で、逆にロシアからしてみればトルコに戦闘機用エンジンという餌をチラつかせることで、シリア内戦やリビア内戦の状況をなんとかしようと考えているのかもしれない。

果たしてトルコはロシアの申し出でを受け入れるのか注目される。

 

※アイキャッチ画像の出典:Turkish Aerospaceが公開したYouTube動画のスクリーンショット

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    時間に余裕があればトルコに戦闘機用エンジンの独自開発が十分可能?本当に?

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      今でもF110をラ国しているんですから、時間を掛けるのならば不可能では無いでしょう
      もっとも、F-35が無いのではその時間も無いのですが
      本邦がF-3を開発する余裕が有るのも、F-35という優秀なストップギャップを十分に入手出来たが故ですし

        • 匿名
        • 2020年 6月 04日

        設計と製造は違うから。

          • 匿名
          • 2020年 6月 04日

          実は経験値としてはかなり重要ですよ。
          中国は設計まではできているものの製造で躓いている状況ですから。

            • 匿名
            • 2020年 6月 04日

            それ、現場を知らない設計者の話しに通じると思いますが、
            現場を知ってるだけでは設計出来ないかと。
            それぞれ違う能力なので。
            なので、両方見れる優れた人は大変貴重だと思います。

        • 匿名
        • 2020年 6月 04日

        ライセンス生産と言っても、トルコがどれだけ自国内で部品を作っているかにもよるのでわ?
        高度な冶金を必要とする部品を作って無いならば、中国みたいに耐久性の無い欠陥エンジンしか出来ないでしょう

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      100年掛ければ、何とか。

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      戦闘機開発のネックはエンジンなんですね。
      堀越二郎技師の本にも「いいエンジンがあればなー」っていう表現が何回か出て来たのを思い出しました。

        • 匿名
        • 2020年 6月 05日

        フランスのミラージュ・シリーズの苦労も、非力なエンジンが要因の一つですからね。

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      ジェットエンジンと比較すればかなりレベルが低いはずの戦車用パワーパックが国産化できていない時点で察するべき。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    よく売ろうと思ったな。技術を盗まれ儲けを取られた挙げ句自分に自分の技術が銃口を向ける可能性も高いだろうに。

    と思ったけどそんぐらいの覚悟がなければ武器輸出なんてできないのかね。

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      対戦時には自爆とかエンジン暴走とかさせる仕組みでも組み込んでるのでは?、などと状況から疑いたくなるような案件ですね。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    欧州(?)情勢は複雑怪奇なり

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      いやいや、民間機用エンジンで乗り遅れたロシアのエンジン企業が必死なのかもしれん。
      いまや、環境規制もあり、民間機では中露のエンジンは蚊帳の外。
      そこに、後進技術国の中国が必死にロシア製を求めるのも理解が出来る。乗り遅れたんだ・・

      • 匿名
      • 2020年 6月 05日

      平沼内閣ですね~。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    DV夫と恋多き妻の夫婦みたいな関係だな。

    掴み合いの大喧嘩をするけど別れない。

    TFXって完成出来るの?

    輸出するにしてもF-16VとF-35Aの間位の価格帯でニッチ市場でも狙うのかな?

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      イスラム圏用のステルス機、という線で売るとか?

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      実際に出来上がったTFXはSu-57そっくりになっていたりして。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    もしもロシアがトルコにエンジンを輸出できれば、トルコがロシアと対立するとTFXが運用できなくなるからトルコはロシアに逆らえなくなる。例え輸出に失敗してもトルコとの友好関係構築に積極的であると言う姿勢をアピールできるから成功しても失敗してもロシアにとってはどうでもいいんじゃないかな?

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      開発失敗が前提なんでしょう。

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      トルコが要求してるのは、ただエンジン買うんじゃなくて、共同開発(内製支援も含む)した上で知財全部寄越せって話ですよね
      特許でガチガチのエンジン業界で知財(特許料も絡む)も全部オレのモノ、好きに作って好きに売るから出来たあとは口出すななって無茶苦茶虫のいい話に敢えてロシアが手を上げたって理解だったけど違うのかな?

        • 匿名
        • 2020年 6月 04日

        トルコの方には失礼な言い方かもしれませんがエルドアン大統領からして「知的財産」というものをどのように扱うものなのか理解できていないのではないでしょうか。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    TF-X開発、ましてや輸出なんてどう見ても無理筋にしか思えない…
    北朝鮮の核開発、ミサイル開発みたいな国内向けの国威発揚政策でしょう。

      • 匿名
      • 2020年 6月 03日

      とにかくNATOから離反させたいロシアからすれば開発が成功するかどうかは関係ないですよね…

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    とわいえロシアも単独で新型戦闘機開発を続けるのは、苦しいだろう。
    中国が資金と開発力をつけてきたけど、開発協力はしにくいだろうし、そこそこ金と技術があって、いざとなったらねじ伏せられるトルコはベターなとこかも。

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      ロシアは、インドとFGFAの共同開発してた位ですからね。
      FGFAについては、インドが撤退したので、ロシア単独になったけど。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    トルコの持ってるF110の全技術をこっそりロシアに渡して
    ロシアが咀嚼して「ロシアの技術」としてトルコに譲渡する、…とか。

    • 匿名
    • 2020年 6月 03日

    エンジンもネックだろうが、その他にも障害が山積みに見える。
    そもそもトルコに、ステルス技術なんか逆立ちしても出てこない。
    そしてトルコが今現在持っている航空機技術ってなんだ?

    • 匿名
    • 2020年 6月 04日

    毛沢東とスターリンが互いに毛嫌いしながらも友好を演じていた時代、国際政治の姿っていつも同じですね
    トルコ自体がケマル政権の親ソ連から戦後に欧米に乗り換えてる経緯からして、なんでもありなんですよ。
    親日国のはずが、トルコの地図には東海と記してることを忘れずに

    • 匿名
    • 2020年 6月 04日

    ヒラリークリントンら民主党が、荒らした北アフリカ・中東・ウクライナの揉め事に更に混迷を深める流れに。
    まして、お花畑なドイツ政治とフランスなど見ても、世界の軍事圏地図が変わる事態になるやもしれない。
    それでなくても、独仏の戦闘機開発に東欧が参加できず、相当な不満を溜めこむEUの現状だね。

      • 匿名
      • 2020年 6月 04日

      現在の戦闘機開発は、米国除いて、
      トルコ・仏独・英国・日本、、と賑やか。エンジン作れるのは・・
      阿韓国国もだね、韓国の軍事技術に関わらんでよかったね、世界と日本は・・

        • 匿名
        • 2020年 6月 05日

        何でここで突然韓国を持ち出すんだ?
        自動車のエンジンも作れない韓国がジェットエンジン?
        www

          • 匿名
          • 2020年 6月 05日

          >何でここで突然韓国を持ち出すんだ?

          貶すためかと。

        • 匿名
        • 2020年 6月 05日

        やはり、水車も作れなかった朝鮮は・・回転する物が不得意・・

    • 匿名
    • 2020年 6月 06日

    トルコの兵器開発は韓国と同じで外貨獲得のための輸出が前提となっているみたい
    日本との関連で言えば過去にアルタイ戦車のパワーパックで三菱がトルコと輸出協議をする際に
    トルコ側は製造した戦車を自由に輸出したい(たぶん中東向け)と言いだして三菱が技術拡散を懸念して協議が霧散した

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