欧州関連

タレスが最新レーダーの受注をインドネシアから獲得、決めては技術移転

フランスのLe Figaro紙は18日「インドネシアから最新のGM400αを大量(13基)に受注した」と報じており、タレスは受注の秘訣について「技術移転の恩恵を受けたいと考える顧客のニーズを満たすことが重要だ」と述べている。

参考:L’Indonésie passe une grosse commande de radars pour surveiller son espace aérien

もはや海外で受注した防衛装備品を「作って輸出する」というやり方は通用しなくなる可能性が高い

フランスのLe Figaro紙は18日「インドネシアから領空監視用レーダーを大量に受注した」と報じており、タレスは「インドネシアが最新のGM400αを13基も購入するのは、中国が野心を主張するインド太平洋の状況に関連しており、周辺空域の監視にインドネシアが明確な関心を明確に持っていることを表している」と述べ、タレスは「レーダー本体の製造」と「収集データを運用するコマンド&コントロールシステムの構築」を、インドネシアン・エアロスペースは技術移転を受けて「プラットフォーム」と「レーダー関連のコンポーネント」を製造するらしい。

非常に興味深いのはタレスが「地政学的な緊張が高まっているためレーダー市場は力強く成長している。我々は産業組織を変革し、自国外でも生産体制を構築できる能力を開発したのはこのためだ。防衛装備品の契約を利用して自国経済は発展させ、雇用を創出し、新しい技術を習得するため『技術移転の恩恵を受けたい』と考える顧客のニーズを満たすには、顧客の国内に製造拠点を設立する必要がある」と述べている点だろう。

需要が旺盛なレーダー販売は「ショーケースにさえ並べて置けば勝手に売れていく」のではなく、技術移転の恩恵を受けたいと考える顧客をニーズを満たす体制づくりが重要だという意味だが、具体的に「自国外でも生産体制を構築できる能力」が何なのかは不明だ。

出典:Oleksii Reznikov

因みにGM400αはGM400に高度なAIを組み込みデータ処理能力を5倍に引き上げ、検出範囲を10%拡張(470km→515km)した最新バージョンの移動型レーダーで、ウクライナは今年2月にGM400の下位バージョン「GM200(検出範囲250km)」を2基発注している。

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※アイキャッチ画像の出典:Public Domain GM400

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コメント

    • 名無しのシロウト
    • 2023年 6月 19日

    フランス側(コアになる技術を担当)
    ・レーダー本体の製造
    ・収集データを運用するコマンド&コントロールシステムの構築
    インドネシア側
    ・プラットフォームの製造(最終組み立て)
    ・レーダー関連のコンポーネントの製造(国産化可能な部品の製造)

    インドネシアは工業化に熱心で民需製品も国産化を求める国なので、国産化可能な部品の現地調達と現地での最終組み立てを条件にしたものと思われる

    10
      • Easy
      • 2023年 6月 19日

      ウクライナでの教訓として、小型ドローンが突っ込んできてレーダー本体は無事だが車両の一部が破損して移動出来ない、なんてケースは非常にありえる戦場の光景ですので。
      自国で周辺パーツだけでも生産ラインを持っておくのは継戦能力の保持として合理的ですね。

      13
    • とり
    • 2023年 6月 19日

    タレスの言ってる中国云々ってポジショントークではないですかね?
    インドネシアの仮想敵国にはオーストラリアが含まれており、本当のところは中国にもG7側にも属しない、自立的な安定保障を確立するのがインドネシアの目的だと思います。
    中国相手に共闘してくれるみたいな言い方ですが、それは全く望めない。タレスが反中派に媚びている発言なのでは?

    15
      • ネコ歩き
      • 2023年 6月 19日

      >インドネシアの仮想敵国にはオーストラリアが含まれており

      この認識は古く現在では間違いです。
      インドネシアは「自由かつ能動的な外交展開」を標榜していますが、南シナ海における中国の軍事的活動に強い懸念を持っており、安全保障面では対立軸として米国中心勢力寄りの政策です。
      令和4年度防衛白書にありますが、中国の軍事的圧力に対抗するため、最低限の国防要件として「最小必須戦力(MEF)」と称する軍政改革を進めています。それに関連し、米国とは軍事教育訓練や装備品調達の分野で協力関係を強化しており、合同演習も行っています。

      オーストラリアとは、2006年の二国間安全保障協力枠組みであるロンボク協定の署名、2010年の戦略的パートナーシップへの引き上げ、2018年の海上安全保障やテロリズムに関する防衛協力協定及び海洋協力行動計画への署名等を経て、途中停滞はありながらも、現在では大幅に改善されています。

      10
        • バーナーキング
        • 2023年 6月 20日

        とはいえ民間インフラは中国ズブズブですからね。
        日本ではよく知られた高速鉄道はもちろん、電力やら石油やら…。
        オーストラリアとの関係以前に対中のパートナーとしてアテにならないのは間違いないと思います。
        まあオーストラリアもフランスもついでに本邦もいざという時、対中でアテになるかは怪しいもんですが…

    • HY
    • 2023年 6月 19日

     技術移転は自国の産業空洞化をもたらす懸念があり、事実日本の民間製品がそうなっており、防衛装備の輸出や技術移転が(憲法上の制約もありますが)滞っているのですが、近年は本記事のフランスに限らず欧米軍事企業の多くがそれをやっています。この不可解な行動の理由として新興国の参入による兵器市場競争の激化もあるでしょうが、世界の不安定化による需要の増加に国内産業の供給が追い付かず、効率の良い現地生産を選んだ結果ともいえます。特に欧州ではロシアの脅威が再確認されて国防の立て直しが迫られているので産業空洞化の懸念はないのかもしれません。

    13
      • ネコ歩き
      • 2023年 6月 19日

      これまでの反省もあり、国家戦略として先端技術の海外流出は厳しく管理されていて、それを含む100%の海外移転は現在在り得ません。
      海外移転を許可するのは一定レベルまでに限られます。例えばレーダなら、アンテナ素子の製造技術や特殊な装置はブラックボックス化されまず許可されません。移転範囲は先方の工業技術レベルにもよるかと。
      インドネシアへのタレスGM400αの技術移転も同様の歯止めがあると思います。

      2
    • 牛丼チーズ
    • 2023年 6月 19日

    しかし途上国相手に最新の技術を渡してしまうことにならないかリスクが心配ではある。インドネシアを始め中露との繋がりもある国々が多いし…

    8
    • 折口
    • 2023年 6月 19日

    平和学うんぬんを抜きにしたとして、日本が武器輸出に及び腰になる理由の半分は好ましくない第三国への技術流出だと思うんです。これに関して、先日のプラOムニュースで小野寺元防相が「輸出にあたりモンキーモデルのための再設計や生産基盤変更を支援する枠組みを作りたい」という旨の発言をしていて面白いなと思ったんですよね。正直モンキーモデルという言葉の選び方はどうかと思いますし、輸出にあたって必ずしも機能を減らしたり性能を落とすばかりではないと思うのですが(むしろ使用環境に合わせて性能を特化させる処置が求められるはず。顧客のニーズに合わせた商品提案は日本の製造業の特色でもある)、自衛隊向け本国モデルをそのまま輸出することを念頭に置いていた従前よりは政府与党側の認識も格段に進んだんだなと思いました。

    輸出を推奨する立場の人の中には「第三国への技術流出にはある程度目を瞑ろう」という趣旨の事を言う人も居ましたが、腹をくくる必要はあっても全部を甘受してしまうにはそのリスクは大きすぎると思います。米中露は輸出にあたって本国仕様とは歴とした差をつけていますし、欧州のメーカーが一見して本国仕様をそのまま輸出できているのは通常兵器の輸出で生じる欧州への地政学的リスクが少ないからです。同様に、日本が防衛装備品の供給国として許容出来ることとと出来ないことも国是や地政学的な立場によって自然決まるはずなのです。議論が必要なのはそこから先なんじゃないかなと。

    38
      • 名無し
      • 2023年 6月 19日

      そうなんですよね
      中国が今手をつけられなくなっているのも、
      せっせと技術供与と現地生産への投資を西側諸国がしまくってきたせいなんで
      目先のお金で言えば、どんどんなんでも差し上げますよ、
      が正しいように見えますが

      今後のことは特段考えてはいない行動だと思います

      23
      • 幽霊
      • 2023年 6月 19日

      日本が性能が劣るモンキーモデルを輸出しようとしても欧州が本国仕様を輸出するなら売れないのでは?

      11
        • バーナーキング
        • 2023年 6月 20日

        「モンキーモデル」の中身次第でしょう。
        日本/自衛隊に合わせた「過剰な」性能を削ってその分価格が下がるなら、むしろ歓迎されるはずですし、
        エンジンやレーダー等を国際的に流通している定番品に換装するのもありでしょう。

        3
      • nachteule
      • 2023年 6月 20日

       正直などういう所でモンキーモデルとして差別化するのかって感じはする。装甲車なら装甲素材のグレード下げる時点で候補から外れるだろうし、赤外線誘導ミサイルならシーカー性能落とせば魅力は無くなる。
       10式のモンキー作るとしてもモジュラー装甲のグレード落とせば防御力は激落ちで単なる軽戦車だろう。最新パワーパック出したくない思惑があるならエンジンが大きく効率が悪くなり全く違う物が出来上がる感じで費用とかとんでもなくなりそう、むしろ輸出用90式改を作る方がマシな気が。

      1
        • 折口
        • 2023年 6月 20日

        モンキーモデルという言葉が良くないと思うのはまさにその辺で、どうしてもオリジナルから機能を抜くというニュアンスになっちゃうんですよね。輸出向けの設計変更で求められるのは本国仕様と格差をつけることよりむしろ、輸出できないコア技術を迂回する事だと思います。

        例えば戦車のセラミック装甲材質/構造ですが、これは既に世間に流布している既知の構造があるので、重量あたりの防護性能は多少劣ってもそちらに振り替えることで本国軍の装備の技術的優位性を秘匿できます。結局機能を削ってるじゃねえかという話ですが、輸出のための設計変更が許されると納入先の軍と事前に協議ができるんです。戦車の装甲であれば低下した防御力を補うためにERAをオプションでつけるとか装甲ユニット自体を大きくして機動力低下を受け入れるかとか、エンジンのブースト圧を上げて機動性も補いつつ航続距離の低下を受け入れるとか、色んな選択肢があるんです。その辺の要望は顧客ごとに違っていて、例えばインドネシアのような島嶼国では路外走行のためにアンダートルクは許容出来ないかもしれませんが、航続距離の要求はさほど大きくないかもしれません。韓国はおおいに、ロシアは多少熱心ですが、この種の顧客のニーズにフィットした設計変更作業を欧米はあまりやっていません(海軍向けでは多少ある)。既製品のパンフだけ持たされて飛び込み営業しろと言われても難しいですが、技術提案が出来ると営業のやり方もぐっと変わりますよね。元防相の発言の趣旨はその辺りにあるんだと僕は信じたいです。

        3
          • ネコ歩き
          • 2023年 6月 20日

          「モンキーモデル」だと性能低下が前提というニュアンスになりますね。印象が良くない。対外的には諸外国でも一般的な「輸出モデル」とでも言うべきだったのではと。
          穿った見方をすれば、「輸出モデル」と言わなかったのは何かしらの政治的配慮があったかもですが。

          • nachteule
          • 2023年 6月 20日

           少なくとも製造業に身を置く物としては仕様変更をするならちゃんとリスク考えてやってねでしかないんだよね。
           例えば既存M60の大改造こそカタログスペックは素晴らしいけど元の想定から大分違ってバランスが崩れているし、韓国のK1は大口径化で問題が発生して米国のM1は120mm想定で設計された結果105mmではバランスが崩れている筈。
           重量増するならアルミで作っていた部品を鋼鉄製にするとか変更する箇所が出るんだしネガの部分を納得して貰えるか、それを何とか使えるレベルまでにするための努力を日本がするなら、相応の時間と金を掛ける必要有るけどそこまでするメリットがねぇ。

    • むせる
    • 2023年 6月 19日

    インドネシアの「防衛産業に関する2012年法律第16号」には外国製装備導入に関して技術移転義務、国内防衛産業の参加、現地調達率及びオフセットの比率などが定められています。フランスが気前よく技術移転込みで売り込んだのでは無く、インドネシアの法律に基づいた交渉が行われて両者が合意に至ったのだと思います。

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