ウクライナ戦況

ウクライナ軍、ロシア軍がS-300を使用した大規模攻撃を準備中と警告

ロシア軍は大量のS-300用迎撃弾をウクライナ国境に運び込んでおり、ウクライナ軍は「S-300の対地攻撃モードを使用した大規模な攻撃を準備している可能性がある」と発表して注目を集めている。

参考:Из Улан-Удэ к границе с Украиной едут 28 вагонов с ракетами для ЗРК С-300 – СтратКом ВСУ

ここまで大量のS-300用迎撃弾をウクライナ国境に集中させるのは「対地攻撃に使用する」という見方でほぼ間違いないだろう

ロシアのS-300には迎撃弾(5V55R)を使用した対地攻撃モードがあり、これを使用してムィコラーイウやハルキウといった都市を攻撃しているのだが、ウクライナ軍は「S-300を使用した大規模な攻撃をロシア軍が準備している可能性がある」と発表して注目を集めている。

ウクライナ軍は18日「ロシア軍は首都キーウに近いベラルーシのジャブロフカ基地に60発以上のS-300用迎撃弾を備蓄、8月中旬までにゴロドの弾薬庫から120発以上のS-300用迎撃弾を運び出し、ウラン・ウデからは32発以上のS-300用迎撃弾を運搬する鉄道車輌がウクライナ国境に向かっており、クリミアのジャンコイに440発以上のS-300用迎撃弾が保管されている。ロシア軍はS-300を使用したウクライナへの大規模攻撃を準備している可能性がある」と警告した。

空中目標と交戦する5V55Rの最大射程は90kmだが、地上目標と交戦する5V55Rは弾道ミサイルのように放物線を描きながら目標に接近するため120km先の目標を攻撃することができ、比較的大きな静止目標に対する命中率は良好らしい。

S-300の対地攻撃訓練は5V55Rが高価だったためロシア軍でも滅多に行われることがなかったが、米ディフェンス・メディアは「S-400への更新が始まるとS-300を使用した対地攻撃訓練が行われるようになった。冷戦時代と比較してロシア軍は地対地ミサイルの在庫が減少しているため対地攻撃にS-300を転用しているのだろう」と指摘している。

ウクライナ国境近くに運び込まれたS-300用迎撃弾が全て5V55Rなのかは不明だが、5V55R以外も対地攻撃に転用できる可能性があるので、ここまで大量のS-300用迎撃弾をウクライナ国境に集中させるのは「対地攻撃に使用する」という見方でほぼ間違いないだろう。

関連記事:巡航ミサイルの不足? ロシア軍が地上目標の攻撃にS-300を使用か

 

※アイキャッチ画像の出典:Vitaly V. Kuzmin/CC BY-SA 4.0

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コメント

    • 名無し
    • 2022年 8月 18日

    それなりに対象絞って撃てるのにどうでもいいアパートとかにミサイル打ち込んでるのはホントに意味わからんな。
    現状盲滅法打ちっぱなしだし。

    12
      •  
      • 2022年 8月 18日

      デパート、学校とか集合住宅みたいな広いスペースがあって人が集まれるところ、要はウクライナ軍が宿舎として使えそうなところは全部攻撃する感じに見えますね

      18
      • くらうん
      • 2022年 8月 18日

      頭Z共の目的はウクライナの民族浄化だと考えればやっていることの「整合性」は取れてるんだよな・・。

      28
      • G
      • 2022年 8月 18日

      ロシアはウクライナ上空を通る軍事衛星や偵察機がなく、弾薬集積所や司令部を特定できてない状況下でしたからね
      ロシア軍としても高価で数が限られている誘導ミサイルは軍事的優先度の高い場所を狙いたかったものの、あやふやな情報や予想をもとに攻撃していたのでハズレばかりだったのではないでしょうか

      とはいえ今月9日、ロシアはイランの民間人工衛星「ハイヤーム」(解像度1mの撮像が可能)の打ち上げに成功し、イランは予定通り正常に機能していることを確認したと発表しました
      イランはあくまで自国の民間向け使用としていますが、仮にロシアとの密約でウクライナ侵攻に使われた場合、ロシア軍が今までより確度の高い軍事目標の情報を得ている可能性があり、そうなると西側からの支援物資集積所などウクライナ側の弱点を被発見・攻撃される恐れがあるため、今まで攻撃されなかったからと言って今後も安全とは言い切れないかと思われます

      15
      • NATTO
      • 2022年 8月 18日

      アパートとかに撃ち込んでも、「ウクライナのナチスの自作自演。背後にある真実が見えてきます。」みたいなテンプレートがZさん達のレベル。
      もう少しマシな打ち子を集められないのかと思う。
      ちゃんと信じる人がいるのも事実なんだけど。

      5
      • くれくれ
      • 2022年 8月 19日

      ウクライナ国民はロシアに勝つつもりで戦意も高いというアンケート結果があったから厭戦感の高まりを狙っているでは?
      ロシアとしてはいつまでも消耗するより相手の心を折って(具体的にはゼレンスキーへの反発と厭戦、西側諸国の選挙後ウクライナへの支援が薄くなること)停戦に持ち込みたいだろうし
      爆撃も出来ないから、やれることがこれしかないっていうのもあると思う

      3
    • ブルーピーコック
    • 2022年 8月 18日

    報じられた内容が事実ならロシア軍の目論見とS-300の位置バレてないか。
    線路を破壊されて列車とミサイルがおじゃんになったとか、ナゴルノ・カラバフ戦争みたいに安価な無人機で破壊されたりとかしたら、今度はどんな言い訳をするのやら。

    15
    • ろすけ
    • 2022年 8月 18日

    いままでもミサイルは打ち込んでたわけで
    ミサイルの在庫がやばくて
    s300を転用しようととしてるだけなのでは?

    15
      • カディロフ
      • 2022年 8月 18日

      S300自体は後継機が出来たから在庫処分を兼ねてるんだろうけど
      しょせんは対航空機用の弾頭だから地上目標への効果はどこまであるのか微妙よね
      本来ならクラスター弾頭が使えるイスカンデルの出番なんだろうけどどうしたのかしら

      かんけいないけどS300の発射は結構好き
      コールドローンチの洗練された意味があるのかわからない無駄な動作を見るとワクワクする

      10
        • くらうん
        • 2022年 8月 18日

        >洗練された意味があるのかわからない無駄な動作を見るとワクワクする

        激しく矛盾した文なのにわかりみを感じてしまう俺はカディロフィツィだったか

        13
      • 名無し
      • 2022年 8月 18日

      飛んできたミサイルみたらソ連時代のいにしえのミサイルだったって話もあるしね。
      在庫なくなってきたってのはありそうではある。

      2
    • TKT
    • 2022年 8月 18日

    本当に大規模な攻撃が行われるかどうかは、いずれ分かると思うが、仮に行われるとしたら、果たしてどの方面に対して行われるのか?同時、あるいはその直後に地上部隊の前進を伴うものなのか?

    先ず考えられるのは、ウクライナ軍の砲撃や、破壊工作が行われている南部、ヘルソン州やザポロジェ州の方面、次に東部ドネツク州のバフムトや、シベルスク、スラビヤンスクの方面、さらに可能性は低いと思うがキーウの方面、あるいはまさか全方面における総攻撃、最終攻勢か?

    もしもヘルソン州や、ザポロジェ州の方面がロシア地上軍に突破されると、オデッサも北側から包囲されてしまうかもしれない。

    イギリスで訓練されているというウクライナ兵は、果たして東部や南部に投入されるだろうか?キーウ防衛のために温存されたりはしないだろうか?

    2
      • NHG
      • 2022年 8月 18日

      射程120kmの弾道ミサイル計500発で戦況変わるのかな
      ウクライナがHIMARSでやってるようにウクライナの重要拠点を破壊できれば流れが変わるかもだけど、今までのように民間施設に撃ち込むだけならS-300で大攻勢かけても大勢は変わらないような気はする

      27
        • ミリオタの猫(ロシア軍は強い…と思っていた時期が私にもありました)
        • 2022年 8月 18日

        同感です。
        幾らのS-300の対地攻撃モードが「比較的大きな静止目標に対する命中率は良好」と言えども、GPSと慣性誘導を併用するHIMARS/MLRSに勝るとは思えません。
        また英語版Wikipediaで調べた結果、5V55Rの弾頭重量は293ポンドで、HIMARS/MLRS用のM31ロケットの200ポンドよりはやや強力ですが、5V55Rは元々SAMで対地攻撃用に最適化されていないであろうと言う点を考えると、威力的にもHIMARS/MLRSに大きく勝るとは言い難いと考えられます。
        ですので、数百発程度の5V55Rを今まで通り民間施設に打ち込むだけではウクライナ国民の抗戦意欲を掻き立てるだけなので、どこか数か所の軍事施設に絞って集中攻撃をしないと戦局を動かすのは難しいと思います。

        17
        • バクー油田
        • 2022年 8月 18日

        ハイマースでウクライナは物量攻撃を防ぐ事に成功しましたからね
        多分、ウクライナが大規模反抗をしてきた場合、ウクライナ側の兵站をロシアがされたのと同じように
        叩く事で大規模反抗を挫くために用いると考えますし、それに使う場合は非常に有効と思います。
        ウクライナもロジスティクスが凄く有能とは思えませんから反抗時には大規模集積をするでしょうから
        それを叩かれると大規模には反抗が出来なくなるでしょう。
        もし、そうではなくそこら辺の建物やショッピングセンターをメクラ撃ちしてきたら本当のアホですねw

        10
      • hiroさん
      • 2022年 8月 18日

      総攻撃や最終攻勢とはさすがに反応しすぎでは?
      地上部隊の侵攻準備なんてミサイルの移動より容易く検知されるだろうし。
      ウラン・ウデは東シベリアなので、後方の装備を剥がさざるを得ない状況なのかな。
      ジャンコイはクリミア北部だし、ロシアにとって脅威となっているウクライナの長距離攻撃能力に対処する態勢整備と思っているが。
      イランのUAVもそろそろ投入される時期だろうし、UAV+S-300でHIMARS狩りをするのでは?

      3
        • 全裸ギター
        • 2022年 8月 18日

        >UAV+S-300でHIMARS狩りをするのでは?
        なんとなくそっちだと思いますね
        現状対抗手段がS-300の対地モードしかないでしょうし
        あとは大規模な航空兵力を投入位でしょうか

        2
        • 黒丸
        • 2022年 8月 18日

        HIMARSは道路上の移動が基本なので
        予想発射点から後方に通じる舗装道路に沿って適当な間隔でS300打ち込めば
        HIMARS発射機にダメージを与えることができるかもしれない。
        道路は移動したり増加したりしないから、標的位置座標は事前に設定できるだろうし
        ラッキーヒット狙いとして打ち込むことは可能かもしれない。

        ただHARMがS300の誘導指令電波を狙えるなら、逆効果になる可能性も・・・

        1
    • 霞ヶ浦
    • 2022年 8月 18日

    実際SAMに対地攻撃能力持たせるのは目標識別のハードル超えれば非常に有効だしこれからのトレンドになる可能性はあるか

    1
    • 折口
    • 2022年 8月 18日

    S-400登場で相対的に価値が低下したとはいえS-300だって無尽蔵にあるわけではないと思うんですが、ロシア軍的にこの戦術どうなんですかね。この後守勢に転じないとも限らないと思うんですが…

    12
    • L
    • 2022年 8月 18日

    つうかロシアは戦費どこから捻出しとるんだ
    防衛側が戦時課税は受け入れられるけど、侵攻側が戦時課税したら暴動が起きるだろ
    ってこれは民主主義国家の考え方か

    3
      • 毎日暑いです
      • 2022年 8月 18日

      海外資産凍結や輸出入制裁受けてなお開戦以降のガス原油高でエネルギー輸出による収入が本年度30兆円上回る見通しとか開戦半年が経過し各国徐々にロシア向け輸出が増加しつつあるとか(中・トルコが顕著)一筋縄では行かないようですね。
      元よりエネルギー輸出が輸出額の半分締めながらタンカー止める気がない国が多い上に金融関係の制裁も不徹底で国際市場からの締め出しとは程遠い状況にあるとIIFチーフエコノミストのRobinBrooks氏が語られています。
      リンク

      4
    • 鳥刺
    • 2022年 8月 18日

    まあ、ロシア軍が今取り組まなければならないのは、攻撃手段の量ではなく、攻撃目標の捜索と標定、それと攻撃の精度ですからねえ。それと攻撃指揮システムの反応速度を改善しない事には、結局現在S300による対地攻撃を実施中のヘルソン戦域に見るように、固定建造物に対する嫌がらせ攻撃に終わります。射程も120km程度なので後方連絡線の根幹インフラには届きませんし。

    特定の一戦域で有効な目標を精査して斉射すれば、それは一定の効果はあるでしょう。攻撃効果の持続性は疑問ですし、機に乗ずべき予備軍は存在しませんが。

    さて、ロシアが無闇に景気良く撃ちだすと、「本物の」ATACMSが来ちゃたりしませんかね?

    11
    • zerotester
    • 2022年 8月 18日

    S-300を備蓄している拠点でタバコの不始末が炸裂することを期待したいものです
    ベラルーシ側でも輸送インフラの破壊など妨害工作が行われていますし

    4
    • show the flag
    • 2022年 8月 19日

    体面を気にする独裁国らしく反撃のアピールのため、つまり一連の損害のリアクション芸では。
    このところロシア国防省の戦況報告が行き詰まっているように見えますので。

    4
    • ナイトアウル
    • 2022年 8月 19日

     想像でしかないがロシアが考えている事が上手くいくなら、戦況に影響を与える可能性はあるかなと。

     1.北部方面対応のために南部や東部からの戦力の引き抜きを期待する。

     2.MLRSでやられた事と同じように重要インフラを狙いウクライナ側へ負担を強いる。
      ・橋や道路、発電設備等への攻撃による戦力減。
      ・上記インフラ等を守るためのSAMの消費を強いる。

     3.ウクライナ側が東部南部を重視して特に対応せず北部を軽視しているようならばまた別の作戦を発動させる。

     正直、S-300を対地攻撃に使用して消費し尽くした後はどうするのかは気になるな。中国のDF-16とか北朝鮮のKN-25とかペイロードや射程的には使いやすいと思うんだけどロシアで作ったり、おねだりしてみたりしないのかな。

    • makumaku
    • 2022年 8月 19日

    M142とM270による攻撃が続いているので、以前にあった噂通り、おそらくS-300には(S-400にも?)、M31 GMLRS弾に対する迎撃能力は無いのだろうね。
    ウクライナにとっての問題は、ロシア軍が大量のS-300を使ってどこを狙ってくるのか、だね。

      • 無無
      • 2022年 8月 19日

      HIMARS搭載のミサイル群に比して射程は劣らないが、精度も弾頭も見劣りするから同じような戦果は期待できない
      これはロシア軍の面子として、ウクライナのミサイルにやられっぱなしの状況に反撃してますよアピールのためのパフォーマンス行為だよ
      時期をみてミサイルによる総攻撃をかけ、ウクライナ側に大打撃を与えましたの大本営発表があるから待っててね

      • ナイトアウル
      • 2022年 8月 19日

       Telegramにアントノフスキー大橋防衛の動画があって一応何発かは迎撃成功しているようには見えるんだよね。

       具体的にM31が何発撃たれて映像が本当にアントノフスキー橋なのか、そこに配備された防空システムが何でであるのか空流炸裂した物は迎撃成功したのかってのは確かめようはないけど。

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