イタリア空軍はアラブ首長国連邦に「ドバイのアルミンハド空軍基地から出て行け」と要求されており、イタリアの安全保障や経済に大きな影響を及ぼしている。
参考:Italian forces kicked out of Middle East base over UAE arms embargo, lawmaker says
UAEへの武器輸出を止めることで明確な和平へのメッセージを発信したイタリアが支払う代償は釣り合いが取れているのか?
バイデン政権は今年2月、サウジアラビアが主導するアラブ・スンニ派諸国とイランが支援するイエメンのシーア派反政府組織フーシとの戦い=つまりイエメン内戦に対する軍事作戦への米国支援打ち切りを発表、内戦に積極的関与しているサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)に対する武器輸出(攻撃兵器に限る)を凍結して注目を集めたが、今年2月に退陣したイタリアのコンテ前政権はバイデン政権よりも前(今年1月)にサウジアラビアとUAEへの武器輸出を禁止する決断を下した。
当時イタリアの外相を務めていた与党「五つ星運動」党首のルイジ・ディマイオ氏は両国に対する武器の禁輸措置について「我が国が発信した明確な和平へのメッセージで、人権の尊重は我々にとって必須のコミットメントだ」と主張していたが、この決断はイタリアの安全保障や経済に大きな影響を及ぼしており同国の議員たちは「地政学的に大きな過ちを犯した責任を五つ星運動が取るべき瞬間が来た」と批判を声を挙げている。
武器の禁輸措置に怒ったUAEはイタリア空軍に対して「7月2日までにドバイのアルミンハド空軍基地(+UAE領空の使用拒否)から出ていけ」と要求したため同基地からの撤収が始まっているのだが、この拠点はイタリアにとって中東地域における唯一の拠点でアフガニスタンとイタリアを結ぶ重要な中継拠点として機能しており、ソマリア沖やアデン湾の実施している多国籍艦隊(第151合同任務部隊)による作戦支援もアルミンハド空軍基地を使用しているためUAEの報復はイタリアの安全保障政策にとって大打撃だ。
特にアフガニスタンに派遣していたイタリア軍の撤収作業は中継拠点のアルミンハド空軍基地が重要な役割を果たしているため「7月2日」以降使用できなくなると撤収作業に深刻な影響を及ぼすと指摘されており、イタリア側はUAEに「撤収決定の撤回」を働きかけているのだが状況は思わしくなく「交渉が成功するとは思えない」と議会の防衛委員会は言っている。
この問題は経済にも飛び火しており、イタリアに現地法人(RWM Italia)を設立して砲弾や弾薬の製造を行い中東諸国に輸出を行っているドイツのラインメタルは「イタリアの決定によって湾岸諸国からの受注が妨げられるような事態になれば現地法人の従業員を全員解雇する必要がある」と主張しており、イタリア議会の議員達は「アルミンハド空軍基地への長年の投資を五つ星運動は台無しにしてUAEとの関係を決定に壊してしまった」と批判して現在のドラギ政権に参加している五つ星運動に責任を取れと言い始めた。
ただ五つ星運動が責任をとったところでUAEがイタリアを許すかは別問題で「一度壊れた関係を元に戻すのは不可能だ」という意見もあるが、米国は中国に集中するため戦力をインド太平洋地域に移動中で今後中東はNATO主体で動くため多くの西側諸国(英国、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド)が利用するアルミンハド空軍基地から追い出されたイタリアはNATO内での肩身が狭くなり、欧州で輸出を前提に開発される兵器の共同プログラムから冷遇されるかもしれない。
関連記事:米防衛産業は真っ青、バイデン政権がサウジへの軍事支援中止を今日にも発表
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※アイキャッチ画像の出典:Gian Marco Anzellotti/CC BY 2.0
外交の一貫性というか政権変わったからハイ手打ちとなればいいけど中々難しいか
国家間の同意も政権が変わったら「あの話はナシね」とはならない
国家間の関係が壊れた場合も政権が変わったからナシとはならない
関係を修復するには壊した側へのペナルティが必要になるでしょうね
普通はそうなんでしょうがそう出ない国も散見されますね。
本来はそれが出来る国ほど信用があり得をしてきたが
約束を反故にするのが普通の中国・韓国・北朝鮮は勿論のおこと
最近のインドネシアやトランク→バイデンと揺れてるアメリカやら
約束を守る方が割りを食う国際社会になってきてる感じはするな。
スンイ派とシーア派の戦いはどちらかが完全に滅ぶまで続くだろう、イスラムの正当継承者の座ををめぐる争いなんだから。
関係しないが吉。
つうても石油と世界の物流の一大チョークポイントでドンパチやっているのに、それに関係しないというのは自国の経済と安全保障にとってすら無責任極まりないだろう
最低限、石油と海上交通の安全確保だけは出来る体制を維持しないと……
近頃LGBTとか流行っているからと、格好つけて人権ストレート放ったら特大カウンター喰らってノックダウン寸前
実際カナダが昔それで自業自得とはいえ酷い目にあったんだよなぁ。要は外交の場では分相応の事をってこと
この手の、ヨーロッパ内の内輪ノリを外に持ち出して大失敗って何度もやらかしてるんだよなぁ
アラブの春とかもそうだし
とにかく「我々の価値観は最高であり、野蛮な連中に啓蒙してやるべきものだ。そして”目覚めた”野蛮人は、感謝と共に我らの仲間となるに違いない」という傲慢さを俺は感じるよ
十字軍のころからの悪癖だな
でもよぉ、ヨーロッパが人権問題を完全に投げ捨てて地政学に舵を切ったら中国やウイグルのこともほっとくと思うぞ
日本としてはヨーロッパが人権に欺瞞的なうるささを持っているのはそんなに悪いことではない
頭に羽とっつけて狙撃の的になるイタ兵さん
一方で英兵さんメットはネット巻でL85は銃剣取っ付けて万全を期してる
日本もC-2の輸出を検討してたね…、eu の軍隊を駐留させてるならもともと向こうさんが有利だったわけか。
ベースには、911以降イスラエルに引き摺られ過ぎたアメリカがやっとその足枷を解いてイラン敵視策から革命前の同盟関係に回帰、地域大国のイランを中東の盟主に仕立てて、中国と分断しようっていう大目標で、現在の大英帝国時代の名残の地域勢力図を完全に書き換える中東戦略の歴史的転換が進行してるのが一つ。第二にアラブのオイルマネーで米ドルを防衛するニクソン・キッシンジャーの通貨覇権戦略でサウジや弟分のUAEを優遇してきたけど既にペトロダラー体制が崩壊してて相対的にアラブの戦略的価値が下がった、っていう時代の変化がある。それで、世界支配層の金融エスタブとアメリカはイランと対立関係のサウジとUAEを冷遇して追い込んでアラブがイランと和解せざるを得なくなるような戦略環境を意図的に作ってる。実際、サウジUAEもイランとの和平を模索して水面下で和解交渉を進めてる。全体の流れとしては、トランプがアブラハム合意でイスラエルとUAEの国交樹立に持ち込んだ流れが第二段階に入ったということ。その延長でイランとイスラエルの緊張緩和から中東和平実現に繋げる大きなシナリオも待ってる。
イタリアは左派のコンテ前首相時代にチャイナマネーを当て込んで親中路線を選択したけど、アメリカが反中冷戦始めて先行き不透明になったんで、欧州金融エスタブのドラギに首相が交代したのを機に中国抑止陣営に鞍替え。アメリカに同調してアラブ冷遇、経済制裁解除後のイランとの関係改善に的を絞る方向に舵を切った。あくまでも当面の目標はアラブとイランを早期和解させること。だから、イタリアは中長期の戦略的にもビジネスとしても非合理なことしてるわけじゃない。けど、例によって左右・地方中央で分裂してるお国柄な上にアメリカとEUに手を突っ込まれていつものように揉めてる、っていう話。人権問題とか些末な話は、いつもながら外交上のレトリックに過ぎない。そんなこんなで、目先だけ、局所だけの途轍もなく近視眼な見方しても全く意味ない。
我が国も、ジブチとの友好関係を大切にしましょう。
ジブチだけじゃなく、オマーンとUAEもね
こちらにも拠点を開設していますから
シーア派の大国ってイランぐらいしかないけど、もしイランで親米パーレビ朝が倒れてなかったら
スンニ派VSシーア派の紛争は起きてなかったんやろうか?