ウクライナ戦況

ロシア軍がザポリージャ原発から撤退? ウクライナが撤退準備の兆候を確認

ウクライナの原発を管理するエネルゴアトム社は27日、ロシア軍がザポリージャ原発からの撤退を準備している兆候があると明かしたが、まだ「ロシア軍が撤退する」と明言するには時期尚早だと付け加えた。

参考:Есть признаки, что россияне могут покинуть ЗАЭС – президент Энергоатома

ロシア軍は用済みになったザポリージャ原発を「善意のゼスチャー」としてIAEAに引き渡すつもりなのかもしれない

ウクライナ南部のドニエプル川沿いにあるザポリージャ原発は欧州最大の原子力発電所で、ロシア軍が3月4日に占領して以降もエネルゴアトム社によって運用が続いており、ウクライナ支配地域とロシア軍占領下の地域に電力を供給し続けているが、ロシア軍が原発敷地内に砲兵装備を持ち込んでザポリージャやニーコポリの攻撃拠点に活用、さらに原発施設を故意に攻撃(ウクライナ軍が攻撃した体)して放射能事故を引き起こす可能性を示唆して「西側諸国にウクライナへの武器支援を止めろ」と要求していた。

出典:UATV 武器を発電所敷地内に運び込むロシア軍

ただドニエプル川右岸から撤退したロシア軍はウクライナ軍の砲撃を避けるため川沿いの拠点を放棄、ドニエプル川から15km~20kmほど離れた地域に移動しており、再び川を渡河して右岸のヘルソン州やドニプロペトロウシク州に侵攻するのは現実的ではなく、利用価値が無くなったザポリージャ原発をどうするのか注目されていたが、エネルゴアトム社は27日「ロシア軍がザポリージャ原発からの撤退を準備している兆候がある」と明かした。

エネルゴアトム社は「ここ数週間、占領者がザポリージャ原発からの撤退を準備しているかもしれないという情報を受け取っており、敷地内にあった装備や物資を出来るだけ詰め込み、ブービートラップを仕掛け始めている」と明かしたが、まだ「ロシア軍が撤退する」と明言するには時期尚早で「撤退の準備をしている」と言うことは出来ると付け加えた。

因みにウクライナメディアは「ザポリージャ原発についてロシアの新聞も『IAEAの管理下に置く価値がある』という記事が増えている」と報じており、ロシア軍は用済みになったザポリージャ原発を「善意のゼスチャー」としてIAEAに引き渡すつもりなのかもしれない。

関連記事:ロシア軍がザポリージャ原発を占拠、正し原子炉自体は安定稼働中
関連記事:ロシア軍が再びザポリージャ原発を攻撃、今度は使用済み核燃料を狙い砲撃
関連記事:ロシア軍によるザポリージャ原発への砲撃は送電停止が狙い、軍事拠点化も進行中
関連記事:ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を攻撃、ロケット弾が原子炉近くの施設に命中
関連記事:ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を攻撃する理由、ウクライナ支援の中止を要求か?

 

※アイキャッチ画像の出典:DENAMAX/CC BY-SA 4.0

NATO、大半の加盟国がウクライナ支援で武器・弾薬の備蓄を使い果たした前のページ

戦場は泥の海、それでもウクライナ軍とロシア軍の戦いは止まらない次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ハルキウで前進するウクライナ軍、スラビャンスクで前進するロシア軍

    69日目に突入したウクライナ軍とロシア軍の戦いは一進一退だが、ウクライ…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍の推定損失は戦車400輌、歩兵戦闘車1,300輌、大砲700門

    ユーロサトリ2022で取材に応じたウクライナ軍の関係者は「数学的な推定…

  3. ウクライナ戦況

    セベロドネツクで戦うウクライナ軍、最後の橋を失い補給路を失う

    セベロドネツクとリシチャンシクと繋ぐ「最後の橋」をロシア軍が破壊、ウク…

  4. ウクライナ戦況

    ルーマニア元外相、国境が不自然なのでウクライナ領の一部は周辺国のもの

    ルーマニアのアンドレイ・マルガ元外相は15日「ウクライナの国境は不自然…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ空軍は29日にSu-34を3機撃墜したと発表、ロシア人は否定

    ウクライナのオレシュチュク空軍司令官は29日「東方向、アウディーイウカ…

  6. ウクライナ戦況

    セベロドネツクで戦うウクライナ軍、防衛施設を失い後方への後退を示唆

    ハーンシク州知事のガイダイ氏は23日、セベロドネツク郊外に構築したウク…

コメント

    • 航空太郎
    • 2022年 11月 28日

    これまでのロシア軍だと、「IAEAに善意の譲渡」と「嫌がらせのブービートラップ満載」をセットでやってくる混乱っぷりをしてきそう。

    28
    • 名無し3
    • 2022年 11月 28日

    このあたり明け渡すとクリミアの水源が危なくなりそうだが

    11
    • ぱんぱーす
    • 2022年 11月 28日

    ザポリージャ原発はロシア支配地域にも電力を供給してますし、インフラを破壊してウクライナを締め上げる作戦も継続中なので軍が引き払ってもそのまま明け渡すことはしない気がします。
    渡すとしても発電所としての機能は破壊していきそうですね。

    12
    •  
    • 2022年 11月 28日

    撤退ドミノですかね…?
    メリトポリやマリウポリが落ちればクリミアは王手になるんですが、クリミアを手放すシナリオを考えてるんでしょうか

    2
    • 名前
    • 2022年 11月 28日

    ロシア政府視点ではザポリージャ原発での戦闘はnato介入の理由たりえるが、戦場の全てをコントロールするのは難しいことを考えたら、占領のリスクが大きすぎるのも一因だと思う

    4
    • tx
    • 2022年 11月 28日

    ロシアにメリットが少ないような…

    1
    • うし
    • 2023年 8月 23日

    まあ普通に考えれば、いずれ包囲されたときに投降する以外に生き残る選択肢があるのかというと・・・
    残って戦うメリットが一切ないよね

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP