ユーロサトリ2022で取材に応じたウクライナ軍の関係者は「数学的な推定値で戦車400輌、歩兵戦闘車1,300輌、大砲700門をウクライナ軍は失った」と明かした。
参考:ウクライナ軍、戦車やミサイルなど「50%を失った」…損害情報を積極的に開示
参考:Ukraine to U.S. Defense Industry: We Need Long-Range, Precision Weapons
実際のところは「装備損失の割合が最も高い旅団で重装備が50%失われた」という意味だ
読売新聞が18日「これまでの戦闘でウクライナ軍は保有する戦車400輌、歩兵戦闘車1,300輌、大砲700門など、それぞれ最大で50%を失った」と報じているが、これはウクライナのシャラポフ国防次官と陸軍兵站司令部のカルペンコ准将がユーロサトリ2022で取材に応じた中で飛び出した発言で、元記事と少々意味合いが異なるので注意が必要だ。
ウクライナ軍は戦闘が行われている約1,000km以上の最前線(戦闘がない前線を含めると約2,500km)を管理しており、1個旅団(戦車30輌、歩兵戦闘車100輌、大砲40門)が約40kmの前線をカバーしているため最前線を支えるには約40個旅団が必要で、この旅団の装備損失の割合はおよそ30%~40%、最も装備損失の割合が高い旅団になると50%に達し、これまに戦車400輌、歩兵戦闘車1,300輌、大砲700門を失ったとカルペンコ准将が言及したが、これは数学的な推定値で実際に失われた装備をカウントしたものではない。
カルペンコ准将が言及した1個旅団の装備定数を元に40個旅団の装備総数を計算すると戦車1,200輌、歩兵戦闘車4,000輌、大砲1,600門になるので、戦車の装備損失比は30%、歩兵戦闘車の装備損失比は32%、大砲の装備損失比は43%になり、読売新聞の報じ方だと「ウクライナ軍が重装備を最大50%失った」というニュアンスになるが、実際のところは「装備損失の割合が最も高い旅団で重装備が50%失われた」という意味だ。
それでも推定値で「戦車400輌、歩兵戦闘車1,300輌、大砲700門を失った」という言及は興味深く、視覚的に破壊や鹵獲が確認されたウクライナ軍の装備損失(Oryx調べ)は戦車194輌、歩兵戦闘車135輌、榴弾砲・自走砲・MLRS93門なので戦車は約2倍、歩兵戦闘車は約10倍、榴弾砲・自走砲・MLRSは約7倍も失っている計算だが、ウクライナ軍はロシア軍の戦車を263輌、歩兵戦闘車を241輌、榴弾砲・自走砲・MLRSを113門を鹵獲している。
仮に鹵獲されたものを全て投入して、西側が提供した重装備(戦車は約230輌、歩兵戦闘車は約100輌で榴弾砲・自走砲・MLRSは約380輌/発表分のみ)を加えても特に歩兵戦闘車と大砲は損失分をカバーできていない計算だが、カルペンコ准将が言及した歩兵戦闘車の損失に「装甲兵員輸送車などの装甲車輌が本当に含まれていないのか?」、大砲の装備損失に「重迫撃砲などの装備類も含まれているのではないか?」など疑問点も多いので参考程度に受け取っておくのが妥当だ。
因みにシャラポフ国防次官とカルペンコ准将は「東部戦線で優位性を確保するためには多連装ロケットシステムと徘徊型弾薬の両方が必要で、敵を榴弾砲や自走砲の交戦範囲外で破壊できれば自軍の人的被害を抑制できる」とユーロサトリで訴えており、各国の防衛産業企業にロシア軍と戦うウクライナ軍への支援を求めている。
関連記事:リシチャンシクに自走砲KRABが到着、セベロドネツクを巡る戦いに変化
※アイキャッチ画像の出典:93-тя ОМБр Холодний Яр
記事のインタビューは注目していました。
兵器損失についてモノによっては半数に及ぶとするシャラポフ氏の言明は兵器保有数(wikipedia+兵器供与数):インタビューを並べれば数値上は論証できます。
戦車 1,324: 400(30%)
歩兵戦闘車 2,557:1,300(51%)
砲兵システム2,659: 700(26%)
他方、インタビューの損害数:ORYXの映像確認分の損害を並べると下の通り、戦車で半数、その他は2割程度で数値の信憑性については何とも言い難いところです。
戦車 400:194(48%)
歩兵戦闘車 1,300:284(22%)
砲兵システム 700: 92(13%)
ただし、ウクライナ・ロシアの損害比に着目してみると、戦車は同記事で露1,500:宇400(27%)、ORYXで露781:宇194(25%)と比率は近似を示し、歩兵戦闘車では同じく37%と22%でした。
戦果を高く損害は少なく報じるのが常道ですが、ORYXを公平の尺度とすればインタビューの数値の比率上は偏りが見られないということです。
ユーロサトリでのインタビューは兵器供与を引き出す目論みも否定できませんが、その場合は損害を実数より誇張しこそすれ過少とするインセンティブもありません。
そこからすると損害の実数は案外インタビューが当を得ているのかもしれず、その3~4倍に及ぶロシアの損害の異常性が際立つように感じます。
管理人さんご指摘の通り、インタビューの数字はカルペンコ准将の概算で、1個旅団の定数(戦車30輌、歩兵戦闘車100輌、大砲54門!)を単に13倍して端数を丸めたものだと思う。それにしても1個旅団に砲兵3大隊分とはさすが火力重視の旧ソ連…
前線に出る戦車よりも後方に置かれる大砲の損害が大きいのは(対砲射撃や故障分を含むにしても)不自然なので、大砲の支援を引き出すための情報戦の可能性もある。
榴弾砲の損害が多くなっているのは砲身寿命を使い切ったが砲身交換ができずに使えなくなっている可能性も考えられます
戦前はハリコフ方面で整備が行われていたのでしょうし、工場がハリコフ攻防戦で破壊されて在庫もろとも焼失していてもおかしくありません
M777は既に砲身寿命に達してカナダから交換用砲身が提供されているのでソ連系の状況はさらに酷いでしょう
読売はまともに翻訳して記事かける奴いないのか?
いたらこんな事になってないんですよ。ほんとに日本の新聞社は…
確かに”artillery”を「ミサイル発射システム」と訳すのはひどい。誤訳にひきずられて、タイトルまでおかしくなっている。
損失戦車400輌って……。補充できるんかいな。
ポーランド提供分で200オーバー、仮にNATO諸国のソ連系戦車全てをウクライナに提供した場合大凡500両
なので可能か不可能かで言うならまだなんとかなるラインで、これはウクライナが先日提示した戦車の要求数500両とも一致してる
問題は撃破された戦車の搭乗員がどれだけ生き残ってるのかな気がしますね
AFVや重火器の運用になれた人員の補充は簡単ではないでしょうから、戦争の日時がかかると人口の少ないウクライナ側は不利になる展開なのでしょうか?
イギリスが訓練すると発表してますしその中に戦車などの扱い方も含まれているかと
戦車は供与と鹵獲で当面は何とかなるでしょうが、
やはり損失・消耗の多さに比して榴弾砲・自走砲がまったく足りないですよね。
アメリカさんは自分のところのM109は送れないんですかねぇ・・・。
ロシアの予備ストックが効いているな。
西側も装備の予備保管を考えないとな。
自衛隊も予備保管も確保すべきだし、我々の様な素人を速やかに戦力化する訓練方法や装備も考えるべきだな。
オーストリア軍みたいにウクライナ戦の講義とかもして欲しいですよね、ビックリしましたけど・・
リンク
まったくもう日本の新聞会社はどいつもこいつも…
しかし鹵獲車両が多いことが幸いしてますね。T90鹵獲されてアメリカに送られたりしてませんかね。MQ9と交換で、とか言ってそう。戦車263輌捕獲しているのである程度補充はできますが(それでも半数以下)もう、西側から東側の戦車遅れててくるようなことはないと思いますし(在庫的に)、そろそろ西側戦車提供を考える潮時かと。日本もMLRS…
そろそろ東側兵器用の弾薬の方がヤバいかもしれませんね。
最近の装甲車破壊動画で出てくるのはほとんどがウクライナの対戦車ミサイルなんですよね
射程が5キロぐらいあるみたいで そのうちライセンス等で輸出するんでしょうね
ウクライナでジャベリンのメンテナンス問題が発生し始めているようですよ、この問題は対戦車兵器だけでは無く、全体で発生しているのではないかと思うのですが・・聖ジャベリンにお迎えがやって来る?
ダイレクトアタックタイプで敵を葬れればそれでも良いのですがAPS使われるとアウトかな?
参考
リンク
最近、ここの記事が直ぐ某掲示板に引っ張られて、それをまとめサイトが掻っ攫っていくことが多い気がする。
別にそれをどうこう言う気はないけど、航空万能論も有名になったなぁと感じ今日この頃・・・
ウクライナの戦争で、海外の情報をいち早く正確に伝えてくれるこのサイトが脚光(?)を浴びた感ありますね。
ただ、まとめサイトどころかYoutubeでも引用されててたんですよね、軍事チャンネルみたいなやつに。しかも内容もここの管理人の書いた文章を半分以上コピペして、あたかも自分の考えた文章かのように流してた。
ここのサイトのURLも貼ってなかったし、なんならコメ欄のコメントも「ネットの反応」と勝手に紹介してましたね。自分が見たのはトルコのバイラクタルTB2の製造会社が「日本は早くUCAVを導入すべき」と言っているのを紹介してた内容だったと思う。
知名度が上がったのは嬉しいけど、なんだかなあと思う
管理人が翻訳して独自の見解を書いた記事をYouTubeで引用なしで流しているYouTuber見るとせめて引用先を明示してくれって思う
以前ここの記事がパクられまくってた時に管理人はんが「引用するなら出典を明示して下さい」って言ってたのにこれですよ。
ここが有名になったのは管理人さんの記事が非常に質の高いことの証左だと思ってますがその反面こんなことになるのもなぁって見てる自分もモヤモヤします。
戦車ってかなりぐちゃぐちゃに壊れても修理はきくし、ニコイチ、サンコイチとかあるだろうな。
修理期間や費用、負傷者は考えない物とする。
エアカバーが見込めないとすると、やはり徘徊型弾薬とロケットに頼らざるおえませんか。
徘徊型弾薬はローテクでも作れるはずなので、提供国(特にアメリカ)が素早く生産してくれることを祈る。
韓国やイスラエルでもいいのよ。
スイッチブレードが電子戦に弱く戦闘での使用が禁止されたとの報道が出始めています
徘徊型弾薬の提供はさらに絶望的になるかもしれません
素人考えだけどスイッチブレード無効化って結局は自律型じゃなく通信による人間介在前提だから問題があるんでしょ。
自律型なら電子戦あろうが兵器自体のセンサー部分を騙すか潰す対応が出来ないなら効果はあると思う。
少なくともロシア側のUAV対応はボリソグレブスク2ならコントロール用の通信とGPS妨害、クラスハ2ならレーダー誘導妨害の可能性あり、クラスハ4は衛星妨害と無線電子機器(無線通信)と常時発信されているレーダーへの対応が主であってEMPみたいな対応はされていないと思う。
●対策として
・INS航行とミリ波レーダーで対象の形状把握して突入するブリムストーンⅡ(恐らく細かい設定が出来そうなので影響を受けないプログラム変更は出来ると思う)を使うかそのシステムを積んだUAVを作る。
・23年に量産するであろう新型スパイクミサイルのより致命的なダメージを与えやすい目標捕捉用画像マッチング機能が形になっているならロッキード経由でこっそり使わせて貰う(イスラエルは国防上の理由でロシア不利な対応はしないスタンス)。
・ EO/IRセンサー+AIを使い新しい自律型誘導方式を作り徘徊型に搭載する。
・ ターゲット指定と高い命中率を諦めてSADARMのセンサーを搭載し所定の距離か時間経過でセンサーを作動させる誘導兵器の開発。
一番楽なのINSとAI使った画像誘導だろうなデコイにどれ位対抗出来るかは分らないが、デコイ準備するのも手間なんで些末な問題。ただし高機能化による価格上昇や製造の手間には目をつぶるしかない。
アメリカも旧型の105mmライフル砲のエイブラムス戦車・M1IPが予備役で2千輌以上余ってるわけで、装甲・砲弾共にウランフリー(ウラン不使用)ならウクライナに500輌ほど贈っても良いと思うけどね。
M1系だと兵站面での負担が大きかったりして、105㎜砲仕様のアビオニクス系も20世紀仕様ですし使用できる状態に戻すまでの時間もかかりそうですね。